省エネの教科書とは

【徹底解説】「計画値同時同量制度」と「インバランス料金」

※2023年06月01日 最新情報に更新しました。
 

太陽法発電の「自己託送」や「オフサイトPPA」のように、
小売電気事業者 の送配電網を使用して送電する際には計画値同時同量制度によって

事前に電気の使用に関する計画を報告する必要があります

また、提出した計画通りにならなかった場合には、
ペナルティ料金としてインバランス料金を支払わなければならないケースもあります。

本記事ではこの「計画値同時同量制度」と「インバランス料金」について
わかりやすく解説していきます。

自己託送オフサイトPPA などで遠隔地から 小売電気事業者 の送配電網を使って送電する際には
本記事の内容がお役立に立てれば幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



「計画値同時同量制度」の対象

具体的な解説に入る前に、
計画値同時同量制度」の対象について確認しておきましょう。

計画値同時同量制度」の対象になるのは、

小売電気事業者 の送配電網を使用する場合

になりますが、少し例外となるケースもあります。

太陽光発電の場合

太陽光発電においては、下記の事業が「計画値同時同量制度」の対象になります。

FIT(固定価格買取制度)は対象外

同様に、FIT(固定価格買取制度)でも、売電の際に送配電網を使用していますが
FIT は制度上、計画値同時同量制度 から免除されているため、対象にはなりません。

送電網を使用しない太陽光発電

これらの「オンサイト」で行う 自家消費型太陽光発電 は、
送配電網は使用しませんので、計画値同時同量制度 の対象にはなりません。

 
導入を検討されている太陽光発電のモデルが、
計画値同時同量制度 の対象になるかどうか、まず最初に確認しておきましょう。

「計画値同時同量制度」とは?

それでは次に「計画値同時同量制度」について解説して行きます。

「計画値同時同量制度」とは?

計画値同時同量制度」とは、安定して電力を供給するために
「発電量と消費量を一致させる」ことを、
「電気事業法」によって「小売電気事業者」に課せられている制度です。

小売電気事業者 に課せられている制度ですが、その送配電網を借りて
電気を送配電する際には、利用者もそのルールを守る必要があります。

「計画値同時同量制度」による報告義務

小売電気事業者 の送配電網を使用する際には、「計画値同時同量制度」に従って

・使う電気の量(需要量)
・発電量(供給量)

それぞれを「30分単位」で予測し、報告することが義務付けられています。

報告の流れ

その報告は、下記のような流れで行われます。

図のように、発電事業者 からは「発電計画と発電実績」
需要家 からは「需要計画と需要実績」を広域機関(電力広域的運営推進機関)に報告します。

その集計結果は、広域機関から 小売電気事業者 に提供されます。

「どれほどの量を発電し、送電するのか」
「どれほどの量の電気を使うのか」

この計画と実績を報告することになるのです。

「インバランス料金」とは?

このように「計画値同時同量制度」に従って報告した計画に対して
計画通りにならなかった場合、その差分をペナルティ料金として支払う必要があります。

そのペナルティ料金をインバランス料金と言います。

発生するインバランス料金の種類

インバランス料金 は、発電計画と需要計画それぞれの不足と余剰によって種類があります。
その種類によっても「単価が変わってきます」ので「インバランス料金の種類」について理解しておきましょう。

「発電計画」通りに行かなかった場合

提出した発電計画に対して、実際の発電量が多かった場合には「余剰インバランス」
少なかった場合には「不足インバランス」としてペナルティ料金が発生します。

「需要計画」通りに行かなかった場合

提出した需要計画に対して、実際の電気使用量が多かった場合には「不足インバランス」
少なかった場合には「余剰インバランス」としてペナルティ料金が発生します。
(発電計画とはインバランスの名称が逆になります)

「インバランス」を小売電気事業者が調整

これらの インバランス料金 は、広域機関から渡された集計結果を元に、
小売電気事業者 が調整・計算し、需要家 や 電気事業者に請求します。

このような流れで、発電事業者需要家 から集めた「計画と実績」を元に
インバランス料金 が算出されるのです。

インバランス料金はいくらかかる?

そこで気になって来るのが「インバランス料金はいくらかかるのか」
という点ではないでしょうか?

インバランス料金 は、地域(各配送電会社の管轄エリア)によっても異なりますし
時間帯によっても変動します。

また、前述の通り「余剰インバランス」「不足インバランス」それぞれで単価も異なります。

リアルタイムの最新インバランス料金単価は、下記サイトを参照するとご確認いただけますので
おおよその相場感を確認してみてください。

インバランス料金情報公表ウェブサイト

バランシングコスト

このように、計画通りにならなかった際に発生する「インバランス料金」や
計画値同時同量制度」のための予測や報告の「運用コスト」などの調整コストを、

総じてバランシングコストと言います。

バランシングコストに関わる業務分担

続いて気になるのは、

「予測や報告」は誰がやるのか?

という点です。

この業務分担は「太陽光発電のモデルによって異なります

バランシングコストに関わる業務分担

バランシングコストに関わる業務分担を、自己託送自己託送(第三者所有モデル)オフサイトPPA
それぞれにまとめると、下図のようになります。

参考:財団法人自然エネルギー財団「日本のコーポレートPPA」を元に作成

自己託送の場合

自己託送 の場合には、需要家発電事業者 でもありますので
「発電計画」「需要計画」「需給調整」すべて、需要家 が行う必要があります。

自己託送(第三者所有モデル)の場合

自己託送(第三者所有モデル) の場合には、
「発電計画」は 発電事業者、「需要計画」「需給調整」は 需要家 が行います。

オフサイトPPAの場合

オフサイトPPA の場合には、
「発電計画」は 発電事業者、「需要計画」「需給調整」は 小売電気事業者 が行います。

オフサイトPPA の場合には、バランシングコスト は電気料金に含めて請求されます。

バランシングコスト管理の外部委託

このように「発電量の予測や需給調整の手間」や「インバランス料金 発生リスク」は
大きな負担になってしまいます。

ほとんどの企業において、発電量予測や需給調整のノウハウなどは持っていないでしょう。
そこで、こうした需給調整などは、外部委託するのが一般的です。

手数料などはかかってしまいますが、自分たちでやるよりも
インバランス料金 発生リスク」も抑えられる可能性が高いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

計画値同時同量制度」と「インバランス料金」についての
基礎知識をご理解頂けたのではないかと思います。

御社が導入を検討している太陽光発電のモデルが、

計画値同時同量制度」の対象となるモデルなのか?
また御社がどこまで対応しなければいけないのか?

把握したうえで検討して頂ければと思います。

本記事が、御社の再エネ導入などのお役に立てれば幸いです。