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【徹底解説】自己託送における「特定供給の許可」

※2024年02月06日 最新情報に更新しました。
 

太陽光発電の 自己託送 を行う際、発電事業者 から 需要家 への電力供給は
特定供給という扱いになることがあり、
経済産業大臣の許可を得る必要がある場合もあります。

本記事ではこの「自己託送における特定供給の許可」について
分かりやすく解説していきます。

結論から申し上げますと

「密接な関係にある企業」複数個所への送配電 を行う「自己託送

が対象になる可能性があります。

自己託送 をご検討の際に、本記事がお役に立てますと幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



自己託送は現在、新規受付停止中

特定供給」に関する解説に入る前に、
自己託送 に関する「要件厳格化」と「新規受付停止」について、お知らせしておきます。

自己託送 は現在「要件厳格化」が検討されており、
2024年1月1日から当面の間「新規受付停止」になっており、現在(2024年2月6日)も解除されていません。

今後は「自己託送 を行うための条件が厳しくなる」見通しです。

厳正化の内容に関しては、行う 自己託送 の内容によって影響の有無は異なります。
詳しくは、下記記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

▼自己託送の要件厳正化について、より詳しくはこちらの記事をご参照ください

「特定供給」とは?

それでは本題の「特定供給」について解説していきます。
まず「特定供給」とは何なのでしょうか?

通常の電力供給

通常の電力供給では、小売電気事業者 から 需要家(電気を使用する者)に電気が供給されます。

小売電気事業者 とは、

「電気事業法にもとづいて、国から許可を得て電気事業を行う事業者」

です。日本国内では原則的に電力供給は小売電気事業者が行うことになっています

なぜ許可を得なければならないのか?

なぜ、許可を得た事業者でなければ電力供給事業が行えないのでしょうか?

需要家を保護するため

電気は、需要家(電気の利用者)にとっては、生活に欠かせない「ライフライン」です。

「電気を供給する事業者」が、適切な契約内容で事業を行わない場合、需要家 の生活や事業に大きな影響を与えてしまう恐れがあります。

そのため「需要家の保護」を目的として、ライフラインとしての電力供給を適切に行えるように、しっかりとした取り決めの上で「許可を得た事業者」しか行えない制度になっているのです。

「特定供給」とは?

しかし「特定供給」であれば、小売電気事業者 でなくても、他者への電気の供給が可能になります。

特定供給 とは、

小売電気事業者 ではなくても「特別許可」を得て行える電気供給

と言えば、わかりやすいかもしれません。

前述のように、本来は「利用者のライフラインを適切に守るため」にも、
許可を得て送電事業を行う「小売電気事業者」でなければ電気の供給を行うことはできません。

ただし「自己託送」のように「限られた相手のみに電力供給する場合
「社会全体への大きな悪影響」になるとは考えにくいとも言えます。

そうした場合には、小売電気事業者 でなくとも「経済産業大臣の許可を得て」電力供給事業を行うことができます。その場合の電力供給を特定供給といいます。

つまり、特定供給 とは

小売電気事業者ではない事業者が、経済産業大臣の許可を得て行う電力供給

のことを言います。

3通りの電力供給方法

これらを踏まえて、電力供給の手段を考えると、以下の3通りの方法があることが分かります。

1. 小売電気事業者 を介しての電力供給
2. 特定供給
3. 特に許可などが必要無い電力供給

「特に許可などが必要無い電力供給」とは?

「3. 特に許可などが必要無い電力供給」とは、

小売電気事業者 を介した電力供給ではないが
特定供給 でもないため
・経済産業大臣の許可を得る必要も無い電力供給

となります。

自家消費型太陽光発電 を行う場合には、上記の3種類の電力供給方法があることになります。

自家消費型太陽光発電における電力供給の種類

それでは実際に、自家消費型太陽光発電のモデルごとに
それぞれがどの電力供給方法に該当するのか、確認しておきましょう。

図のように、

自社所有モデル,オンサイトPPA,自己託送(第三者所有モデル) は許可が必要無い
オフサイトPPA は、小売電気事業者 を介した供給

となり、特定供給 とは関わりがありませんが

自己託送 は特定供給の許可が必要になる可能性がある

ということが分かります。

特定供給の許可が「不要」なケース

それでは実際に、特定供給の許可が「不要」なケースについて
深堀して解説して行きます。

1.「事業ではない」電力供給
2.「1つの建物や構内に対して」送電する場合

上記のケースにおいては、経済産業大臣の許可を得る必要はありません。

1.「事業ではない」電力供給

小売電気事業者 ではない 発電事業者 が、電気を供給する「事業を行う」場合には
その電力供給事業は「特定供給」に該当します。

つまり「事業ではない」電力供給は、
そもそも 小売電気事業者 である必要もありませんし、特定供給 にも該当しません。

例えば「自社の社内で発電して電気を使う」ようなケースは「事業を行っている」とは言えませんので
そもそも「特定供給」とはみなされず、よって許可も必要ありません。

例1) 自社所有モデル

 
 
 
自社所有モデル のように、自社内で自社所有の太陽光発電から電力供給している場合

「事業とは言えない」ので「特定供給」とはみなされず、よって許可も必要ありません。

例2) 発電事業者と需要家が「同じ企業」の自己託送

発電事業者需要家 が同じ企業の 自己託送 の場合でも
「自社の社内で発電して電気を使っているだけ」ですので

「事業で行っている」とは言えず、
特定供給」にも該当しないため、
「経済産業大臣の許可」を得る必要もありません。

2.「1つの建物や構内に対して」送電する場合

また「1つの建物や構内に対して送電する場合」にも「特定供給」にはあたらず、
許可を得る必要もありません。

特定供給に関する電気事業法の内容

電気事業法では、特定供給 に関して
「許可を必要としないもの」を以下のように定めています。

第二十七条の三十三 電気事業(発電事業を除く。)を営む場合及び次に掲げる場合を除き、
電気を供給する事業を営もうとする者は、供給の相手方及び供給する場所ごとに、
経済産業大臣の許可を受けなければならない。

  一 専ら一の建物内又は経済産業省令で定める構内の需要に応じ
    電気を供給するための発電設備により電気を供給するとき。

引用元:電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)

特に、下線部分の

一の建物内又は経済産業省令で定める構内の需要に応じ

という部分はつまり、
「一つの建物や構内に対して」送電する場合には、許可は必要なくなるということです。

例1) オンサイトPPA

 
 
 
オンサイトPPA は、他社同士で電力供給を行っているため「事業」になるのですが

電気の供給先は一箇所になるため、特定供給 の許可は必要ありません。

例2) 自己託送(第三者所有モデル)

自己託送(第三者所有モデル) も他社間での電力供給であるため、事業になるのですが
「供給先は一箇所に限定される」ルールになっている為、特定供給 の許可は必要ありません。

例3) 「密接な関係」にある需要家の「2箇所の施設」への自己託送

次は、少し注意が必要なケースです。

例えば、 「密接な関係」にある需要家の「2箇所の施設」への自己託送を行った場合、
密接な関係にあるとはいえ「他社2箇所」への送電になるため

「複数個所への送電」になり、
特定供給」として、
「経済産業大臣の許可」を得る必要があります。
特定供給では「密接な関係にある企業」も「他社扱い」

自己託送 においては「密接な関係にある企業」は「同じ企業」のように
自己託送 の対象になっていましたが、

特定供給 においては「他社扱い」になるため注意が必要です。

「特定供給の許可」に関するさまざまなケース

このように下記2つの条件にあたる場合には、特定供給 の許可は不要になるのですが

1.「事業ではない」電力供給
2.「1つの建物や構内に対して」送電する場合

このふたつの条件が両方絡むと、少し複雑になります。

「特定供給の許可」に関するさまざまなケースについて、解説して行きます。

「特定供給の許可」が「不要」なケース

例1) 発電事業者と「同じ企業」の複数拠点に送電する場合

複数個所への送電ですが、そもそも「自社同士」であり
「事業にはならない」ため、特定供給 の許可は「不要」になります。

例2)「密接な関係にある企業」1箇所に送電する場合

こちらは自社同士ではありませんが、
電気の送電先が一箇所であるため、特定供給 の許可は「不要」になります。

例3) 「同じ企業」「密接な関係にある企業」2箇所に送電する場合

次に、少し複雑なケースです。

図のように「同じ企業」「密接な関係にある企業」の2箇所に送電するケースです。
「一箇所への送電」では無いため、許可が必要なように見えますが

このケースの場合「許可は必要ありません」

 

「同じ企業同士」は「事業」ではない

前述のように、同じ企業同士の送電の場合には、「事業」にはなりません。

 

「事業」としての送電は「一箇所」

つまり「事業としての送電」と考えると、送電先は一箇所になります。

そのため、経済産業大臣の許可は必要ないケースになるのです。

特定供給の許可が「必要」なケース

次に、許可が必要になる「複雑なケース」を見て行きましょう。

例1)「密接な関係にある企業」含む2箇所から送電するケース

図のように、A社とB社の2つの発電事業者から1つの需要地に送電するケースです。

この図を見ると「一箇所への送電」なので、経済産業大臣の許可は必要ないケースに思えますが
「B社からの送電」は「経済産業大臣の許可が必要」になります。

「A社」から「A社の発電所」への送電は許可不要

「A社」から「A社の発電所」への送電については、
同じ会社への送電のため、事業とはみなされず、経済産業大臣の許可は不要です。


「B社」から「A社の発電所」にも送電していることになる

しかしながら「B社からの送電」は、下図のような流れであると解釈されます。

少し分かりにくい話なのですが、
「B社からの送電」は「A社の発電所」と合わせて「A1社の工場」に送電されるとして
一部の電気を「A社の発電所」にも送電しているとみなされます。

そのため、複数個所へ送電していることになり、
特定供給 の許可が必要」になるのです。

 
このように、場合によっては 特定供給 の許可の要不要の判断が難しいケースもありますので
確認しながら進めていく必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

少し複雑でわかりにくいケースも例として挙げましたが、
自己託送 における「特定供給の許可」について
ひと通りご理解頂けたのではないかと思います。

自己託送 の導入を検討の際には、
この「特定供給の許可」についても、頭に置いたうえで検討していく必要があります。

本記事が、御社の再エネ導入などのお役に立てれば幸いです。