省エネの教科書とは

【徹底解説】自己託送の第三者所有モデル(直接型オフサイトPPA)

※2024年02月06日 最新情報に更新しました。
 

これまでの太陽光発電の 自己託送 では、発電事業者と電気を使用する 需要家 が同一、
または「密接な関係」にあることが条件になっていました。

しかし、2021年11月18日に一部改正された「電気事業法施行規則」により

「密接な関係」には無い他社とも、条件付きで 自己託送 が可能になりました。

本記事では、この新たな自己託送のモデル
自己託送(第三者所有モデル)」について、分かりやすく解説していきます。

本記事をお読みいただければ「自己託送(第三者所有モデル)」について
ひと通りご理解頂けるかと思います。

御社の再エネ導入の参考に、お役立て頂ければ幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



自己託送の基礎知識と要件厳正化について

本記事では、法改正で可能になった「自己託送(第三者所有モデル)」について解説していますが、
長くなりますので「従来の自己託送」の解説は省略しています。

また、2023年12月26日に、自己託送 の「要件の厳正化」と
2024年1月1日より当面の間の 自己託送 新規受付停止が資源エネルギー庁から発表されています。

「従来の自己託送」の基礎知識や、要件厳正化については、
下記記事で解説していますのでご参照ください。

自己託送(第三者所有モデル)とは?

それでは具体的に「自己託送(第三者所有モデル)」について解説して行きます。

2021年11月18日に一部改正された「電気事業法施行規則」によって

他社同士でも「組合」を作ることで自己託送 が可能になりました。

図のように「発電所の所有者」と「電気を使用する施設の所有者」が異なる場合でも、
両社で組合を組むことで、自己託送 をおこなうことができるようになりました。

ただし、他社同士でも 自己託送 が可能になったとはいえ、
いくつか条件が追加されている」ため注意が必要です。

自己託送(第三者所有モデル)」は「直接型オフサイトPPA」と呼ばれることもあります。
※本サイトでは自己託送(第三者所有モデル)と呼ぶことにします。

自己託送(第三者所有モデル)を行うための「組合」

まず、自己託送(第三者所有モデル)を行うために必要な「組合」とはどんなものなのでしょうか?

組合の条件

自己託送(第三者所有モデル)を行うためには、
下記にあげる条件を満たした組合を作る必要があります。

・契約書において、組合が長期にわたり存続することが明らかになっている
・組合員名簿等に、供給者と相手方の氏名または名称が記載されている
・契約書において「電気料金の決定の方法」「工事費用の負担の方法」が
 明らかになっている
・契約書の内容が特定の組合員に対して不当な差別的取扱いをするものではない
・契約書の内容等により供給者が相手方の利益を阻害するおそれがないと認められる
・組合員が新設した、自ら維持し運用する電気事業者による発電設備による取引である

※上記は、わかりやすく簡潔にまとめた内容になります。
 詳細は、資源エネルギー庁の「自己託送に係る指針」にてご確認ください。

資源エネルギー庁「自己託送に係る指針」

組合で決める「費用の負担」

組合の中では、さまざまな費用に関して誰が負担するのかなども決めておく必要があります。

発電所の導入費用、メンテナンス費用

発電所の導入費用、メンテナンス費用をどちらが負担するかを決定します。

オフサイトPPA と同様に、発電所の持ち主(発電事業者)が負担することが一般的ですが
負担の割合を決めて、発電事業者と電気を使用する側(需要家)で分担することもできます。

電気料金

上記の発電所の導入費用を、発電事業者 が負担する、または割合を決めて分担する場合
月々の電気料金も予め決めておく必要があります。

組合の中で話し合って決める

このように、自己託送(第三者所有モデル)では、費用負担などのさまざまなことを
組合の中で話し合って決めて行います。

自己託送(第三者所有モデル)の利用条件

このように組合を作ることで、他社同士でも自己託送が可能になりますが、
代わりに利用条件が追加されます。

従来の自己託送 には、次のような利用条件がありました。

1.売電目的ではないこと
2.発電所の所有者と電気を使用する者が「同一」または「密接な関係」があること
3.電気を使用する施設の契約電力が「高圧」または「特別高圧」であること
4.発電所と電気を使用する施設が同一電力エリアにあること

それぞれの詳細解説はこちら「自己託送を行うための条件」

上記の内「2.発電所の所有者と電気を使用する者が「同一」または「密接な関係」があること」は
自己託送(第三者所有モデル)には必要な条件ではありませんが、

2つの利用条件が追加されます。

1. 新設の発電所のみが対象
2. 送電先が一箇所に限定される

1. 新設の発電所のみが対象

自己託送(第三者所有モデル)は、新設の発電所のみが対象となっています。
既設の発電所では行えないので、注意が必要です。

2. 送電先が一箇所に限定される

従来の 自己託送 とは異なり、
自己託送(第三者所有モデル)は送電先が一箇所に限定される点にも注意が必要です。



【なぜ複数個所への送電ができないのか】
 
従来の 自己託送 では「複数個所への送電」が可能でした。
 
しかし、自己託送(第三者所有モデル)の場合には、発電事業者需要家 の関係が
グループ会社などの密接な関係とは異なり「別の会社」になります。
 
別の会社同士で、発電した電気を送電することを可能にしてしまうと
小売電気事業者 と区別できなくなってしまうため、小売電気業として行うことと区別するために、複数個所への送電ができないのです。

オフサイトPPAと何が違うの?

ここまで「自己託送(第三者所有モデル)」の解説をしてきましたが、

オフサイトPPA とどこが違うの?」

と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
自己託送(第三者所有モデル)は、オフサイトPPAと区別がつきにくいかと思います。

そこで「オフサイトPPA」や「従来の自己託送」と比較することで
自己託送(第三者所有モデル)」の特徴を解説して行きます。

「オフサイトPPA」や「従来の自己託送」との比較



「導入費用」と「電気料金」

導入費用やメンテナンス費用、電気料金を比較してみると
自己託送(第三者所有モデル)は、自己託送よりもオフサイトPPAに近いことが分かります。

どちらも導入費用やメンテナンス費用がかからない代わりに
発電事業者に毎月の電気料金を支払う必要があります。

「複数個所への送電」と「低圧設備での受電」

「複数個所への送電」と「低圧設備での受電」においては、どちらも不可であり、
自己託送(第三者所有モデル)の弱点にもなっています。

「託送料金/インバランス料金」と「再エネ賦課金」

託送料金/インバランス料金」はどのモデルにもかかりますが、
再エネ賦課金」は、オフサイトPPA だけにかかります。

「オフサイトPPA」との違い

これらの点から、自己託送(第三者所有モデル)と オフサイトPPA を比較すると

メリット
再エネ賦課金 がかからない
 (=電気料金総額を抑えられる)
デメリット
・複数個所への送電ができない
・低圧の施設では受電できない

という特徴がある事が分かります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

自己託送(第三者所有モデル) について、
ひと通りご理解頂けたのではないかと思います。

遠隔地に発電所を設置して、大規模な再エネ導入を行う方法は
自己託送(第三者所有モデル)や 従来の自己託送、オフサイトPPA などの方法があります。

規模の大きな再エネ導入を検討される際に、本記事がお役に立てれば幸いです。