※2024年05月20日:「直近1年間の気温上昇が「1.5℃」を超える事態に」の情報を追加し、最新情報に更新しました。
2024年現在、企業に対する「CO2削減」を求める流れが当たり前になって来ています。
という企業様も多いのではないでしょうか?
また、
という方も、実は多いのではないかと思います。
この記事では
を、わかりやすく解説していきます。
ぜひ御社の脱炭素施策や、社内研修資料としてもお役立てください。
目次
2024年現在、CO2削減 が国にも企業にも求められる時代になっています。
「CO2削減 は、地球温暖化への対策に必要だ」ということは分かっていても
そのメカニズムはよく分からないという方も、実は多いのではないでしょうか?
「CO2削減」や「地球温暖化」を知るうえで、まず理解しておかなければいけないのが、
「気温と大気(温室効果ガス)のメカニズム」です。
大気(温室効果ガス)のメカニズムを知るために、地球に大気が無かったらどうなるか見て行きましょう。
もし地球に大気が無かったら、
太陽からの熱で地表が温められても、その熱は地表から宇宙空間に放出されてしまいます。
この場合、地球の平均気温は「マイナス19℃」になると言われています。
しかし地球には大気があります。
大気中の「温室効果ガス」が、地表から宇宙空間に熱が放出されるのを適度に抑え、吸収してくれており、生物が生存できる温度に保ってくれています。
これにより、地球の現代の気温は「平均14℃」に保たれています。
ただし、温室効果ガス が増え過ぎてしまうと、
宇宙空間に放出される熱を必要以上に抑えすぎてしまい、地球内に熱を吸収しすぎて、気温が上がってしまいます。
それでは、その「温室効果ガス」とはどんなものなのでしょうか?
まず「温室効果ガス」には、どのようなものがあるのでしょうか?
種類と特徴を見て行きましょう。
下の表は「国連気候変動枠組条約」と「京都議定書」で定められた 温室効果ガス の一覧です。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、温室効果ガス は「CO2」以外にも、さまざまな種類のものが存在することが分かります。
表中に「地球温暖化係数」という項目があります。
これは、その気体の温暖化への影響が「CO2の何倍あるか」を示した値です。
例えば、メタンは地球温暖化指数が「25」になっていますので
同じ量でも、CO2の「25倍」温暖化への影響がある気体ということになります。
半導体の製造過程で生まれる「NF3(三フッ化窒素)」に関しては、
CO2の「17,200倍」温暖化への影響がある、強力な温室効果ガスである事が分かります。
温室効果ガス は、文献や環境系の資料の中では「GHG」と呼ばれることもあります。
(温室効果ガス を意味する「Greenhouse Gas」の略称です)
では「人間の活動 によって排出される 温室効果ガス」にはどのようなものが多いのでしょうか?
IPCC の第6次評価報告書による
温室効果ガス 排出量の分類が左のグラフです。
このように、人間の活動によって排出される(人為起源)の「温室効果ガス」の中では、
二酸化炭素(CO2)が「75%」と圧倒的に多い
ことが分かります。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
前項で、地球温暖化指数について解説しましたので
「メタンの割合が18%になっているけど、地球温暖化への影響はもっと大きいのでは?」
と思われた方もいるかもしれません。
しかしこの比率は「CO2換算ベース」になっています。
メタン等の 地球温暖化への影響 を「CO2ベース」に換算してありますので
温暖化への影響の比率として見ることができます。
地球温暖化に関する情報の中では、このように「CO2以外の 温室効果ガス」も「CO2換算ベース」にしてあるのが一般的です。
全体に対して75%と、温室効果ガス の排出量の大半が「CO2」になっていますが、
さらにその中でも、全体に対して64%が「化石燃料起源のCO2排出量」になっています。
ということが分かります。
また、温室効果ガス 排出量の割合は、国によっても大きく異なります。
温室効果ガスインベントリオフィスのデータによると「日本における 温室効果ガス 排出量の割合」は左のようになっています。
前項でご紹介した、世界全体におけるCO2排出量の割合(76%)と比較して日本のCO2排出量の割合は「90.9%」と非常に高いことが分かります。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、温室効果ガス にはさまざまな種類が存在し「CO2」だけではないのですが
「温室効果ガス 排出量の中で、CO2排出量の比率が非常に高い」のが現状です。
特に日本ではその比率が高いこともあり、
「CO2削減」が「温室効果ガス 削減」の意味で使用されることも多くなっています。
このように、地球は 温室効果ガス によって気温が保たれており、
人間の活動によって、CO2を中心にさまざまな 温室効果ガス が排出されていることを
ご理解頂けたかと思います。
しかし、
という疑問も以前からありました。
しかし2021年に、IPCC から
人間の活動が、温暖化に影響を与えているということは「疑う余地がない」
とする見解が発表されました。
IPCC は、気候変動について科学的なデータや見解を提供している世界的な組織です。
IPCC は(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略で、
日本語では「気候変動に関する政府間パネル」という意味になります。
世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織で
世界中の科学者が協力して、論文などを元にした定期的な報告書を作成し、公開しています。
その報告書の内容は、国際社会におけるCO2削減の取り組みを話し合う「COP」においても参考にされ
国際的な目標や取り決めを行う上でも、重要な役割を担っています。
IPCCでは、これまでの報告書において、温暖化と人間の活動との関係についての見解を更新してきました。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
最初に1990年に公開された「第1次報告書」では、人間の活動による 温室効果ガス の増加は
「気温変化を生じさせる恐れがある」という表現にとどまっていましたが
2001年の「第3次報告書」では「可能性が高い(66%以上)」
2013年の「第5次報告書」では「可能性がきわめて高い(95%以上)」
と、回を重ねるたびに「温暖化と人間の活動の影響」の関連性が高まっていました。
そして、2021年に公表された「第6次報告書」では、
という断定的な見解が発表されました。
このように、世界中の科学者が協力している国際的な気候変動の検証機関において
「温暖化は、人間の活動による「温室効果ガス 排出の増加」による影響である」
と断定されているのが現状です。
それでは次に、地球温暖化の「現状」について確認してみましょう。
現時点では、地球温暖化はどこまで進んでいるのでしょうか?
IPCC 第4次評価報告書のデータから、
大気中のCO2濃度を1万年前からさかのぼってみてみると
大気中のCO2濃度の推移は左図のように、
1800年代後半から増加し始め、1900年代後半からは特に急激に増加していることが分かります。
1800年代は産業革命の後期にあたります。
産業革命(工業化)前の平均的な大気中二酸化炭素濃度(278ppm)と比較すると、2020年にその濃度は413.2ppm(※)となり「約49%増加」しています。
(※)世界気象機関(WMO)2021年発表
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、CO2濃度は産業革命(工業化)を大きな節目として大きく変化しています。
「産業革命(工業化)」によって、化石燃料を使用し始めてから「大気中の二酸化炭素濃度」が増加しているのです。
前述の 温室効果ガス 排出量の比率の章でも解説したように、
現代においても化石燃料の使用によるCO2排出量が、温室効果ガス 排出量の大半を占めています。
このように、温室効果ガス の排出量の変化や、気温上昇の変化は
「産業革命(工業化)」前と比較してどれほど変化したかを基準に考えられることが多くなります。
続いて、世界の平均気温の推移を見て行きましょう。
左図のように、世界の平均気温も産業革命(工業化)以降に増加しています。
その「工業化」前と比較して、世界の平均気温は「1.09℃」上昇しています。
この上昇は、過去10万年間の気温においても前例のないものであるとされています。
また、グラフを見て頂くとお分かりの通り「特に1950年以降に、大きく気温上昇が進んでいる」ことも分かります。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、明らかに温暖化が進んでいる状況ですが、
「1.09℃の気温上昇」と聞いても、
と、一見あまり大きな影響が無いように見えるかもしれません。
しかし、
ことが分かっています。
「0.5℃の気温上昇」は、数字は小さく見えますが、地球環境に大きな変化をもたらすのです。
温暖化の影響による「熱波などの極端な高温」「大雨」などの異常気象の「強さ」と「頻度」は、
IPCC による第6次評価報告書の中でも、地球温暖化の影響による増加予測が示されています。
左の図は、気温上昇によって、熱波などの「極端な高温」の頻度と強度がどれほど増加するのかをまとめた、IPCC の第6次評価報告書によるデータです。
10年に1度起こるレベルの「極端な高温」に対して、産業革命前から1℃気温が上がった現在では、以前より「2.8倍」発生頻度が上がり、「極端な高温」の温度も1.2℃上昇していることを示しています。
これがさらに、産業革命前よりも1.5℃の気温上昇になった場合には、4.1倍の頻度で1.9℃高い気温の「極端な高温」の異常気象が起こる見通しとされています。
2℃や4℃上昇した場合には、頻度も強度も大きく上昇することが、この図を見て頂けると分かるかと思います。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
海外で報道されているような「熱波」は日本ではあまり起こっていませんが
ここ数年「観測史上最高気温」といった言葉もよく耳にするほど、異常な高気温になる日も多くなっていますので、みなさまも「高気温」になっている実感はあるのではないかと思います。
「大雨」の増加も「熱波などの極端な高温」と同様に、気温の上昇とともに、産業革命前よりも頻度も強度も上がっていることが分かります。
日本では特に、近年豪雨による災害が多くなってきていることは、実感しやすいかと思います。
今後さらに気温上昇が続くと、図のように頻度も強度も大きく上がる見通しです。
現在の大雨の増加の肌感覚から気温上昇後の数字を見ても、今以上に気温が上昇した場合の大雨増加の規模の大きさが想像しやすいのではないかと思います。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
また、スターン・レビューの「気候変動の経済学」によると、
気温上昇の温度ごとに「食料」「水」「生態系」などへの影響について、下記のような影響が出て来ると予測されています。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
それでは各項目について、それぞれ解説して行きます。
食料への影響としては、産業革命前より1℃の温度上昇が進んだ現代の状況でも
途上国での収穫量が減り始めるとされています。
さらにこれが1.5℃まで気温上昇が進むと「飢餓の危機」が増え始め、
さらに3.5℃の気温上昇に進むと「先進国の地域でも収穫量が減少」し
4℃以上の気温上昇が進むと、すべての地域での収穫量が大幅に減るとされています。
気温上昇は、水にも影響を及ぼし、1℃の温度上昇が進んだ現代の状況でも
山岳地域の氷河がなくなることにより、一部の地域で水不足になる可能性があります。
気温上昇が2℃以上になると、地中海やアフリカの水の流量が30%以上減少し、
10億人以上が水不足に。
4℃を超えてくると、海面上昇が、ロンドンや上海、NY、香港、東京などの世界の大都市を脅かすようになるとされています。
生態系への影響は、1℃の気温上昇の現在から、すでにサンゴ礁が元に戻れないほどの
ダメージを受けるという影響が出ています。
さらに1.5℃の上昇で、大多数の生態系は現在の状態を保てなくなり、
2℃の上昇で、アマゾンの熱帯雨林の崩壊が始まり、20%~50%の種が絶滅の危機に陥るとされています。
1.5℃を超えてくると、温度上昇によりメタンがより大気中に増え、
生態系の変化によって、自然における炭素吸収量が減ると考えられています。
つまり、1.5℃を超えると「そこからさらに気候変動が急激に進む可能性が高い」と言えます。
このように、たった数度の気温上昇でも、
「異常気象の頻度と威力が大きくなり」「水・食料・生態系」にも
大きなダメージをもたらす可能性が高いと考えれられています。
さらに「1.5℃を超えると、気候変動が急速に進む」可能性があるため
産業革命前からすでに1℃気温上昇している現在において「対策は急務」になっています。
それでは、地球の気温はこれからどうなっていくのでしょうか?
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
上のグラフは、IPCC の第6次評価報告書から、さまざまなシナリオごとの
気温上昇の予測を示したものです。
2100年までに「最大で5.7℃上昇する」というとても厳しい予測になっています。
2100年というと「遠い未来」のように思えますが、今30代の方でいえば孫の世代が生きる時代になりますので、そう考えるとそこまで遠い未来でもありません。
グラフの未来の時間軸では、色の異なる5本の線で推移が記されています。
これは、CO2削減にどこまで取り組むことができたかによって
推移も変わってくるため「5つの異なる未来へのシナリオ」ごとの推移として紹介されているためです。
5つ全てのシナリオを紹介してしまうと長くなりますので、
CO2が最大排出量になった場合のシナリオと、最小に抑えた場合におけるシナリオを解説します。
SSP5-8.5(化石燃料に依存し続けた場合)のシナリオは、グラフ上では赤のラインと赤の帯で範囲が示されています。
このシナリオにおいては、早ければ2030年頃には「2.0℃」に達し、
2050年頃には「3.0℃」2065年頃には「4.0℃」に達する見通しになっており、
前述のように、2100年には「最大で5.7℃上昇する」と予測されています。
つまり、CO2削減に取り組まずにこのまま進めば、
この先20年~30年後には、前項で解説したような
「厳しい異常気象」「食料不足」「水不足」「多くの種の絶滅」などが起こる懸念があるのです。
反対に、水色のラインで示されている、SSP1-1.9(気温上昇を1.5℃に抑えた場合)には、
2100年まで、1.5℃前後を横ばいで推移しています。
気温上昇を抑えられているのは素晴らしいことなのですが、
そこまで抑えても「気温上昇を(1.0℃などに)下げるのは難しい」とも言えます。
このように、気温上昇を抑えるための取り組みは、広く世界全体で早急に進めて行く必要があります。
特に1.5℃を超えると気温上昇が急激に進む可能性があることから
国際社会では
ことを目標にして、CO2削減に取り組んでいます。
ここまで、温室効果ガス 排出による地球環境への影響について解説してきました。
それでは、国際社会はこの問題に対してどのように対策してきたのでしょうか?
国際社会における気候変動への取り組みにおいて、
まず抑えておいておかなければならないのがCOP(コップ)です。
COP(コップ)は、1992年に採択された 国連気候変動枠組条約 に基づき、1995年から毎年開催されている「気候変動への対策」について話し合われる国際会議です。
締約国会議(Conference of the Parties)の略で、正式名称は「国連気候変動枠組み条約締約国会議」といいます。
「COP28(コップ28)」のように、開催された回数の数字がつく略称で呼ばれていますので、ニュースなどでも耳にしたことがある方も多いのではないかと思います。
COP で決定した国際条約に基づいて、参加各国が各自でCO2削減の目標を掲げて取り組んでいます。
COP で決定した代表的な国際条約としては「京都議定書」や「パリ協定」が有名です。
写真の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
国際社会における気候変動への対策は、この COP で決まった内容に沿って行われています。
その取り組みは、1990年代から始まりました。
1992年に、国連主催の地球サミット「リオ・サミット」が開催されました。
当時の国連加盟国の大半にあたる約180カ国が参加し、環境保護などに関する取り組みについて話し合われました。
「SDGs」が広く知られるようになったのも、この「リオ・サミット」がきっかけです。
このサミットでは「国連気候変動枠組条約」の締結が決定します。
この「国連気候変動枠組条約」を締結した国による会議が、その名の通り
COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)です。
「国連気候変動枠組条約」は1994年に締結され、
その翌年の1995年から、COP が定期的に開催されることになりました。
1997年に京都で行われたCOP3では「京都議定書」が採択されます。
京都議定書 では、
先進国が2008年~2012年期間中に排出する温室効果ガス の排出量を削減することが決まりました。
京都議定書 は、温室効果ガス の排出量削減を各国で目標設定した初めての取り決めで
気候変動への国際社会における対応において「歴史的な出来事」になりました。
その後、2008年~2012年期間中の約束(第一約束期間)については、日本政府も1990年比で6%の 温室効果ガス 削減を義務付けられ、達成しています。
また、その後も「第二約束期間」として、2013年~2020年の削減目標を設けて実施することになりましたが、途上国は対象外とする方針を不服として、日本は参加していません。
写真の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
続く大きな出来事が2015年のCOP21で採択された
「パリ協定」です。
京都議定書 は「2020年まで」のCO2削減対策を定めたものでしたが、パリ協定 では「2020年以降」の対応策が定められました。
京都議定書 が「先進国のみ」に目標を定められていたのに対して、パリ協定 では「途上国を含むすべての国」が対象になっています。
また、京都議定書 がトップダウンで目標「達成」を義務付けられていたのに対し、パリ協定 では5年ごとに参加各国が「目標を提出する」ことが求められており、達成は義務付けられていません。
パリ協定 では、世界共通の目標として「2度目標、努力目標1.5度以内」が掲げられています。
産業革命(工業化)前と比較して「気温上昇を2℃以内に抑える」ことを目標として、
さらなる努力目標として「1.5℃以内に抑える」ことも掲げています。
2019年にスペインのマドリードで開催されたCOP25では、パリ協定で 掲げた「気温上昇を1.5度以内に抑える」努力目標を実現するためには、2050年付近までに「カーボンニュートラル」を実現する必要があるとの報告がなされました。
これにより、123か国と1地域が、2050年までの カーボンニュートラル を表明しました。
写真の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
パリ協定 では「2℃目標」をベースに「できれば1.5℃」の努力目標となっていましたが、
上記のような要因から「2℃目標」では不十分なのではないかという機運が高まり
「気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求する」という表現が合意文書に盛り込まれることになりました。
前章まででご紹介したように「気温上昇が1.5℃を超える」と、さまざまな異常気象や地球環境の危機が起こると予測されています。
このように、COP、京都議定書、パリ協定 などを通じて、
世界全体で「気温上昇を1.5℃以下に抑える」流れになって行ったのです。
こうした中、非常に気になる最新ニュースをご紹介しておきます。
このように、世界全体で「気温上昇を産業革命前の1.5℃以下に抑える」ことを
目標に取り組んでいますが、
2024年3月の報道において、
と発表されました。
参考:ELEMINIST「直近1年間の世界平均気温が史上最高 1.5℃を上回る」
太平洋の海面水温を上昇させる「エルニーニョ現象」の影響も手伝っての上昇ではありますが、
世界で抑える気温上昇の目標にしていた「1.5℃」を上回ってしまったのです。
さらに、2024年5月のニュースでは、
「アラスカの氷河末端域から高濃度のメタンが検出された」と報道されています。
一般河川と比較して、2倍から40倍の濃度のメタンが溶け出しているとのことです。
参考:JAMSTEC「アラスカ山岳氷河末端からのメタン放出をはじめて検出」
前述のように、メタンはCO2の25倍の温室効果を持つ気体です。
これまでは氷河末端域はメタンの放出源とは考えてこられませんでしたが、
現状では、世界のどの氷河がどれほどメタンを出すのかもほとんど分かっていない
とのことです。
前述のように、平均気温が1.5℃を超えると
大気中にメタンが放出される量が増加し、温暖化がより進むと考えられています。
世界の氷河に含まれるメタンが多ければ、
これから急速に気温上昇が進む懸念も生まれて来ています。
話を「CO2削減」への取り組みに戻します。
世界全体強まった「CO2削減」の流れは、日本国内でも強まり始めます。
前章でご紹介したように、2019年のCOP25をきっかけに
多くの国が「カーボンニュートラル」を宣言しました。
日本も同様に、2020年10月に、菅政権は2050年までに 温室効果ガス の排出を全体としてゼロにする
「2050年カーボンニュートラル」に挑戦することを宣言しました。
読売新聞オンライン:菅首相「温室ガス2050年までにゼロ」…初の所信表明「グリーン社会」に意欲
この「2050年カーボンニュートラル宣言」から、
日本国内でもCO2削減に向けた動きが大きく加速することになります。
菅首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」からわずか2カ月後には、
2050年カーボンニュートラルの具体的な見通しと目標を設け、実行計画を示した
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においては、
企業などのCO2削減を推進するための「税制優遇」や「ESG投資 の推進」なども定められました。
さらに、2021年5月には「改正温対法」が成立し、
「2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として法に位置づけられることになりました。
こうして、世界全体における「2050年カーボンニュートラル」への取り組みは
日本においても法に位置づけられ、国や企業が本腰を入れて取り組んでいくことになったのです。
こうした流れを受けて、世界中の大手企業が「CO2削減」に力を入れ始めました。
特に RE100 などに加盟する大手企業は、自社だけでなく、取引先にも「CO2削減」を求めるようになりました。
「カーボンニュートラル」の考え方においては
「サプライチェーン排出量」の削減まで行う必要があったからです。
2024年2月21日に公開された、フォーバルGDXリサーチ研究所による実態調査によれば
中小企業の10社に1社以上が上流企業・大手取引先から脱炭素の取り組みを求められたと回答しています。
出典:フォーバルGDXリサーチ研究所「中小企業の10社に1社以上が上流企業・大手取引先から脱炭素の取り組みを求められていると判明!」
Appleやトヨタ自動車なども、取引先へのCO2削減を求めています。
米アップルは31日、同社に納める製品の生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表した。
日本経済新聞「Apple、取引先110社が再エネ100%を表明 村田製作所も」
トヨタ自動車は直接取引する世界の主要部品メーカーに対し、2021年の二酸化炭素(CO2)排出量を前年比3%減らすよう求めた。
日本経済新聞「トヨタ、部品会社に21年排出3%減要請 供給網で脱炭素」
こうして、大手企業だけでなく、
その取引先の企業まで「CO2削減」に向けて取り組む流れが生まれて来ています。
突然、サプライヤーから排出量の削減を求められたり、
急遽CO2削減にとりくまなくてはならなくなった方の中には、
という方もいらっしゃるでしょう。
ここでは「企業のCO2削減に向けたプロセス」について解説していきます。
企業のCO2削減への流れは、下記のような流れで行うと良いとされています。
まず、実際にCO2削減に取り組む前に、
プロセスとして重要なことが「CO2排出量を把握する」ことです。
実際に、取引先からも「現状のCO2排出量を共有してほしい」という要求が来ている企業様も多いかもしれません。
把握するために、初めに「CO2排出量を把握する」ところから始めるわけです。
「CO2排出量の把握」については、それだけでかなりの情報量になってしまいますので
本記事では詳しく解説しません。
下記の記事で詳しく解説していますので、そちらをご参照頂ければ幸いです。
続いて、実際にCO2削減を行う際に、まず取り組むと良いのが「再エネの導入」です。
「使用するエネルギーを省エネで削減する」よりも
「使用するエネルギーを元からCO2を排出しないものに変えてしまう」方が効率的なので、
省エネより先に「再エネ導入」を考えると効率的です。
そして再エネの導入だけでは充分ではない排出量の削減を省エネによって行っていきます。
省エネには「人の手による省エネ」「設備更新や省エネ設備の導入」などのアプローチ方法があります。
「再エネ導入」や「省エネによる削減」でも削減しきれない「CO2排出量」は、
「カーボンオフセット」で削減することができます。
カーボンオフセット とは、温室効果ガス の排出削減量を購入したり、植林や環境保護への寄付などを通じて、埋め合わせることで「CO2排出量を削減した」とみなす方法です。
あくまで「実際に削減した」わけではありませんので、
「再エネ導入」や「省エネによる削減」を充分に行ったうえで、削減しきれない分を カーボンオフセット で削減するという考え方が一般的です。
それでは順番に、具体的な「CO2削減施策」をご紹介していきます。
企業のCO2削減施策で、まず最初に取り組むと良い施策が「再エネの導入」です。
まず使用する電気を「CO2を排出しない再エネ」に変えることでCO2削減を実現します。
「再エネの導入」には、主に下記2つの手法があります。
「再エネへの切り替え」というと、
後述するような「太陽光発電導入」など規模の大きな設備導入しか選択肢が無いように考えてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、「再エネで創った電気に切り替える」方法もあります。
元々使用していた電力会社のプランを、再エネで創った電気を扱う電力会社やプランに切り替えるだけという方法です。
この手法のメリットは、導入費用がかからない点です。
元々電気を買っている、火力発電等で電気を創っている電力会社やプランから
再エネ電気の電力会社やプランに切り替えるだけで導入できます。
※この点が特に注意が必要です。
再エネ電気を扱っている電力会社の中には
「新電力」と呼ばれる、大手電力会社以外の電力会社もあります。
新電力 導入のデメリットとして押さえておかなければならないのは「電力会社の倒産リスク」です。
近年の「電気料金の値上がり」を受けて、2021年4月には「706社」あった新電力会社のうち、
2022年6月8日時点でその「約15%」にあたる「104社」が契約停止や撤退をしています。
参考:帝国データバンク「新電力会社」事業撤退動向調査(6 月)
この為、倒産リスクの少ない電力会社選びを慎重に行うことが、
「再エネ由来の電力」への切り替えでとても重要になります。
また、「再エネの導入」として近年注目されているのが「自家消費型太陽光発電」です。
社屋や工場の屋根に太陽光パネルを設置し、
太陽光発電で創った電気を使用することで「CO2削減」と「電気料金削減」を実現する方法です。
「自家消費型太陽光発電」の導入により、削減できるCO2削減量の目安は以下の通りです。
業種ごとのCO2削減量を算出したのが上の表になります。
しかし、これではどれ程の規模のCO2削減が可能なのか分かりにくいかと思いますので、
「一般家庭の排出量」や「杉の木のCO2吸収量」に換算して確認してみましょう。
このように、CO2削減の効果を一般家庭の排出量や、杉の木のCO2吸収量に置き換えると
削減効果が分かりやすいかと思います。
例えば、製造業(生産工場)においては「約483世帯分(ひとつの集落くらいの規模)」「杉の木約83,298本分(約28ha)」と、山一つ分ほどの大きな削減効果があることが分かります。
自家消費型太陽光発電 で創った電気を使用する場合、自分の会社で創った電気を使うことになるため、発電した分については「電気を購入する」必要がありません。
そのため、CO2削減だけでなく、大幅な電気料金削減も実現できます。
ただ、自社所有モデル の 自家消費型太陽光発電 の場合には、
「再エネ由来の電力への切り替え」と異なり、導入費用がかかる点も大きな違いです。
自家消費型太陽光発電については、こちらで詳しく解説しています。
ぜひこちらも併せてご参照ください。
また、自家消費型太陽光発電には、さまざまな補助金も出ています。
令和6年度にも多くの補助金制度が公募される予定です。詳しくは下記の記事をご参照ください。
また導入費用がかからない「オンサイトPPA」という自家消費型太陽光発電の導入方法もあります。
発電所は他社(発電事業者)が購入
自家消費型太陽光発電 を自社で所有する「自社所有モデル」ではなく、
第三者(発電事業者)が導入し、導入費用や保守費用も負担します。
しかし設置場所は自社で提供
設置場所は自社内になりますが、
その場所を提供し、第三者(発電事業者)が発電所を創る形になります。
そして 自家消費型太陽光発電 で発電した電気を購入します。
つまり導入費用をかけずにCO2削減が可能になる 自家消費型太陽光発電 の導入方法ですが、
発電した分月々の電気料金を支払う必要があります。
オンサイトPPAについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
現在の日本国内では、ご紹介した「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」が主流ですが
より大規模な再エネ導入を目指す場合には、自社敷地外に 自家消費型太陽光発電 を設置する
「自己託送」や「オフサイトPPA」といったモデルもあります。
これらについては、本記事では詳しく解説しませんが
詳しくは下記の記事でご紹介していますので、関心のある方は参考にしてみてください。
このように「再エネ由来の電力への切り替え」や「自家消費型太陽光発電(自社所有モデル)」
「オンサイトPPA」など、企業の再エネ導入には、さまざまな方法があります。
どの方法を選ぶのか、参考のために主な特徴をまとめます。
まず、CO2削減の効果については、
「再エネ由来の電力への切り替え」「自家消費型太陽光発電(自社所有モデル)」
「オンサイトPPA」どのモデルでも(同じ規模の発電所導入や電気料金切替を行った場合には)大きな差はありません。
しかし、自家消費型太陽光発電 は、屋根などの自社のスペースに限りがありますので、
再エネ導入には限りがあります。
「再エネ由来の電力への切り替え」の場合には、電気料金のプランを切り替えるだけで
全電力を再エネに切り替えることができます。
そのため、屋根などの広さによっては
「再エネ由来の電力への切り替え」の方がCO2削減量は大きくなると言えます。
企業によっては、取引先からCO2削減を求められるケースなどもあり、
すぐに再エネを導入しなければならないケースもあるかと思います。
「導入スピード」で3者を比較すると、下図のようになります。
図のように「再エネ由来の電力への切り替え」は、電力プランを切り替えるだけなので
再エネ導入には時間がかかりません。
自家消費型太陽光発電 の場合には、発電所の導入や工事が必要なため
再エネ導入には時間がかかってしまいます。
本記事の主題はあくまで「CO2削減」ですが、電気料金の値上がりなどもあり、
と考える企業様も多いのではないかと思います。
従来の電気料金と再エネ100%の電気料金、自家消費型太陽光発電 の電気料金を比較してみます。
オンサイトPPA の電気料金は、公益財団法人 自然エネルギー財団の調査によると
概算で「9~11円/kWh」となっています。
参考:公益財団法人 自然エネルギー財団「コーポレートPPA 日本の最新動向 2022年8月」
自社所有モデル は、自社で発電する分については電気料金はかかりませんので0円になります。
自家消費型太陽光発電 の電気料金は、あくまで発電した分の電気料金になりますが、
オンサイトPPA も 自社所有モデル も、従来の電気料金や再エネ100%の電気料金よりも
かなり削減できることが分かります。
「導入費用」や「メンテナンス費用」など、電気料金以外の諸費用についても比較していきます。
図のように、自家消費型太陽光発電 の「自社所有モデル」だけは
発電所の導入費用や、メンテナンス費用が必要になります。
自社所有モデル に関しては「初期費用がかかる」という特徴があるのです。
短期的には、初期費用がかかる「自社所有モデル」ですが、
「電気料金がかからない分を削減費用として回収していく」ことになります。
一般的には、初期費用は10年ほどで回収するイメージで構築されていることが多くなります。
自社所有モデル と オンサイトPPA の電気料金を比較すると
図のように、オンサイトPPA には「PPA事業者(発電所の持ち主)」の利益が乗りますので
その分、自社所有モデル のほうが電気料金は安くなります。
「自社所有モデル」は導入費用が多くかかりますが、
長期的にみると、これらの施策の中では利益が大きいことが分かります。
これらのことを加味すると、
目的ごとに、再エネの導入方法にはそれぞれ合ったものがある事が分かります。
また、これらいずれかの方法に限定せずに、
このように、複数を組み合わせることもできます。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」でも
「2050年には発電量の約50~60%を再エネで賄う」ことを参考値にして議論を進める方針です。
2050年には発電量の約50~60%を再エネで賄うことを、議論を深めて行く
に当たっての一つの参考値とし、今後の議論を進める。
引用元:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(経済産業大臣説明資料)」
このように、再エネの導入促進は
「2050年カーボンニュートラル」においても重要な課題になっていますので、
企業のCO2削減においても着目しておく必要があります。
次に「省エネでCO2削減する方法」をご紹介する前に、
「省エネによるCO2削減量の考え方」についての注意点をご紹介します。
まずこちらを先に確認しておきましょう。
まず、非再エネ電気を購入し、全ての電気を賄っている施設において
「電気設備の省エネ」を行った場合には下記のようになります。
図のように、使用電気量を削減率とCO2削減率は同じになります。
対して、使用する電気を「自家消費型太陽光発電」や「再エネ由来の電力」等で
再エネで「100%賄えている」施設の場合にはどうなるでしょうか?
図のように、使用電気量を削減したとしても、CO2の削減にはなりません。
「元々再エネ100%で賄っている場合、そもそもCO2を排出していない電気を使っている」ので
その電気の使用量を減らしても、CO2を削減することにはならないのです。
それでは、部分的に再エネ電気を使用している場合にはどうなるのでしょうか?
図のように、使用電気量を削減した20%は「非再エネの使用電気量」から引かれます。
元々再エネで調達した電気はCO2を排出していない為、CO2の排出量は「電気の全使用量の30%」になります。
こうして見て行くと「再エネ導入」の「CO2削減」のインパクトの大きさが分かります。
そのため、CO2の排出は、上流である「使用する電気を再エネにする」ことから始めると
大きなCO2削減に繋がるのです。
では「使用する電気量を抑える」省エネによるCO2削減方法についてご紹介します。
具体的な削減策についてご紹介する前にまず、業種ごとの使用電気量の内訳を確認しておきましょう。
このように、製造業を除くほとんどの業種において、
使用電気量が最も多いのが「空調」で、続いて「照明」が多くなっています。
製造業については、生産設備が大半を占めています。
この章では「空調」「照明」「その他」それぞれの分類ごとに対応策をご紹介していきます。
それではまず、最も電気使用量の多い「空調」の省エネ方法をご紹介していきます。
まず、費用をかけない空調の省エネ方法として「人の手による省エネ」があります。
「設定温度の見直し」や「フィルタの清掃」など、一見当たり前の施策も
こうして具体的な削減効果を見てみると、あなどれない施策である事が分かります。
施策 | 省エネ効果の目安 | 頻度等 |
フィルターの清掃 | 冷房時で約4% 暖房時で約6%の省エネ | 2週間に1度が目安 |
室外機の温度環境や障害物の見直し | 室外機の風通しが悪いと電気代は1.5倍に。 | |
熱交換器(フィン)の清掃 | 長期間行わなかった場合に比べて約27%の節電 | ・工場/店舗・・・約3年 ・事務所/オフィス・・・約5年 ・福祉施設/医療施設・・約5年 |
部屋に応じた適正温度の設定 | 室温の目安は「夏期 28℃、冬期20℃」で 1℃最適化するだけで約10%の削減が可能。 | |
冷水出口温度設定値の変更 | 冷水温度を7℃から9℃へ上げると 使用電力は8%削減 | |
外気導入量の削減 | ・オフィスビル・・・節電効果5% ・卸・小売店・・・節電効果8% ・食品スーパー・・・節電効果4% ・医療施設/福祉施設・・・節電効果2% ・製造業・・・節電効果8% | |
残熱利用による運転時間の短縮 | 約6%の省エネ (8時間勤務のオフィスで30分間空調停止した場合) | |
分散起動 | 冬の商業施設で約9%の削減効果 | |
ナイトパージ | 約5%の省エネ (ナイトパージシステム 利用) | |
ブラインド等で遮光する | ブラインド無しの場合と比較して10.6%の省エネ効果 |
それぞれの手法の詳細についてはこの記事では紹介いたしませんので
詳しくは、下記記事をご確認ください。
「高性能空調機への買替」は「空調の省エネ」でまず浮かぶ方法かと思います。
しかしその効果はどれほどあるのでしょうか?
上記はダイキン社のエアコンで2009年製から2019年製に買い替えた場合の例ですが、
現在お使いの年式やメーカーによって効果は異なるものの、大きな効果が期待されます。
しかし高性能空調機への買替は、費用も大きくかかります。
そこで費用を抑えつつ空調機器のCO2を削減する方法として「α-HT(流体攪拌装置)」というものもあります。
写真のように、配管に挿入するだけで空調の省エネ、CO2削減に繋がる機器になります。
配管に挿入するだけですが、15~30%の省エネ効果が期待されます。
空調機の動力は、消費電力の90%を占めています。
その圧縮機の負担を下げる為に、配管に挿入したα-HTが循環物を攪拌(こうはん)することで
省エネ・CO2削減に繋げるという機器になっています。
高性能空調機への買替に比べて費用が抑えられるだけでなく、
簡単に取り付け可能で、ランニングコストやメンテナンス費用もかからず
スペースも取らない点が魅力です。
遮熱塗料や断熱塗料で施設内の気温の変化を抑えることで
空調費用を抑えることも、CO2削減のための取組みとして有効です。
「塗料でどこまで遮熱・断熱できるのだろうか」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
上記は、日進産業の高機能断熱塗料「ガイナ」の例ですが、
動画でご覧いただけると効果が分かりやすいかと思います。
各主要メーカーの遮熱塗料による省エネ効果について、
環境省が行った実証結果もありますので、参考にご紹介いたします。
メーカー名 | 商品名 | 夏季14時の体感温度抑制効果 | 冷房CO2削減率 (6~9月) |
アステックペイント | EC-100F | 0.4℃ | 3.90% |
アステックペイント | EC-100ダートガード(ECー100DG) | 1.7℃ | 3.20% |
日本ペイント | ニッペ ヤネガード (クール色) | 1.7℃ | 3.20% |
日本ペイント | ニッペ サーモアイ 4F | 1.5℃ | 3.30% |
日本ペイント | ニッペ サーモアイ UV | 1.9℃ | 3.70% |
日本ペイント | ニッペ サーモアイ Si | 1.8℃ | 3.40% |
日本ペイント | フォルテシモRF | 1.8℃ | 3.40% |
日本ペイント | ATTSU-9(4F) | 1.8℃ | 3.50% |
エスケー化研 | クールタイトスターF | 1.5℃ | 2.80% |
エスケー化研 | クールタイトスターSi | 1.6℃ | 2.90% |
関西ペイント | アレスクール1液F | 1.5℃ | 3.00% |
関西ペイント | アレスクール水性F | 1.5℃ | 2.90% |
関西ペイント | アレスクールワン | 1.7℃ | 3.30% |
関西ペイント | アレスクール水性Si | 1.6℃ | 3.20% |
関西ペイント | アレスクール1液Si | 1.7℃ | 3.30% |
関西ペイント | アレスクール2液Si | 1.2℃ | 2.50% |
環境省「ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)”実証済み技術一覧”」より、大阪の工場における実証結果を算出
工場は[床面積:1000㎡、最高高さ:13.0m、構造:S造(鉄骨造)を条件としています。
遮熱塗料や断熱塗料はさまざまなメーカーから販売されています。
主要メーカーをいくつかご紹介しますので、ご参照ください。
空調制御システムを導入することで、
最適な温度環境を保ち、無駄な電力消費を抑えてCO2削減と省エネを実現する方法もあります。
上記でご紹介した「人の手による省エネ」でも
適正温度の設定を守ることはできますが、それらを自動化し最適な温度に保ちます。
メーカーによって数値は変わりますが、
10%~30%ほどの省エネ効果があるとされています。
NTTファシリティーズ:スマート空調制御システム<Smart DASH>
工場などの広いエリアで空調機器が使われている場合、
人のいるエリアだけに空調を効かせるために、ビニールカーテンで仕切る方法もあります。
スタイルダートプロ:工場・倉庫・店舗などの業務用カーテンレール・ビニールカーテン
続いて省エネ効果が高いのが、空調に次いで消費電力が大きい「照明」の省エネです。
空調の方が、使用電気量も多く、その削減効果も大きいのですが、
削減のための設備投資における「費用対効果」は照明の省エネの方が高い傾向があります。
環境省 グリーンビルナビ「省エネ改修の費用対効果」を元に作成
上のグラフは、延べ床面積あたりの「省エネのための改修費用」と「削減効果」について
空調と照明を比較したものです。
図のように、空調の方が削減効果が大きい傾向があるのですが、
照明は削減効果は空調よりも少し下がるものの、改修費用は空調より低く抑えられる傾向があります。
そのため、照明の方が費用対効果が高く、改修費用も抑えることができます。
それでは、具体的に「照明の省エネ」方法について見て行きましょう。
LED照明への切替による削減効果は、業種や切り替える照明によっても異なりますが
場所によっては「最大で90%以上の削減が可能」と言われています。
本記事では各箇所ごとの削減効果の見通しをすべてご紹介することはできませんが
下記の記事にて、業種や利用シーンごとのLED切替による削減効果をご紹介していますので
ご参照ください。
続いて、照明の省エネで効果的なのが「明るさセンサーの導入」です。
昼は日光の明るさを活用し、天候が悪い日や夜間は照明の照度をあげることで
「約30%」の省エネが可能になると試算されています。
※(試算) 明るさセンサ利用時平均電力費;60%、明るさセンサ利用時間比;50%と想定した場合
出典:一般社団法人 日本照明工業会「LED照明ナビ」
こちらは導入されている施設も増えていますので、ご存知の方も多いかもしれません。
人の不在時には照明を抑える「人感センサー」では「約60%」の省エネが可能になると試算されています。
※(試算) ON/OFF型人感センサを使用し、感知時間を40%と想定した場合
出典:一般社団法人 日本照明工業会「LED照明ナビ」
不要な時間帯やシーンには照明を制御するスケジュール管理システムの導入も、更なる省エネになります。
上記の例では、消費電力の約20%を削減することができます。
効率的に照明を使用する方法として「タスク・アンビエント照明」も効果的です。
「タスク・アンビエント照明」は、上図のように「室内全体を照らす照明」を減らし
作業する場所などに照明を付けることで、全体の消費電気量を削減する方法です。
上図の例のように「タスク・アンビエント照明」を導入すると、一見個数が増えたので電力消費量が上がるように見えますが、実際には明るさは変わらずに「約39%」の省エネが可能になります。
次に、空調や省エネ以外の省エネ方法をご紹介していきます。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、
施設内で使用されている電気の使用状況を「見える化」できるシステムです。
EMS そのものが省エネに繋がるといったものではありませんが、
電気の使用状況を見える化することで
「どこを削減すべきか」的確な対応や効果測定が可能になります。
エネルギーマネジメントシステムにつきましては、
詳しくはこちらの記事をご参照ください。
あまり知られていませんが、屋上や屋外などに設置されている 高圧受電装置(キュービクル)やも省エネで着目すべき設備です。
キュービクル内には、使用されずに無駄になる「一定の電力ロス」が生まれることがあります。
しかしこの「電力ロス」も電気料金として加算され、
電気を使用している為「CO2を排出している」ことになります。
その為、この電力ロスを低減することで「CO2排出量を下げる」ことに繋がります。
ロスの原因は、キュービクル内の部品の老朽化や故障など
原因は多岐に渡る為、専門家による点検で原因を精査して改善する必要があります。
こうした電力ロスが出ているかどうかの確認方法としては「力率」を確認すると分かりやすいです。
力率が100%であれば、電力ロスは生まれておらず
その割合が低いほど、多くの電力ロスが出ていることが分かります。
電気料金請求書に「力率」が記載されている電力会社もありますので確認してみると良いでしょう。
こうしたキュービクルで発生する電力の無駄を防ぐためには、定期的な点検がとても重要になってきます。
キュービクルの省エネについて、より詳しくはこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
電気自動車への切り替えもCO2削減には効果的です。
このことは皆様もご存知かと思います。
しかしガソリンの代わりに使用する「電気」を発電所で発電するときにはCO2を排出しています。
発電時に排出されるCO2を加味して考えると、
(日本国内の場合)電気自動車を導入することで「55%のCO2削減」効果になると言われています。
参考:国立研究開発法人 国立環境研究所「電気自動車は環境にやさしいの?」
前述のように、社内で再エネ電気を使用している場合には、
その電気を使って行けば、自動車におけるCO2削減量もより高くすることができます。
近年「働き方改革」やコロナ禍をきっかけに「テレワーク」が浸透しましたが
こうした取り組みも「脱炭素」に繋がります。
環境省からも具体的な取り組み内容と簡易算定ツールが配布されています。
環境省から配布されている資料に紹介されている
働き方改革と脱炭素を両立できる主な取組みは以下の通りです。
さらにそれらの取組みに対して、
どれほどの量のCO2削減に繋がるかを簡易算定できるツールも配布されています。
以下は、上記のツールで算定してみた一例です。
取組内容 | 設定 | CO2削減量 | CO2削減量を エアコンの稼働時間に換算すると・・・ | オフィス全体に対するCO2削減率 |
---|---|---|---|---|
通勤方法を変更する(車→電車) | 往復30kmを車通勤していた社員20名を「電車通勤」に変更した場合の年間削減量 | 約 18,620 kg-CO2 | 約112時間分 (1日約27分停止に相当) | 約11% |
テレワークによる通勤時のCO2削減 | 往復30kmを車通勤していた社員20名を年間200日「テレワーク」に変更した場合の年間削減量 | 約 17,400 kg-CO2 | 約104時間分 (1日約25分停止に相当) | 約11% |
残業時間を減らす | 20名の社員の1日平均2時間だった残業時間を1日1時間に削減した場合の年間削減量 | 約 16,284 kg-CO2 | 約98時間分 (1日約27分停止に相当) | 約10% |
※従業員50名のオフィスの平均CO2排出量13.5t-CO2(参照元「日本のオフィスの平均的CO2排出量)で年間業務日数245日(年間休日120日)、1日の所定労働時間8時間の企業で算出。
※エアコンの消費電力369kWh、電力のCO2排出係数を日本平均で0.419kg/kWhとして算出。
このように、働き方改革の取組みにおいても、CO2削減に向けて一定の効果が期待できます。
とここまでは、どの業種にも共通する省エネ方法をご紹介してきました。
しかしながら、業種独自の設備があったり、独自の基準に従う必要がある場合もあります。
本記事では、各業種ごとの省エネ方法について解説はいたしませんが
製造業、オフィスビル、病院については、他の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
再エネの導入や省エネだけでは、目指すCO2削減量を達成できない場合には
「カーボンオフセット」という方法があります。
CO2排出量の削減において、削減しきれない分を、温室効果ガス の排出削減量を購入したり、植林や環境保護への寄付などを通じて埋め合わせることを言います。
つまり、実際にCO2を削減するわけではなく、それに相当する活動を行って相殺する方法になります。
カーボンオフセット で削減すれば良いという種類の方法ではなく、
あくまでも先に紹介したようなCO2削減を取り組んだ上で削減しきれない分に用いるのが望ましい手法です。
前述した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても
カーボンオフセット への取組みが不可欠であるとされています。
2050 年カーボンニュートラルの実現には、ゼロエミッションが困難な排出源をカバーするネガティブエミッションが不可欠
引用元:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
しかし「カーボンオフセット」は、どれだけ具体的なCO2削減になっているかが分かりづらい為、投資家や消費者に向けて透明性を持った活動を行う必要があります。
環境省から発行されている「カーボンオフセットガイドライン」には、
透明性を持って行えるように下記のような「6つの重要事項」が示されています。
(1) カーボン・オフセットの対象となる活動に伴う排出量を一定の精度で算定する必要があること
(2) カーボン・オフセットが、自ら排出削減を行わないことの正当化に利用されるべきではないこと
(3) カーボン・オフセットに用いられるクレジットを生み出すプロジェクトの排出削減・吸収の確実性・永続性の確保及び排出削減・吸収量が一定の精度で算定される必要があること
(4) カーボン・オフセットに用いられるクレジットを創出するプロジェクトの二重登録、実現された削減・吸収量に対するクレジットの二重発行及び同一のクレジットが複数のカーボン・オフセットの取組に用いられることを回避する必要があること
(5) カーボン・オフセットの取組について適切な情報提供を行う必要があること
(6) オフセット・プロバイダーの活動の透明性を確保する必要があること
(2)に「自ら排出削減を行わないことの正当化に利用されるべきではない」と記されているように
充分な再エネ導入や省エネでのCO2削減を充分に行った上で取り組むことが重要です。
環境省の「カーボンオフセット・ガイドライン」によると
大きく分けて5つの取組みに分けられます。
カーボンオフセット で製造過程のCO2を吸収した商品を販売し
「製造過程のCO2削減量を吸収した商品」という付加価値を付けて販売する方法です。
販売元が「このTシャツは製造過程のCO2排出量分を植樹に寄付して吸収しています」と表記して販売。購入者は商品を購入することで、CO2削減に参画できる。
このようなことができるようになります。
こちらも「1.オフセット製品・サービス」と似ており、
商品が「会議・イベント」に指し変わったと考えれば分かりやすいのですが
「開催で発生するCO2削減量を吸収してCO2を吸収したイベント」
として参加者はCO2を排出していないイベントに参加できます。
有名な例としては、Mr.Childrenさん等が行っている「ap bank fes」をイメージすると分かりやすいかと思います。
こちらはよりシンプルで、企業が掲げたCO2削減目標に対して、
削減しきれない分を「購入」したり「環境保全」に貢献することでCO2排出量を下げる方法です。
CO2削減量を購入する方法として、日本には「J-クレジット制度」という制度があります。
こちらは「1.オフセット製品・サービス」や「2.会議・イベントのオフセット」と
良く似ていますが、大きな違いは購入した者に「CO2を削減した」というクレジットが付与される点が異なります。
「カーボンオフセットクレジット付のコピー用紙」を購入することで、
従来のコピー用紙では製造過程で発生していたCO2を削減でき、
購入した企業のCO2削減量に加えることができます。
こちらは、購入者からの寄付を、企業のカーボンオフセットに使用する方法です。
例)販売額の一部をクレジット購入に用いるスポーツウェア
それでは具体的に、カーボンオフセット の企業の取組み事例を見て行きましょう。
ファミリーマートは、環境配慮型プライベートブランド「We Love Green」の商品における
原料から製造、廃棄までに発生するCO2排出量分を、
インドの水力発電プロジェクトによって削減された「CO2排出枠」を日本政府に譲渡する
カーボンオフセットキャンペーンを実施しました。
詳細:ファミリーマートの環境配慮型プライベートブランド「We Love Green」商品15種類のCO2排出量をオフセット〜「カーボン・オフセットキャンペーン」を実施 〜
九州電力は、自社のカーボンオフセット事業として
福岡県久山町の町有林管理支援をはじめ、他地域でも森林管理支援でカーボンオフセット事業の展開を模索。
詳細:九州電力「森林資源を活用したJ-クレジット創出・活用事業」を開始します
阪神タイガースは、大阪ガスと阪神甲子園球場の3社で「カーボン・オフセット試合」を開催すると発表。
試合で排出されるCO2(80t~90t-co2)を「J-クレジット制度」を使ってオフセットします。
詳細:大阪ガス、阪神甲子園球場、阪神タイガースはカーボン・オフセットにより『ウル虎の夏』期間に阪神甲子園球場で開催される阪神タイガースの試合で排出されるCO2をオフセットします!
アイシンは、家庭用蓄電池エネファームを使うことで、家庭で削減されたCO2排出量を「J-クレジット制度」を使って企業に販売する取り組みの実証を豊田市と行うことを発表しました。
詳細:アイシンと豊田市、エネファームでJ‐クレジット創出 地域循環モデル構築
このように、さまざまな企業がさまざまな観点で「カーボンニュートラル」を取り入れ、
企業の販売戦略にも活かしています。
いかがでしたでしょうか?
など「企業のCO2削減」に関する知識をひととおりご理解頂けたのではないかと思います。
特に近年は、CO2削減だけでなく「電気料金高騰への対策」も頭に置いて対策する必要が
ある企業様も多いのではないかと思います。
環境への影響の最新情報や国際社会の動きを見ていると、今後より一層「企業のCO2削減への取組み」が企業の責任として求められていくことが想像できます。
本記事が、皆様の「CO2削減」への取組みの参考になれば幸いです。