※2024年9月26日:2024年9月に発表された最新情報を元に
「系統用蓄電池の受付状況」や「出力制御の2024年の動向」を更新しました。
2023年度も、昨年比で3倍に増加した「出力制御」ですが、
最新の予測では、2024年度も増加する見通しになっています。
そんな現状の中、注目され始めているのが「系統用蓄電池」です。
みなさまも名前を目にする機会が増えているのではないでしょうか?
系統用蓄電池 は投資メリットもあるため、
新たな再エネ投資を検討中の法人・個人にとっても気になる情報だと思います。
そんな「系統用蓄電池」について
などの疑問をお持ちの方も多いかと思います。
本記事では、系統用蓄電池 について、図やグラフを交えながら
分かりやすく解説して参ります。
本記事を読んで頂ければ、系統用蓄電池 の基礎知識や2024年現在の状況について
ひととおりご理解いただけるかと思います。ぜひ本記事をお役立てください。
目次
本題に入る前に、系統用蓄電池に関する最新動向をご紹介しておきます。
下のグラフは、2024年9月18日に資源エネルギー庁から発表された「系統用蓄電池の接続検討受付状況」を示したものです。
()内は約一年前と比較して増加した量になっています。
出典:資源エネルギー庁「系統⽤蓄電池の迅速な系統連系に向けて(2024年9⽉18⽇)」
どのエリアにおいても、大半の接続検討受付がここ一年以内に行われており、直近1年間で大きく増加していることがお分かりいただけるかと思います。
このように、近年は系統用蓄電池への注目が大きく高まっていることが分かります。
それでは、系統用蓄電池 とはどのようなもののことを言うのでしょうか?
順番に解説していきます。
まず「系統用蓄電池」の「系統」とは、どんな意味なのでしょうか?
「系統」とは正式には「電力系統」のことをいい「送配電網」のことを指します。
送配電網とは、発電所で作った電気を、ご家庭や会社、工場などに届けるシステムのことです。
そして「系統用蓄電池」とは、系統(送配電網)に接続した蓄電池のことを言います。
上のイラストのように、送配電網に接続して
「蓄電池単体」で系統(送配電網)から電気を受け取って「蓄電」したり、
その逆に貯めた電気を「放電」して系統(送配電網)を通じて売電することができます。
上のイラストでは「蓄電池単体」が系統(送配電網)に接続している例ですが、
下のイラストのように「再生可能エネルギー発電所」が併設しているケースもあります。
ほかの蓄電池と「系統用蓄電池」が異なるのは、
その名前の通り「系統(送配電網)に接続されている」という点です。
そのため「系統(送配電網)に接続されていない」蓄電池は「系統用蓄電池」には分類されません。
「系統(送配電網)に接続されていない」蓄電池は、
イメージとしては「自家消費目的」や「災害時の非常用電源目的」で「電気を使用する施設」に接続されている蓄電池を思い浮かべると分かりやすいかと思います。
また、2022年5月の電気事業法改正から、
10MW以上の系統用蓄電池は発電所として扱われ、系統利用料や調達価格等に関する契約を結ぶことが可能になりました。
また、大規模な 系統用蓄電施設は、
発電所のように「蓄電所」や「系統蓄電所」と呼ばれることもあります。
この「系統用蓄電池」は、特に「投資での活用」が期待されています。
電気は、卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で取引されており、電気料金単価は、日時によって変動します。
そのため 系統用蓄電池 を活用すれば
ことで、その差額で利益を得ることができます。
それでは実際の例を見ながら確認してみましょう。
下のグラフは、卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で実際に取引された2023年5月5日の電気料金単価の推移です。
グラフのように、8時頃から13時半にかけて、電気料金単価は「0.01円/kWh」ですが、
夕方から単価が上がり、18時頃には「16.62円/kWh」まで上がり
「1662倍」になっていることが分かります。
つまり、この「0.01円/kWh」のときに電気を購入して蓄電しておき
「16.62円/kWh」になったタイミングで放電/売電することで
「1662倍」の利益を得ることができます。
仮に、3MW(3,000kW)の電気を例にしてみると、
それでは次に、系統用蓄電池 を導入するメリット・デメリット、注意点をご紹介していきます。
前述の通り、価格が安い時間帯に購入した電気を高い時間帯に売ることで
その差分で利益を得ることができます。
ピークカット とは、1日の中で最も電気を使用する時間帯の電気使用量を削減することを言います。
電気の「基本料金」は「過去1年間の中で最も電気を使用した時間帯」の電気量を元に算出されます。
ピークカット を行うことで、この「最も電気を使用する時間帯」の使用電力量を削減し
基本料金を削減することができます。
あくまで「電気を使用する施設(会社や工場など)」に 系統用蓄電池 を接続する場合に限る施策ですが、電気使用量が少ない時間帯に蓄電池に電気を貯めておき、
電気使用量が多い時間帯には電気を購入せずに、蓄電池に貯めた電気を使用することで
「系統用蓄電池 を活用した ピークカット(厳密に言えば ピークシフト)」を行うことができ、基本料金を削減できます。
ピークカットについて詳しくはこちら
ピークカット については、こちらの記事でより詳しく解説していますので
より詳細をお知りになりたい方はご参照ください。
これも「電気を使用する施設(会社や工場など)」に 系統用蓄電池 を接続する場合に限る施策ですが、
災害時の停電などに対する非常用電源として活用することができます。
しかし反対に、系統用蓄電池 にもデメリットはあります。
系統用蓄電池 などの大型の蓄電池のデメリットは「導入費用が高い」という点です。
ただし、近年では蓄電池の価格も下がって来ており、
また補助金制度も充実してきているので、解消されつつあります。
(詳しくは後ほど解説いたします)
↓詳細(本記事内)「なぜ最近になって注目され始めたのか?」へジャンプ
系統用蓄電池 を投資として活用する場合には、卸電力市場の変動が大きく影響する事業になるため、収益の見通しが立てにくい点が大きなデメリットです。
しかしながら、2024年1月から開始した「長期脱炭素電源オークション」や
2024年4月に行われた電力市場の変化によって、
投資の収益性が見えやすくなると期待されています。
※これらの変化については、後ほど詳しく解説します。
↓詳細(本記事内)「容量市場と長期脱炭素電源オークション」へジャンプ
系統用蓄電池 を使って投資を行う場合、卸電力市場の動向に合わせた電気の売買や
先の見通しを立てるなど、運用には専門知識が必要になります。
そのため、一般企業には参入が難しい面があります。
アグリゲーター などに運用代行を依頼するのが一般的になります。
また、系統用蓄電池 には、以下のような注意点もあります。
系統用蓄電池 には、定期的な保守点検が必要になります。
投資用に運用する場合には、メンテナンス費用や保険費用などのことも考えておく必要があります。
パソコンやスマートフォンのバッテリーを思い浮かべると分かりやすいかと思いますが、
系統用蓄電池 もそれらと同じく、使用していると劣化します。
投資用に導入する際には、この「劣化のしにくさ」も判断基準に入れて検討する必要があります。
また、系統用蓄電池 には、充放電時にロスも発生します。
導入の際には、この点も注意しておく必要があります。
このような特徴のある 系統用蓄電池 ですが、特に近年になって注目され始めています。
それは近年になって「採算が取れる」見通しになってきたからで、
その理由は、主に下記の2点です。
順番に見て行きましょう。
電力価格の最低金額が下がり、最高価格が高くなると、図のように「価格差」が大きくなります。
前述のように、系統用蓄電池 で投資メリットを得る際には
この価格差が大きいほど「利益も大きくなります」
近年、卸電力市場の時間帯による価格差が大きくなっています。
その主な理由は以下の通りです。
近年、太陽光発電の発電量を制限する「出力制御」が多くなってきています。
※出力制御 については、後ほど詳しく解説します。
↓詳細(本記事内)「出力制御の増加と系統用蓄電池」へジャンプ
出力制御 で抑制される期間中は「電気料金単価が下がります」
出力制御 が多くなると、その分「電気料金単価が下がる」頻度が多くなるのです。
さらに、ウクライナ情勢などで燃料価格が高騰し、電気料金が高値になってきており、
需要が大きくなる時間帯の電気料金がより高値になりやすくなっています。
このように、電力価格がより安くなる時間帯が増え、同時に高くなる時間帯も増えたため
系統用蓄電池事業 による「投資の利益」が得やすくなったのです。
蓄電池の初期導入費用が下がると「事業参入のハードルが低くなる」メリットと
「費用対効果が高くなる」メリットが生まれます。
系統用蓄電池 で利益を得るためには、
蓄電池の初期導入費用を電気の売買の利益で回収する必要があります。
蓄電池の価格が下がると、短期間に投資回収でき、収益性も高くなります。
蓄電池の初期導入費用が抑えられるようになってきたのには、2つの要因があります。
蓄電池の初期導入費用が抑えられるようになってきたひとつめの要因は、
「蓄電池そのものの価格が下がってきた」ことです。
三菱総合研究所「定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査」を元に作成
上のグラフは、蓄電池の価格推移を示したものです。
2013年と比較すると、2021年の価格は「約19.3%」約5分の1まで下がっていることが分かります。
上記の価格推移では、実際の導入価格は分かりにくいかと思いますので
系統用蓄電池 の導入価格の目安もご紹介しておきます。
三菱総合研究所「定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査」を元に作成
上記は、補助金制度「令和3年度補正 再生可能エネルギー導入加速化に向けた系統用蓄電池等導入支援事業」の対象となった事業者へのヒアリングを元にした導入費の参考価格です。
系統用蓄電池は、1kWhあたり6万円がおおよその導入費用になりますので
例えば、2MWhの系統用蓄電池を導入する場合には「1億2,000万円」
といった目安で考えることができます。
蓄電池の初期導入費用が抑えられるようになったもうひとつの要因が、
「国が補助金制度を強化し始めた」という点です。
系統用蓄電池 を対象とした国の補助金制度は、2021年度から毎年公募されるようになりました。
いずれも大きな予算をかけていることが分かります。
2021年度:事業予算130億円
2022年度:事業予算250億円
2022年度:事業予算255億円
※令和6年度以降の補助金制度については後ほど解説いたします。
このように、国が補助金制度を強化し始めたのは「出力制御 の増加」が大きな要因です。
出力制御 の増加と 系統用蓄電池 の関係性については、次の項で詳しく解説していきます。
国による 系統用蓄電池 への補助金強化の主な要因になっている「出力制御」とは、
どのようなものなのでしょうか?
出力制御 とは、発電量が電気の需要を上回ってしまった場合に
電力会社が発電量を抑える措置のことを言います。
需要と発電量のバランスが崩れてしまうと、
機器の停止などを引き起こし、最悪の場合大型停電を引き起こす可能性があります。
それを未然に防ぐためにも、電力需要が低い時期に発電量が多くなると、
出力制御 を行う必要があるのです。
特に 出力制御 が多くなるのは、春や秋などの空調があまり必要でなくなる時期です。
空調をあまり使用しなくなるため、電力需要が下がり
発電量が上回りやすくなるため、出力制御 が行われやすくなります。
特に近年は、太陽光発電に対する 出力制御 が大きく増加し始めています。
実際に近年の太陽光発電に対する出力制御量の推移を見てみましょう。
下のグラフは、全国の出力制御量の合算の推移です。
参照:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について(2024年9月18日)」を元に作成
2023年度には「2022年度の約3倍」に増加していますが、
2024年度にもさらに増えていることが分かります。
全国の2023年度の出力制御の見込みは、下記のようになっています。
参照:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について(2024年9月18日)」を元に作成
最も出力制御率が高い九州電力は、2024年度には少し減少していますが、
「東北電力、北陸電力、関西電力、四国電力」の出力制御率は、2023年に比べて大きく上がる見通しになっています。
このように 出力制御 が必要になってきた大きな要因のひとつが
「再エネ発電所(特に太陽光発電所)の増加」です。
これまでの日本国内の太陽光発電導入量の推移を見ても、
短期間に大幅に増加していることが分かります。
資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)第2部エネルギー動向」を元に作成
国は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの導入を推進しており、2030年までに電源構成の再エネ比率36-38%(合計3,360~3,530億kWh程度)の導入を目指しています。
そのため、再エネ発電所は今後も増加していくことになります。
このように、再エネ発電所の増加が原因で、出力制御 が多くなって来ているのですが
そもそも国はカーボンニュートラルに向けて再エネを増やして行く必要があるため
出力制御 のために再エネ化推進を抑制するわけにはいかないのです。
そこで、この 出力制御 の問題の解決策のひとつとして挙げられているのが、
「系統用蓄電池の増加推進」です。
系統用蓄電池 が多くなれば、本来出力制御するはずだった電気を蓄電しておき
需要が伸びた時間帯に放電することができます。
このように、系統用蓄電池 に蓄電することが出来れば
再エネで発電した電気を無駄にせずに活用することができます。
そうした背景から、系統用蓄電池 を増やすために、国による補助金制度が強化されているのです。
出力制御について詳しくはこちら
出力制御 については、こちらの記事でより詳しく解説していますので
より詳細をお知りになりたい方はご参照ください。
こうした 出力制御 などの背景から、国から補助金制度が強化されており
令和6年度も補助金制度の公募が行われています。
系統用蓄電池導入に活用できる補助金制度として、令和6年度に公募が行われているのが
「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」です。
概要をご紹介していきます。
電力系統に直接接続されており、電力市場との取引等を通じ、再エネの有効活用や電力バランスの改善に寄与するシステムであることが、条件として掲げられています。
蓄電池以外にも、水電解装置 も補助の対象になっていますが
ここではあまり関係ないので省略します。
実施設計に要する経費
■ 蓄電システムを構成する下記の設備費。
※水電解装置については省略します。
補助率と補助上限額は以下の通りです。
※水電解装置については省略します。
一般社団法人 環境共創イニシアチブ「令和6年度再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金 公募要領」を元に作成
公募期間は以下の通りです。
2024年8月30日(金)~2024年10月31日(木)
この補助金制度については、詳しくは下記の公募要領をご確認ください。
一般社団法人 環境共創イニシアチブ「令和6年度再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金 公募要領」
「デメリット1.導入費用が高い」に対する補助金制度だけでなく、
もうひとつのデメリット「デメリット2.投資の見通しがつけにくい」という点に対しても
2024年4月から、電力市場の変化による対策が設けられています。
主な変化は、下記の3つです。
順番に解説していきます。
系統用蓄電池 への投資の見通しを付けやすくなる1つ目の要因が「容量市場の開始」です。
「容量市場」とはどのようなものなのでしょうか?
まずは国内におけるさまざまな電力市場の種類から解説していきます。
この記事の中でも「系統用蓄電池の投資活用」の中で、
「卸電力市場で、電気を売買する」という話が出て来ていますが、
「卸電力市場」は「発電された電気」を売買する市場です。
実は、電力市場にもさまざまな種類があり、
この「卸電力市場」以外にも「容量市場」という電力市場があります。
「卸電力市場」が「発電された電気」を売買するのに対し、
「容量市場」は、4年後の「電力の供給力」を売買する市場になります。
つまり「容量市場」は、電気の「容量」の「予定」を売買する市場で、
という金額を予め決めておくことで、発電事業者 は発電事業を始める際に、
予め最低限の収益の見通しを立てて事業を開始することができます。
この「容量市場」によって、投資の採算の見通しが立てやすくなり、
系統用蓄電池投資も行いやすくなるのです。
「容量市場」は、2024年4月から実運用開始されました。
運用の実態を把握した上で、投資の判断が可能になるため、系統用蓄電池投資の追い風になるのではと考えられています。
系統用蓄電池 への投資の見通しを付けやすくなる2つ目の要因が
「長期脱炭素電源オークションの開始」です。
長期脱炭素電源オークション も「容量市場」のひとつです。
取り扱う電力が再エネに限られるなど、通常の 容量市場 とは条件が異なります。
長期脱炭素電源オークション で落札されると、落札金額が20年間毎月支払われ、
発電所の初期費用や運用費用などを確保/回収することができます。
つまり、先の見通しを確保したうえで、事業を開始できるのです。
※ただし、長期脱炭素電源オークション で落札した金額以上の利益が出た場合には、
その収益の9割を国に還元する必要があります。
初回オークションの結果は、2024年4月26日に、電力広域的運営推進機関から公開されています。
出典:電力広域的運営推進機関「容量市場長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2023年度)」
点線のグラフは、応札容量(オークションに応募された容量)になっています。
オレンジで示してある「蓄電池」においては、
455.9万kWの応札容量に対して、落札容量は109.2万kWと、24%の落札率と非常に低い結果だったことが分かります。
落札したのは、下記の企業・団体になります。
この結果を見ると、初回の 長期脱炭素電源オークション における蓄電池容量の落札は
非常に狭き門だったということが言えますので、
誰でも簡単に落札できるものではないと言えます。
「卸電力市場」「容量市場」とさまざまな種類の電力市場を解説してきましたが、
「需給調整市場」という電力市場もあり、
この市場も「系統用蓄電池投資の見通し」に影響があります。
「需給調整市場」とは「緊急時に必要となる予備用の電力」を売買する市場です。
「出力制御」の項でも解説しましたが、電気は発電と電力需要の「需給バランス」を調整しなければ、停電などに繋がるリスクがあります。
「需給調整市場」では、そうした需給バランスを調整するための「調整力」として使用する電力を売買する市場です。
需給調整市場 で取引される電力には、応動時間(※)に応じて、5種類の電力があります。
この電力を「調整力」と言います。
5つの調整力の応動時間は、下記のようになっています。
この「5つの調整力」の内、三次調整力①と三次調整力②は、既に取引開始しています。
そして、2024年度(2024年4月)からは、これまで取引開始されていなかった調整力も取引開始されました。
このように、これまで取引開始されていなかった調整力が
2024年4月から取引開始になったのですが、これらは「応動時間が短い」特徴があります。
系統用蓄電池 の応答速度は速いため、こうした「応動時間の短い調整力」ではニーズが高く、
系統用蓄電池投資のニーズも高まると考えられており、
「需給調整市場における全メニューの開設」は、
系統用蓄電池投資 の追い風になると考えられています。
日本国内の各エリアの 系統用蓄電池 導入に続いて、
実際に 系統用蓄電池 を導入した事例をいくつかご紹介していきます。
九州電力エリアの出力制御低減を目指して導入された事例です。
NTTアノードエナジーと九州電力、三菱商事は3社合同で、2023年7月から
福岡県田川郡香春町に出力1.4MW/容量4.2MWhの蓄電システムを設置し運用し始めました。
前述のように、九州電力エリアは出力制御量が非常に多いエリアになります。
その出力制御を低減するために、3社が共同で開発を進めてきた 系統用蓄電池事業 です。
このように、大手電力会社が中心となって
出力制御低減 のために 系統用蓄電池事業 を行うケースもあります。
詳しくは、下記記事をご参照ください。
九州電力「太陽光出力制御の低減に向けて福岡県田川郡香春町で系統用蓄電池の運用を開始しました」
国の補助金については前述しましたが、
地方自治体によっては、都道府県による助成金を出していることもあります。
東京都の助成金を活用した事例をご紹介します。
東急不動産は、2023年8月に再エネ事業と農業の実証実験プラットフォーム
「リエネソーラーファーム東松山」(埼玉県東松山市)内にある
カフェ・イベントスペースに 系統用蓄電池 を設置しました。
東急不動産、伊藤忠商事、パワーエックス、自然電力の4社で
パートナーシップ契約を結び、事業を進めています。
この 系統用蓄電池事業は、
東京都の補助金制度「令和4年度系統用大規模蓄電池導入促進事業」を活用して
導入されました。
この補助金制度では、助成率4/5で上限額は25億円になります。
詳しくは、下記記事をご参照ください。
環境ビジネス「東急不動産、東松山で系統用蓄電池事業 パワーエックスの蓄電池を採用」
少し珍しい例として、定置用蓄電池ではなく
EV用の電池を 系統用蓄電池 に活用した事例です。
住友商事は、2023年9月に、北海道千歳市に系統蓄電所
「EVバッテリー・ステーション千歳」を完工しました。
この蓄電所の面白いところが、一般的な「定置用蓄電池」ではなく
「自動車用のEV電池」を使用しているところです。
「自動車用のEV電池」を多数使用し、定置用蓄電池と同規模の蓄電量を実現しています。
また、使用済みEVバッテリーを活用することによって
蓄電池製造時に排出されるCO2を削減することにも繋がる取り組みです。
容量は23MWhで、約2,500世帯が一日に使用する電力を蓄電することができます。
詳しくは、下記記事をご参照ください。
環境ビジネス「住友商事、北海道でEV電池を活用した系統蓄電事業開始」
次に、実際に系統用蓄電池事業を行う上で必要になってくる蓄電量について
確認していきましょう。
系統用蓄電池事業に使用する蓄電池は、通常の産業用蓄電池よりも必要な容量が大きくなります。
電気の売買を行う場合、日本国内では 卸電力市場「JEPX(日本卸電力取引所)」で行うことになりますが、
その場合「1コマ30分/500kWh」が最低取引単位になります。
つまり「500kWh未満」の容量の蓄電池では、そもそも系統用蓄電池事業を行うことはできません。
500kWhの容量がある蓄電池であれば、前述の最低取引単価を満たすことはできます。
しかしながら、1コマのみしか取引できないため、系統用蓄電池事業を進めて行くうえでは
現実的ではありません。
系統用蓄電池事業を現実的に行うと考えると
3時間6コマ分を取引に使用できるように「3,000kWh」くらいは蓄電できる必要があります。
つまり、系統用蓄電所には、最低限「3,000kWh」以上の容量が必要だと考えておく必要があります。
すなわち、それに対応できる蓄電容量の蓄電池を選ぶ必要があるのです。
それでは、系統用蓄電池 に使用できるサイズの蓄電池を扱うメーカーには
どのようなものがあるのでしょうか?
主要なメーカーをご紹介していきます。
系統用蓄電池 として世界で最も有名なのは「Tesla(テスラ)のMegapack(メガパック)」です。
蓄電容量も1ユニット3,000kWhで、前述のように3時間6コマ分の電気を蓄電しておくことができます。
詳細はこちら:Tesla Japan「Megapack(メガパック)」
HUAWEI(ファーウェイ)の大規模スマート産業用蓄電システムも、
1ユニット2000kWhの蓄電容量があり、系統用蓄電池 として使用することができます。
詳細はこちら:HUAWEI「スマート産業用蓄電システムソリューション」
中国の蓄電池メーカーCATLの日本法人のTAOKE ENERGY(タオケイエナジー)の系統用蓄電池は、
1ユニット1万1,900kWhの大容量で、水冷式の蓄電池ラックを使用している点も特徴的です。
国産の蓄電池で、系統用蓄電池 としても活用できる容量を扱っているのが
TMEIC(東芝三菱電機産業システム株式会社)です。
最大容量の蓄電池で1ユニット1,000kWhになりますが、複数ユニットを組み合わせれば、系統用蓄電池 としても活用することができます。
詳細はこちら:TMEIC(東芝三菱電機産業システム株式会社)「大容量リチウムイオン二次電池システム(TMBCS)」
そして国内企業で、系統用蓄電池 のメーカーとして注目されているのが「パワーエックス」です。
パワーエックスはスタートアップ企業ではありますが、1ユニットの蓄電量は3,000kWhで
事例でもご紹介した東急不動産や、オリンピアなども 系統用蓄電池 として採用しています。
いかがでしたでしょうか?
系統用蓄電池 について、
など、ひと通りのことはご理解頂けたのではないかと思います。
本記事が、お読みになった皆様のお役に立てますと幸いです。