省エネの教科書とは

【2023年最新】キュービクルやトランスの交換は省エネのチャンス!

電力会社などで発電した電気を、高圧以上の契約をした工場や施設などで使用する場合には
「受電設備(キュービクル)」が必要になります。

この「キュービクル」は、一定期間で交換する必要があり、

ここ20年で トランス(変圧器)の省エネ性能が飛躍的に向上している

ため、交換を行うことは「省エネ」のチャンスにもなります。

この記事では、キュービクルトランス(変圧器)についての基礎知識を交えながら
交換や省エネについて分かりやすく解説していきます。

キュービクルトランス(変圧器)の交換や省エネについてお考えのみなさまの
参考になれば幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



キュービクルとは?

キュービクル とは、発電所から送られてくる電気を、
その施設で使用できる電圧に変圧する機器などを、金属製の箱に入れた設備です。

工場やビルなどの屋上や、敷地内に設置されています。
上の写真のような設備になりますので、見たことがある方も多いかと思います。

正式名称を「キュービクル式高圧受電設備」といいます。

キュービクルの役割

キュービクル は、図のように

1.発電所から送電された高圧の電気を
2.敷地内で受電し、
3.低圧100V,200Vに変換して
4.電気を使用する施設で使用できるようにする

という役割を担っています。

キュービクルが必要なのは高圧以上

この キュービクル が必要な施設は「高圧や特別高圧の電力契約をしている施設」になります。
50kW未満の「低圧受電契約」の施設では、キュービクルは必要ありません。

低圧の受電設備

低圧の電圧の変換は、図のように電力会社の変電設備によって行われますので
高圧以上の受電契約のように、自分たちで キュービクル などを用意する必要はありません。

低圧の変電設備(トランス)は、ポリバケツのような形をしていて
電柱の上部に設置されていますので、見たことがある方も多いかと思います。

キュービクルの中身

キュービクルの扉を開けると、下図のようにさまざまな機器が入っています。

すべての機器を解説していくとかえって分かりにくいかと思いますので、
赤字で示した、特に重要な機器に絞って解説していきます。

1.変圧器(トランス)

受電した電気の電圧を変換する機器です。
前述のように、キュービクルの役割は「電圧の調整」ですので、

変圧器(トランス)は、キュービクル の中でも中心的な役割をする機器になります。

変圧器(トランス)が電圧を変換するしくみ

変圧器(トランス)は、図のように1000Vから100Vに変換する場合を例とすると

1.電力会社から入ってきた電気を「一次巻線」で「巻数1,000」で受け取る。
2.その電気が鉄心を通って「二次巻線」に送られ、
3.「二次巻線」で「巻数100」で100Vの電圧に変換される

といった流れで、電圧を変換しています。

2.高圧進相コンデンサ

高圧の電力を キュービクル に取り込んで、100Vや200Vに変換する際には
「遅れ力率(電圧より電流が遅れている状態)」になり、受電した電力を効率よく活用できません。

また、電気料金には 力率 による割引が設定されており、
遅れ側になるほど割引が無くなって行きます。

この 力率 を「進み側」にさせることで、受電した電力を効率よく活用できるようにするのが
「高圧進相コンデンサ」の役割です。

3.直列リアクトル

キュービクル 内には「高調波」と呼ばれる「電流のひずみ」が生まれることがあり
電路や接続機器に悪影響を及ぼす可能性があります。

この「高調波」の抑制や、過大な電流・電圧などによる弊害を抑制や軽減する機器が「直列リアクトル」です。

4.電圧計、電流計

キュービクル に入ってきて「変換した後」の電圧が表示されます。
そのため、電圧計は異常が無ければ100V・200Vに近い数値を示します。

キュービクルの交換時期

キュービクル の役割や中身についてご理解いただいたところで
キュービクルの「交換時期」について解説して行きます。

キュービクルの実用耐用年数と法定耐用年数

まず、キュービクル の耐用年数について見て行きましょう。
キュービクル の耐用年数には、メーカーが設定した「実用耐用年数」と「法定耐用年数」の2つがあります。

実用耐用年数は「15~20年」

キュービクル の実用耐用年数は、メーカーや製品によっても異なりますが
「15~20年」になっていることが一般的です。

法定耐用年数は「10~15年」

それに対して、法定耐用年数は「10~15年」と、実用耐用年数より短く設定されています。

各部品の交換時期

また、キュービクル 内の機器ごとにも耐用年数は異なりますので
キュービクル全体の耐用年数より短い機器には注意が必要です。

機器ごとの耐用年数一覧

機器ごとの耐用年数をまとめると、以下の通りです。

メーカーや製品によっても異なりますが、
キュービクル全体の耐用年数より耐用年数が短い機器については、早めに交換する必要性が出て来るかもしれませんので、注意が必要です。

キュービクルの交換はなぜ必要?

このように、耐用年数が設けられている キュービクル ですが、
交換を怠った場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか?

1.「波及事故」発生のリスク

キュービクル の老朽化によって起こる「波及事故」が大きなリスクのひとつです。

「波及事故」とは?

波及事故 とは、キュービクル 内に漏電などが起こった際に、
敷地内の施設だけでなく、近隣の施設まで停電させてしまう事故のことを言います。

キュービクル が老朽化していると、この「波及事故」が起こりやすくなります。

また「波及事故」によって近隣の施設まで停電させてしまった場合、
賠償責任が発生する可能性もありますので、注意が必要です。

2.最新機種と比較して省エネ性能が低くなる

近年、変圧器(トランス)などの省エネ性能は大きく向上しています。
古い機種を使用していることで、最新機種と比較して省エネ性能が劣ることも交換をしない場合のデメリットになります。

PCB分析が必要

古い 変圧器(トランス)や コンデンサー には
「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」が使用されたものがあります。

このPCB(ポリ塩化ビフェニル)には毒性があり人体にも有害であるため、

変圧器(トランス)や コンデンサー にPCBが含まれていた場合には、
専門の処理施設での処理が必要になるため、通常の産業廃棄物として処理することはできません。

絶縁油のPCB分析が必要

PCBが 変圧器(トランス)や コンデンサー に含まれているかどうかは、
絶縁油のPCB分析によって調査する必要があります。

昭和28年(1953年)から昭和47年(1972年)に国内で製造された 変圧器(トランス)や コンデンサー
には、PCBが含まれている可能性がありますので、注意が必要です。

変圧器(トランス)で起こる「電気の損失」

それでは 変圧器(トランス)の省エネについて解説する前に、
変圧器(トランス)で起こる「電気の損失」について解説します。

前述のように、変圧器(トランス)は「巻線」と「鉄心」によって電圧を変換するしくみになっています。



負荷損と無負荷損

この中で「巻線」から発生する電気の損失を「負荷損
「鉄心」から発生する電気の損失を「無負荷損」といいます。

損失は1~3%だが・・・

変圧器(トランス)の効率は、もともと97~99%と非常に良く、
電気の損失は、全体の1~3%に過ぎないのですが、扱う電気の量が大きいため
この損失を低減することは、電気料金の削減に大きな効果があります。

材質を変えることで高効率化

この「負荷損と無負荷損」は巻線や鉄心の材質を変えた、省エネ効率の高い 変圧器(トランス)に交換することで、損失を低減することができます。

巻線における「負荷損」の低減
従来の巻線には「アルミニウム」が使用されていることが多いのですが、
省エネタイプでは、より電気抵抗の小さい「銅」を使用しています。
鉄心における「無負荷損」の低減
従来の鉄心には「一般方向性電磁鋼板」が使用されていることが多いのですが、
省エネタイプでは、より電気抵抗の小さい「高配向性電磁鋼板」や「磁区制御電磁鋼板」「アモルファス」といった材質を使用しています。

変圧器(トランス)交換の省エネ効果

それでは、変圧器(トランス)交換の省エネ効果について見てみましょう。

引用元:河村電器産業株式会社「キュービクル(高圧受電設備)リニューアルのすすめ」

上のグラフをご覧いただくとお分かりの通り、変圧器(トランス)の省エネ性能はこの20年ほどで大きく進歩しています。

現在お使いの 変圧器(トランス)が、2006年以前の製品の場合には
最新の製品にすることで、負荷損や無負荷損の損失分が「約49%の省エネ」になり、
「年間126千円の電気料金削減」が期待できます。

トップランナー変圧器とは?

こうした、省エネ性能の高い 変圧器(トランス)を「トップランナー変圧器」と呼ぶことがあります。

1997年の気候変動枠組み条約京都会議をきっかけに、
CO2削減のために、あらゆる機器の省エネ性能を飛躍的に高めようとするプログラム
「トップランナー方式」が開始しました。

平成18年度には「油入変圧器」、平成19年度には「モールド変圧器」がそれぞれ
この「トップランナー方式」の変圧器として高効率化されることになり、
「トップランナー変圧器」と呼ばれるようになりました。

キュービクル交換への令和5年の補助金

今年(令和5年)は、キュービクル の交換に活用できる、国からの補助金制度として
「省エネルギー投資促進支援事業 (C)指定設備導入事業」という補助金制度が公募されていました。

設備費の1/3の補助率で、人気のある補助金制度でしたが

令和4年度補正予算の公募については、2023年6月30日で公募終了となっており、
令和5年度予算の公募においては「新規公募は行わない」と発表されています。

参照:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和5年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業」

このように、キュービクル の交換に活用できる国からの補助金は現在公募されていませんが、
都道府県や市区町村によっては、補助金制度の公募を行っていることもありますので
御社所在地の都道府県や市区町村に確認しておくと良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

キュービクル変圧器(トランス)の基本的な情報から
交換の必要性や費用、交換した際の削減効果など、

ご理解頂けたのではないかと思います。

「キュービクルの交換時期が迫っている」
「キュービクルや変圧器を見直して省エネをしたい」

そのようにお考えの方は、ぜひエネテクまでお気軽にご相談ください。