省エネの教科書とは

【2024年最新】自家消費型太陽光発電とは?費用対効果データ付解説

※2024年01月24日:最新情報に更新しました。

2024年1月現在、ウクライナ情勢から端を発した
「電気料金の値上がり」が企業にとって、頭の痛い問題になっています。

また「2050年カーボンニュートラル宣言」からCO2削減も企業に求められています。

こうした課題をまとめて解決できるのが自家消費型太陽光発電です。

自家消費型太陽光発電も、導入費用がかからない「PPAモデル」など
さまざまなモデルも登場しています。

この記事では、自家消費型太陽光発電 について

・基本的な特徴
・メリット・デメリット
・電気料金やCO2排出量の削減効果
・設置費用や費用対効果の目安
・PPAなどのさまざまなモデル
・補助金や税制優遇

などを、2024年の最新情報も交えて、分かりやすくご紹介していきます。

本記事をお読みいただければ、自家消費型太陽光発電 について
ひととおりご理解頂けるかと思います。

電気料金削減やCO2削減など、再エネの導入にお役立て頂ければ幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



自家消費型太陽光発電とは?

まず「自家消費型太陽光発電」とは、どのような太陽光発電のことを言うのでしょうか?
自家消費型太陽光発電 は、下のイラストのように

1.太陽光発電で発電した電気を
2.自分で使う。

という活用方法の太陽光発電です。

以前は「売電」が主流だった

自家消費と対比するのが「売電」目的の太陽光発電所です。
以前は自家消費ではなく、野立ての発電所などで発電した電気を「売る」目的での使い方が主流でした。

以前は、FIT(固定価格買取制度)によって、高値の単価で売電できていたため
自分で使うよりも、売電したほうが利益が大きかったのです。

FIT(固定価格買取制度)とは?
太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電力を固定単価で買い取る国の制度。
通常の電力市場の価格よりも高値で、20年間固定価格で売電できるため、
高い利回りの「太陽光発電投資」として人気の投資方法になっていました。


資源エネルギー庁「FIT・FIP制度 買取価格・期間等」および資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2022年度版」を元に作成

しかしながら、上のグラフのように FIT(固定価格買取制度)の売電単価が下がったことと、
電気料金の値上がりから自家消費したほうが利益が大きくなり始めたため、
自家消費型太陽光発電」が注目されるようになってきました。

FIT(固定価格買取制度)による売電についての詳細は、下記の記事をご参照ください。

自家消費型太陽光発電「4つのモデル」

自家消費型太陽光発電 は、太陽光発電所で発電した電気を「自分で使う」という
シンプルな施策ですが、その手法によって「4つのモデル」があります。

自社で太陽光発電を導入するだけでなく、導入費用がかからない「PPAモデル」や
遠隔地から送電する自家消費モデルなど、自家消費型太陽光発電 にもさまざまなモデルが存在します。

※それぞれのモデルについては、後ほど詳しく解説します。

3つのメリット

自家消費型太陽光発電 には「電気料金削減」「CO2削減」「非常用電源になる」という
「3つのメリット」があります。

導入することで、エネルギーに関する課題を一度に3つまとめて解決することができる点からも
自家消費型太陽光発電 は注目されています。

※それぞれのメリットについても、後ほど詳しく解説します。

なぜ太陽光発電?

このように、さまざまな特徴がある 自家消費型太陽光発電 ですが

再エネの導入方法は、太陽光発電以外にも、風力発電 や バイオマス発電 などの方法もあります。
その中でなぜ、太陽光発電が主流となっているのでしょうか?


経済産業省「発電コスト検証に関する取りまとめ」を元に作成

上のグラフは、日本国内の各発電方法における「発電コスト」を比較したものです。

「発電コスト」とは?
発電コストとは、発電の際にかかる燃料費だけでなく、発電所の設備導入費用を含めて、その耐用年数を加味して、1kWhあたりどれほどのコストがかかるのかを算出した数値です。

このように比較すると、太陽光発電は、風力発電や小水力発電、バイオマス発電(専焼)と比較して発電コストが抑えられることが分かります。

中水力発電や地熱発電との比較

発電コストだけを見ると、太陽光発電よりも
中水力発電や地熱発電の方が、発電コストを抑えられることが分かります。

しかしながら、中水力発電や地熱発電は、河川などの適した環境が必要になるため、
どの企業でも簡単に導入することはできない再エネでもあります。

バイオマス発電(混焼)との比較

バイオマス発電(混焼)も、太陽光発電よりも発電コストを抑えることができますが
バイオマス発電用のチップと石炭を混ぜて燃焼させる発電方法であるため
CO2削減にはつながりにくく、燃料価格の上下に影響を受けるという特徴があります。

そのため、太陽光発電が最もポピュラー

こうした背景から、他の再エネよりも太陽光発電が選ばれやすいのが現状です。

最も普及した再エネ導入方法であるがゆえに
事例も多くあり、専門業者も多いという点も、大きなメリットになります。

全量売電と全量自家消費、余剰売電

また、太陽光発電は売電と自家消費の比率によって
「全量売電」「全量自家消費」「余剰売電」の3種類にも分類されます。

太陽光発電で発電した電気を「すべて売電する」のが「全量売電」
すべて自家消費するのが「全量自家消費」です。

そして、基本的には自家消費しつつ、余った電気は売電するのが「余剰売電」になります。

全量自家消費か?余剰売電か?

自家消費型太陽光発電 を導入する際には、全量自家消費と余剰売電のどちらかになります。

どちらの方がその施設には最適かは、
使用電力量や発電所を設置する場所の大きさなどによっても変わってきますが
「自家消費率」が条件として定められている税制優遇や補助金制度もありますので、
注意が必要です。

余剰売電における「FIT」の活用

余剰売電においては、前述した「FIT(固定価格買取制度)」を利用して売電することができます。
ただし、その際には「地域活動要件」を満たす必要があり、
屋根上と地上で売電価格も異なりますので、注意が必要です。

「地域活動要件」とは?

2020年度以降は、10kW以上50kW未満の FIT を活用するためには
「地域活動要件」として、下記2点の要件を満たす必要があります。

1.自家消費率30%以上
2.災害時に自立運転を行い、給電用コンセントを一般利用できるようにしておく。

余剰売電を行う際には、上記要件も頭に入れておきましょう。

「屋根上設置」は優遇された売電単価に。

2023年度からは、屋根上に設置する場合には地上設置よりも優遇された単価で
売電できるようになりました。

2024年度のFIT単価(10kW以上50kW未満)
地上設置:10円/kWh
屋根上設置:12円/kWh

メリット1.電気料金の削減(費用対効果)

続いて、自家消費型太陽光発電 のメリットについて「電気料金の削減」から順番に詳しく解説していきます。

経営者の動機「電気代を削減したいから」が1位

前述のように、自家消費型太陽光発電 を導入するメリットには、電気料金の削減以外にも
CO2削減」や「非常用電源としての活用」なども挙げられますが、

企業の経営者・役員への意識調査によると「電気代を削減したいから」という理由が1位
全体の61.9%の割合を占めるという調査結果も出ています。

出典元:エネがえる運営事務局調べhttps://www.enegaeru.com/

このように、自家消費型太陽光発電 導入を検討の際には
「電気料金の削減」ができる点を大きな魅力に感じている企業の経営者が多いことが分かります。

近年、電気料金の値上がりが深刻に

その背景には、ウクライナ情勢などをきっかけにした「近年の電気料金の値上り」があります。
近年の電気料金の推移をグラフで見て行きましょう。


出典元:新電力ネット「電気料金単価の推移」
 


出典元:新電力ネット「電気料金単価の推移」
 

このように、低圧においても高圧においても
2021年5月頃から、2023年1月をピークに値上がりが続いており、2023年2月から値下がりしているものの、高騰前の2021年5月と比較すると、まだまだ高値の水準にあると言えます。

現在は、政府の補助によって抑えられている

ただし、2023年2月から電気料金が抑えられているのは、
政府による補助による効果によるものが大きいのが実情です。

この政府による補助も、2023年4月までで終了予定です。

政府による補助政策「激変緩和措置」
政府による電気料金への補助政策「激変緩和措置」は、2023年2月から実施され
2度の延長を経て、現在は2024年4月までの実施予定になっています。

この「激変緩和措置」では、電気料金の価格決定の上下に大きく影響する「燃料調整額(単価)」から、上図のように値引きされています。

また延長される可能性もありますが、2024年4月までで補助が終了した場合、
2024年5月から電気料金が値上がりすることになります。

2050年まで、燃料価格は上がり続ける予測

政府の補助終了による影響は、短期的な問題ですが
長期的な展望においても、電気料金は値上がりが続いて行く見通しになっています。

下のグラフは、EIA(米国エネルギー省 エネルギー情報局)による、
天然ガスと石炭の2050年までの長期的な価格推移の予測になります。

 


出典元:新電力ネット「天然ガス価格の予測・見通し」
 

出典元:新電力ネット「石炭価格の予測・見通し」
 

天然ガスと石炭による火力発電は、2020年の統計結果では日本の電源構成の約70%を占めており、
この価格高騰は、電気料金の値上りにも直結することが考えられます。

このように、電気料金は短期的に見ても長期的に見ても、
今後も値上がりしていく可能性が高いと言えます。

▼「電気料金の値上り」についてより詳しくはこちらの記事をご参照ください

電気料金の削減効果と費用対効果

それでは、この高騰していく電気料金に対して、
自家消費型太陽光発電 でどれほど電気料金を削減できるのでしょうか?

おおよその削減金額の目安と、費用対効果の目安をご紹介していきます。

削減費用の目安

2023年9月の全国の電気料金の平均単価を元に、自家消費型太陽光発電(自社所有モデル)を導入した場合の削減効果の目安をまとめてみました。

表のように、業種によっては非常に大きな削減効果が見込まれることが分かります。

電気料金が今後より値上がりすれば、より高い削減効果に
上記の削減金額は、あくまで2023年9月時点の電気料金を元に算出しています。
前述のように、政府の補助終了や燃料価格の値上りによってより電気料金が値上がりした場合、自家消費型太陽光発電 の電気料金削減額は、上記の表よりも大きな金額になります。

設備導入費用

電気料金の削減効果はありますが、自社で太陽光発電を導入する場合に重要になってくるのが
「設備導入費用」と「どれほどの期間で回収できるか」という問題です。

まずは、設備導入費用について見て行きましょう。


出典元:資源エネルギー庁「太陽光発電について:資本費及びその構成(設置年別推移:屋根設置)2023年12月」

上記のグラフは、屋根に設置した太陽光発電の設備費用や工事費用の年次推移をまとめた、
資源エネルギー庁の2023年12月発表の資料です。

設置容量1kWに対しての設備導入費用を単価として計算しています。

円安や物価高騰が懸念されていますが、太陽光発電の設備導入費用は、
年々値下りしていることが分かります。

上の表では、各項目ごとの数値のみしか表示されていませんが
合算すると、2023年時点の設備導入費用は「22.3万円/kW」が目安になる事が分かります。
(※設置する場所や環境、導入するシステムなどによっても価格は大きく変わります。)

費用対効果と回収期間

上記の設備導入費用「22.3万円/kW」を元に、削減金額でご紹介した例に合わせて
おおよその費用対効果と回収期間の目安を見て行きましょう。

設備導入費用を、毎年の電気料金削減金額で回収していくと考えると、
設備費用は、業種にもよりますが「およそ10年~11年」で回収できることが分かります。

20年間の利益の見通し

また、太陽光発電システムの耐用年数は「20年」とされていますので
20年間発電し、電気料金を削減した費用から設備導入費用を引いたものが
上記の表の「20年間の利益」になります。

製造業(生産工場)で、20年間の利益が「約6.8億円」と大きな金額になっていることが分かります。

これらはあくまで「おおよその目安」ではありますので、
実際の設備費用や費用対効果は状況によって異なるかと思いますが、
おおよそで 自家消費型太陽光発電 を自社で導入した際に、どのような電気料金削減効果が得られるか
お分かり頂けたのではないかと思います。

これらの目安は、あくまで自社所有モデルのケース
これらの設備費用や費用対効果の目安は、あくまで自社費用で自社の屋根に自家消費型太陽光発電を導入する「自社所有モデル」の場合の例です。
PPAモデル(本記事の後半で解説します)」の場合には、初期費用は自社で負担しませんので、ご紹介した目安の対象外になります。

メリット2.CO2を削減できる

続いて、自家消費型太陽光発電 の2つ目のメリットは「CO2を削減できる」という点です。

「CO2削減」が求められるようになってきた背景

まず、CO2削減 が企業に強く求められるようになってきた背景を見て行きましょう。

1.国際社会における「CO2削減」への取り組み

国際社会における「CO2削減」への取り組みは、1990年代から始まっています。

1992年「リオ・サミット」

1992年に開催された「リオ・サミット」において「国連気候変動枠組み条約」が採択されました。
この条約締結により、環境への取り組みや SDGs の概念が世界に広がるきっかけになり、
国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)が1995年から行われることにもなりました。

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)
「リオ・サミット」で1992年に採択された国連気候変動枠組条約に基づき、
1995年から毎年開催されている「気候変動への対策」について話し合われる会議。
何回目の開催かによって数字がふられ、2023年12月には「COP28」が開催されました。
1997年 COP3「京都議定書」

さらに、1997年に京都で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採決された
京都議定書」では、途上国以外の各国に、温室効果ガスの排出量削減を義務付けることになりました。
(日本政府も2012年までに1990年比で6%の温室効果ガス削減を義務付けられ、達成しています)

2015年 COP21「パリ協定」

2015年に採決された「パリ協定」では、先進国・途上国関係なくすべての締約国が対象になり、
世界共通の目標として、気温上昇を「2度目標(努力目標1.5度以内)」に抑えることが定められ
2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標の策定・提出」が各国に求められることになりました。

2019年 COP25「多くの国がカーボンニュートラルを宣言」

2019年にスペインのマドリードで開催されたCOP25では、パリ協定で掲げた
「気温上昇を1.5度以内に抑える」目標を実現するためには、2050年付近までに「カーボンニュートラル」を実現する必要があるとの報告がなされました。

これにより、123か国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラルを表明しました。

2.日本における「CO2削減」への取り組み

このように、世界全体において「CO2削減」への流れが生まれてきている中、
日本国内においても「CO2削減」への流れが強まって行きます。

2020年10月 管首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」

前述のように、COP25において、多くの国が2050年までのカーボンニュートラルを表明しています。
日本も同様に、2020年10月に当時の首相である菅総理大臣が
2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。

2020年12月「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

菅首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」からわずか2カ月後には、
2050年カーボンニュートラルの具体的な見通しと目標を設け、実行計画を示した
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においては、
企業などのCO2削減を推進するための「税制優遇」や「ESG投資 の推進」なども定められました。

2021年5月 改正温対法の成立

さらに、2021年5月には「改正温対法」が成立し、
2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として法に位置づけられることになりました。

こうして、世界全体における「2050年カーボンニュートラル」への取り組みは
日本においても法に位置づけられ、国や企業が本腰を入れて取り組んでいくことになったのです。

3.大手企業の取引先への「CO2削減」要求

こうした流れを受けて、世界中の大手企業が「CO2削減」に力を入れ始めました。
特に RE100 などに加盟する大手企業は、自社だけでなく、取引先にも「CO2削減」を求めるようになりました。

カーボンニュートラル」の考え方においては
サプライチェーン排出量」の削減まで行う必要があったからです。

サプライチェーン排出量とは?
サプライチェーン排出量 とは、自社の排出するCO2だけでなく、自社製品の材料などの製造や輸送における取引先のCO2排出量までも含めて計算した排出量のことを言います。

Appleやトヨタ自動車なども、取引先へのCO2削減を求めています。

Apple、取引先110社が再エネ100%を表明

米アップルは31日、同社に納める製品の生産に使う電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうと表明したサプライヤーが110社を超えたと発表した。

日本経済新聞「Apple、取引先110社が再エネ100%を表明 村田製作所も」

トヨタのサプライヤーへの要求

トヨタ自動車は直接取引する世界の主要部品メーカーに対し、2021年の二酸化炭素(CO2)排出量を前年比3%減らすよう求めた。

日本経済新聞「トヨタ、部品会社に21年排出3%減要請 供給網で脱炭素」

こうして、大手企業だけでなく、
その取引先の企業まで「CO2削減」に向けて取り組む流れが生まれて来ています。

「CO2削減」への企業の取り組み

では、そうした「CO2削減」に向けて、企業はどのように取り組めばいいのでしょうか?

企業が「CO2削減」を行う場合、上記のような流れで行うと良いとされています。

まずは「どこでCO2が多く排出されているか」を把握し、そこから具体的な省エネに取り組みます。

「省エネ」の前に「再エネ導入」

そして、具体的な「CO2削減」に入る際には、ケースバイケースではありますが
「省エネ」の前に「再エネ導入」を行った方が効率的だと言われています。

例えば、自社で使用する電気全体を再エネ導入で賄えてしまうケースの場合、

CO2削減のために電気機器を買い替えて、あとで再エネを導入すると
そもそもCO2を排出していない電気を使用しているため、
先に行った電気機器の買い替えは、CO2削減という目的においては、あまり意味を成さなくなってしまいます。

これは極端な例かもしれませんが、設備投資などを行う際には
「再エネ導入」と「省エネ」どちらを先に行うか、考えておく必要があります。

自家消費型太陽光発電によるCO2削減効果

その「再エネ導入」において最もポピュラーな方法が、前述のように「太陽光発電」の導入です。

実際に、自家消費型太陽光発電 を導入した場合、
どれほどCO2削減の効果が見込まれるのか、見て行きましょう。

電気料金削減と同じく、業種ごとのCO2削減量を算出したのが上の表になります。
しかし、これではどれ程の規模のCO2削減が可能なのか分かりにくいかと思いますので、
「一般家庭の排出量」や「杉の木のCO2吸収量」に換算して確認してみましょう。

参考:東京都地球温暖化防止活動推進センター:クール・ネット東京「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」より、一般家庭の電気における年間CO2排出量を約2,414kg(世帯排出量約5,060kgの内、電気からの排出47.7%)、杉の木1本当たりの年間CO2吸収量は平均14kgとして算出。

このように「一般家庭の電気における年間CO2排出量」や「杉の木1本当たりの年間CO2吸収量」に換算してみると削減の規模の大きさが良く分かるかと思います。

特に、最も削減量の多い「製造業(生産工場)」の例で見ると
世帯換算で「約483世帯」で、ひとつの大きな住宅街ほどの排出量、
杉の木に換算しても「約83,298本分(約28ha)」と、山一つ分ほどの大きな削減量があることが分かります。

このように、自家消費型太陽光発電 は、導入する量によっては非常に大きなCO2削減量になり、
企業に求められているCO2削減の責任を果たす上でも、効果的な施策になるのです。

メリット3.非常用電源になる

続いて、自家消費型太陽光発電 の3つ目のメリットが「非常用電源になる」という点です。

近年の日本の災害と停電期間

まず、日本における大規模災害とそれぞれの停電期間について見てみましょう。

名称災害分類発生停電期間被害総額
2024年の能登半島地震地震(震度7)2024年1月1日※現在も復旧作業中不明
2022年の福島県沖地震地震(震度6強)2022年3月16日約1日625億円以上
2021年の福島県沖地震地震(震度6強)2021年2月13日6時間不明
令和2年7月豪雨豪雨2020年7月3日5日1900億円
令和元年台風第19号台風2019年10月6日約2週間3961億円
令和元年台風第15号台風2019年9月5日約3週間505億円
令和元年8月の前線に伴う大雨豪雨2019年8月27日最大15時間213.5億円
北海道胆振東部地震地震(震度7)2018年9月6日約1週間1620億円
西日本豪雨豪雨2018年6月28日約1週間約1兆2150億円
大阪北部地震地震(震度6弱)2018年6月18日3時間約1800億円
鳥取地震地震(震度6弱)2016年10月21日1日1億6,000万円(当時)
熊本地震地震(震度7)2016年4月14日約1週間最大4.6兆円
東日本大震災地震(震度7)2011年3月11日約1週間約16兆9000億円

内閣府「防災情報のページ」掲載の各資料経済産業省「令和6年能登半島地震に伴う被害について(1月21日(日曜日)13:00時点)」を元に作成(※2024年1月22日時点での情報です)

大規模自然災害としては、2024年1月1日に能登半島地震が起こったばかりです。
石川県内では約6,000戸の停電が発生し、現時点(1/22)でもまだ全ては復旧していません。

地震や水害などによる停電の期間においては、1日かからずに復旧しているケースもあれば
2~3週間続いたケースも見受けられ、長期間の停電になる可能性があることが分かります。

「BCP対策」の重要性

そこで重要になってくるのが「BCP対策」の重要性です。

災害時においては、何よりもまず人命を守る事が重要です。
さらに企業においては、人命を守る事に加えて「事業の存続・継続を守る」ために
BCP対策」をしておく必要があります。

被災したときに事業はどうなる?

例として、地震などで被災したケースにおける「事業の操業率」を見てみましょう。

内閣府「防災情報のページ」事業継続 初めての方へを元に作成

このように、平常時は通常通り操業(操業率100%)だったところが、
災害などで一気に操業率0%になり、そこからも操業できない時間が続き、やがてゆるやかに回復させ、復旧するという流れになっています。

しかしながら、復旧までの期間が長引くほど、負債がかさみ、取引先が代替え企業に乗り換えるなどの損失も生まれやすく、企業へのダメージも大きくなってしまいます。

そこで、そうした課題を解消すべく行われるのが「BCP対策」です。
BCP対策 を行うことで、下図のように「従来よりも操業を停止させず」事業を継続させることができます。


内閣府「防災情報のページ」事業継続 初めての方へを元に作成

「非常用電源」の重要性

そして、このように事業の操業率を維持し、上げる為に重要になってくるのが「非常用電源」です。

被災直後の非常用電源の重要性

人命救助のための72時間

まず、非常用電源として被災直後に考えなければならないのは「人命を守る」ことです。
人命を守る観点から、非常用電源は72時間稼働できるものが推奨されています。

通信手段の確保など、事業継続に必要な電源

そして、被災直後に非常用電源が重要になる2つ目の理由が「通信手段の確保」です。

被災時にも、通信手段を確保しておくことで
「責任者からの指示伝達」「従業員の安否確認」「取引先への連絡」が可能になります。

実は、被災時においてはこの「通信手段の確保」が事業継続には非常に重要であると言われています。

責任者から指示ができなければ、事業継続は困難ですし
取引先に連絡して、取引先の信用を損なわずに継続して取引できるよう
まずスピーディな「情報発信」が必要です。

取引先との連絡の重要性については、内閣府の事業継続ガイドラインにも
下記のように記載されています。

4.2.2.2 情報発信

不測の事態に直面したとしても、企業・組織の活動が利害関係者から見えない、
何をしているのか全くわからないといった、いわゆるブラックアウトを起こすと、
取引先が代替調達に切り替えるなど、自社の事業継続に不利な状況が進む。

出典:内閣府「事業継続ガイドライン」

「非常用電源」における太陽光発電の特徴

本記事で解説している 自家消費型太陽光発電 も、この非常用電源のひとつです。
ただし、その用途は他の非常用電源とは少し異なる特徴があります。

被災直後の短期的な非常用電源

被災直後の短期的な非常用電源として一般的なのは「蓄電池」や「燃料式の発電機」です。
太陽光発電は天候や時間帯に左右される発電方法であるため、安定性には欠けています。

中長期的な電源としての非常用電源

しかしながら、蓄電池は貯めた電気を使ってしまえば非常用電源として役に立ちません。
燃料式の発電機も、燃料が無くなってしまうと長期的に使用するのは難しい側面があります。

その点においては、太陽光発電は長期的に発電することが可能です。
蓄電池と組み合わせることで、太陽光で発電した電気を蓄えて使用することもできます。

そのため、自家消費型太陽光発電 は、被災直後の非常用電源というよりも
長期的な事業継続を支える非常用電源としての活用を考えると良いでしょう。

先程の「BCP対策」の図に非常用電源の役割を加えると、上の図のようになります。

「非常用電源」としての太陽光発電の新たな課題

また、2024年の能登半島地震において、
非常用電源としての太陽光発電の課題も浮き彫りになっています。

地震で破損した太陽光パネルによる、漏電や感電への注意として
経済産業省がX(旧Twitter)で注意を促しています。

参考:MBS NEWS「地震で破損した太陽光パネルの危険性「まだ発電しているかも…」漏電・感電に注意」

能登半島地震においては、耐震基準が更新される前の建物への被災が多かったこともあり、
過去の大地震よりも家屋の倒壊件数が多い傾向があります。

参考:毎日新聞「能登半島地震 「倒壊危険」建物4割 1万2615棟、古い木造多く」

非常用電源としても期待されている太陽光発電ですが、
家屋の倒壊などで太陽光パネルが破損するほどの被害になった場合には、
こうした危険性が生まれることが今回の能登半島地震で明らかになっており
今後の太陽光発電の大きな課題になりそうです。

自家消費型太陽光発電の「4つのモデル」

ここまで、自家消費型太陽光発電 の特徴について解説してきました。

自家消費型太陽光発電 には、さまざまな目的に合わせて「さまざまなモデル」があります。
この項では「自家消費型太陽光発電の種類」について解説していきます。

「自家消費型太陽光発電の種類」は大きく分けて4種類

「自家消費型太陽光発電の種類」には大きく分けて、
自社所有モデルオンサイトPPA自己託送オフサイトPPA の4種類があります。
それぞれの特徴をまとめると、下の表のようになります。

それぞれの特徴については、順番に詳しく解説して行きます。

1. 自社所有モデル

一般的な 自家消費型太陽光発電 のモデルで、これまでにご紹介してきた「自家消費型太陽光発電」は、主にこの「自社所有モデル」のことを指しています。

イラストのように

1.自社の敷地に設置した
2.自社所有の太陽光発電所で
3.発電した電気を
4.自社で使う

というシンプルな自家消費型太陽光発電のモデルです。

他のモデルとの比較

他のモデルと比較すると、下記のような特徴があります。

メリット

・発電した分の電気料金がかからない。
・非常用電源として活用できる。

デメリット

・導入費用やメンテナンス費用がかかる。
・敷地内に太陽光発電を置けるスペースによって、発電量に限りがある。

2. オンサイトPPA

自社所有モデル は導入費用がかかる点がデメリットだったため、
「導入費用がかからないモデル」として考えられたモデルがオンサイトPPAです。

1.自社の敷地に設置した
2.「他社所有」の太陽光発電所で
3.発電した電気を「購入して」
4.自社で使う

という形の自家消費型太陽光発電になります。

オンサイトPPA の発電所は、自社ではなく第三者が所有する発電所になるため
「導入費用やメンテナンス費用」がかかりません。

その代わり、第三者の発電所であるため、
発電した電気を購入する必要があり、電気料金を支払う必要があります。

※こうした「PPAモデル」においての発電所の持ち主を「PPA事業者」と呼びます。


他のモデルとの比較

他のモデルと比較すると、下記のような特徴があります。

メリット

・導入費用やメンテナンス費用はかからない。
・非常用電源として活用できる。

デメリット

・発電した電気を購入するため、電気料金はかかる。
 (ただし9~11円/kWhと安価であるため、電気料金の削減にはなります)
・敷地内に太陽光発電を置けるスペースによって、発電量に限りがある。

より詳しい解説はこちら

3. 自己託送

自社所有モデルオンサイトPPA は、電気を使用する施設の敷地内に太陽光発電所を設置するため
発電量に限りがありました。

そこで、より多くの電気を発電するべく考えられたのが自己託送です。

自己託送 は、イラストのように

1.「遠隔地」にある
2.「自社所有」の発電所から
3.小売電気事業者 の送配電網を使って「送電して」
4.電気を使用する施設で使用する。

という自家消費のモデルです。
自社の敷地以外から送電するので、大きな土地を用意すれば、非常に多くの再エネを導入することができます。

【2024年1月から、自己託送の新規受付が当面停止に】
 
最新の情報として、2024年1月から 自己託送 は、新規受付停止となっており、
新たな制度の要件が定まるまでは導入することができません。
本来の制度の趣旨に合わない導入方法が相次いだため、
要件を厳格化する方針とのことです。
 
参考:ソーラージャーナル「自己託送の新規受付を当面停止。「再エネ賦課金逃れ」防止で要件を厳格化へ」
他のモデルとの比較

他のモデルと比較すると、下記のような特徴があります。

メリット

・敷地内のような制約は無く、大規模な発電が可能。
・発電した分の電気料金はかからない。

デメリット

・導入費用やメンテナンス費用、託送料金 がかかる。
・計画通りに発電できない場合、ペナルティ料金がかかる。
・対象になる補助金制度が少ない。
・非常用電源としての活用には期待できない。

より詳しい解説はこちら

4. オフサイトPPA

そして、自己託送 のように遠隔地に発電所を設置することで規模を大きくしつつ
オンサイトPPA のように「導入費用がかからない」モデルとして考えられたのがオフサイトPPAです。

オフサイトPPAは、図のように

1. 需要家「敷地外」「第三者所有」の発電所を設置する。
2.発電した電気を、小売電気事業者 を介して送電
3.発電した電気を、需要家 が購入して使う。

というモデルです。

発電所を運営する 発電事業者 が第三者になりますが、
電気を売買する資格のある「小売電気事業者」でなければ、直接電気の売買ができませんので
小売電気事業者」を仲介することで、間接的に電気の売買を行っています。

また、契約のハードルが非常に高いため、
現状では、導入しているのは大手企業ばかりになっています。

他のモデルとの比較

他のモデルと比較すると、下記のような特徴があります。

メリット

・敷地内のような制約は無く、大規模な発電が可能。
・導入費用やメンテナンス費用がかからない。

デメリット

・非常用電源としての活用には期待できない。
・他のモデルと比べると電気料金の削減効果が低い。
・契約のハードルが非常に高い。

より詳しい解説はこちら

現状で主流なのは「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」

このように「4つの 自家消費型太陽光発電 のモデル」をご紹介しましたが、
自己託送 は現在受付停止中ですし、オフサイトPPA は契約のハードルが高く
大手企業以外には導入は難しいのが実情です。

そこで現状で主流になるのは「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」になります。
本記事では主に「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」の比較をもう少し掘り下げて解説していきます。

「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」の比較

それでは「自社所有モデル」と「オンサイトPPA」の特徴を比較してみましょう。

各項目ごとの比較

自社所有モデル」と「オンサイトPPA」の特徴を、各項目ごとに比較すると
下記の表のようになります。

オンサイトPPA は、導入費用やメンテナンス費用がかからないという大きなメリットがあります。

しかしその反面、発電した電気を購入する必要があるため、電気料金がかかりますので、
毎月の電気料金削減においては、自社所有モデル に軍配が上がります。

<オンサイトPPAでも電気料金は削減できる>
 
オンサイトPPAの場合、PPA事業者 が発電した電気を購入する必要があります。
しかしながら、その電気料金は安価で「9~11円/kWh」が目安になっています。
 
現在の高騰した電気料金と比較すれば、電気料金をかなり抑えることができますし
高騰前の価格と比較しても、低圧や高圧よりは若干安価で、特別高圧は同程度という傾向があります。

自社所有モデルの方が「利益が大きい」

自社所有モデルオンサイトPPA の電気料金を比較すると
図のように、オンサイトPPA には「PPA事業者(発電所の持ち主)」の利益が乗りますので
その分、自社所有モデル のほうが電気料金は安くなります。

自社所有モデル」は導入費用が多くかかりますが、
長期的にみると、自社所有モデルの方が利益が大きいことが分かります。

先に投資するかどうかの違い

オンサイトPPAは、導入費用がかからず手軽に自家消費型太陽光発電を導入できますが、
毎月の電気料金はかかります。

自社所有モデルは、導入費用やメンテナンス費用がかかりますが、
毎月の電気料金は削減できます。

つまり両社の違いは「費用を先に支払うかどうかの違い」でもあります。

車を購入するときに、ローンで買うか、一括で支払って買うかの違いとイメージすると分かりやすいかもしれません。

オンサイトPPAの注意点

続いて、オンサイトPPA を導入する際に、注意すべき点を解説していきます。

1. 契約期間が長い

オンサイトPPA を導入する場合、発電所の所有者との契約期間は「15~20年」になるのが一般的です。

2.「オンサイトPPA」の発電所は勝手に変更ができない

オンサイトPPA」の発電所は、自社所有では無く「第三者の所有する発電所」です。
この為、契約期間中は、発電所を設置した建物の建て替えなど、発電所の変更や引っ越し、撤去などができません。

3. 契約には審査が必要

オンサイトPPA を導入する場合、PPA事業者 の審査を受ける必要があります。
設置場所の条件や、経営状況によっては審査を通らない可能性もあります。

前述のように、オンサイトPPA の契約期間は15年から20年と長期に渡ります。
その長期間、経営状況を維持できるかどうかは、PPA事業者 にとってはリスクを避ける為に判断が必要になるのです。

税制優遇と補助金制度

自家消費型太陽光発電 を導入する際には、
国からの税制優遇や補助金制度を活用することが出来ます。

税制優遇:中小企業経営強化税制

再エネ設備を導入する際に、多くの企業で活用されるのがこの「中小企業経営強化税制」です。

自家消費型太陽光発電を導入した初年度の「節税」に繋げることができます。

概要

対象条件を満たした企業が、一定の設備を導入した際に
即時償却 または取得価額の10%の税額控除を受けることができる制度です。

中小企業経営強化税制について、詳しくはこちら

中小企業経営強化税制に関しては、「即時償却」や「対象となる企業の条件」等、
少し複雑で分かりにくい部分があります。
下記に詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

自家消費型太陽光発電に活用できる補助金制度

また、自家消費型太陽光発電 導入の際には、さまざまな補助金制度を受けられます。
現在はまだ、概算要求 の段階ですが、令和6年度に公募される見通しの補助金制度については
下記の記事で詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

※要注意:「発電所の設計ミス」の落とし穴

ここまで、自家消費型太陽光発電 の特徴や種類、補助金などをご紹介してきましたが、
次に注意点として「知っておいて頂きたい」ことが、

自家消費型太陽光発電は、
「導入目的」「電気の利用状況」「発電所を設置できる広さ」
などによって、設計が大きく変わってくる

ということです。

もし誤った設計をしてしまうと

停電などが起こることもあり、事業に大きな影響が出てしまう」

というリスクもあります。

このリスクに関しては、自社所有モデルPPAモデル自己託送
どのモデルの 自家消費型太陽光発電 でも起こりうる問題です。

どのモデルを選ぶ場合でも、この注意点は確認しておきましょう。

折角、電気料金削減のために 自家消費型太陽光発電 を導入しても、
停電などが起こり「事業に損失を出してしまっては意味がありません」

そうした「設計上のリスク」も、導入前に把握しておいた方が良い注意点ですので
解説していきます。

なぜ設計を誤ると停電してしまうのか

それでは、なぜ設計を誤ると停電してしまうのでしょうか?
代表的な一例である「逆潮流」について、解説していきます。

例:発電量が消費電力量を大きく上回ると、停電が起こる

発電した電気をすべて自社で使用する「全量自家消費」の 自家消費型太陽光発電 の場合、
消費電力量を発電量が大きく上回ると、停電が起こってしまうことがあります。



発電量が消費電力を大きく上回ってしまうと「逆潮流」という現象が起こり、
停電が起こる原因になってしまうのです。

 

逆潮流とは?

ではその「逆潮流」とはどのような現象なのでしょうか?

通常時(順潮流)

 
 
通常時(順潮流)時には「電力会社から 需要家」に電気が流れて行きます。


逆潮流

 
 
しかし、発電量が消費電力量を上回ってしまった場合、消費し切れなかった電力が「逆流」し「需要家 から電力会社」へ、通常とは逆の流れになります。


このように、想定外の「逆潮流」が起こった場合には、
安定した電力供給ができなくなり、停電を起こしてしまう危険性があるのです。

 

逆潮流させる「余剰売電型」

ご紹介した「全量自家消費」の場合には、逆潮流 が起こると停電のリスクがありますが、

「余った電気を売電する」余剰売電型の場合には、売る電気を 逆潮流 で流すため、停電などのリスクはほとんどありません。

「余剰売電型」は補助金の対象外

逆潮流 のリスクを考えると、一見「余剰売電型」の方が良いと考えられますが、
「余剰売電型」は補助金の対象外になることが多いため、
補助金の活用を視野に入れる場合には「全量自家消費」で「逆潮流」しない設計を考える必要があるのです。

「発電量」と「消費電力量」を緻密に計算した設計が重要

この 逆潮流 の例のように、自家消費型太陽光発電 を設計する際には

「どれほど発電するか」
「どれほどの電力を消費するか」

をしっかりと把握し、逆潮流 などが起こらないように緻密に計算した
設計を行う必要があります。

「どれほど発電するか」

「どれほど発電するか」は、太陽光発電所を設置するエリアの日射量や
天候、季節などによる変動の可能性も把握しておく必要があります。

「どれほどの電力を消費するか」

「どれほどの電力を消費するか」は、通常の稼働時間や休業日なども把握する必要があります。

年末年始などの長期休業などの見落としがちな休業日など、
あらゆる消費状況を想定して設計する必要があります。

また、新設の施設に 自家消費型太陽光発電 を導入する場合には、
電気利用状況の過去のデータが無いため、他施設での電力消費量などを参考にし、
緻密なシミュレーションを行う必要もあります。

他の例など、より詳しくはこちら

「発電所の設計ミス」の落とし穴の一例として、
逆潮流 の例をご紹介しましたが、他にも設計を誤ってしまうと陥りやすい落し穴があります。
本記事ですべてご紹介すると、長くなりすぎてしまいますので

それらの情報については、下記の「自家消費の落とし穴」として
無料ダウンロード資料にまとめていますので、こちらもお役立てください。

自家消費型太陽光発電の事例

前項で「目的」や「環境」によって内容が異なるというお話をしましたが、
実際に目的や環境によって、設計などがどのように変わって来るのか?
実例を見てみましょう。

主な目的が「電気料金の削減」のケース

埼玉県 スーパー系物流センター

<目的>
元々は 投資型太陽光発電 を複数所有していましたが、FIT の値下がりを受け、自家消費型太陽光発電 にシフト。

<施設の環境>
使用電気量は非常に多いが、昼夜の電気使用量の差が少ない。トラックの出入り状況でデマンドの変化が激しい為、発電量を制御して 逆潮流 が起こらないよう設計。

主な目的が「再エネシフト」のケース

愛知県 家具物流センター

<目的>
CO2削減の為の再エネシフトとして
自家消費型太陽光発電 を導入。

<施設の環境>
大きな発電量の発電所を設置可能なスペースがありましたが、消費電力が少ないため、自社で使用して余剰電力を売るというスキームで実施しています。



詳細:株式会社エネテク「自家消費型太陽光発電施工事例>愛知県弥富市 家具物流センター」

主な目的が「BCP対策」のケース

大阪府 福祉施設

<目的>
災害時の非常用電源確保と電気料金削減のために導入。

<施設の環境>
屋根に太陽光発電を設置し、蓄電池と併用することで非常用電源として活用できるようにしています。



詳細:株式会社エネテク「自家消費型太陽光発電施工事例>大阪市 特別養護老人ホーム」

このように、目的や施設の環境によって
自家消費型太陽光発電 の設計・内容は大きく変わってきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

2024年現在の 自家消費型太陽光発電 の特徴や取り巻く環境について
ひと通りお分かりいただけたのではないかと思います。

・「電気料金削減」「CO2削減」「BCP対策」にまとめて対策できる。
PPAモデル など、さまざまなモデルがある。
・税制優遇や補助金制度などがある。
・設計にミスが無いよう注意が必要。

自家消費型太陽光発電 については、上記のような特徴があります。

PPAなどのさまざまなモデルがあり、補助金制度もあり、設計にも注意点があるなど
いろいろと話が複雑な部分もあり、より詳しく知りたいことなどもあるかと思います。

「企業省エネの教科書」を運営する「株式会社エネテク」は、
自家消費型太陽光発電 の設計・施工経験の豊富な電気工事会社です。

自家消費型太陽光発電 について、
ご不明な点等ございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
お問合せはこちら「自家消費型太陽光発電に関するお問合せ」

また「自家消費の落とし穴」と題して、
導入前に、予め担当者が知っておくべき点を、資料にてご紹介しています。

この資料と本記事をお読みいただければ、
自家消費型太陽光発電 導入に関しての基礎知識はひと通りご理解頂けるかと思います。

ぜひこちらも併せてお役立てください。

本記事でご紹介した情報が、御社の自家消費導入検討のお役に立てれば幸いです。