
※2023年12月01日:最新情報に更新しました。
原油価格高騰やウクライナ情勢などの様々な要因を受けて続いてきた電気料金も
2023年1月をピークに値下がり傾向になり、2023年12月現在は少し落ち着いています。
しかし、2024年1月から大手電力会社5社が値上げすると発表しており、
また2024年5月からは更なる値上げになる見通しです。
この記事では、
・2024年5月からの値上がり
・政府による補助制度「激変緩和措置」とは?
・値上りの始まりからこれまでの電気料金の推移
・電気料金値上がりの要因
・電気料金値上がりに対する「企業の対応策」
などについて、図やグラフを交えて、2023年12月時点の最新情報をわかりやすく解説していきます。
本記事をお読みいただければ、電気料金の値上がりに関する情報はひと通り網羅できるかと思います。
御社の「電気料金値上がり対策」のお役に立てれば幸いです。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。
目次
2024年は電気料金の値上がりに注意
冒頭でも少し触れましたが、
2024年1月および5月には電気料金が値上がりになる見通しです。
2024年1月からの電気料金の値上がり
2023年11月29日に、大手電力会社各社が2024年1月の電気料金を発表しました。
大手電力会社10社のうち5社(東京電力、北海道電力、中部電力、九州電力、沖縄電力)
が「値上げ」になります。
値上げ幅
2023年12月と比べて、月額2円~24円の値上げ幅になります。
値上がりの原因
値上りの主な要因は、下記の2つです。
・円安による燃料の輸入価格の値上がり
日本の電気においては、天然ガスによる火力発電の比率が最も高く
天然ガスの価格は電気料金に直結します。
また、2023年夏から円安も進んでおり、燃料の輸入価格上昇にもつながっています。
北陸電力、中国電力は値下がり
北陸電力と中国電力は、石炭を燃料とした火力発電が比較的多く
石炭は天然ガスと異なり「値下がり」しているため
北陸電力、中国電力の電気料金は値下がりしています。
さらに2024年5月にも値上りの可能性も
さらに、2024年5月には「大手電力会社10社全社」で電気料金が値上がりする見通しです。
これは、政府による電気料金の補助政策「激変緩和措置」が終了することが要因です。
※激変緩和措置 については、次章で詳しく解説します。
2024年は電気料金の値上がりに注意
2023年は1月がピークで、それ以降は電気料金の値下がりが続いていましたが、
ここへ来て2024年1月、そして5月にもはまた値上がりする見通しとなっています。
2024年も電気料金の推移には注意が必要であり、
企業としても対策を考えておく必要があると言えます。
政府による補助制度「激変緩和措置」
2024年の電気料金には、政府の補助政策「激変緩和措置の終了」が大きく関わってきます。
この「激変緩和措置」とはどのような制度なのか解説していきます。
「激変緩和措置」とは?
激変緩和措置 とは、1kwhあたり定められた金額が
燃料調整額 から値引きされる、政府による補助制度です。
発電の燃料費に応じて、電気料金を調整する数値で、
電気料金の目安にすることもできます。
(火力発電などで使用される燃料費などが該当します)
燃料調整額 は、燃料の価格変動に応じて、電気料金に反映され
プラスだけでなく、燃料費が安い時期にはマイナスにもなります。
燃料費の価格変動の3~5カ月後に、電気料金に反映されます。
2023年1月使用分~2023年9月使用分
激変緩和措置 は、開始当初は「2023年1月使用分~2023年9月使用分」での実施予定でした。
その内、2023年1月使用分~2023年8月使用分までは、下記のような値引き幅で行われていました。
高圧:「3.5円/kWh分」
※特別高圧は、補助の対象外になっています。
最終月の9月使用分は、上記の半額の値引き幅でした。
→9月使用分は「3.5円/kWh分」に半減
高圧:「3.5円/kWh分」を燃料調整額から値引き
→9月使用分は「1.8円/kWh分」に半減
「激変緩和措置」が2024年4月まで延長決定
そして、2023年10月には、9月使用分までで終了予定だった「激変緩和措置」は
2024年1月使用分まで延長されることになり、さらにのちに4月使用分まで延長されることになりました。
ただし、延長となった10月使用分から来年4月使用分までの値引き率は、9月使用分と同じ
(8月使用分までの補助の半分)になります。
→延長期間は「3.5円/kWh分」に半減
高圧:「3.5円/kWh分」を燃料調整額から値引き
→延長期間は「1.8円/kWh分」に半減
2023年10月使用分~2024年4月使用分までの値引き率
延長も含めて、激変緩和措置の補助額をまとめると、下記のようになります。
補助が継続することになったのは良かったのですが、
補助額は半分になっていますので、
9月使用分の電気料金よりは割高になっている点には注意が必要です。
2024年5月使用分から値上がり
このように「激変緩和措置」が2023年4月使用分までで終了するため、
2023年5月使用分から電気料金が値上がりになる見通しになっているのです。
これまでの電気料金の推移
まず、最新情報として「2024年の電気料金の見通し」について解説いたしました。
続いて、値上がりが始まった当初からの電気料金の推移から
より掘り下げた内容を解説していきます。
今後の対策のためにも把握しておきましょう。
電気料金の推移は、このふたつに分けてご紹介して行きます。
・燃料調整額 の推移(2021年03月~2023年12月)
2023年12月現在「電気料金(電力市場の平均販売単価)」は2023年08月までの情報が公開されています。
しかしながら、2023年08月以降の電気料金(平均単価)が公開されていない直近期間も「燃料調整額」から値上がりの傾向を参照することが出来ます。
電気料金の推移(2023年08月まで)
まず、2023年08月までの電気料金の推移を「低圧」「高圧」「特別高圧」それぞれご紹介します。
(対象は日本全国で、電力市場の平均販売単価の推移になります)
低圧には「従量電灯」と「低圧電力」の2種類の電気料金があります。
「従量電灯」
「使用した電気量によって毎月の電気料金が決まる電気料金プラン」のことです。
一般家庭で使用される家電製品など、電力をあまり使用しない機器に対して使われています。
「低圧電力」
「従量電灯よりも多くの電気を使用する、業務用機器向けの電力プラン」です。
業務用の使用電力が大きい機器(エレベーターや業務用エアコンなど)に使用されます。
三相式200Vを使用し、コンセントの形状も異なるため一般的な家電を使用することはできません。
法人はどちらを使う?
法人の場合には、このどちらかを契約している場合もあり、
また両方を契約しているというケースもあります。
「低圧(従量電灯)」の電気料金の推移
まずは家庭で使用する電気料金と同じ「低圧(従量電灯)」から見て行きましょう。
電気料金(平均単価)の推移
低圧(従量電灯)の推移を見て行きましょう。
グラフを見て頂ければ分かる通り、電気料金は2021年から値上がりし続いていましたが
「2023年2月に急激に値下がりしている」事が分かります。
2月から値下がりした要因
2月からは、前章で解説した政府の「激変緩和措置」によって大きく値下がりしています。
前年比の推移
では、上グラフを前年比の推移で見てみましょう。
図を見て頂くとお分かりの通り、
昨年比でみても、2022年12月まではどんどん値上がりが続き、130%台まで上がりましたが
2023年2月から下がり始め、4月には、昨年比100%を切り始め、
その後も下がり続けていることが分かります。
高騰前の価格水準にまでは下がっていませんが、昨年よりは値下がりしていることが分かります。
「低圧(低圧電力)」の電気料金の推移
続いて、業務用機器向けの電力プランである「低圧(低圧電力)」の推移も見て行きましょう。
電気料金(平均単価)の推移
低圧(従量電灯)と比べると月ごとのアップダウンは大きくなりますが、
傾向として値上がりし続け、2月から値下がりしていることが分かります。
値下がりの原因としては、低圧(従量電灯)と同じく、
政府の政策による影響が大きいと言えます。
前年比の推移
特に低圧(低圧電力)は、月ごとのアップダウンが大きいので、前年比の推移で見たほうが傾向が分かりやすいかと思います。
図を見て頂くとお分かりの通り、低圧(従量電灯)と同様に
昨年比でみても、どんどん値上がりが続き、130%台まで上がりましたが
2023年2月から下がり始め、5月には昨年比も100%以下になっており、昨年よりは値下がりしていることが分かります。
「高圧」の電気料金の推移
続いて、高圧の電気料金の推移を見て行きましょう。
電気料金(平均単価)の推移
高圧も低圧と同様に、2023年1月まで値上がりが続いていますが
2023年2月からは値下がりしています。
ただし、値下がり幅は低圧ほど大きくはありません。
これは前述したように、政府による補助の金額が、高圧は低圧に比べて安いことが要因です。
(低圧は7円/kWh、高圧は3.5円/kWhの補助額)
前年比の推移
高圧でも、昨年比の推移を見て行きましょう。
高圧も低圧同様に、2023年2月から前年比も下がっていますが、
電気料金の推移同様に値下げ幅は低圧ほどではなく、1月時点での前年比も170%を超えていましたが
8月に入り、昨年比100%を割り、昨年より安くなっていることが分かります。
「特別高圧」の電気料金の推移
次に、特別高圧の電気料金の推移を見て行きましょう。
電気料金(平均単価)の推移
特別高圧は、政府の補助政策の対象外であるため、大きく値下がりはしていませんが、
天然ガスや石炭の値下がりにより、値下がり傾向にはあります。
前年比の推移
続いて、昨年比の推移も見て行きましょう。
電気料金の推移では少し値上りしていましたが、昨年比は2023年2月から少し下がっています。
とはいえ、8月時点でもまだ111%と、昨年より高い水準になっています。
燃料調整額の推移
それでは次に、電気料金の平均単価がまだ公表されていない「2023年09月以降の値上がり状況」を
「燃料調整額」から見て行きましょう。
「燃料調整額」と「電気料金」
一般的な電気料金は、下記のような式で計算されています。
このように「燃料調整額」は電気料金を決めるために必要な数値であり
「燃料費が高騰」し「燃料調整額」が上がると、電気料金も値上がりします。
つまり、燃料調整額 の推移から、電気料金の推移を想定することが出来るのです。
燃料調整額の推移(2021年3月~2023年12月)
それでは、実際に最近の東京電力の 燃料調整額 の推移を
「低圧(規制料金)」「低圧(自由料金)」「高圧」「特別高圧」それぞれ
見て行きましょう。
「低圧(規制料金)」の燃料調整額の推移
低圧(規制料金)の燃料調整額の推移の特徴
低圧(規制料金)の 燃料調整額 の推移には、以下の4つの特徴があります。
2. 2023年2月に急激に値下がりしている
3. 2023年6月に急激に値下がりしている
4. 2023年10月に値上がりしている
1. 2022年9月以降は横ばいで推移している
低圧(規制料金)の 燃料調整額 は、2021年から上がり続けていますが、
2022年9月以降は横ばいで推移しており、それ以上高騰していません。
低圧(規制料金)の 燃料調整額 には上限が設けられており、それ以上上がらない制度になっているため
上限到達以降は、グラフのような推移になっています。
2. 2023年2月に急激に値下がりしている
2月に値下がりしているのは、冒頭で解説したように
政府の補助政策「激変緩和措置」が主な要因になっています。
3. 2023年6月から急激に値下がりしている
2023年6月から、燃料調整額が大きく値下がりしています。
これは天然ガスなどの燃料価格が値下がりしたことが大きな要因です。
(天然ガス等の推移については、後ほど詳しく解説します)
4. 2023年10月に値上がりしている
さらに、10月は値上がりしていますが、
これは冒頭に解説したように、政府の「激変緩和措置」の補助額が半額になったことによる
影響が主になっています。
「低圧(自由料金)」の燃料調整額の推移
続いて、低圧(自由料金)の 燃料調整額 の推移を見て行きましょう。
低圧(自由料金)の燃料調整額の推移の特徴
低圧(自由料金)の 燃料調整額 の推移には、以下の4つの特徴があります。
2. 2023年2月に急激に値下がりしている
3. 2023年7月にさらに急激に値下がりしている
4. 2023年10月に値上がりしている
1. 2022年9月以降も高騰が続いている
低圧(自由料金)の 燃料調整額 は2021年から上がり続け、2022年9月より後も高騰が続いています。
自由料金は、前述の「規制料金」と異なり「上限設定」が無いため、2022年9月以降は規制料金よりも値上がりが大きくなっています。
2. 2023年2月に急激に値下がりしている
こちらは前述の低圧(規制料金)と同様に、
政府が行う政策によって価格が抑えられています。
3. 2023年7月にさらに急激に値下がりしている
規制料金が6月に値下がりしたのと同様に、燃料価格の値下がりに伴って値下がりしています。
4. 2023年10月に値上がりしている
低圧(規制料金)と同じく、激変緩和措置の補助額が半額になった影響で値上りしています。
「高圧」の燃料調整額の推移
続いて「高圧」の 燃料調整額 の推移を見て行きましょう。
高圧の燃料調整額の推移の特徴
高圧の 燃料調整額 の推移には、以下の4つの特徴があります。
2. 2023年2月から値下がりしているが、低圧より緩やか
3. 2023年2月以降も減少
4. 2023年10月に値上がりしている
1. 2022年9月以降も高騰が続いている
高圧にも上限金額は無く、高騰が続いています。
2. 2023年2月から値下がりしているが、低圧より緩やか
電気料金の項でも解説したように、政府の補助によって下がっていますが、
低圧より補助額が低いため、少し緩やかな値下がりになっています。
3. 2023年2月以降も減少
さらに2023年2月以降は、燃料価格の値下がりに伴って値下がりしています。
4. 2023年10月に値上がりしている
高圧も、激変緩和措置の補助額が半額になった影響で値上りしています。
「特別高圧」の燃料調整額の推移
同様に「特別高圧」の 燃料調整額 の推移を見て行きましょう。
特別高圧の燃料調整額の推移の特徴
特別高圧の 燃料調整額 の推移には、以下の2つの特徴があります。
2. 2023年3月以降は減少
3. 2023年10月は変化なし
1. 2022年9月以降も高騰が続いている
特別高圧も上限金額は無く、高騰が続いています。
2. 2023年3月以降は減少
特別高圧は政府の補助政策の対象外ですので、大きな値下がりにはなっていませんが
燃料価格が値下がりしている為、値下がりが続いています。
3. 2023年10月は変化なし
低圧、高圧は10月に値上がりしていましたが、特別高圧は特に変化はありません。
これは、特別高圧は元々激変緩和措置の対象外であり、特に影響を受けない為です。
電気料金が上下する「3つの要因」
ここまで、電気料金の推移として、燃料調整額 の推移も含めて解説してきましたが、
そもそも近年の電気料金の値上がりは、何が原因で起こっているのでしょうか?
より掘り下げて電気料金が上下する「3つの要因」について解説していきます。
近年、電気料金が上下する要因は、主に下記の3つであると言われています。
順番に解説していきます。
1.天然ガス(LNG)と石炭の価格変動
まずひとつめの要因が「天然ガス(LNG)と石炭の価格変動」です。
天然ガス(LNG)と石炭の「価格推移」
初めに、天然ガス(LNG)と石炭の価格がどのように推移しているか見てみましょう。
天然ガス(LNG)価格の推移
出典:一般社団法人エネルギ―情報センター「天然ガス価格の推移」
天然ガス(LNG)の価格は、上下しながら高騰し続け、
2021年4月と2022年10月を比較すると「3倍近く」の価格に高騰しています。
2022年11月から値下がり
また、グラフを見ると2022年11月から値下がりし続け、
2023年6月には、2年前の高騰直後くらいの水準に落ち着いています。
天然ガスの価格は、2022年後半と比較しても、2023年12月時点ではかなり落ち着いてきていると言えます。
2024年1月から値上がり?
2023年12月1日現在では、2024年1月の天然ガスの価格が公開されていませんが
冒頭で解説したように、2024年1月から天然ガスの値上がりにより
電気料金が上がると報道されています。
天然ガス(LNG)の価格は、3ヶ月分の原油価格をベースに変動するしくみになっています。
つまり、原油価格の上下は、そのまま天然ガス(LNG)の価格の上下に直結します。
ここでは原油価格の推移まではご紹介しませんが、
「原油価格が変動した」際には、同時に天然ガス(LNG)の価格も変動し
さらに火力発電の燃料として使用されているため、電気料金も変動するのです。
石炭価格の推移
石炭価格も、2021年12月以降値上がりが続いていますが、
2022年11月以降は、天然ガス以上に大きく値下がりの傾向にあります。
このように、天然ガス(LNG)も石炭も価格変動しており、
前述した電気料金や 燃料調整額 の推移にも影響していることがお分かりいただけるかと思います。
「天然ガスと石炭の価格」がなぜ「電気料金」に影響する?
日本の電源構成における割合が非常に高い
天然ガス(LNG)や石炭の価格高騰が、なぜここまで電気料金の値上がりに直結するのでしょうか。
それは、
からなのです。
日本の電源構成
日本の電源構成は、下記のような比率になっています。
出典:資源エネルギー庁「時系列表(令和4年4月15日公表)」
このように「日本の電力の76.3%は火力発電で賄われています」
火力発電の燃料別比率
さらに火力発電を燃料別に見て行くと、
「天然ガス(LNG)が51.1%」「石炭が40.6%」を占めているのが分かります。
「天然ガスと石炭」は、日本の電源構成全体の「70%」を占める
さらに、電源構成全体を燃料別に見てみると、左図のような構成になります。
天然ガスと石炭の占める割合は、右図のように
日本の電源構成全体の「70%」を占めています。
日本で電気を創る燃料の70%が値上がりしているため、電気料金への影響は大きいのです。
天然ガス(LNG)と石炭の「価格変動の原因」
2021年から続く天然ガス(LNG)と石炭の価格高騰は、主に下記3つが原因と言われています。
またその反対に、2022年11月からの値下がりの原因は下記と言われています。
順番に解説していきます。
価格高騰の原因
[原因1] ウクライナ情勢による影響
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、アメリカやEUが経済制裁を実施しています。
ロシアからの天然ガスや原油、石炭の輸入を制限する、
またはロシアが輸出を制限する動きが生まれてきています。
ロシアの化石燃料のシェアは非常に大きい
化石燃料の産出国というと、中東をイメージする方が多いかもしれませんが、
実はロシアが占める割合もとても大きくなっています。
ロシアは、下のグラフのように
天然ガスの輸出額が1位、石炭の輸出額3位、石油の輸出額2位と
化石燃料の輸出額で上位を占めており、またシェアも大きいことが分かります。
こうした化石燃料の輸出国としてのシェアが大きいロシアの天然ガスや原油、石炭の輸出が制限されることで、価格高騰の大きな原因になっています。
原因2.脱炭素社会の影響で「天然ガス(LNG)の需要が増加」
天然ガス(LNG)の大きな特徴の一つは「CO2排出量が他の化石燃料より少ない」点です。
全世界的に進められている脱炭素社会への流れから、
従来の石炭や石油から、CO2排出量の少ない天然ガス(LNG)に切り替える流れが
特に中国を中心に進んでおり、天然ガス(LNG)の需要が増加し、価格高騰の一因になっています。
原因3.円安の影響
天然ガス(LNG)や石炭価格の高騰は、円安による影響も受けています。
ただし、2022年10月をピークとして、11月以降は少し落ち着いていましたが
2023年6月からまた円安に大きく傾いています。
為替の面から言えば、2021年初期と比較して「約1.5倍」まで上向いていますので
天然ガスや石炭の輸入においては、いまだに大きな影響があると言えます。
値下がりの原因
[原因] 暖冬による燃料需要の低下
2022年は、ヨーロッパやアメリカが暖冬であったため、
11月頃から、天然ガスと石炭の需要が減り、値下がりにつながっています。
燃料調整額 は、燃料費の価格変動の3~5カ月後に反映されますので
2022年11月の値下げが、2023年3月以降には 燃料調整額 の値下がりにつながり
電気料金の値下がりにつながっているのです。
このように、複数の要因が重なって、天然ガス(LNG)と石炭が変動しており、
電気料金に大きな影響を与えています。
2.国内の電力供給力不足
続いて、価格高騰の原因となっているのが「国内の電力供給不足」です。
国内の電力供給量を見てみると、
2010年と比較して2020年には「12.9%」も減少していることが分かります。
出典:資源エネルギー庁「集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)」を元に作成
それでは「国内の電力供給不足」の原因を見て行きましょう。
原因1.原発停止による影響
前述の国内供給量のグラフから、原子力発電の供給量の推移を抜き出したものが下記のグラフです。
図のように、2011年の東日本大震災を契機に、原発は停止が続いており、
再稼働している発電所もありますが、2010年と比較すると「86.5%」減少しています。
また、2010年の全体に占める原子力発電の割合は「25%」に上っていました。
実に全体の4分の1を占めていた原子力発電の大半が無くなったため、全体の供給量にも大きな影響を与えているのです。
原因2.火力発電の縮小
規模が縮小しているのは原子力発電だけではありません。
火力発電も規模を縮小しています。
図のように、最も高かった2013年と比較して、2020年には「19.8%」減少しています。
2010年から2013年にかけては増加していますが、
これは前項で解説した原子力発電の減少を補うために火力発電の稼働を増やした結果です。
しかしながら、原子力発電が減少しているにもかかわらず、
2013年以降は右肩下がりに火力発電の供給量が減少しています。
古い火力発電所の休廃止
2016年の 電力自由化 によって、電気料金の競争が激しくなったことから、
大手電力会社が採算性の悪い「老朽化した火力発電所」の休廃止を進めたことが、
火力発電減少の要因のひとつです。
再エネの導入拡大
また、火力発電は、燃料を燃焼して発電するため「CO2排出量が多い」点が大きなデメリットです。
「CO2削減」に向けて、CO2を排出しない「再エネの導入拡大」が進んだことも
火力発電減少の要因のひとつです。
再エネは天候や気候にも左右され、安定した電力供給ができないというデメリットがあります。
その悪天候時などの供給不足は、従来は火力発電が補っていましたが
相次ぐ火力発電所の休廃止によって補いきれなくなって来ています。
供給不足から価格上昇に
このように、原子力発電と火力発電が減少し、再エネ発電は増加していますが
最初にご紹介したように、全体の電力供給は不足しています。
供給量に余裕があれば、電気料金も値下がりにつながりますが
供給量もひっ迫している為、
電力需要が上がると 日本卸電力取引所(JEPX)に流通する電気が減り、価格上昇に繋がるのです。
3.再エネ賦課金の価格変動
3つ目の要因が「再エネ賦課金 の価格変動」です。
再エネ賦課金とは?
CO2削減や、発電に必要な燃料の輸入依存の解消のため、政府は「再エネ普及」を目指してきました。
再エネ普及のために、太陽光発電などで創った電気を「優遇された価格」で買い取る
FIT(固定価格買取制度)が実施されます。
この「優遇された価格」と「一般的な電気料金」の差額を
電気利用者が「再エネ賦課金」として電気料金に加えて支払うしくみになっています。
再エネ賦課金の推移
出典:新電力ネット「再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移」を元に作成
2012年~2015年にかけて、FIT(固定価格買取制度)の影響で産業用太陽光発電所が増加し、
2016年以降の 再エネ賦課金 も大きく値上がりすることになりました。
この 再エネ賦課金 の2022年度までの値上がりも、電気料金高騰の一因になっています。
2023年5月から値下がり
しかし、この 再エネ賦課金 も、上記グラフのように
2023年度(5月~)値下がりしました。
再エネ賦課金 は、「優遇された価格」と「一般的な電気料金」の差額で算出されます。
電気料金の高騰により、この差額が少なくなったため
再エネ賦課金 も値下がりすることになったのです。
再エネ賦課金 が大きく下がったことも、電気料金の値下がりに繋がった要因のひとつです。
2024年度の再エネ賦課金はどうなる?
2024年度(2024年5月~2025年4月)の 再エネ賦課金 の金額はまだ分かっていませんが
2023年度は電気料金の値上がりによる一時的な値下がりと考えられますので
「また上がるのではないか」と考えられています。
電気料金値上げへの企業の対応策
ここまで、電気料金の高騰から始まる推移や原因について解説してきました。
冒頭でもお伝えしたように、2024年は電気料金の値上がりが予想されます。
それでは、企業はどのような対策を取れば良いのでしょうか?
企業の電気料金高騰への対応策
企業の電気料金高騰への対応策としては、
大きく分類すると下記のようなものが代表的です。
対応策2. 社内で節電に取り組む
対応策3. 省エネに効果的な設備を導入する
これらの方法は、それぞれについて詳しく解説した記事がありますので
そちらをご紹介しながら、抜粋して効果的な方法をご紹介して行きます。
対応策1. 再エネを導入する
まずひとつめの対応策が「再エネを導入する」ことです。
再エネで自社で電気を創り、それを使用する手法です。
「電気代が高くなるなら、電気を買わない」という方法です。
自家消費型太陽光発電
その再エネ導入の代表的な手法が「自家消費型太陽光発電」です。
自家消費型太陽光発電 とは、自社の屋根などに太陽光発電を設置して、
発電した電気を自社で使用する手法です。
つまり、自社で太陽光発電を使って電気を創るので、発電した分の電気は買う必要が無くなります。
自家消費型太陽光発電 について詳しくは、下記の記事をご参照ください。
補助金制度も活用できる
自家消費型太陽光発電 導入には、ここ数年もさまざまな補助金制度が
国や都道府県、市区町村から出ています。
2023年12月現在、令和4年度補正予算・令和5年度予算の補助金は公募終了しています。
来年度にも同様の内容の補助金の公募が行われるかはわかりませんが、
参考資料として、下記の記事が参考になるかと思います。
こちらに詳しくまとめていますので、よろしければご参照ください。
オンサイトPPA
前述のような 自社所有モデル の 自家消費型太陽光発電 は、自社で発電した分だけ電気を購入する必要が無くなるため、
電気料金削減には効果的な施策ですが「導入コストがかかる」点がデメリットでもあります。
導入コストをかけずに、自家消費型太陽光発電 を導入する手段として「オンサイトPPA」という手段もあります。
オンサイトPPA についても、下記記事に詳しく解説していますので
よろしければご参照ください。
対応策2. 社内で節電に取り組む
コストをかけずに行う省エネ方法としては、
地味ですが「人の手による省エネ」も有効な対応策のひとつです。
空調の「人の手による省エネ」
中でもより効果的な手法が、空調に対する「人の手による省エネ」です。
あらゆる業種において、最も電気使用量が多い傾向にあるのが「空調」でもあり
節電を行う際にも効果的でもあります。
当たり前すぎる施策に見えますが、その効果を具体的な数字にしてみると
「対応策としてあなどれない」ことが分かります。
人の手による空調の省エネの施策と効果一覧
人の手による空調の省エネの施策と、その効果一覧を下記にまとめてみました。
施策 | 省エネ効果の目安 | 頻度等 |
フィルターの清掃 | 冷房時で約4% 暖房時で約6%の省エネ | 2週間に1度が目安 |
室外機の温度環境や障害物の見直し | 室外機の風通しが悪いと電気代は1.5倍に。 | |
熱交換器(フィン)の清掃 | 長期間行わなかった場合に比べて約27%の節電 | ・工場/店舗・・・約3年 ・事務所/オフィス・・・約5年 ・福祉施設/医療施設・・約5年 |
部屋に応じた適正温度の設定 | 室温の目安は「夏期 28℃、冬期20℃」で 1℃最適化するだけで約10%の削減が可能。 | |
冷水出口温度設定値の変更 | 冷水温度を7℃から9℃へ上げると 使用電力は8%削減 | |
外気導入量の削減 | ・オフィスビル・・・節電効果5% ・卸・小売店・・・節電効果8% ・食品スーパー・・・節電効果4% ・医療施設/福祉施設・・・節電効果2% ・製造業・・・節電効果8% | |
残熱利用による運転時間の短縮 | 約6%の省エネ (8時間勤務のオフィスで30分間空調停止した場合) | |
分散起動 | 冬の商業施設で約9%の削減効果 | |
ナイトパージ | 約5%の省エネ (ナイトパージシステム 利用) | |
ブラインド等で遮光する | ブラインド無しの場合と比較して10.6%の省エネ効果 |
こうして具体的な効果を数字で見ると、あなどれない効果があることが分かります。
これらの施策について詳しくは、下記の記事でひとつひとつ解説していますので
よろしければこちらも参考にしてみてください。
対応策3. 省エネに効果的な設備を導入する
続いて有効な施策が「省エネに効果的な設備を導入する」ことです。
空調への省エネ
前項でもご紹介したように、
空調は、あらゆる業種において、最も電力消費量が多いカテゴリになります。
空調機器を最新機種に更新する
「省エネに効果的な機器を導入する」というと
「空調機器を最新機種に更新する」という手段が最も効果は大きいのですが、
大きなコストがかかるという大きなデメリットがあります。
空調機を買い替えずにできる省エネ方法
そこで、空調機器を買い替えずにできる、比較的コストを抑えて行える省エネ施策を
前項でご紹介した「空調の省エネ」の記事から、いくつかご紹介します。
1. 断熱塗装
空調機器そのものではなく、断熱塗装を建物に施すことで
空調機器の負担を下げることができます。室内温度を7℃下げた例もあります。
2. 空調を効かせるエリアを仕切る
ビニールカーテン等で空調を効かせるエリアを絞ることで
空調に使用する電気料金を減らすことができます。
3. エネルギーマネジメントシステムによる空調制御
エネルギーマネジメントシステムを導入することで、外気温などとも調整して空調を制御し
電力消費を効率的にする手法もあります。
4. α-HT(流体攪拌装置)
配管に挿入するだけで、最大30%の省エネ効果が得られる機器として
最近注目されているのが、α-HT(流体攪拌装置)です。
図のように、配管に挿入して冷凍機油を攪拌(かくはん)することで
圧縮機の負担を下げる機器です。
業種ごとの省エネテクニック
ご紹介した内容以外にも、業種ごとの省エネテクニックをまとめた記事もありますので、
よろしければお役立てください。
「電気料金値上がり対策」が「企業の競争力強化」に
電気料金の値上がりは「サービスや商品価格の値上げ」や「利益の減少」に繋がってしまいます。
現在、原材料費の高騰も大きな問題になっていますが、
こちらは、企業単位で具体的な対応を行うのは難しいと言えます。
「電気料金値上がり」は、まだ対応策がある点が救いではあります。
「電気料金値上がり」に対策しておくことは、価格競争力や利益増強など
企業の競争力強化にも繋がるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
2023年現在の電気料金の値上がり状況がご理解頂けたのではないかと思います。
ウクライナ情勢に加え、パレスチナ情勢も不安定になり
エネルギーを取り巻く社会情勢にまた大きな変化が起こる懸念があります。
本記事でご紹介した省エネ手法が、御社の電気料金値上がり対策のお役に立てれば幸いです。