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【2024年最新動向】太陽光発電メンテナンスの必要性と費用相場

※2024年5月16日 最新情報に更新しました。

太陽光発電を所有されているみなさまにとって、
メンテナンスが「必要かどうか?」また「費用がどれくらいかかるのか?
は、特に気になる疑問かと思います。

この記事では「住宅用」「事業用」両方を対象とした太陽光メンテナンスについて

「基礎知識」
「なぜ必要なのか?」
「費用の相場」
「自分でできる箇所は無いのか」

などの基礎知識はもちろん「2024年の最新動向」として

「太陽光発電の保険の大幅値上げ」
「近年の自然災害の激甚化」
「近年、雑草の成長が早くなっている」
「関東を中心に盗難被害が増加」

など、メンテナンスにも関りの深い最新情報にも触れながら、
2024年現在はメンテナンスをどう行っていくべきなのか?解説して行きます。

本記事の内容をお読みいただければ、
太陽光発電のメンテナンスの2024年の最新動向について
ひととおりの知識は得られるようになるかと思います。

ぜひ、お持ちの発電所のメンテナンスの参考にしてください。

本記事に記載しているメンテナンス内容は、2024年5月16日時点で最新のメンテナンスガイドライン太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月改定版)を元に解説しています。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



太陽光発電のメンテナンスの必要性

太陽光発電のメンテナンスにおいて「まず最初に気になる疑問」が、

「メンテナンスってやる必要あるの?」

という点ではないでしょうか?

太陽光発電のメンテナンスは、主に下記3つの理由から
やっておく必要があります。

1.法律で義務化されているから
2.故障や発電量低下を防ぐため
3.他者に損害を与えてしまうリスクを防ぐため

順番に解説して行きます。

1.法律で義務化されているから

まずひとつめの理由が「法律で義務化されているから」という理由です。
正確には、非FIT の50kW未満以外の太陽光発電所は、メンテナンスが義務化されています。

「電気事業法」と「改正FIT法」で義務化されている

太陽光発電のメンテナンスは、
下図のように「電気事業法」と「改正FIT法」で義務化されています。

参照:改正FIT法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)
参照:電気事業法

「50kW未満」の「非FIT」は義務化の対象外

反対に「50kW未満」の「非FIT」は義務化の対象外とも言えます。

つまり「完全自家消費の住宅用太陽光」のメンテナンスは
義務化の対象外になるということでもあります。

やっていないとどうなるの?

義務化の対象になっている太陽光発電所のメンテナンスを行っていない場合、
「認定取消」などの措置を受ける可能性もあります。

義務化の内容は?

「義務化されているメンテナンス」の内容は、
「一般社団法人 日本電機工業会」と「JPEA(太陽光発電協会)」が発行している
太陽光発電システム保守点検ガイドライン」を参照します。

参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月改定版)

なぜ「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」を参照する?
 
太陽光発電のメンテナンスの義務については、資源エネルギー庁の「事業計画策定ガイドライン(2024年4月改定版)」で言及されていますが、この中では「この内容で行ってください」という明確な内容は書かれておらず、民間のガイドライン(付録参照)と同等以上のメンテナンスを行うようにと記されています。
 
そして「付録参照」として、前述の「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が推奨されており、保守管理に関して紹介されているのはこの「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」だけになっていますので、一般的にこのガイドラインに沿ってメンテナンスを行うことが、義務化された内容を守ることになると考えられています。
どんな内容?

読んで頂ければ分かりますが、
どんな発電所も一律に、こんな内容をやっていれば良い」といった内容では無く

「発電所の環境や設備内容に応じて、必要なメンテナンスが異なる」

といった内容になっています。
またその判断も「専門業者でなければ難しい」内容になっており、
「この程度やっておけば義務化の要件を満たしている」という簡単なものでもありません。

所有されている発電所の現状のメンテナンスが、義務化されている内容に対応できているかどうかは
一度、専門の業者に確認してみると良いでしょう。

2.故障や発電量低下を防ぐため

ふたつめの理由は「故障や発電量低下を防ぐため」です。

故障による修理費用の「支出」や、発電量低下による「利益減少」は
太陽光発電を行う上での「損失」になってしまいます。

そうした損失を防ぐためにも、メンテナンスを定期的に行っておくことが重要です。

具体的にどのような故障や不具合が多いのかは、後半に詳しく解説します。

3.他者に損害を与えてしまうリスクを防ぐため

太陽光発電所の不具合で、もうひとつ注意しておかなければならないのが
「第三者に損害を与えてしまうリスク」です。

例)メンテナンスを充分にしておらず、
ソーラーパネルを留めていたボルトが緩んでおり、
強風で飛ばされたパネルが、歩行者に当たり、怪我を負わせてしまった。

例えば、上記のような大きな問題を起こしてしまうリスクです。

メンテナンスを行わないことで、自分たちへの損害だけでなく
「第三者に損害を与えてしまう」可能性もあることも考えておかなければいけません。

2024年の最新動向とメンテナンスの必要性

このように、義務化や発電低下などのリスクから、
メンテナンスの必要性があることはお分かり頂けたかと思いますが、

さらに2024年現在においては、さまざまな状況の変化があり
さらに「メンテナンスの必要性」が高まっています。

1.太陽光発電の保険料が高騰
2.自然災害の増加
3.温暖化の影響による雑草の成長
4.盗難の増加

順番に解説していきます。

1.太陽光発電の保険料が高騰

メンテナンスに関連する近年の動向において、
まずひとつめのトピックスが「太陽光発電の保険料の高騰」です。

2022年秋ころから、
保険会社各社が「保険料の値上げ」や「免責金額の設定追加」を発表しています。

また、2024年10月から、損害保険大手4社の火災保険料がさらに値上げになる
というニュースも出ています。

「免責金額」とは?

免責金額 とは、損害額のうちの自己負担額のことを言います。

例えば、太陽光発電所が台風で破損し、100万円の損害を被ったとします。
その際に保険契約の 免責金額 が60万円だった場合
60万円は自己負担で、保険会社が補償してくれるのは「40万円」になります。

このように、免責金額 が大きいほど、自己負担金額が大きくなるため
補償金額も少なくなってしまうのです。

これまでは無かった、この「免責金額」が近年追加になったのも大きな問題です。

2024年現在の「免責金額設定」の相場

近年の免責金額の設定は、保険会社によっても異なりますが
以下のような水準になっていることが多いです。

1.免責金額:100万円
2.免責金額:発電所の設備工事費用の10%

設備工事費の10%の場合、例えば「低圧の野立ての太陽光発電所」で2000万円の設備工事費だとすると
200万円の免責金額になるわけです。

このように「太陽光発電の保険」による「いざというときの補償」は、
かなり弱くなってしまっているのです。

「メンテナンス」にどう影響する?

つまり、保険で損害を補填しきれない可能性が出てきているので
「太陽光発電所の故障」をこれまで以上に防ぐ必要が出てきているのです。

そのため、これまで以上に「メンテナンスを行う重要性」が高まってきていると言えます。

「太陽光発電の保険」について詳しくはこちら

「太陽光発電の保険」について、詳しくはこちらの記事でより詳しく解説しています。
より詳しく知りたい方は、下記記事をご参照ください。

2.自然災害の増加

続いて注意が必要なのが「自然災害の増加」です。

下のグラフは、太陽光発電に関する保険金の年度別推移です。


出典:一般社団法人 日本損害保険協会「太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果 2024年2月」を元に作成

このグラフは、太陽光発電所の損害に対する保険金の支払金額を、2017年を1.0として
年次推移を比較したものです。

図のように、2017年と比較して、2021年には「3.7倍」に増加していることが分かります。

続いて、太陽光発電所の損害の内訳も見て行きましょう。


出典:一般社団法人 日本損害保険協会「太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果 2024年2月」を元に作成

左図のように、保険金が発生するような損害の「82%」が「自然災害」によるものです。
こうした情報からも「自然災害による太陽光発電への損害」が年々多くなってきていることが分かります。

自然災害は今後も増加・激甚化の見通し

このような自然災害は、近年特に増加・激甚化していることは
みなさまも肌で感じているかと思います。

このような「地球温暖化」による自然災害は、
この先もより増加・激甚化していくと考えられています。

参考:省エネの教科書「CO2削減の基礎知識と「企業の対応策19選」」

こうした自然災害の増加もあり、発電所の損害を抑えるためにも、
定期的なメンテナンスの必要性が高まっています。

3.温暖化の影響による雑草の成長

また気候変動の影響で、雑草の成長がとても早くなっている点にも注意が必要です。

高温の日が続いた後に雨が降ると、雑草の成長が早くなる傾向があります。
雑草が伸びてしまうと、日陰を作る事による「発電効率の低下」や
「故障の原因」になってしまいます。

「草刈り」の頻度が上がってしまう可能性がある点も、
メンテナンスへの影響として考えておかなければならない問題です。

4.盗難の増加

続いての問題は「盗難の増加」です。
特にケーブルの盗難が関東を中心に多発しており、深刻な問題になっています。

参考:ソーラージャーナル「太陽光発電所 銅線ケーブルの盗難被害が相次ぐ 銅の価格上昇が背景に」

盗難とメンテナンスには、直接的な関係は無いのですが
「メンテナンスの行き届いていない発電所」は、人が滅多に立ち寄らないと考えられるため
盗難の被害に遭いやすいという面もあります。

特に人通りの少ない場所にある発電所は、定期的にメンテナンスを行っておくと
盗難被害を受ける可能性を少し軽減できると考えられます。

メンテナンス費用の相場は?頻度は?

このように、メンテナンスの必要性は近年より高まっているのですが、

そうなると気になるのが「メンテナンスの費用」と「頻度」ではないでしょうか。
発電所の規模ごとに、おおよその費用相場をご紹介いたします。

※あくまでおおまかな目安です。実際には業者や内容によって大きく変わります。

発電所の規模ごとのメンテナンス費用相場

住宅用メンテナンスの費用相場は5万円~10万円

住宅用太陽光のメンテナンスの場合、
「1回5万円~10万円が相場」と言われています。

住宅用の場合には、屋根にソーラーパネルを設置しているケースも多いかと思いますが、
足場を組む必要がある場合には割高になることがあります。

頻度は、改定前のガイドラインに沿って
「4年に1度」の頻度で実施している方が多くなっています。

パワコンなどのメーカー保証が10年で切れるため、
特に「9年目」のメンテナンスは行っておいた方がいいでしょう。

産業用(50kW未満)メンテナンスの費用相場は年間10万円〜15万円

産業用太陽光(50kW未満)のメンテナンスの場合、
「年間10万円〜15万円が相場」と言われています。

・年に何回点検するか?
・点検内容

によっても差が出てきますが、メンテナンス頻度は「年1回」が目安になります。

産業用(50kW以上)メンテナンスの費用相場は年間100万円~200万円/MW

50kW以上の高圧(50kW以上2000kW未満)や特別高圧2000kW以上)になると
「年間で100万円~200万円/MWが相場」と言われています。

例)2MWの高圧の場合
年間:200万円~400万円

高圧以上の発電所に関しては「主任電気技術者」が「年2回」のメンテナンスを行うことが
義務付けられています。

加えて、専門業者による精密点検が年1回の「合計年3回」が目安になるかと思います。

修理・交換にかかる費用

メンテナンス費用をご確認いただいたところで、
不具合が起こってしまった際の「修理・交換にかかる費用」も比較しておくと、
費用をかけてメンテナンスを行う必要があるかどうかの判断材料になるかと思います。

パネルの修理・交換費用

メーカーや種類によっても異なりますが、

1枚当たり10万円~15万円ほど

の交換費用がかかります。

PCS(パワコン)の修理・交換費用

パワコンの交換費用は、近年の物価高騰を受けて、価格が上がっていますので注意が必要です。

交換費用の目安

住宅用・低圧:40万円
高圧:10万円~100万円
特別高圧:500万円~600万円
※工事費込みの費用です。

部品交換のみの場合の目安

5万円~10万円ほど
※工事費込みの費用です。

故障の程度や交換すべき部品にもよりますが、
おおよその目安としては上記のような費用感で考えておくといいでしょう。

監視装置の交換費用

モジュールやパワコンに続いて、交換することが多いのが「監視装置」です。
監視装置の交換は、工事費込みで「60万円」が目安になります。

※要注意「修理中の発電ロス」

ここでさらに注意しなければならないのが「修理期間中の発電ロス」です。

パワコンの修理でよくあるのが、

使用しているパワコンのメーカーが既に倒産してしまい、
同じ環境で動くパワコンがすぐにみつからない

という問題です。

同じ環境で動くパワコンを探すのに、非常に時間がかかってしまうケースもあります。

パワコンの機種を変える場合、申請に2ヶ月以上かかる

さらにパワコンの機種を変える場合には、申請に2ヶ月以上かかることもあります。

故障した後に機種の異なるパワコンに変更する場合、
停電が長い期間におよび、売電収入に大きな損失を与えてしまう可能性もあるのです。

対策「パワコンのリパワリング」

こうした、パワコンの故障による長期間の停電に対する対応策として
近年注目を浴びているのが「パワコンのリパワリング」です。

故障してしまう前に、新たなパワコンを予め探して、申請も行っておき、
新しいパワコンに変えてしまう

という対応策です。

分散型のパワコンに変更

また、発電所のパワコンが1つの場合(集中型)には、
故障した際の停電範囲が発電所全体におよぶリスクもあります。

そのため、リパワリングの際に、複数のパワコン(分散型)に変えて
故障のリスクを低減する策を行うケースもあります。

パワコンのリパワリングについては、
この省エネの教科書を運営している「株式会社エネテク」でもお受けしていますので
お気軽にご相談ください。

株式会社エネテク「ご相談・お問合せはこちら」

「修理費用と発電低下」の損失を防ぐためにも

充分なメンテナンスを行っていない場合

「故障による修繕費用」
「発電低下による収益の低下」

などがリスクとして挙げられます。

「義務化されているからやらなければいけない」という観点も大事ですが、
こうした損失を未然に防ぐためにも、メンテナンスは重要になってきます。

自分でできないの?

このように「メンテナンス費用」や「修繕費用」を見ていると

「メンテナンスを自分でやって、費用を削減できないか」

と考える方もいらっしゃるかもしれません。

結論から申し上げますと

「専門業者でなければできない点検もあります」

ので、すべて自分で行うのは難しいです。

しかし「自分で行うメンテナンス」を実施することで、
「費用の削減」だけでなく、日常点検を通じて「故障のリスクを低減できる」面もあります。

「自分でできるメンテナンス」
「専門業者に任せるべき点検」

について、確認しておきましょう。

自分でできるもの

自分でもできる日常点検(目視点検)

目視で行う日常点検は、自分でも行うことが出来ます。

日常点検と電気点検

発電量のチェックや目視のみの「日常点検」は自分でも行うことができますが
電気系統を触る「電気点検」は、危険ですので専門業者に任せましょう

日常点検のチェック項目

下記は一例ですが、目で見て確認できる目視点検が中心になります。

・太陽光パネルの周囲に、影になるようなものは無いか?
・ 接続箱 に、汚れや腐食は無いか?
・ 接続箱 隔離距離は十分に取れているか?
・ パワコン の外箱に腐食や破損は無いか?
・ パワコン の動作音がおかしくないか?
・ パワコン にエラーメッセージは出ていないか?

参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月改定版)より抜粋

自然災害時にも確認

これらは特に、台風や地震、豪雨など前後にも行い、異常が起こる前に確認しておくと良いでしょう。

異常があった時には業者に相談
「パネルに割れが見つかった」
「PCS(パワコン)に異常を示すランプが点灯している」

このような異常が見つかった際には、自分で解決しようとせず
専門の業者に診てもらいましょう。

作業に危険が伴ったり、より状態を悪化させてしまう危険性もありますので
専門家に頼った方が賢明です。

草刈り

草刈りに関しても、自分でやる方が多いメンテナンス項目です。
点検は業者に依頼して、草刈りは自分でやるという方も多くいらっしゃいます。

但し、電気系統に近い箇所は危険であり、
また配線などを誤って切ってしまうこともありますので
専門の業者に依頼したほうが安全ではあります。

自分ではできないもの

対して、自分ではできないものも確認しておきましょう。

電気点検や電気系統を触る作業

こちらは前述の通り、専門業者に依頼しましょう。
「電気点検や電気系統を触る作業」は、定期点検の大半を占める部分になりますので
やはりメンテナンスの大半は、専門業者に依頼することになると言えます。

ソーラーパネルの洗浄

こちらは意外ですが、ソーラーパネルの洗浄も自分ではやらない方が賢明です。

パネルの水道水での洗浄はNG

実は、パネルの洗浄は水道水で行うとカルキや水垢が残ってしまい、
かえって悪影響を及ぼす可能性があります。

「自分でやる」デメリット

このように、自分でやることができるメンテナンスもあります。
メリットは明らかに「費用が抑えられる」点ですが、

デメリットも多くありますので、予め確認しておきましょう。

1.感電のリスク

電気の専門家ではない方が発電所に立ち入る場合、感電などの危険が伴います。

太陽光発電所は当たり前ですが発電所です。
感電などのリスクがあることを忘れてはいけません。

2.屋根に登る危険

住宅用の場合、屋根に登る危険もあります。
不慣れな方が屋根の上に登って作業すると、転落などの危険があります。

3.破損のリスク

専門家ではない方が不用意に機器などを触った際に
故障や破損などのリスクがあります。

スポット点検という手段も

「自分でメンテナンスを行っている」
「メンテナンスはきちんとやれていない」

という方には「スポット点検」という選択肢もあります。

現状の発電所の状態を把握するためにも、不安な方は一度行ってみると良いでしょう。

メンテナンスの内容

それでは、太陽光メンテナンスは具体的にどのようなことをやるのでしょうか?
太陽光メンテナンスで一般的に行われている内容を簡単にご紹介します。

目視点検と精密点検

一般的に、太陽光発電のメンテナンスは「目視点検」と「精密点検」に分類されます。

目視点検

目視点検とは、発電所を目で見て確認する点検です。

・ボルト等のゆるみや錆が無いか?
・ソーラーパネルに破損や汚れは無いか?
・雑草が茂って影になっていないか?

等、目視で確認できる点検です。
 
前述のように、この中には自分でできるものもありますので、目視点検を自分で行う場合には、専門業者に内容を確認しておくと良いでしょう。

精密点検

目視点検に対して、専用の機器を使った電気点検などを行うのが「精密点検」です。

上記は一例ですが、専用機器を使用して、サーモグラフィで異常が無いか確認したり
発電所に電気を流すなどして、正常に発電出来ているか?
どこかで送電が止まっていないか?などを確認します。

ソーラーパネルやパワコン、配線の不具合には
「目視で確認しても分からない」ものも多いため、こうした専用機器で検査する必要があります。

遠隔監視

上記の点検とは少し離れるのですが「遠隔監視」もメンテナンスにおいて重要です。
「発電所の発電状況などに異常が無いか」日々監視してもらえるサービスです。

太陽光発電の不具合は、早い段階で見つけなければ
「発電停止」や「発電量低下」に請求書を見るまで気が付かないといった大きなロスを生んでしまう危険性もあります。

そのため、異常を早めに察知する体制づくりが重要になってきます。

参考:半年間の停電に気が付かなかった事例

遠隔監視は自分でできる?
 
発電所に遠隔監視システムを導入しておけば、
遠隔監視を自分で行うこともできます。
 
ただし、何らかのアラートが出た際に「現地で確認する必要があるのかどうか」
自分で判断するのが難しく、
 
業者に点検を依頼する判断が難しいといった面もあります。

駆けつけ

遠隔監視とセットでよくあるサービスが「駆けつけ」です。
遠隔監視などで異常が見つかった際に、現場に駆けつけて原因を確認してもらうサービスです。

定期的に行うべき作業

点検以外にも、発電量への影響も大きく、定期的に行っておくべき作業があります。

草刈り

草刈りを定期的に行わないと、影を作ってしまって発電量に影響を与えたり、近隣トラブルの原因になるケースもあります。

草刈りが充分にできていない為、発電所の細部に立ち入れなくなり、目視点検や精密点検の妨げになるケースもあります。

草刈りを自分でやる場合には、点検のタイミングに合わせて行う必要も出てきます。

パネル洗浄

ソーラーパネルの汚れは、発電低下だけでなく
「ホットスポット」などの故障の原因にもなりますので、定期的に行っておく必要があります。

ホットスポットとは?

鳥の糞などの汚れがパネルに付着して影ができてしまった場合などに、その箇所が発熱する現象です。
下の画像のように、汚れた箇所が熱を持ってしまいます。




「ホットスポット」ができてしまうと、セルが破損する可能性もあります。

詳しくはこちら「様々な落とし物…」

「定期点検」と「スポット点検」

メンテナンスを行う頻度や契約による分け方として

ここまでご紹介してきた、目視点検や精密点検等を
年間契約で行う「定期点検」とスポット的に行う「スポット点検」があります。

定期点検

定期点検とは、年間契約などで「目視点検」や「精密点検」などを決めた回数行ったり
「遠隔監視」などを行う「契約プラン」です。

定期的に点検を行うため、不具合を早めに察知することができます。

スポット点検

対してスポット点検は、年間契約ではなくスポット的に行う点検です。

原因の分からない不具合で発電量が下がっている場合の原因究明や
セカンドオピニオンとしての確認などにも活用できます。

定期点検の年間契約を依頼する業者選びのために
お試しで依頼して精度などを確認する目的で行う場合もあります。

近年の太陽光発電所に多い不具合

次に、太陽光発電メンテナンスで発見された不具合の近年の傾向をご紹介します。

上記は、企業省エネの教科書を運営している株式会社エネテクのメンテナンスサービス「ソラパト」による点検で見つかった不具合の2022年度の集計結果です。

クラスタ断線

上記のグラフの中でも最も多い不具合が「クラスタ断線」です。

これは近年に限らず、以前から太陽光発電所の不具合の中でも最も多い傾向があります。

原因はソーラーパネル内のハンダなどの不良による断線なのですが、メーカーの初期不良であることも多く、メーカー保証の対象になることも多い不具合です。

目視などでは発見できないため、写真のようにIR検査によるサーモグラフィ検査で見つける必要があります。(白くなっている箇所がクラスタ断線の該当箇所です)

経年劣化による不具合

近年増加傾向にあるのが「経年劣化による不具合」です。
上記グラフ中の「パテの劣化・脱落」や「PCS(パワコン)故障」などを中心に
近年増えています。

FIT 開始から10年以上経ち、太陽光発電所の経年劣化も進んでいますので
導入から年数の経っている発電所は特に点検が必要になります。

パワコンの故障

パワコンのメーカー保証期間は、およそ12~13年となっているため
期限に近づいてきたパワコンの不具合が増えてきています。

接地線の不備

初期の施工不良として多いのが、接地線(アース)が無かったり、正しく施工されていないケースです。

接地されていないと漏電時に漏電遮断器が適切に動作しなかったり、機器に不具合が生じます。


配線たるみ

配線の留め具の付け方が甘い、または留め具の経年劣化によって取れてしまい
配線がたるんでぶら下がっている状態になっていることがあります。

この状態で、動物などが通って引っ掛かってしまうと
断線などの原因になってしまいます。

固定金具・架台ボルトのゆるみ

初期の施工で取り付けが甘かったり、経年が理由で固定金具・架台ボルトがゆるむことがあります。

その状態で台風などの強風に晒されると、重大な事故にも繋がりかねません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
太陽光発電所のメンテナンスについて、
内容や費用感など、概要をお分かり頂けたのではないかと思います。

メンテナンスは「発電の低下防止」や「修繕費用の削減」の為にも重要です。

最新のガイドラインでは、
「義務化のためにこれだけやっておけばいい」という内容にもなっていないので
ご自身の発電所の状況に合わせたメンテナンス内容や頻度を決めて行いましょう。

また、頻度や内容の判断など
専門業者に頼るべき項目が多く、
専門業者に依頼しなければできないことも多くなっています。

まずは信頼できるメンテナンス業者を見つけ、
所有している発電所の状況なども伝えて、相談してみると良いでしょう。