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【2023年最新】太陽光発電メンテナンスの必要性と費用相場

※2023年5月08日 最新情報に更新しました。

太陽光発電所を所有されている、またはこれから導入するみなさまは
メンテナンスについて、下記のような疑問をお持ちではないでしょうか?

「メンテナンスってやる必要あるの?」
「やってないとどうなるの?」
「費用はどれくらいかかるの?」
「自分でできないだろうか?」

本記事では、こうした太陽光メンテナンスに関する疑問の答えを
ひとつひとつ解説して行きます。

本記事の内容をお読みいただければ、太陽光発電のメンテナンスについて
おおよその知識は得られるようになるかと思います。

ぜひ、お持ちの発電所のメンテナンスの参考にしてください。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



太陽光発電のメンテナンスの必要性

太陽光発電のメンテナンスにおいて「まず最初に気になる疑問」が、

「メンテナンスってやる必要あるの?」

という点ではないでしょうか?

太陽光発電のメンテナンスは、主に下記3つの理由から
やっておく必要があります。

1.法律で義務化されているから
2.故障や発電量低下を防ぐため
3.他者に損害を与えてしまうリスクを防ぐため

順番に解説して行きます。

1.法律で義務化されているから

まずひとつめの理由が「法律で義務化されているから」という理由です。
正確には、非FIT の50kW未満以外の太陽光発電所は、メンテナンスが義務化されています。

「電気事業法」と「改正FIT法」で義務化されている

太陽光発電のメンテナンスは、
下図のように「電気事業法」と「改正FIT法」で義務化されています。

参照:改正FIT法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)
参照:電気事業法

やっていないとどうなるの?

義務化の対象になっている太陽光発電所のメンテナンスを行っていない場合、
「認定取消」などの措置を受ける可能性もあります。

義務化の内容は?

「義務化されているメンテナンス」の内容は、
「一般社団法人 日本電機工業会」と「JPEA(太陽光発電協会)」が発行している
太陽光発電システム保守点検ガイドライン」を参照します。

参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月改定版)

どんな内容?

読んで頂ければ分かりますが、
どんな発電所も一律に、こんな内容をやっていれば良い」といった内容では無く

「発電所の環境や設備内容に応じて、必要なメンテナンスが異なる」

といった内容になっています。
またその判断も「専門業者でなければ難しい」内容になっており、
「この程度やっておけば義務化の要件を満たしている」という簡単なものでもありません。

所有されている発電所の現状のメンテナンスが、義務化されている内容に対応できているかどうかは
一度、専門の業者に確認してみると良いでしょう。

2.故障や発電量低下を防ぐため

ふたつめの理由は「故障や発電量低下を防ぐため」です。

故障による修理費用の「支出」や、発電量低下による「利益減少」は
太陽光発電を行う上での「損失」になってしまいます。

そうした損失を防ぐためにも、メンテナンスを定期的に行っておくことが重要です。

具体的にどのような故障や不具合が多いのかは、後半に詳しく解説します。

3.他者に損害を与えてしまうリスクを防ぐため

太陽光発電所の不具合で、もうひとつ注意しておかなければならないのが
「第三者に損害を与えてしまうリスク」です。

例)メンテナンスを充分にしておらず、
ソーラーパネルを留めていたボルトが緩んでおり、
強風で飛ばされたパネルが、歩行者に当たり、怪我を負わせてしまった。

例えば、上記のような大きな問題を起こしてしまうリスクです。

メンテナンスを行わないことで、自分たちへの損害だけでなく
「第三者に損害を与えてしまう」可能性もあることも考えておかなければいけません。

自分でできないの?

太陽光発電のメンテナンスは「自分でやれば費用を削減できる」可能性があります。

専門業者でなければできない点検もありますが、
「自分でもできそうなメンテナンス」についても確認してみましょう。

自分でできるもの

自分でもできる日常点検

目視で行う日常点検は、自分でも行うことが出来ます。

日常点検と電気点検

発電量のチェックや目視のみの「日常点検」は自分でも行うことができますが
電気系統を触る「電気点検」は、危険ですので専門業者に任せましょう

日常点検のチェック項目

下記は一例ですが、目で見て確認できる目視点検が中心になります。

・太陽光パネルの周囲に、影になるようなものは無いか?
・ 接続箱 に、汚れや腐食は無いか?
・ 接続箱 隔離距離は十分に取れているか?
・ パワコン の外箱に腐食や破損は無いか?
・ パワコン の動作音がおかしくないか?
・ パワコン にエラーメッセージは出ていないか?

参照:太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2019年12月改定版)より抜粋

自然災害時にも確認

これらは特に、台風や地震、豪雨など前後にも行い、異常が起こる前に確認しておくと良いでしょう。

異常があった時には業者に相談
「パネルに割れが見つかった」
「PCS(パワコン)に異常を示すランプが点灯している」

このような異常が見つかった際には、自分で解決しようとせず
専門の業者に診てもらいましょう。

作業に危険が伴ったり、より状態を悪化させてしまう危険性もありますので
専門家に頼った方が賢明です。

草刈り

草刈りに関しても、自分でやる方が多いメンテナンス項目です。
点検は業者に依頼して、草刈りは自分でやるという方も多くいらっしゃいます。

但し、電気系統に近い箇所は危険であり、
また配線などを誤って切ってしまうこともありますので
専門の業者に依頼したほうが安全ではあります。

自分ではできないもの

対して、自分ではできないものも確認しておきましょう。

電気点検や電気系統を触る作業

こちらは前述の通り、専門業者に依頼しましょう。
「電気点検や電気系統を触る作業」は、定期点検の大半を占める部分になりますので
やはりメンテナンスの大半は、専門業者に依頼することになると言えます。

ソーラーパネルの洗浄

こちらは意外ですが、ソーラーパネルの洗浄も自分ではやらない方が賢明です。

パネルの水道水での洗浄はNG

実は、パネルの洗浄は水道水で行うとカルキや水垢が残ってしまい、
かえって悪影響を及ぼす可能性があります。

「自分でやる」デメリット

このように、自分でやることができるメンテナンスもあります。
メリットは明らかに「費用が抑えられる」点ですが、

デメリットも多くありますので、予め確認しておきましょう。

1.感電のリスク

電気の専門家ではない方が発電所に立ち入る場合、感電などの危険が伴います。

太陽光発電所は当たり前ですが発電所です。
感電などのリスクがあることを忘れてはいけません。

2.屋根に登る危険

住宅用の場合、屋根に登る危険もあります。
不慣れな方が屋根の上に登って作業すると、転落などの危険があります。

3.破損のリスク

専門家ではない方が不用意に機器などを触った際に
故障や破損などのリスクがあります。

スポット点検という手段も

「自分でメンテナンスを行っている」
「メンテナンスはきちんとやれていない」

という方には「スポット点検」という選択肢もあります。

現状の発電所の状態を把握するためにも、不安な方は一度行ってみると良いでしょう。

メンテナンスの内容

それでは、太陽光メンテナンスは具体的にどのようなことをやるのでしょうか?
太陽光メンテナンスで一般的に行われている内容を簡単にご紹介します。

目視点検と精密点検

一般的に、太陽光発電のメンテナンスは「目視点検」と「精密点検」に分類されます。

目視点検

目視点検とは、発電所を目で見て確認する点検です。

・ボルト等のゆるみや錆が無いか?
・ソーラーパネルに破損や汚れは無いか?
・雑草が茂って影になっていないか?

等、目視で確認できる点検です。
 
前述のように、この中には自分でできるものもありますので、目視点検を自分で行う場合には、専門業者に内容を確認しておくと良いでしょう。

精密点検

目視点検に対して、専用の機器を使った電気点検などを行うのが「精密点検」です。

上記は一例ですが、専用機器を使用して、サーモグラフィで異常が無いか確認したり
発電所に電気を流すなどして、正常に発電出来ているか?
どこかで送電が止まっていないか?などを確認します。

ソーラーパネルやパワコン、配線の不具合には
「目視で確認しても分からない」ものも多いため、こうした専用機器で検査する必要があります。

遠隔監視

上記の点検とは少し離れるのですが「遠隔監視」もメンテナンスにおいて重要です。
「発電所の発電状況などに異常が無いか」日々監視してもらえるサービスです。

太陽光発電の不具合は、早い段階で見つけなければ
「発電停止」や「発電量低下」に請求書を見るまで気が付かないといった大きなロスを生んでしまう危険性もあります。

そのため、異常を早めに察知する体制づくりが重要になってきます。

参考:半年間の停電に気が付かなかった事例

遠隔監視は自分でできる?
 
発電所に遠隔監視システムを導入しておけば、
遠隔監視を自分で行うこともできます。
 
ただし、何らかのアラートが出た際に「現地で確認する必要があるのかどうか」
自分で判断するのが難しく、
 
業者に点検を依頼する判断が難しいといった面もあります。

駆けつけ

遠隔監視とセットでよくあるサービスが「駆けつけ」です。
遠隔監視などで異常が見つかった際に、現場に駆けつけて原因を確認してもらうサービスです。

定期的に行うべき作業

点検以外にも、発電量への影響も大きく、定期的に行っておくべき作業があります。

草刈り

草刈りを定期的に行わないと、影を作ってしまって発電量に影響を与えたり、近隣トラブルの原因になるケースもあります。

草刈りが充分にできていない為、発電所の細部に立ち入れなくなり、目視点検や精密点検の妨げになるケースもあります。

草刈りを自分でやる場合には、点検のタイミングに合わせて行う必要も出てきます。

パネル洗浄

ソーラーパネルの汚れは、発電低下だけでなく
「ホットスポット」などの故障の原因にもなりますので、定期的に行っておく必要があります。

ホットスポットとは?

鳥の糞などの汚れがパネルに付着して影ができてしまった場合などに、その箇所が発熱する現象です。
下の画像のように、汚れた箇所が熱を持ってしまいます。




「ホットスポット」ができてしまうと、セルが破損する可能性もあります。

詳しくはこちら「様々な落とし物…」

「定期点検」と「スポット点検」

メンテナンスを行う頻度や契約による分け方として

ここまでご紹介してきた、目視点検や精密点検等を
年間契約で行う「定期点検」とスポット的に行う「スポット点検」があります。

定期点検

定期点検とは、年間契約などで「目視点検」や「精密点検」などを決めた回数行ったり
「遠隔監視」などを行う「契約プラン」です。

定期的に点検を行うため、不具合を早めに察知することができます。

スポット点検

対してスポット点検は、年間契約ではなくスポット的に行う点検です。

原因の分からない不具合で発電量が下がっている場合の原因究明や
セカンドオピニオンとしての確認などにも活用できます。

定期点検の年間契約を依頼する業者選びのために
お試しで依頼して精度などを確認する目的で行う場合もあります。

メンテナンス費用の相場は?

続いて気になる点が「メンテナンスの費用」ではないでしょうか。
発電所の規模ごとに、おおよその費用相場をご紹介いたします。

※あくまでおおまかな目安です。実際には業者や内容、頻度によって大きく変わります。

発電所の規模ごとのメンテナンス費用相場

住宅用メンテナンスの費用相場は5万円~10万円

住宅用太陽光のメンテナンスの場合、
「1回5万円~10万円が相場」と言われています。

住宅用の場合には、屋根にソーラーパネルを設置しているケースも多いかと思いますが、
足場を組む必要がある場合には割高になることがあります。

頻度は、改定前のガイドラインに沿って
「4年に1度」の頻度で実施している方が多くなっています。

産業用(50kW未満)メンテナンスの費用相場は年間10万円〜15万円

産業用太陽光(50kW未満)のメンテナンスの場合、
「年間10万円〜15万円が相場」と言われています。

・年に何回点検するか?
・点検内容

によっても差が出てきます。

産業用(50kW以上)メンテナンスの費用相場は年間100万円~200万円/MW

50kW以上の高圧(50kW以上2000kW未満)や特別高圧2000kW以上)になると
「年間で100万円~200万円/MWが相場」と言われています。

例)2MWの高圧の場合
年間:200万円~400万円

近年の太陽光発電所に多い不具合

次に、太陽光発電メンテナンスで発見された不具合の近年の傾向をご紹介します。

上記は、企業省エネの教科書を運営している株式会社エネテクのメンテナンスサービス「ソラパト」による点検で見つかった不具合の2022年度の集計結果です。

クラスタ断線

上記のグラフの中でも最も多い不具合が「クラスタ断線」です。

これは近年に限らず、以前から太陽光発電所の不具合の中でも最も多い傾向があります。

原因はソーラーパネル内のハンダなどの不良による断線なのですが、メーカーの初期不良であることも多く、メーカー保証の対象になることも多い不具合です。

目視などでは発見できないため、写真のようにIR検査によるサーモグラフィ検査で見つける必要があります。(白くなっている箇所がクラスタ断線の該当箇所です)

経年劣化による不具合

近年増加傾向にあるのが「経年劣化による不具合」です。
上記グラフ中の「パテの劣化・脱落」や「PCS(パワコン)故障」などを中心に
近年増えています。

FIT 開始から10年以上経ち、太陽光発電所の経年劣化も進んでいますので
導入から年数の経っている発電所は特に点検が必要になります。

パワコンの故障

パワコンのメーカー保証期間は、およそ12~13年となっているため
期限に近づいてきたパワコンの不具合が増えてきています。

接地線の不備

初期の施工不良として多いのが、接地線(アース)が無かったり、正しく施工されていないケースです。

接地されていないと漏電時に漏電遮断器が適切に動作しなかったり、機器に不具合が生じます。


配線たるみ

配線の留め具の付け方が甘い、または留め具の経年劣化によって取れてしまい
配線がたるんでぶら下がっている状態になっていることがあります。

この状態で、動物などが通って引っ掛かってしまうと
断線などの原因になってしまいます。

固定金具・架台ボルトのゆるみ

初期の施工で取り付けが甘かったり、経年が理由で固定金具・架台ボルトがゆるむことがあります。

その状態で台風などの強風に晒されると、重大な事故にも繋がりかねません。

修理・交換にかかる費用

それでは、不具合が起こってしまった場合には
どれほどの修理・交換費用がかかるのでしょうか?

修理費用を確認しておくと、メンテナンス費用との比較にも役立ちますので
ご参照ください。

パネルの修理・交換費用

メーカーや種類によっても異なりますが、

1枚当たり10万円~15万円ほど

の交換費用がかかります。

PCS(パワコン)の修理・交換費用

修理・交換が必要になった場合
10万円~40万円ほど
※工事費込みの費用です。
部品交換のみの場合
5万円~10万円ほど
※工事費込みの費用です。

故障の程度や交換すべき部品にもよりますが、
おおよその目安としては上記のような費用感で考えておくといいでしょう。

修理費用は軽視できない

このように、太陽光発電システムに故障や不具合が出た場合には、
高額な費用がかかってしまいます。

「修理費用と発電低下」の損失を防ぐためにも

充分なメンテナンスを行っていない場合

「故障による修繕費用」
「発電低下による収益の低下」

などがリスクとして挙げられます。

「義務化されているからやらなければいけない」という観点も大事ですが、
こうした損失を未然に防ぐためにも、メンテナンスは重要になってきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
太陽光発電所のメンテナンスについて、
内容や費用感など、概要をお分かり頂けたのではないかと思います。

メンテナンスは「発電の低下防止」や「修繕費用の削減」の為にも重要です。

最新のガイドラインでは、
「義務化のためにこれだけやっておけばいい」という内容にもなっていないので
ご自身の発電所の状況に合わせたメンテナンス内容や頻度を決めて行いましょう。

また、頻度や内容の判断など
専門業者に頼るべき項目が多く、
専門業者に依頼しなければできないことも多くなっています。

まずは信頼できるメンテナンス業者を見つけ、
所有している発電所の状況なども伝えて、相談してみると良いでしょう。