※2024年5月16日 最新情報に更新しました。
近年「電気料金の高騰」が大きな社会問題になっています。
多くの業種の使用電力比率を見ても
傾向があります。
近年の空調機器は省エネ効果も上がっており、買い替えによる省エネ効果も期待できますが、
費用が高額ですぐには手を付けられない企業様も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では「買い替え以外の方法」として、同様の効果がある
について「具体的な省エネ効果」を「数字で」
詳しくご紹介して行きます。
ぜひ御社の省エネにお役立てください。
まず「空調を取り巻く近年の状況」を確認するために、下記2点を見て行きましょう。
順番に解説していきます。
下のグラフは、2024年5月時点の最新情報である、
2024年1月までの低圧と高圧の電気料金単価の推移です。
出典:一般社団法人エネルギ―情報センター「新電力ネット」を元に作成
グラフを見て頂くとお分かりの通り、2021年から電気料金の高騰が始まり、
2022年末まで上がり続け、2023年2月には少し値下がりしています。
2024年1月の時点では、一時期より少し落ち着いているように見えますが
それでも、高騰前の2020年頃の水準より高い価格帯になっています。
2023年2月から値下がりしている大きな要因は「政府の補助政策による値下り」なのですが
この補助政策は徐々に引き下げられ、2024年5月には以前の半額に、6月には補助が無くなります。
このため、2024年5月6月には電気料金がさらに値上がりする見通しになっています。
この電気料金の値上りの主な原因である「天然ガスの値上り」は、2025年までは続く見通しであり
また、どの化石燃料を見ても、長期的にも値上がりの見通しになっています。
つまり、電気料金の高騰はまだ今後もしばらく続く可能性が高い状況にあります。
<電気料金の値上がりについてより詳しくはこちら>
続いて、気温の上昇について確認してみましょう。
特に昨年の2023年は、1991年から2020年の平均値と比較しても、偏差で+1.29℃上昇しており
統計開始以降で最高値になっています。
この気温上昇は、温室効果ガスの増加を主な原因とした「地球温暖化」の影響と見られ、
今後も気温は上昇していくと考えられています。
<地球温暖化についてより詳しくはこちら>
このように、電気料金も気温も上昇しているため、
特に夏季の空調による電気料金は大きく上がる傾向にあります。
次に、空調費用が全電気代に占める割合を業種別にご紹介します。
御社の業種ではどれくらいの比率が空調に使われているか?確認してみましょう。
オフィスビルや飲食店では半分近くの電気料金を占めており、
医療機関や食品スーパー、ホテル等においても25%~28%の電気代を占めています。
製造業は9%と低い比率になっていますが、83%を占めている生産設備は買い替えなどが難しい点から、空調の省エネはやはり重要になってきます。
とはいうものの、設備の買い替えには多くの費用がかかります。
また、施設の引っ越しや建て替えなどの予定がある場合など、
新たな設備投資が難しいといった事情があるケースもあります。
そこで「買い替え以外の空調の省エネ方法」について
詳しく解説していきたいと思います。
環境省によると、建築物における推奨室温は「夏期 28℃、冬期20℃」とされています。
(空調の設定温度ではなく「室温」であることにも注意が必要です)
出典:環境省・温室効果ガス排出抑制等指針「空調設定温度・湿度の適正化」
また、同様に1℃の調整で「約10%」の省エネ効果が見込まれることも紹介されています。
つまり、買い替え以外にも「温度設定」などを見直すことで、省エネは可能なのです。
まず「費用をかけずに行う省エネ」として「人の手で行う省エネ方法」をご紹介します。
御社で実践されているかどうか?確認しながらご覧ください。
「人の手で行う省エネ」は、もう聞き飽きたような内容の手法もあります。
しかしながら「具体的な削減効果」を数字にしてみると、あなどれない効果があることが分かります。
まず、これからご紹介する施策の省エネの効果をまとめます。
(ご紹介する施策の内、効果目安の出せるもののみ抜粋)
施策 | 省エネ効果の目安 | 頻度等 |
フィルターの清掃 | 冷房時で約4% 暖房時で約6%の省エネ | 2週間に1度が目安 |
室外機の温度環境や障害物の見直し | 室外機の風通しが悪いと電気代は1.5倍に。 | |
熱交換器(フィン)の清掃 | 長期間行わなかった場合に比べて約27%の節電 | ・工場/店舗・・・約3年 ・事務所/オフィス・・・約5年 ・福祉施設/医療施設・・約5年 |
部屋に応じた適正温度の設定 | 室温の目安は「夏期 28℃、冬期20℃」で 1℃最適化するだけで約10%の削減が可能。 | |
冷水出口温度設定値の変更 | 冷水温度を7℃から9℃へ上げると 使用電力は8%削減 | |
外気導入量の削減 | ・オフィスビル・・・節電効果5% ・卸・小売店・・・節電効果8% ・食品スーパー・・・節電効果4% ・医療施設/福祉施設・・・節電効果2% ・製造業・・・節電効果8% | |
残熱利用による運転時間の短縮 | 約6%の省エネ (8時間勤務のオフィスで30分間空調停止した場合) | |
分散起動 | 冬の商業施設で約9%の削減効果 | |
ナイトパージ | 約5%の省エネ (ナイトパージシステム 利用) | |
ブラインド等で遮光する | ブラインド無しの場合と比較して10.6%の省エネ効果 |
このように具体的な効果を確認すると、
軽視できない省エネ効果があることがお分かりいただけるかと思います。
それでは詳しくひとつずつ解説していきます。
まず最初に、空調設備の各所の清掃や環境の見直しです。
「省エネの為には、フィルターを掃除しましょう」
よく言われていることだと思います。
それでは果たして、フィルターの清掃でどれほどの省エネが実現できるのでしょうか?
環境省によると、2週間に1度フィルターを清掃すると
「冷房時で約4%、暖房時で約6%」の省エネが可能になるということです。
フィルター清掃の頻度も「2週間に一度」と決めて、
「冷房時で約4%、暖房時で約6%の省エネになる」と具体的な数字で社内共有ができれば、
あいまいな効果では無いので、社内浸透もしやすくなります。
室外機の置かれている環境を見直すことも省エネに効果があります。
室外機は、エアコンの室内機から送られてきた「部屋の中の温かい空気」を「熱交換器」で冷やして、部屋の中に「冷たい空気」を戻す機器です。
つまり室外機の温度が上がってしまうと、空調も効きにくくなってしまいます。
夏の室外機にとって重要なのが「室外機の温度を上げない」工夫です。
すだれで遮光する等、直射日光を避けられるようにしておきましょう。
反対に冬には、冷たい空気を室外機の中で温めています。
室外機が冷えてしまうと、空調も効きにくくなってしまいます。
夏にすだれ等で作っていた日陰を無くすと良いでしょう。
こうした季節に合わせた調整を行える為、すだれ等で遮光の有無を調整する方法がおすすめです。
但し、風で飛ばされないような対策、降雪地帯の方は別途雪への対応をしておく必要があります。
吹き出し口付近に障害物を置かないことも重要です。
室外機は、屋内の熱を外に捨てる為に放熱しています。
吹き出し口付近をふさいでしまうと、熱風を再び吸い込んでしまい冷却効率が低下してしまいます。
室外機を風通しの悪い状態にした場合、電気代が1.5倍になったという実験結果もあります。
室外機の環境は、定期的に見直しておく必要があります。
参考:家電ウォッチ「エアコンの節電法、実際どれだけの効果がある?」
空調の「室外機」と「室内機」両方に入っている機器で、
温まった室内の空気を冷やし、室外に熱を放出する役割を担っています。
エアコンの形状によっても異なりますが、
フィルターを外した際に見える金属部分が「熱交換器」です。(下写真参照)
ここに詰まった埃を掃除機などで清掃します。
熱交換器 の金属部分は曲がりやすいので、力を込め過ぎないことがポイントです。
室外機の 熱交換器 も、室内機同様の形状で、側面や背面にある金属部分を指します。
室内機同様、曲がりやすいので力を込めずに掃除機などで清掃します。
熱交換器の洗浄を定期的に行うと、
長期間行わなかった場合に比べて約27%の節電に繋がるというデータもあります。
業種ごとの清掃頻度の目安は以下が参考になります。
・工場/店舗・・・約3年
・事務所/オフィス・・・約5年
・福祉施設/医療施設・・約5年
参考:ダイキンHVAソリューション東京株式会社「業務用エアコンの掃除・洗浄・クリーニングについて」
ご説明したように、特に 熱交換器(フィン)の清掃は、
金属が曲がりやすい為、しつこい汚れやカビなどが付着している場合、清掃が困難です。
空調クリーニングの専門業者に依頼するという方法もあります。
参考:ダイキンプロショップ「空調のプロに任せる業務用エアコンのクリーニング」
続いて、設定を見直すことで省エネに繋がる方法を確認してみましょう。
部屋によっては、使用している機器の性能や台数などによって
空調の効き方が違う場合があります。
前述しましたが、温度設定はエアコンの設定ではなく「室温」が大事です。
各部屋の空調設定に対する室温を調査し、
エアコンの設定温度を部屋ごとに取り決めることも重要な設定見直しです。
こちらも前述しましたが、室温の目安は「夏期 28℃、冬期20℃」です。
1℃最適化するだけで約10%の削減になります。
セントラル空調 に限った見直しにはなりますが、
冷水温度設定値 を高めにすることで、消費電力を削減することができます。
冷水温度を7℃から9℃へ上げると、使用電力は8%削減できると言われています。
外気導入量の削減にも節電効果があります。
空調設備は換気も兼ねているため、外気を取り込むことが可能です。
換気は、空気の清浄度を保つ為にも重要です。
空調機器は換気の役割も担っているため、屋外から空気を取り込む機能があります。
その外気を取り込む量が「外気導入量」です。
しかしながら、冷暖房運転時には外の空気を冷やす(温める)ため
外気を多く取り入れていると消費電力が大きくなってしまいます。
その為、外気導入量を削減することで空調の消費電力を削減することが可能です。
とはいえ、換気は重要です。
省エネの為にあまりにも制限してしまうと、空気環境が悪化してしまいます。
ビル管法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)では、
室内の空気質基準として、CO2濃度を1,000ppm以下にするよう定められています。
この基準を上回らないよう、CO2濃度にも注意しながら削減量を決めて行く必要があります。
市販されているCO2濃度計で計測し、基準値を大幅に下回っている場合には
外気導入量の削減を進めて行くと良いでしょう。
CO2濃度計は3,000円~20,000円ほどで販売されています。
「冷房時に室内が外よりも暑い」
「暖房時に室内が外よりも寒い」場合には、
外気導入量を増やした方が電力負担が少なくなります。
このため、夏の朝の冷房や、冬の昼の暖房は
外気温によっては、外気導入量を増やした方が省エネになります。
外気導入量削減による省エネ効果について、業種別の目安をご紹介します。
出典:四国電力「用途別節電事例集~具体的な節電方法とその効果~」
稼働時間を見直すことも、省エネに繋がります。
順番に見て行きましょう。
終業時刻の15~30分前に空調を停止しても、
空調で冷えた空気の「残熱」で、残り時間も充分な温度環境を維持することができます。
つまり早めに空調を切ることで、温度環境を維持しながら節電することが可能になるのです。
例えば8時間勤務のオフィスで30分間空調停止を早めた場合、
単純計算で約6%の省エネが可能になります。
「分散起動」とは、始業時に建物内の空調を一気に起動するのではなく
タイミングをずらす手法です。
空調を一気に起動しないことで、ピーク電力を抑えることができます。
特に冬は冷えた建物内を温める為、朝の起動時に消費電力が大きくなります。
分散起動の実施により、冬の商業施設では約9%の削減効果が期待できます。
「ナイトパージ」とは、
夜間に外気を取り込むことで室内を冷やしておき、
翌日の空調起動時の負担を軽減する手法です。
例として、2019年8月11日の東京の気温を見てみましょう。
出典:気象庁「東京の2019年8月11日の一時間ごとの気温推移」
日中は最高気温が34.5℃になっていますが、
夕方には徐々に下がり始め、20時には28℃を下回っています。
更に朝はより気温が低く、5時の時点では25.5℃まで下がっています。
このように、日中の気温が高い日であっても夜間や朝方は涼しく、
環境省の推奨する28℃を下回っている時間があります。
こうした時間帯に外気を取り込んでおくことで、
朝の始業時には室温の上昇を抑えることができます。
ナイトパージ はその機能が付いた空調機器が用いられるケースが一般的です。
ビル等に ナイトパージシステム が備わっていれば、
うまく活用していくと良いでしょう。
システムが付いていない施設では、下記のような対応ができます。
防犯面から窓を開けておくことはできませんし、
夜間につけておく空調の消費電力と ナイトパージ による省エネ効果を比較しておく必要があります。
ナイトパージシステム を活用した、国土交通省の実証実験では、
「約5%の省エネ効果」が確認されています。
出典:国土交通省 北陸地方整備局「冷房負荷低減のためのナイトパージの実証実験について」
続いて、室内温度を上げる要因を見直す手法について見ていきましょう。
こちらも、比較的よく耳にする省エネ手法かと思います。
東京都地球温暖化防止活動推進センターでは、
ブラインド無しの場合と比較して10.6%の省エネ効果が紹介されています。
出典:東京都地球温暖化防止活動推進センター「テナント事業者としての省エネへの挑戦」P14
室内においても、OA機器などは熱を出しています。
小さなことですが、使わないOA機器などの電源を切っておくことも空調の省エネにつながります。
ここまで「人の手による省エネ」についてご紹介してきました。
続いて比較的安価な手法として「買い替えせずにできる空調の省エネ」についてご紹介します。
テナントとして入っているオフィスビル等では導入が難しい施策ですが、
工場や戸建ての店舗、介護施設では有効な施策のひとつです。
工場での導入事例では、室内温度を7℃下げた事例も紹介されています。
また、介護施設では近年停電時に空調が停止し、入居者が亡くなるケースも出ています。
そうした事態に空調の負担を軽減する為にも、有効な対策です。
工場や倉庫等、広い敷地がある施設においては、
ビニールカーテン等で空調を効かせる範囲を絞ることも有効な施策です。
スタイルダートプロ:工場・倉庫・店舗などの業務用カーテンレール・ビニールカーテン
「人の手による省エネ」でご紹介したような内容を、システムで自動制御することもできます。
(これを「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」と呼びます)
近年はそうしたシステムを組み込むことで、
ピークカット 等の省エネ手法を実現することができます。
空調を買い替えずに、空調機器そのものの消費電力を下げる方法もあります。
空調機器の消費電力の90%が圧縮機で消耗されています。
写真のように配管に挿入することで、圧縮機の負担を軽減する装置もあります。
圧縮機の負担を下げることで、30%以上の省エネ効果があったケースもあります。
いかがでしたでしょうか?
業務用空調の省エネについて、その削減効果までご理解いただけたのでは無いかと思います。
最後に簡単におさらいしてみましょう。
他にも、下記のような省エネ手法があります。
この記事が御社の省エネのお役に立てれば幸いです。