省エネの教科書とは

【1分でわかる】エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは?

※2023年5月24日 最新情報に更新しました。

近年の「エネルギー問題」において
「電気料金の高騰」や「CO2削減」は、企業にとって重要な課題です。

その解決策のひとつとして注目されている「エネルギーマネジメントシステム」は、
「電気料金削減」だけでなく「CO2排出量の算定」においても、
2024年現在、非常に重要なツールになってきています。

本記事では、

1分でわかる「エネルギーマネジメントシステムとは?」

と題して、冒頭で簡単に解説しつつ、より詳しく知りたい方のために

「注目されている背景」
「エネルギーマネジメントシステムの種類」
「補助金制度」
「エネマネサービスの探し方」

などについても、続けて詳しく解説していきます。

みなさまの必要な情報に合わせて、本記事をお役立て頂けますと幸いです。

本記事をひととおり読んで頂ければ、エネルギーマネジメントシステムに関する知識は
ひととおりご理解いただけるようになるかと思いますので、ぜひご活用ください。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



1分でわかる「エネルギーマネジメントシステムとは?」

エネルギーマネジメントシステムとは?

エネルギーマネジメントシステムとは、エネルギーの使用状況をデータ化し「見える化」し、
空調や照明、製造機器などを制御してエネルギー使用を最適化するシステムです。

「Energy Management System」の頭文字を取って「EMS」と呼ばれることもあります。

続いて、メリット・デメリットからより詳しく内容を確認していきましょう。

どんなことができる?(メリット)

1.エネルギーの使用状況が分かる

社内などで使用されるエネルギーが、どんな機器で、いつ、どれくらい使用されているのか
などを、データ化して把握することができます。

2.エネルギーの無駄を見つけて改善できる

これにより、エネルギーが無駄に使用されている箇所や老朽化している箇所を特定して改善したり、
省エネとして行った施策の効果をデータで検証することが可能になります。

3.CO2排出量が算定できる

エネルギーの使用状況をデータ化することによって、CO2の排出量も算定できます。

4.自動制御が行える機能も

また、製品によっては、空調や照明や設備機器などを自動制御して
エネルギーの無駄遣いを防いでくれるものもあります。

省エネ活動の土台となるシステム

つまり、省エネを行うための情報収集が主になるシステムです。

まず、どこを改善すべきかを把握して取り組んだほうが、
より効果的に省エネ施策を行うことができます。

エネルギーマネジメントシステムは、
省エネ活動の土台となる重要な役割をになっていると言えます。

注意点(デメリット)

反対に、注意点(デメリット)も確認しておきましょう。

1.初期費用がかかる

エネルギーマネジメントシステムの導入には、初期費用がかかります。
(規模や業種によって費用は大きく異なります)
ただし、補助金制度も活用することで、負担を軽減することが出来ます。

2.設備によっては導入できない

古い生産設備など、設備によっては、エネルギーマネジメントシステムによるデータ取得ができないものもあります。

3.運用には専門知識が必要

また、運用には分析や改善箇所の抽出などの専門知識が必要な点にも注意が必要です。

注目されるようになった背景

エネルギーマネジメントシステムについて、おおよそご理解いただいたうえで
より詳しく知りたい方向けに「注目されるようになった背景」から解説していきます。

エネルギーマネジメントシステムがより注目されるようになったのは、
主に下記3つの理由が要因です。

1.電気料金の高騰
2.企業に求められるCO2削減
3.エネルギー安全保障の重要性の高まり

順番に解説して行きます。

1.電気料金の高騰

まずひとつめの背景が「電気料金の高騰」です。


出典:一般社団法人エネルギ―情報センター「新電力ネット」を元に作成

上のグラフは、2024年5月の現時点で最新の2024年1月までの電気料金の推移です。
ウクライナ情勢をきっかけに、天然ガスなどの化石燃料が高騰し、
電気料金が大きく値上がりしています。

この高騰は、少なくとも2025年ころまで続くと考えられています。

省エネの必要性が高まっている

こうした背景から、省エネの必要性が高まっており、
その土台として重要な、エネルギーマネジメントシステムへの注目も高まっているのです。

「電気料金の値上り」について詳しくはこちら

「電気料金の値上り」については、下記の記事でより詳しく解説しています。
気になる方はご参照ください。

2.企業に求められるCO2削減

2つめの背景が「CO2削減」です。
特に「CO2削減」においては、エネルギーマネジメントシステムの必要性が非常に高くなっています

世界で、日本で、企業に求められるようになった「CO2削減」

近年、急速に進む「地球温暖化」への対応策として、
国際社会において「CO2削減」が叫ばれてきました。

その影響もあり、日本においても2020年に「カーボンニュートラル宣言」が宣言され、
CO2削減」の流れが強まってきました。

「CO2削減に関する国際社会の動き」について詳しくはこちら

サプライチェーン排出量

こうして、企業にも「CO2削減」が求められるようになってきたのですが、
その中でサプライチェーン排出量の削減が求められるようになります。

「サプライチェーン排出量」とは?

サプライチェーン排出量」とは、図のように

「自社の排出」だけでなく、その原材料を製造する「取引先」や、販売先への輸送や廃棄など、一連の「上流・下流」も含めた「サプライチェーン 全体」から発生する温室効果ガス排出量

のことを言います。
この「サプライチェーン排出量」の削減が重要視され、
大手企業を中心に削減策に力を入れ始めたのです。

取引先企業から、削減を求められるように

サプライチェーン排出量」における「CO2削減」が、大手企業を中心に行われるようになることで
その取引先にもCO2削減」や「CO2排出量の算定」が求められるようになりました。

こうした背景もあり、「CO2排出量算定」を行うために
エネルギーマネジメントシステムの必要性が高まっているのです。

3.エネルギー安全保障の重要性の高まり

「1.電気料金の高騰」でも少し触れたように、
現在の電気料金の高騰は「国際情勢の影響」を大きく受けています。

日本の電源構成の70%が「天然ガスや石炭を燃料にした火力発電」であり、
その燃料の大半は輸入に頼っているのが現状です。

このように、エネルギーの安定供給を目指し、国際社会の影響を少なくしていくことが
「エネルギーの安全保障」として重要視されています。

その中で、再エネなどの国産エネルギーの増加だけでなく、
限られたエネルギーを効率的に使用するための「エネルギーマネジメントシステム」の重要性も注目されています。

EMSの市場規模

続いて、エネルギーマネジメントシステム(EMS)が今後どれだけ重要視されていくのか?
国内の市場規模の今後の展望を見て行きましょう。

下のグラフは、2024年2月に発表された、富士経済によるEMS関連市場の現状と今後の予測です。

出典:富士経済グループ「EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場を調査」を元に作成

図のように、EMSの市場は2022年度の時点で「約1.3兆円」に達しており、今後も成長する見通しです。2035年度には「約2.7兆円」になる見通しで、現在の倍の規模になる予測になっています。

これは、前述のように「サプライチェーン排出量」算定の必要性などから、
その後の省エネのための改善活動など、
エネルギーマネジメントシステムが世の中により必要になって来る可能性が高いことから
このような見通しになっています。

EMSの種類

エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、
ビル、住宅、工場など、導入する施設によってさまざまな種類に分類されます。

御社の設備には、どのようなEMSが該当するのか確認しておきましょう。
それぞれの特徴や市場規模について解説して行きます。

BEMS(ビル向けのEMS)

オフィスビルや商業ビル向けのエネルギーマネジメントシステムは、
「Building Energy Management System」の頭文字を取ってBEMS(ベムス)」と呼ばれます。

BEMS(ベムス)の適用範囲

BEMSは、ビルのエネルギーが対象範囲になりますので、
主に以下の箇所で使用されるエネルギーを、見える化・制御するシステムになります。

・受変電設備
・空調・衛生設備
・照明設備

2種類のBEMS(ベムス)

また BEMSは、以下の2種類にも分類されます。

1.BAS(ビル中央監視制御システム)
2.エネルギー監視特化型システム
1.BAS(ビル中央監視制御システム)

大規模なビルでは、「BAS(ビル中央監視制御システム)」が導入されていることがあります。

この「BAS」は「Building Automation System」の略で、
エネルギーマネジメントシステムに加えて、
防犯や防災などの設備も管理、制御するシステムになっています。

つまり「BAS」を導入した際にも「BEMS(ベムス)」の機能を含んでいますので、
BASを導入すれば「BEMS(ベムス)」を導入することにもなります。

2.エネルギー監視特化型システム

対して、エネルギーマネジメントシステムに特化しているのが
「エネルギー監視特化型システム」です。
こちらは、小中規模ビルで導入されることが多い傾向があります。

政府は、2030年までにZEB導入強化を目指す

日本政府は、前述の「2050年カーボンニュートラル」の一環として
「2030年までに、新築ビルの平均で ZEB(ゼブ)を実現する」ことを目標に置いています。

ZEB・・・CO2排出量を抑える、再エネを導入する、などの施策を通じて実現する「CO2排出量が実質ゼロ」のビル

参考:環境省「ZEB普及目標とロードマップ」

この「ZEB の実現」のためにも、BEMS(ベムス)は非常に重要になってきます。

BEMS(ベムス)の市場規模の見通し

そうした背景を受けて、BEMS(ベムス)の市場規模は今後も伸びて行く見通しです。


出典:富士経済グループ「EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場を調査」を元に作成

BASの市場規模は現状でも大きいのですが、中小規模を中心に「エネルギー監視特化型システム」が今後大きく伸びる可能性が高いと見られています。

また、BEMS(ベムス)はさまざまな種類のエネルギーマネジメントシステムの中でも、
最も市場規模が大きいことも特徴です。

HEMS(住宅向けのEMS)

住宅向けのエネルギーマネジメントシステム(EMS)は、
「Home Energy Management System」の頭文字を取って「HEMS(ヘムス)」と呼ばれます。

政府は、2030年までにZEH基準の住宅の標準化を目指す

BEMS(ベムス)の項でご紹介した「ZEB(ゼブ)」と同様に、
政府は住宅においても「ZEH(ゼッチ)」の推進にも力を入れており、

2030年以降に新築される住宅については、ZEH(ゼッチ)基準を平準化する
ことを目標にしています。

※ZEH・・・CO2排出量を抑える、再エネを導入する、などの施策を通じて実現する「CO2排出量が実質ゼロ」の住宅。

この「ZEH(ゼッチ)」の実現のためにも、エネルギーマネジメントシステムの導入が重要であり、
HEMS(ヘムス)」の重要性が高まっています。

HEMSの市場規模の見通し


出典:富士経済グループ「EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場を調査」を元に作成

HEMS(ヘムス)」の市場規模の見通しも、今後大きく伸びる見通しになっています。

FEMS(工場向けのEMS)

工場におけるエネルギーマネジメントシステムは、
「Factory Energy Management System」の頭文字を取ってFEMS(フェムス)」と呼ばれます。

FEMS(フェムス)の適用範囲

FEMS(フェムス)では、下記のような BEMS(ビルのEMS)の適用範囲だった箇所に加え、

[BEMS(ビルのEMS)の適用範囲]
・受変電設備
・空調・衛生設備
・照明設備

下記のような「生産設備」のエネルギーも適用範囲になります。

・生産設備
・ユーティリティ設備

省エネ法とISO50001規格認証

省エネ法への対応

「原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する事業者」は、
省エネ法に定められた内容に基づいて、定期的にエネルギーの使用状況を報告する必要があります。

平成21年度の改正により、省エネ法の項目の中にも新たに、
エネルギーマネジメントシステム」に関する記述が追加されています。

参照:資源エネルギー庁「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」
※記述はFEMS(フェムス)ではなく、BEMS(ベムス)になっています。

ISO50001規格認証

また、エネルギーマネジメントシステムに関するISO規格「ISO50001」を取得することで
取り引きにより大きな信頼を得られます。

「ISO50001」は、前述の省エネ法の中でも推奨されています。

参照:資源エネルギー庁「ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム)」

FEMS(フェムス)の市場規模の見通し

FEMS(フェムス)の市場規模の見通しは、下記のようになります。
(前述のBEMSやHEMSとは年が異なり、少し古いデータを参照しています)


出典:富士経済グループ「EMSと関連機器・サービスの国内市場を調査」を元に作成

CEMS(地域全体におけるEMS)

地域全体のエネルギーを管理し、コントロールするエネルギーマネジメントシステム(EMS)は、
「Community Energy Management System」の頭文字を取って「CEMS(セムス)」と呼ばれます。

地域内にある BEMS HEMS FEMS を包括して、地域内のエネルギー使用を最適化します。

「スマートシティ」「スマートグリッド」などの取組みにおいては、
欠かせないシステムになります。

CEMSの市場規模の見通し


出典:富士経済グループ「EMS(エネルギーマネジメントシステム)関連の国内市場を調査」を元に作成

CEMS(セムス)は、これまでご紹介したさまざまなEMSの中では市場規模は小さいのですが、
2035年の見通しにおいては、大きく成長する見通しのある市場であるとも言えます。

EMS導入に活用できる「補助金制度」

続いて、エネルギーマネジメントシステム(EMS)導入に活用できる、本年度の補助金制度をご紹介します。

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」は、工場や事業所における
電化や脱炭素を目的とした、設備導入や更新費用の一部を支援する、補助金制度です。

いくつかある分類の中でも「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」が、エネルギーマネジメントシステム導入を補助の対象にしています。

補助対象となる事業

「エネルギーマネジメントシステム機器の導入」に対する補助金制度です。

ただし「制御効果」と「省エネ診断等による運用改善効果」により、
原油換算量ベースで「省エネルギー率2%以上」を満たす事業であることが条件になっています。

補助対象となる経費

「設計費・設備費・工事費」が対象になります。

補助率

補助率は、企業の規模によって異なります。

中小企業等:1/2以内
大企業・その他:1/3以内

補助限度額

また、補助限度額には上限も下限も設けられています。

【上限額】1億円/事業全体
【下限額】100万円/事業全体

公募期間

現在、二次公募が行われています。

2次公募期間:2024年5月27日(月)~7月1日(月)

詳しくはこちら

「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」について、
詳しくは下記リンク先をご参照ください。

一般社団法人 環境共創イニシアチブ「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」

予算に合った「EMSサービス」の探し方

ここまでひと通り、エネルギーマネジメントシステムの種類や補助金までご紹介してきましたが
続いて、気になるのが

「どんなEMSサービスがあるのか」
「自社の予算に合ったサービスはどうやって探すのか」

という点になって来るかと思います。

そこで「EMSサービス」を探す際に便利なのが、
「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」が提供している「エネマネ事業者検索」です。

一般社団法人 環境共創イニシアチブ「エネマネ事業者検索」

「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」は、前述の補助金制度の公募を行っている事業者です。

上記のサイトでは、初期費用や月額費用、対象設備や業種などによって
条件を絞り込んで、エネマネ事業者を検索することができますので、

エネマネ事業者やサービスを探す際に便利です。

まとめ

いかがでししたでしょうか?
エネルギーマネジメントシステムについて、特徴や種類、補助金など
基本的な情報をひととおりご理解頂けたのではないかと思います。

この記事が、御社のエネルギーマネジメントシステム導入の判断の
お役に立てますと幸いです。