企業向けの省エネ・CO2削減・BCP対策に関する基礎知識や最新情報をお届けする情報サイトです。
「企業省エネ・CO2削減の教科書」とは?
企業の省エネ・CO2削減に向けた攻略情報を「どこよりも詳しく」「わかりやすく」お伝えする情報サイトです。
「用語解説辞書」機能付きで、専門用語もわかりやすくお読みいただけます。省エネに関する基礎知識を身に付ける際にもご活用ください。

【5分でわかる】オフサイトPPAとは?メリット・デメリットと特徴
法人

※2024年5月13日:最新情報に更新しました。

「電気料金の値上り」や「企業に求められる脱炭素への取り組み」を背景に、
「再生可能エネルギーの導入」が近年注目されています。

その手法のひとつがオフサイトPPAです。

この記事では、この「オフサイトPPA」について

1.前半で「5分でわかる」ように簡単に解説し、
2.後半はより詳しく知りたい方向けに、掘り下げた内容を解説

していきます。

オフサイトPPA がどんなものなのか軽く知りたい」方も
「もっとより詳しく知りたい」方にも

お役立ていただけるような内容になっているかと思いますので、

ぜひ本記事をお役立ていただけますと幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



オフサイトPPAとは?

まず、オフサイトPPA とはどのようなものなのでしょうか?

オフサイトPPAとは、
遠隔地に設置した第三者(PPA事業者)の太陽光発電所から、小売電気事業者 を介して送電し、その電気を購入して、電気を使用する施設で使う、自家消費型太陽光発電のモデルのひとつです。

わかりやすく図を見ながら確認してみましょう。

オフサイトPPA の主な特徴としては、

・初期費用やメンテナンス費用がかからない
・大規模な再エネ導入が可能

という特徴があります。ただし、

「契約ハードルが非常に高く、現状導入しているのは大手企業ばかり」

という点には注意が必要です。

オフサイトPPAは小売電気事業者を介する必要がある
オフサイトPPA においては、発電所の持ち主である「PPA事業者」と電気を使用する「自社(需要家)」が他者同士になります。他者同士での電気の売買は、電気事業法 で「小売電気事業者 でなければやってはならない」と定められています。そのため、オフサイトPPA においては、間に 小売電気事業者 を挟むことで、電気の売買を可能にしています。

オフサイトPPAが注目されている背景

この オフサイトPPA は、大規模な再エネ導入方法として、
近年は以下のような背景から、より注目されています。

1.電気料金の高騰
2.CO2削減の必要性が高まっている
3.自己託送の要件厳格化

順番に解説して行きます。

1.電気料金の高騰

以前は、オフサイトPPA の電気料金単価は一般の電気料金と比べると割高な水準でした。

しかしながら、ウクライナ情勢などを理由に一般の電気料金が高騰しており、
現在は「一般の電気料金とあまり変わらない」価格になっています。

さらに、電気料金単価は、基本的に長期間固定単価になるため
電気料金高騰の対応策としても注目されています。

▼電気料金の値上りについて、より詳しくはこちらの記事をご参照ください

2.CO2削減の必要性が高まっている

また、近年は世界的にも「地球温暖化への取り組み」として
企業にも「CO2削減」が求められるようになりました。

日本国内においても、2020年に当時の菅政権が行った「カーボンニュートラル宣言」から
CO2削減」に取り組む企業が多くなって来ています。

オフサイトPPA は、再エネ導入の中でも、特に「大規模なCO2削減」に繋がる施策ですので
近年注目されるようになってきています。

▼CO2削減について、より詳しくはこちらの記事をご参照ください

3.自己託送の要件厳格化

3つ目の要因は「自己託送の要件厳格化」です。
オフサイトPPA 同様に、遠隔地から太陽光発電で発電した電気を導入できる
自家消費型太陽光発電のモデルに「自己託送」というモデルがあります。

しかしながら、この「自己託送」は現在「要件を厳格化する」方針で動いており、
2024年1月からは新規受付も停止されています。

そのため「遠隔地からの大規模な再エネ導入手段」として、
オフサイトPPA を選択するケースがより増えて行くのではないかと考えられます。

▼自己託送の要件厳格化について、より詳しくはこちらの記事をご参照ください

オフサイトPPAの8つのメリット

それでは続いて「オフサイトPPA のメリット」を見ながら、その特徴をより詳しく見て行きましょう。

1.初期費用がかからない
2.メンテナンス費用がかからない
3.電気料金の価格変動リスクに対応できる
4.電気料金が予見できる
5.大幅なCO2削減が実現できる
6.敷地内に発電所を設置できない企業も再エネを導入できる
7.複数の事業所に送電できる
8.追加性がある

1.初期費用がかからない

冒頭でも解説したように、オフサイトPPA は、第三者(PPA事業者)が所有する発電所になりますので
発電所の初期導入費用は、第三者(PPA事業者)の負担になります。

つまり、電気を使用する自社(需要家)は、発電所の初期導入費用がかかりません。

2.メンテナンス費用がかからない

初期費用と同様に、メンテナンスも第三者(PPA事業者)が行いますので、
自社(需要家)はメンテナンス費用を負担する必要はありません。

3.電気料金の価格変動リスクに対応できる

オフサイトPPA を導入する場合、一般的には電気料金単価は固定単価になりますので、
「価格変動リスクに対応できる」点がメリットです。

オフサイトPPAの電気料金単価

オフサイトPPA の電気料金単価は、下記のような相場になっています。

高圧:18.50円/kWh~21.50円/kWh
特別高圧:16.50円/kWh~19.50円/kWh

(2022年時点の再エネ賦課金3.36円を含む)

出典:自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向(2022年8月)」

一般の電気料金との比較

この オフサイトPPA の単価と、近年の一般の電気料金の推移を比較してみます。

高圧

特別高圧

高圧/特別高圧どちらも、平常時の価格と比較すれば割高な金額になりますが、
高騰時と比較すれば価格を抑えることにつながっていることが分かります。

4.電気料金が予見できる

オフサイトPPA を導入すると、電気料金単価が固定になります。
固定価格になることによって、企業の将来のコストが見通し安くなる点も
大きなメリットのひとつです。

5.大幅なCO2削減が実現できる

オフサイトPPA は、広い土地に発電所を設置すれば、多くの再エネ由来の電気を創ることができます。
電気料金の削減効果はそこまで高くありませんが、CO2削減」には大きな効果が期待できます。

例:2MWの発電所を導入した場合

例として、2MWの太陽光発電所を設置したケースで見て行きましょう。

2MWの太陽光発電所の場合、年間約200万kWhの発電量が見込めます。
200万kWh分のCO2削減量を計算すると「876 t-CO2」が削減できることが分かります。

出典:環境省「算定方法・排出係数一覧」より、CO2排出係数の全国平均値から算出。

「876 t-CO2」と言われてもピンと来ないかと思いますので、
「家庭1世帯の排出数」と「杉の木の吸収量」に換算してみます。

世帯排出量に換算:約362世帯
杉の木の吸収量に換算:約62,572本分
CO2削減量の出典:株式会社エネテク「シミュレーション事例」参考:東京都地球温暖化防止活動推進センター:クール・ネット東京「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」より、一般家庭の電気における年間CO2排出量を約2,414kg(世帯排出量約5,060kgの内、電気からの排出47.7%)、杉の木1本当たりの年間CO2吸収量は平均14kgとして算出。

このように、世帯排出量や杉の木の排出量に換算すると、非常に大きなCO2削減効果があることが分かります。

6.敷地内に発電所を設置できない企業も再エネを導入できる

従来の 自家消費型太陽光発電 のように、電気を使用する施設の敷地内で発電する際には

「屋根の形状や耐重量の問題がある」
「塩害地域である」

などのケースでは、太陽光発電所を設置することはできません。

しかしながら、オフサイトPPA の場合には、敷地外に発電所を設置するため、
このような敷地内に太陽光発電所を設置できない施設でも、
自家消費型太陽光発電 を導入することができます。

7.複数の事業所に送電できる

オフサイトPPA の発電所からは、複数の 需要地(電気を使用する施設)に送電することができます。
グループ企業などの各拠点において、再エネを導入することができるため
グループ全体のでのCO2削減が可能になります。

6.追加性がある

「追加性」とは?

再エネにおける「追加性」とは「再生可能エネルギーを新たに生み出すこと」を言います。

オフサイトPPAには「追加性」がある

例えば、中古の太陽光発電所を導入した場合には、元からある再エネを活用し始めたことになりますので、新たに再エネを世の中に生み出したことにはならず、追加性があるとは言えません。

オフサイトPPA で太陽光発電所を新たに設置する場合には「追加性がある」と言えます。

なぜ追加性が大事なのか

追加性」は「RE100」で重要視されており、
追加性のない再エネ導入は再エネ導入として認められないこともあります。

オフサイトPPA を導入する企業は特に、CO2削減に対して高い目標を掲げる企業や
RE100 加盟企業が多い傾向があるため、この追加性」の有無は重要な指標になります。

再エネ電力は新設か運転開始15年以内が対象に
 
RE100 は、2022年10月24日の発表で
追加性」をより重視するために、RE100 の新しい再エネ電力の要件として
2024年1月から「新設か運転開始15年以内」を条件とすることを新たに決定しました。
この要件を満たさない電力は、RE100 が定める再エネ導入にあたらないことになります。
参考:自然エネルギー財団「自然エネルギーの電力は新設か運転開始15年以内に」
 
このようにRE100 の「追加性」の重要性は、近年になってより高まっています。

※ただし、オフサイトPPA であっても、中古発電所を導入した場合には「追加性」はありません。

オフサイトPPAの5つの注意点(デメリット)

反対に、オフサイトPPA には注意点(デメリット)もあります。
順番に見て行きましょう。

1.15〜20年の長期契約を結ぶ必要がある
2.契約ハードルが高い
3.電気料金が割高
4.再エネ賦課金託送料金バランシングコスト がかかる
5.非常用電源としての活用は難しい

1.15〜20年の長期契約を結ぶ必要がある

オフサイトPPA のひとつめのデメリットは「15〜20年の長期契約を結ぶ必要がある」点です。
PPA事業者は、発電所の導入費用やメンテナンス費用を負担する代わりに
その費用を月々の電気料金から回収する必要がありますので、長期契約になるのが一般的です。

需要家 はそれだけの期間、自分たちの事業を維持していくことが必要になります。

契約期間中の解約時には、違約金などが発生する可能性もありますので
事前に契約内容を確認しておく必要があります。

2.契約ハードルが高い

オフサイトPPA の大きなデメリットのひとつが「契約ハードルが高い」という点です。

PPA事業者にとっては「リスクが高い」

オフサイトPPA を導入する場合、発電所の規模が大きくなればその分、PPA事業者 の導入費用も大きくなります。

さらに、オフサイトPPA の契約期間は15年~20年と長くなるため、
PPA事業者 の視点から見ると、膨大な導入費用を電気料金の中から長期間かけて回収していくことになります。

そのため「途中で倒産する」可能性がある企業との契約は避ける必要があるため
「長期間安定した経営を続けられる企業」と契約したいわけです。

オフサイトPPAを導入しているのは大手企業が中心

こうした背景から、オフサイトPPA を導入している企業は、日本国内では大手企業が中心になっています。

日本国内ではオンサイトPPAの方が主流

また、オフサイトPPA はまだまだ日本国内では導入事例が少なく、
まだ契約ハードルが オフサイトPPA よりは低い、オンサイトPPA の方が主流になっています。

3.電気料金が割高

オフサイトPPA の電気料金については、前項のメリットの中でもご紹介しましたが、
電気料金が定額になり安定する点や、高騰時に比べれば安価に抑えられる面もある反面、
近年の電気料金高騰以前の電気料金単価と比較すると、割高になってしまいます。

高圧

特別高圧


これから先の電気料金がどうなるかはまだ分かりませんが、現状よりも一般の電気料金が落ち着いてくると「オフサイトPPA の電気料金は割高」になってきます。

4.再エネ賦課金・託送料金・バランシングコスト がかかる

上記の「電気料金が割高」の理由にもなってきますが、
オフサイトPPA には、再エネ賦課金託送料金バランシングコスト がかかる点も
デメリットのひとつです。

「再エネ賦課金」

オフサイトPPA 以外の 自家消費型太陽光発電 のモデルでは、小売電気事業者 を介していないため
再エネ賦課金 はかかりませんが、オフサイトPPA は、小売電気事業者 を介するため
再エネ賦課金 を負担する必要があります。

「託送料金」

託送料金」とは、小売電気事業者 の「送配電網 の使用料」と考えると分かりやすいです。
オフサイトPPA は、遠隔地から 送配電網 を使って送電するので「託送料金」がかかります。

「バランシングコスト」

さらに、オフサイトPPA には「バランシングコスト」もかかります。
バランシングコスト」とは、需給バランス を調整する際にかかる費用のことを言います。

※「バランシングコスト」については、ここで説明すると長くなりますので、
より詳しく知りたい方は下記記事をご参照ください。

各モデルの電気料金構成の比較

これらを踏まえて、オフサイトPPA の電気料金に含まれるさまざまなコストの構成を
他の 自家消費型太陽光発電 のモデルと比較してみます。

自家消費型太陽光発電 のモデルの「電気料金の内訳」を見ると、上の図のようになります。
オフサイトPPA は、他の 自家消費型太陽光発電 のモデルと比較しても、
さまざまなコストがかかる事がお分かりいただけるかと思います。

5.非常用電源としての活用は難しい

自家消費型太陽光発電 は「非常用電源としての活用」も視野に入れる事が多いかと思いますが
オフサイトPPA「非常用電源としての活用は難しい」点がデメリットです。

オフサイトPPA は、遠隔地から 小売電気事業者 の送配電網を使って送電するため
自然災害などで送配電網が途絶した場合には、非常用電源としての活用はできないことが理由です。

 
 
オフサイトPPA のメリット・デメリットを通じて、
その特徴はお分かり頂けたかと思います。

さらに詳しくお知りになりたい方向けに、次章から他の 自家消費型太陽光発電 モデルとの比較など、より詳しい内容を解説していきます。

比較1:オンサイトPPAとの違い

まず、オフサイトPPA とよく名前も似ている「オンサイトPPA」との違いを見て行きましょう。

オンサイトPPAとは?

オンサイトPPA とは、図のように、自社(需要家)の敷地内に PPA事業者 の太陽光発電所を設置し、そこで発電した電気を自社(需要家)が購入して、使用するというモデルです。

つまり、オフサイトPPAオンサイトPPA の違いを分かりやすく言うと
「発電所が自社(需要家)の敷地内にあるか?敷地外にあるか?」というだけの違いになります。

しかしながら、この違いによってさまざまな特色の違いが出てきます。

オフサイトPPAとオンサイトPPAの違い

オフサイトPPAオンサイトPPA の違いを表にまとめると、以下のようになります。

順番に詳しく見て行きましょう。

オフサイトPPAのほうが優れている点

オフサイトPPA が、オンサイトPPA より優れている点は「発電規模が大きい」点です。
発電規模が大きいことで、特に「CO2削減量」に大きな効果が期待できます。

利点がひとつだけとなると、オフサイトPPA の方が利点が小さいように見えますが、
「発電規模が大きい」という利点は、企業によっては非常に大きな利点になります。

オンサイトPPAのほうが優れている点

反対に、オンサイトPPA のほうが優れている点も見て行きましょう。

オフサイトPPAオンサイトPPA と比較すると、オフサイトPPA の方が

・契約ハードルが高い
・電気料金は割高
再エネ賦課金 の負担が必要
・非常用電源として活用できない

といった特徴があります。

両者に共通する特徴

また、両者に共通する特徴もあります。

両者に共通するのは、

・発電所の初期費用やメンテナンス費用がかからない
・契約期間中は設備の交換や処分を勝手にできない
・余剰売電できない

といった特徴です。
これらは「PPAモデル」の特徴であるとも言えます。

どちらを選ぶ?

それでは、オフサイトPPAオンサイトPPA を比較した際に、
それぞれを選択するのはどんなポイントがあるのでしょうか?

オフサイトPPAを選択するケース

オフサイトPPA を選択するケースとしては、

「使用電気量が多い」
「企業としてCO2削減目標が高く、多くの再エネ電力を要する」
「塩害地域や、屋根の形状の問題で敷地内に太陽光発電所を設置できない」
「高い契約ハードルをクリアできる」

といった場合に、選択するケースが多いと考えられます。

オンサイトPPAを選択するケース

反対に、オフサイトPPA と比較して、オンサイトPPA を選択するケースとしては

「使用電気量が少ない」
「そこまで多くの再エネ電力を必要としていない」
「電気料金を削減したい」
「高い契約ハードルをクリアするのが難しい」

といった場合に、選択するケースが多いです。

オンサイトPPAについて詳しくはこちら

オンサイトPPAについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ご興味のある方はご参照ください。

比較2:自己託送との違い

続いて、自己託送 との違いを見て行きましょう。

自己託送とは?

自己託送 とは、遠隔地に設置した「自社(需要家)の太陽光発電所」から、送配電網 を通して、電気を使用する施設に送電し、電気を使用する、自家消費型太陽光発電 のモデルです。

オフサイトPPA と同じように「遠隔地から再エネを送電する」モデルなのですが、大きく異なるのは
「発電所の持ち主が、PPA事業者 ではなく、電気を使用する自社(需要家)」という点です。
送電において、小売電気事業者 を仲介しないというのも特徴のひとつです。

しかしながら、自己託送 とも、この違いによってさまざまな特色の違いが出てきます。

自己託送における「発電所の持ち主」と「需要家」の関係
自己託送 においては、発電所の持ち主と電気を使用する 需要家 の関係は「自社同士」であることが土台になっていますが、グループ企業などの「密接な関係」にある場合や、組合を設立するなどの条件によっても成り立たせることができます。

自己託送の特徴

自己託送には、主に以下のような特徴があります。

・月々の電気料金がかからない。
・大規模な発電で、電気料金とCO2削減を実現できる。
・初期費用は自社(需要家)負担で、金額も大きい。
再エネ賦課金 がかからない。

注意:自己託送の要件厳格化と新規受付停止

ただし、自己託送 は、現在「当面の間新規受付停止中」であり、
現状では導入することができません。

自己託送 は、その「要件を厳格化する」方向で進められており、受付再開後には、現在よりも実施する条件が厳しくなる見通しです。

オフサイトPPAと自己託送の違い

オフサイトPPA自己託送 の違いを表にまとめると、以下のようになります。

順番に解説して行きます。

オフサイトPPAのほうが優れている点

オフサイトPPA は、初期導入費用やメンテナンス費用がかからない点が
大きなメリットになります。

オフサイトPPA自己託送 も、原則的に「規模の大きな発電所」になりますので
自己託送 の初期導入費用も、メンテナンス費用も高額になる傾向があります。

自己託送のほうが優れている点

反対に、自己託送 のほうが優れている点も見て行きましょう。

自己託送 は、月々の電気料金は不要で、発電所の規模も大きいことから
「電気料金の削減効果も非常に高い」という特徴があります。

オフサイトPPA には 再エネ賦課金 がかかりますが、
自己託送 は、小売電気事業者 を介さずに送電しているため、再エネ賦課金 がかかりません。

【自己託送と再エネ賦課金】
自己託送 には 再エネ賦課金 がかからない」ことから、本来の意図から外れた 自己託送 のケースが増えており、前述の「要件厳格化」につながったという経緯もあります。

両者に共通する特徴

また、両者に共通する特徴もあります。

両者に共通するのは、

・送配電網を使用するので「託送料金」「バランシングコスト」がかかる
・余剰売電できない
・CO2削減効果は変わらない
・複数個所への送電が可能(自己託送の一部のモデルは不可)
・非常用電源としての活用は難しい

といった特徴です。
これらは、遠隔地から送電する「オフサイトモデル」の特徴であるとも言えます。

どちらを選ぶ?

それでは、オフサイトPPA自己託送 を比較した際に、
それぞれを選択するのはどんなポイントがあるのでしょうか?

オフサイトPPAを選択するケース

オフサイトPPA を選択するケースとしては、

「初期導入費用をかけたくない」
「電気料金削減を主眼においていない(CO2削減が主な目的)」

といった場合に、選択するケースが多いと考えられます。

自己託送を選択するケース

反対に、オフサイトPPA と比較して、自己託送 を選択するケースとしては

「初期費用をかけてでも、電気料金を削減したい」

といった場合に、選択するケースが多いです。

自己託送について詳しくはこちら

自己託送については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
前述の「要件厳格化」についても解説していますので、ご興味のある方はご参照ください。

「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」

とここまで、オフサイトPPA と他の自家消費型太陽光発電の比較をしてきましたが、

実は オフサイトPPA にも種類があり、
フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の2種類に分類されます。

続いてはこの「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」について解説していきます。

再エネ電力には「電力」と「環境価値」が含まれる

フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」について解説する前に、
再エネ電力に含まれる「ふたつの価値」について解説します。

太陽光発電などで発電した「再エネ由来の電力」には、
「電力」としての価値と「環境価値」の「ふたつの価値」が含まれています。

簡単に言うと、この「ふたつの価値」をまとめて売買するのがフィジカルPPA
分けて売買するのがバーチャルPPAになります。

「フィジカルPPA」とは?

では「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」とは、どのようなものなのか
まず「フィジカルPPA」について解説していきます。


自然エネルギー財団「日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例」を元に作成

フィジカルPPA を簡単に要約すると、図のように

1.PPA事業者需要家 が「固定価格」で電気料金と環境価値を売買する契約をし
2.PPA事業者 が電力と環境価値を、小売電気事業者 を介して 需要家 に供給し、
3.需要家 は、1で契約した「固定価格」を、小売電気事業者 を介して PPA事業者 に支払う

という オフサイトPPA のモデルです。

これまで解説してきた オフサイトPPA は、基本的にこの「フィジカルPPA」になります。

「バーチャルPPA」とは?

では次に、バーチャルPPA について解説していきます。

「バーチャルPPA」の基本的な流れ

日本の バーチャルPPA の流れは、少し分かりにくいので
まずは バーチャルPPA の流れがより分かりやすい、
海外などで適用されている「バーチャルPPA の基本的なしくみ」を解説し、
その後少し複雑な「日本の実際の バーチャルPPA」を解説していきます。


自然エネルギー財団「日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例」を元に作成

バーチャルPPA は、固定価格で契約し、環境価値を売買する点は同じですが
以下の2点が フィジカルPPA とは異なります。

・電力は両者間で売買せず、PPA事業者 は電力卸市場で売買。
 需要家 は別途、小売電気事業者 から電気を購入する。
需要家 は「環境価値の価格」として「固定価格と市場価格の差額」を支払う

このように、PPA事業者需要家 の間では「環境価値のみを売買する」のが
バーチャルPPA」です。

バーチャルPPAの例

バーチャルPPA の流れは少し複雑で、
特に「環境価値の価格の決定方法」については上の図だけでは少し分かりにくいかと思いますので
例を挙げて解説していきます。

例1.固定価格18円/kWhで契約、市場価格15円/kWhで売電した場合

まず一つ目の例ですが、固定価格18円/kWhで契約、市場価格15円/kWhで売電した場合には
図のようになります。

このように「固定価格18円/kWh」で契約した バーチャルPPA において、
PPA事業者 が「市場価格15円/kWh」で売電した場合には、
「固定価格18円/kWh-市場価格15円/kWh」で、環境価値の価格「3円」を
需要家PPA事業者 に」支払います。

例2.固定価格18円/kWhで契約、市場価格20円/kWhで売電した場合

例1は、契約した固定価格よりも市場価格のほうが安い場合の例でした。
反対に、固定価格よりも市場価格のほうが高い場合の例を見て行きましょう。

図のように、固定価格よりも市場価格のほうが高い場合には、
「固定価格18円/kWh-市場価格20円/kWh」で、環境価値の価格は「マイナス2円」になります。

この場合には、前の例とは逆に
PPA事業者需要家 に環境価値の価格を支払う」かたちになります。

「日本のバーチャルPPA」の流れ

このように、バーチャルPPA は環境価値だけを PPA事業者 と売買するしくみで
契約した固定価格と市場価格との差額を「環境価値の価格」として支払うしくみ
であることがお分かり頂けたかと思います。

しかし、日本においては、電気事業法によって、環境価値の売買においても
小売電気事業者 を介する」必要があります。

小売電気事業者 を介する」ことによって
「固定価格と市場価格の差額を誰が負担するのか」などが変わってきます。


自然エネルギー財団「日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例」を元に作成

図のように、日本の バーチャルPPA においては、小売電気事業者 を介するため
下記のような点が変わってきます。

1.固定価格と市場価格の差額の精算は、小売電気事業者 が行う
2.需要家は、電気料金と環境価値を合わせた「固定価格」を小売電気事業者に支払う
1.固定価格と市場価格の差額の精算は、小売電気事業者が行う

前項でご紹介した バーチャルPPA では、
固定価格と市場価格の差額の精算は「需要家 がおこなう」必要がありました。
そのため、市場価格の変動によって、支払う金額が変動するしくみだったのですが

「日本の バーチャルPPA」においては、小売電気事業者 が間に入る事により
固定価格と市場価格の差額の精算は、小売電気事業者 が行います。

2.需要家は、電気料金と環境価値を合わせた「固定価格」を小売電気事業者に支払う

固定価格と市場価格の差額の精算は、小売電気事業者 が行うので、需要家が行う必要はありません。

需要家 はその代わりに、契約で決まった「固定価格」を 小売電気事業者 に支払います。

この「固定金額」には、図のように

1.小売電気事業者 から購入した「電気料金」
2.送配電網 を使用する「託送料金
3.小売電気事業者 に環境価値の価格などを調整して貰う「手数料」
4.「環境価値の費用」

が含まれます。

1.「電気料金」
2.「託送料金
3.「手数料」」

これらは 小売電気事業者 が受領しますが、

4.「環境価値の費用」

は、小売電気事業者 で市場価格との差額を調整して、PPA事業者 に支払われます。

つまり、日本の バーチャルPPA において、需要家 の目線からみると
「電気料金と環境価値をまとめて」固定価格で支払うので、
ほとんど フィジカルPPA と変わらない形になります。

バーチャルPPAのメリット・デメリット

続いて「メリット・デメリット」から、
より詳しく バーチャルPPA の特徴を見て行きましょう。

バーチャルPPAのメリット

まず、バーチャルPPA のメリットは以下の通りです。

1.コストが固定される
2.電力の取引を切り替える必要が無い
3.全国どこからでも調達できる

順番に解説していきます。

1.コストが固定される

前述のように、需要家 からみると、電気料金と環境価値の費用は「固定価格」で支払いますので
フィジカルPPA 同様に、コストが固定されます。

2.電力の取引を切り替える必要が無い

バーチャルPPA を導入する場合、需要家 は、
契約した PPA事業者 の電気を購入する必要はありません。

電力会社は、契約前から使用している電力会社のままにすることもできるため
電力の取り引きを切り替える必要はありません。

3.全国どこからでも調達できる

バーチャルPPA は、環境価値だけをやりとりするため
需要家 と離れた別のエリアの発電所とも売買することができます。

そのため、発電コストの安い地域や再エネの発電量が多い地域などから
調達することができ、固定価格を安く抑えるなどの可能性も期待できます。

バーチャルPPAのデメリット

反対に、バーチャルPPA のデメリットは以下の通りです。

1.固定価格が高くなる可能性がある
2.会計処理を整理する必要がある

順番に解説していきます。

1.固定価格が高くなる可能性がある

日本においては、固定価格と市場価格の差額の調整は 小売電気事業者 が行います。

小売電気事業者 としては、市場価格との差額が大きくなると負担が大きくなりますので
固定価格を高く設定する可能性があります。

2.会計処理を整理する必要がある

バーチャルPPA は、電力の購入金額を予め決めて予約する「デリバティブ契約」に該当する可能性があり、会計処理を整理する必要がある可能性があります。

2024年度の補助金制度

続いて、オフサイトPPAで使用できる2024年度の補助金制度をご紹介します。

補助金の有無は需要家にも関係ある?

「補助金を直接受ける」のは、オフサイトPPA の場合には、需要家 ではなく
発電所を導入する PPA事業者 です。

しかし、補助金制度の中には、オフサイトPPA に対して行われた補助 の中で
電気料金の値引きなどで需要家 に還元」することが条件となっているものもあります。

そのため、需要家 にとっても、オフサイトPPA の補助金は重要になってきます。

需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金

オフサイトPPA に使用できる、代表的な補助金制度が
需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金」です。

どんな補助金制度?

2MW以上の太陽光発電や蓄電池を運用する「発電事業者」が
導入費用の「最大2/3の補助」が得られる補助金制度です。

詳細は下記記事にて、本年度の公募内容を解説していますので
よろしければご参照ください。

他にもさまざまな補助金制度が公募されている

上記の「需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金」は、
オフサイトPPA にも活用できる補助金制度の代表例ですが、

他にもさまざまな用途で導入する太陽光発電に対して、さまざまな補助金制度が設けられています。
詳しくは下記の記事をご参照ください。

オフサイトPPAの導入事例

続いて、オフサイトPPA の導入事例をご紹介していきます。
オフサイトPPA を導入する企業は、前述のように大手企業が多い傾向があります。

中でも、特徴的な導入方法を用いているポイントを中心にご紹介していきます。
導入をご検討の際にお役立てください。

ヒューリック株式会社

RE100 にも加盟している、不動産会社のヒューリックは、自社グループ内で完結する オフサイトPPA を導入しています。

自社グループ完結型コーポレートPPAモデル

ヒューリックの オフサイトPPA は、PPA事業者 需要家 小売電気事業者 がすべて自社グループ内の企業で「自社グループ完結型コーポレートPPAモデル」とも呼ばれています。

本記事の解説の中では、オフサイトPPA においては、PPA事業者需要家 は別の会社であることが一般的であると解説していましたが、
ヒューリックの オフサイトPPA は、小売電気事業者 を介していることからも、オフサイトPPA に分類されます。

再エネ施設はすべて新設で、追加性 のある再エネを導入しています。

詳しくはこちら

ヒューリック株式会社「2030年に全保有建物CO2排出量ネットゼロを達成 保有建物すべてに自社の非FIT再エネ電源から電気供給」

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスも、RE100 加盟企業です。
セブン-イレブン40店舗や、東京都内の複合商業施設「アリア亀有」で使用する電力を再エネで補うために、NTTグループと連携した オフサイトPPA を展開しています。

不足分もNTTグループの他の再エネ由来電力を導入

PPA事業者は、NTTグループのNTTアノードエナジーで、
千葉県内2か所の太陽光発電所から送電します。

しかし、オフサイトPPA だけでは必要な電力をすべてカバーすることはできないため、
不足分もNTTグループの他の再エネ由来電力を導入することで賄い、再エネ100%を目指しています。

詳しくはこちら

日経XTECH「NTTがセブンイレブンに再エネ提供、国内初の「オフサイトPPA」に」

花王

花王も、RE100 加盟企業です。
東京都内の本社で使用する電力を、オフサイトPPA で調達しています。

補助金を活用して電気料金を抑える

PPA事業者 である、ジェネックスとみんなパワーは、
2021年度に実施されていた補助金「令和3年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を適用し
補助金で削減した分、花王が支払う電気料金の値下げも実現しています。

その結果、一般の電気料金と同程度の金額の電気料金に抑えることができています。

詳しくはこちら

メガソーラービジネス「花王がオフサイト型PPAで太陽光電力を調達、JCLPが支援」

Amazon

Amazonも、RE100 加盟企業です。
電力の利用場所は非公開ですが、約450か所の発電所から約2万2000kWの電力を供給する オフサイトPPA を導入しています。

太陽光発電所の平均出力は50kW未満

Amazonの オフサイトPPA の特徴は「多数の小さな発電所から、オフサイトPPA を通じて、大規模な電力を得ている」点です。

約450か所の発電所で、約2万2000kWの発電をしており、平均出力は50kW未満です。

オフサイトPPA自己託送 は、発電所の用地獲得もハードルのひとつです。

オフサイトPPA は、複数個所からの送電も可能であるため、Amazonの事例のように、小さな土地の発電所を多数獲得して大規模な発電を可能にすることもできるのです。

詳しくはこちら

Amazon「Amazonと三菱商事、日本初の再生可能エネルギー購入契約を締結」

まとめ

いかがでしたでしょうか?
オフサイトPPA について、基本的な情報をご理解頂けたのではないかと思います。

・オフサイトPPAは、PPA事業者から小売電気事業者を介して需要家に供給されるモデル。
・近年の電気料金高騰から、一般の電気料金とあまり変わらなくなっている。
・契約ハードルが高く、大手企業向けの施策である。
・「フィジカルPPA」や「バーチャルPPA」などの種類もある。

本記事が、御社の再エネ導入のお役に合立てれば幸いです。

また、同じ自家消費型太陽光発電 には、オフサイトPPA 以外にもさまざまなモデルがあります。

そのどれもに共通する基本情報や注意点を
下記の資料にてご紹介しています。

特に、自家消費型太陽光発電 の「設計に関する注意点」は、
導入前にしておいたほうが良いポイントになるかと思いますので、
ぜひこちらもお役立てください。