※2024年11月05日 最新情報に更新しました。
「大規模な再エネを導入する手段」として注目されているのが「自己託送」です。
自己託送 について、基本的な情報から、
など、疑問について分かりやすく解説していきます。
本記事をお読みいただければ、
「自己託送 が御社に向いているかどうか」の判断に必要な基礎知識を
理解していただけるようになるかと思います。
5分でわかるように、前半に基本情報をまとめていますので、
お急ぎの方はまずは前半をお読みください。
より深いく知りたい方は、後半まで読み進めていただけますと幸いです。
ぜひ御社の「自己託送 のご検討」にお役立てください。
自己託送とは、「自社(需要家)が遠隔地に所有する発電所」から「電気を使用する自社(需要家)施設」に送電し、「自社(需要家)」または、「グループ会社等(需要家と密接な関係がある者)」が電気を使用する 自家消費型太陽光発電 のモデルのひとつです。
シンプルにまとめたものが以下の図です。
従来の 自家消費型太陽光発電 と違い、拠点の規模の制約を受けないため、
大規模なCO2削減が実現できます。
送電の際は、一般送配電事業者(電力会社)の送電サービスを使用していますが、
「再エネ賦課金 が発生しない」のが大きな特徴です。
近年「再エネ賦課金」を逃れるような利用方法が増えたため、
24年2月に要件の厳格化が行われました。
太陽光発電システムは、より広い土地を用意出来れば、
ソーラーパネルの数を増やすことができ、発電量を増やすことができます。
従来の 自家消費型太陽光発電 は、電気を使用する施設内に太陽光発電システムを導入していたため
敷地内の広さに限りがあれば、充分な発電量を確保できませんでした。
しかし、自己託送 のように電気を使用する敷地外に太陽光発電システムを導入する手法であれば、
大きな土地を選び、広さを限定せずに太陽光発電システムを導入できるため、
「規模の大きな太陽光発電所」を導入することが可能になります。
そうしたメリットから、自己託送 が誕生しました。
自己託送の要件のポイントはおおきく3つあります。
順番に解説していきます。
自己託送 の発電所で発電した電気は、売電することができません。
ですので、FIT や FIP などとも併用することもできません。
最終的に電気を使う企業と同一の企業が設置とメンテナンスを行う必要があります。
リースや譲渡で、発電所の設置自体を自社で行わなっていない場合などが、
今回の厳格化により対象外となりました。
自己託送 を行う場合には、原則的には「発電所の所有者」と「電気を使用する施設の所有者」が同じである必要があります。
同じ企業ではなくても
両社が、グループ企業などの「密接な関係」にあると考えられる場合には、
自己託送 を行うことができます。
密接な関係として「自己託送に係る指針」で定められているのは、下記のようなものです。
生産工程において原材料や製品のやり取りがある関係性で、
その原材料や製品が他の企業では代替えが効かない関係性の場合には、
密接な関係があるとみなされます。
会社法上の「親会社」「子会社」の関係にある場合にも、密接な関係があるとみなされます。
一方の企業から、もう片方の企業に役員が派遣されており、その役員が役員全体の過半数を超えている場合にも、密接な関係があるとみなされます。
ここまででご紹介したA,B,Cの条件に単独では満たされていない場合でも
それぞれを合わせて見ることで「密接な関係がある」とみなされる場合には
密接な関係があると判断されます。
第三者への代替が困難な原材料、製品、役務等の提供が長期に行われている関係性にある場合にも、
密接な関係があると判断されます。
ただし、2021年11月の法改正によって、
上記の「密接な関係」にない他社同士でも
組合を組むことで 自己託送 が可能になりました。
この法改正で可能になった 自己託送 を「自己託送(第三者所有モデル)」と呼びます。
説明が長くなるため、本件は、以下記事にて詳しく解説しています。
自己託送(第三者所有モデル)を行うための「組合」
「密接な関係」にある企業を複数と絡めた 自己託送 を行う場合、
電気の送配電について、経済産業大臣から「特定供給 の許可」を得る必要があります。
「特定供給 の許可」については、こちらも少し複雑で説明が長くなってしまいますので
下記の別記事で、詳しく解説していきます。
よろしければご参照ください。
以下のようなケースは、自己託送の対象外となります。
フランチャイズに関して、
密接な関係等の自己託送の要件を満たさない場合は、現状は自己託送を認められません。
例えば、自社の太陽光設備から送電して、自社運営のモールなどの施設(需要地)へ送電し、
モール内のテナントへ電力を送電するケースがありました。
こちらが、問題となり「要件の厳格化」の際にも、
主要な議題のひとつでした。
今回の「要件の厳格化」により、送電した先のテナント企業と、
「密接な関係等」の自己託送の要件を満たさない場合は、自己託送 の対象外となりました。
ここまでで、自己託送 について、基本的な概要を理解いただけたかと思います。
より詳しく知りたい方は、続けてお読みください。
続いて、自己託送 の特徴を「5つのメリット」から見て行きましょう。
自己託送 は、大規模な発電量となるため削減できる電気料金も大きくなります。
近年の「電気料金高騰」は、企業が抱える頭の痛い問題です。
自己託送で発電した電気を使用することで、電気料金を大幅に削減することができます。
また、あらゆる 自家消費型太陽光発電 のモデルの中でも、
自己託送 が最も電気料金削減効果が大きくなります。
電気料金高騰について詳しくはこちら
規模の大きな太陽光発電所を導入すれば、
電気料金だけでなくCO2の削減量も大きくなります。
施設の電気使用量や発電所の規模によっては、「CO2排出をゼロにする」ことも可能です。
上記のように、従来の 自家消費型太陽光発電 では充分な設置が難しい施設でも、
自己託送 で敷地外から送電することで再エネを導入することができます。
自己託送 で発電した電気は、複数個所に送電して使用することも可能です。
同じグループ内や、前述した「密接な関係」にある企業にも再エネを導入することで
グループ全体やサプライチェーン内にも再エネを導入することができます。
従来の オンサイト の 自家消費型太陽光発電 の場合には、
定休日に発電した電気を活用することは困難でした。
自己託送 であれば、定休日の施設に送る電気を、定休日ではない別の施設に送るなどして
余剰電力を効率よく活用することができます。
続いて、自己託送 のデメリットついて解説していきます。
まず、最も大きなデメリットが「導入費用が高い」点です。
自己託送 は低圧の発電所でも可能ですが、メリットにも挙げたように
「大幅な電気料金とCO2削減」を目的として導入する場合、
発電所の規模も大きくなり、導入費用も大きくなってしまいます。
また所有している遊休地などが無い場合には、新たに土地を購入する費用もかかります。
自己託送 の場合、発電所のメンテナンス費用も、自社で負担する必要があります。
発電所の規模が大きいと、メンテナンス費用も割高になる傾向があります。
自己託送 を行う際には「計画値同時同量制度」に従って
使う電気の量(需要量)と発電量(供給量)を30分単位で予測し、報告することが義務付けられています。
そうした報告を行う手間が生じる点も、自己託送 のデメリットのひとつです。
「計画値同時同量制度」に従って報告した計画に対して
計画通りにならなかった場合、その差分を「インバランス料金」というペナルティ料金を
支払う必要があります。
こうした計画値の提出は、自社で行うのは困難であるため、外部委託するのが一般的です。
「計画値同時同量制度」と「インバランス料金」について、
詳しくは下記記事で解説していますので、ご参照ください。
従来の 自家消費型太陽光発電 は、災害時の非常用電源としての活用も
目的として導入されるケースも多くありましたが、
自己託送 は、非常用電源としての活用には期待できない点がデメリットのひとつです。
図のように、敷地内に設置した 自家消費型太陽光発電 は、送電ネットワークが災害などで止まっても、敷地内で発電/送電しているので、非常用電源として活用できます。
しかしながら、自己託送 の場合には、送電ネットワークが災害などで止まった際には、太陽光発電所からの送電も止まってしまいます。
このため、自己託送 は非常用電源としての活用には期待できないのです。
自己託送 は、さまざまな 自家消費型太陽光発電 のモデルの中でも
電気料金の削減効果が最も大きいのですが、
一般送配電事業者 の配送電網を使用して送電するため、
利用料として「託送料金」を支払う必要があります。
※2024年11月5日時点の託送料金を下記から参照しています。
東京電力パワーグリッド「主要な料金」
関西電力送配電「接続送電サービス料金等」
中部電力パワーグリッド「接続送電サービス料金等単価表」
「電気料金は大幅に削減できるけれど、託送料金はかかる」など、
自己託送 の電気料金には少し分かりにくい部分もありますので、解説して行きます。
自家消費型太陽光発電 のさまざまなモデルにおいて月々の電気料金の内訳を比較してみます。
このように比較すると、電気料金の単価は、自己託送 や 自社所有モデル の方が安い傾向があることが分かります。
電気料金の単価でみると、託送料金 や インバランス料金 がかかる分、
自己託送 の方が高くなりますが、
発電所の規模を大きくできるため、削減できる電気料金の総額は、自己託送 の方が大きくなります。
続いて、導入費用などの費用についても見て行きましょう。
オンサイトPPA や オフサイトPPA などの PPAモデル については、初期費用などはかかりませんが
自社所有モデル と 自己託送 については、導入費用もメンテナンス費用もかかります。
また、規模が大きい分、自己託送 の初期費用は大きくなります。
自己託送 は、電気料金削減効果は全てのモデルの中で最も高くなりますが、
その反面、初期費用も大きくなることが分かります。
それではこれまでご紹介した特徴から、自己託送 はどんな企業に向いているのか
確認して行きましょう。
これまで解説してきたように、自己託送 はCO2排出量と電気料金を大幅に削減することができます。
ただし、CO2排出量については、同様に オフサイトPPA でも大幅な削減が可能です。
オフサイトPPA はその反面、電気料金削減は限定的で、
電気料金が高騰している現状では少し安く抑えられますが、高騰前の価格基準と比較すると
割高になってしまいます。
こうした点から、CO2排出量だけなく電気料金も大きく削減したい企業は
オフサイトPPA よりも 自己託送 の方が適しています。
自己託送 は、複数個所への送電が可能ですので、
同じ企業グループ全体に再エネを導入し、CO2排出量と電気料金を削減することができます。
前述のように、自己託送 には、多額の初期費用が必要になります。
そうした高額の先行投資が可能な企業である必要があります。
次に、実際に 自己託送 を導入した企業の事例も見てみましょう。
ソニーグループは、敷地外の牛舎に設置した太陽光発電で発電した電力を事業所に託送する 自己託送 を行っています。
発電施設の建設を行った企業から、発電事業を譲渡されることで
「発電事業者と供給先の事業者とが同じ」とみなされ、自己託送 を実現しています。
詳細:サステナブル・ブランド ジャパン「ソニーグループ、注目の「自己託送制度」を利用した再エネ調達を強化」
東京建物では、自家消費型太陽光発電 を導入した3拠点から、自家消費の余剰電力を
別の拠点に 自己託送 する取組みを行っています。
自己託送 の計画報告や予測は、東京ガスの「ヘリオネットアドバンス」というシステムを用いて運用されています。
詳細:東京ガス「東京建物の物流施設で太陽光発電サービス「ソーラーアドバンス」を活用した自己託送を開始」
本サイト「企業 省エネ・CO2削減の教科書」を運営する「株式会社エネテク」は
国内最大級となる 自己託送 太陽光発電所を設計・調達・建設、稼働後のメンテナンスまで行うことになりました。
詳細:日経BP「自己託送向けで最大級の太陽光、エネテクがEPC」
いかがでしたでしょうか?
自己託送 について、メリット・デメリット等の特徴から
オフサイトPPA などの他の 自家消費型太陽光発電 との違いなども解説してきました。
自己託送 は、導入費用も高額になってしまいますが、
大規模な「CO2削減」「電気料金削減」が可能になるという大きな魅力があります。
自己託送 導入を検討される際に、本記事がお役に立てれば幸いです。