※2025年01月07日 最新情報に更新しました。
太陽光発電の 自己託送 を行う際、発電事業者 から 需要家 への電力供給は
「特定供給」という扱いになることがあり、
経済産業大臣の許可を得る必要がある場合もあります。
本記事ではこの「自己託送における特定供給の許可」について
分かりやすく解説していきます。
結論から申し上げますと
が対象になる可能性があります。
自己託送 をご検討の際に、本記事がお役に立てますと幸いです。
それでは本題の「特定供給」について解説していきます。
まず「特定供給」とは何なのでしょうか?
通常の電力供給では、小売電気事業者 から 需要家(電気を使用する者)に電気が供給されます。
小売電気事業者 とは、
です。日本国内では原則的に電力供給は小売電気事業者が行うことになっています。
なぜ、許可を得た事業者でなければ電力供給事業が行えないのでしょうか?
電気は、需要家(電気の利用者)にとっては、生活に欠かせない「ライフライン」です。
「電気を供給する事業者」が、適切な契約内容で事業を行わない場合、需要家 の生活や事業に大きな影響を与えてしまう恐れがあります。
そのため「需要家の保護」を目的として、ライフラインとしての電力供給を適切に行えるように、しっかりとした取り決めの上で「許可を得た事業者」しか行えない制度になっているのです。
しかし「特定供給」であれば、小売電気事業者 でなくても、他者への電気の供給が可能になります。
特定供給 とは、
と言えば、わかりやすいかもしれません。
前述のように、本来は「利用者のライフラインを適切に守るため」にも、
許可を得て送電事業を行う「小売電気事業者」でなければ電気の供給を行うことはできません。
ただし「自己託送」のように「限られた相手のみに電力供給する場合」
「社会全体への大きな悪影響」になるとは考えにくいとも言えます。
そうした場合には、小売電気事業者 でなくとも「経済産業大臣の許可を得て」電力供給事業を行うことができます。その場合の電力供給を「特定供給」といいます。
つまり、特定供給 とは
のことを言います。
これらを踏まえて、電力供給の手段を考えると、以下の3通りの方法があることが分かります。
1と2については前項で解説した通りです。
「3. 特に許可などが必要無い電力供給」とは、
となります。
自家消費型太陽光発電 を行う場合には、上記の3種類の電力供給方法があることになります。
それでは実際に、自家消費型太陽光発電のモデルごとに
それぞれがどの電力供給方法に該当するのか、確認しておきましょう。
図のように、
・自社所有モデル,オンサイトPPAは許可が必要無い
・オフサイトPPA は、小売電気事業者 を介した供給
となり、特定供給 とは関わりがありませんが
ということが分かります。
それでは実際に、特定供給の許可が「不要」なケースについて
深堀して解説して行きます。
上記のケースにおいては、経済産業大臣の許可を得る必要はありません。
小売電気事業者 ではない 発電事業者 が、電気を供給する「事業を行う」場合には
その電力供給事業は「特定供給」に該当します。
例えば「自社の社内で発電して電気を使う」ようなケースは「事業を行っている」とは言えませんので
そもそも「特定供給」とはみなされず、よって許可も必要ありません。
自社所有モデル のように、自社内で自社所有の太陽光発電から電力供給している場合
「事業とは言えない」ので「特定供給」とはみなされず、よって許可も必要ありません。
発電事業者 と 需要家 が同じ企業の 自己託送 の場合でも
「自社の社内で発電して電気を使っているだけ」ですので
また「1つの建物や構内に対して送電する場合」にも「特定供給」にはあたらず、
許可を得る必要もありません。
電気事業法では、特定供給 に関して
「許可を必要としないもの」を以下のように定めています。
第二十七条の三十三 電気事業(発電事業を除く。)を営む場合及び次に掲げる場合を除き、
電気を供給する事業を営もうとする者は、供給の相手方及び供給する場所ごとに、
経済産業大臣の許可を受けなければならない。一 専ら一の建物内又は経済産業省令で定める構内の需要に応じ
電気を供給するための発電設備により電気を供給するとき。
特に、下線部分の
という部分はつまり、
「一つの建物や構内に対して」送電する場合には、許可は必要なくなるということです。
オンサイトPPA は、他社同士で電力供給を行っているため「事業」になるのですが
電気の供給先は一箇所になるため、特定供給 の許可は必要ありません。
自己託送(第三者所有モデル) も他社間での電力供給であるため、事業になるのですが
「供給先は一箇所に限定される」ルールになっている為、特定供給 の許可は必要ありません。
説明が長くなるため、本件は、以下記事にて詳しく解説しています。
自己託送(第三者所有モデル)を行うための「組合」
次は、少し注意が必要なケースです。
例えば、 「密接な関係」にある需要家の「2箇所の施設」への自己託送を行った場合、
密接な関係にあるとはいえ「他社2箇所」への送電になるため
自己託送 においては「密接な関係にある企業」は「同じ企業」のように
自己託送 の対象になっていましたが、
特定供給 においては「他社扱い」になるため注意が必要です。
このように下記2つの条件にあたる場合には、特定供給 の許可は不要になるのですが
このふたつの条件が両方絡むと、少し複雑になります。
「特定供給の許可」に関するさまざまなケースについて、解説して行きます。
複数個所への送電ですが、そもそも「自社同士」であり
「事業にはならない」ため、特定供給 の許可は「不要」になります。
こちらは自社同士ではありませんが、
電気の送電先が一箇所であるため、特定供給 の許可は「不要」になります。
次に、許可が必要になる「複雑なケース」を見て行きましょう。
図のように、A社とB社の2つの発電事業者から1つの需要地に送電するケースです。
この図を見ると「一箇所への送電」なので、経済産業大臣の許可は必要ないケースに思えますが
「B社からの送電」は「経済産業大臣の許可が必要」になります。
「A社」から「A社の発電所」への送電については、
同じ会社への送電のため、事業とはみなされず、経済産業大臣の許可は不要です。
しかしながら「B社からの送電」は、下図のような流れであると解釈されます。
少し分かりにくい話なのですが、
「B社からの送電」は「A社の発電所」と合わせて「A社の工場」に送電されるとして
一部の電気を「A社の発電所」にも送電しているとみなされます。
そのため、複数個所へ送電していることになり、
「特定供給 の許可が必要」になるのです。
次に、少し複雑なケースです。
図のように「同じ企業」「密接な関係にある企業」の2箇所に送電するケースです。
「同じ企業」から「同じ企業」へ一カ所に送電する場合や、
「同じ企業」から「密接な関係にある企業」に一カ所に送電する場合は「許可は必要ありません」。
しかし、このケースの場合「一箇所への送電」では無いため、
「特定供給 の許可が必要」になります。
前述のように、同じ企業同士の送電の場合には、「事業」にはなりません。
しかし、上記のように発電所からの送電先は2箇所になり、
「A社と密接な関係にあるB社の事業所」は同一企業ではないため、
「A社と密接な関係にあるB社の事業所」に対しての送電に関しては「「特定供給 の許可が必要」となります。
このように、場合によっては 特定供給 の許可の要不要の判断が難しいケースもありますので
確認しながら進めていく必要があります。
いかがでしたでしょうか?
少し複雑でわかりにくいケースも例として挙げましたが、
自己託送 における「特定供給の許可」について
ひと通りご理解頂けたのではないかと思います。
自己託送 の導入を検討の際には、
この「特定供給の許可」についても、頭に置いたうえで検討していく必要があります。
本記事が、御社の再エネ導入などのお役に立てれば幸いです。