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【2024年最新】太陽光発電所の盗難 [防犯と被害後の対応]

2024年現在、太陽光発電所における「ケーブルの盗難」が続発しており、
発電事業者に甚大な被害を与えています。

本記事では

「太陽光発電所の盗難被害の現状」
「犯行手口の傾向」
「狙われやすい発電所の特徴」
「防犯対策」
「被害を受けた後の対応方法」

について、分かりやすく解説していきます。

「太陽光発電所の盗難被害」に備え、本記事の内容をぜひ把握しておいてください。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



盗難被害の現状

まず「盗難被害が実際にどれほど増加しているのか?」被害の推移を見て行きましょう。

盗難被害の推移

2022年までの発生保険金の推移(日本損害保険協会)

まず、2022年までの盗難被害の推移を「発生保険金の金額の推移」でご紹介します。


出典:一般社団法人 日本損害保険協会「太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果(2024年2月)」

上のグラフは「盗難によって発生した保険金額」の「2017年度を1とした場合の比率値」の推移です。
2022年度は、2017年度と比較すると実に「20倍」に大きく増加していることが分かります。

2023年以降の被害件数の推移(株式会社エネテク)

上記の盗難被害の推移では、最新情報でも2022年までの情報になっています。

2023年以降の盗難被害の推移は、本サイトを運営している
株式会社エネテクが対応した、盗難被害の件数の推移を参考データとしてご紹介します。

前述の発生保険金の推移とは、元となるデータの母数は異なるのですが、
このグラフも1,000か所の発電所におけるデータですので、傾向を見るには充分なデータかと思われます。


出典:株式会社エネテク

図のように、2023年も2022年と比較して「3倍」に被害件数が増加しており、
2024年には5月時点ですでに「2023年度の90%」まで件数が増えています。

このように「太陽光発電所への盗難による被害」は、
2024年現在も増加し続けていることが分かります。

盗難被害の地域分布

被害件数に続いて、特に被害の多い地域についても見て行きましょう。

2022年までの発生保険金の地域分布

 
 

被害の推移同様に、まずは2022年までの発生保険金の地域分布を見て行きましょう。

全体的に北関東が多く、茨城県、栃木県、千葉県の3県で、全体の半分以上を占めていることが分かります。

出典:一般社団法人 日本損害保険協会「太陽光発電設備向け火災保険(企業向け)の事故発生状況等に関する調査研究結果(2024年2月)」

2024年までの盗難発生件数の地域分布

 
続いて、株式会社エネテクが対応した盗難被害のデータを元に、2024年5月までの最新分布を見て行きます。

グラフを見て頂くとお分かりのように、茨城県~群馬県の上位5県の順位や比率は、発生保険金の傾向と非常に似ていることが分かります。

また、北関東だけでなく中部の都道府県の名前も出てきているのが特徴的です。

出典:株式会社エネテク


盗難被害は、全国に広がりつつある?

北関東以外にも、中部の都道府県の名前も出始めていることから、
北関東と中部それぞれの盗難被害件数の年次推移も見てみましょう。


出典:株式会社エネテク

このように、北関東における被害件数も年々増加していますが、
中部においても、2023年から被害が出始めています。

株式会社エネテクの対応実績においては、北関東と中部で被害が出ていますが
他の地域でも被害が出ていることがニュースになっており、被害が全国に渡っていることが分かります。

参考:山梨県での被害:UTY「太陽光発電施設で銅線ケーブル盗難相次ぐ 被害は数百m」

参考:山形県での被害:NHK「米沢市の太陽光発電施設から送電用銅線ケーブル盗まれる」

参考:滋賀県での被害:サンスポ「太陽光発電所で銅線約1キロメートル分盗難 滋賀」

盗難の保険は「全国の発電所が対象外」に

太陽光発電所の盗難に対する保険は、
以前は「北関東地域は対象外」としていた保険会社が多かったのですが、
現在は「全国の発電所が対象外」になっている保険会社も増えて来ています。

こうした面からも、大手保険会社を中心に
太陽光発電所のケーブル盗難は、全国的に広がって行くと考えられていることが分かります。

盗難が増加しているのはなぜ?

それでは、太陽光発電所の盗難被害は、なぜこんなに増えているのでしょうか?

狙われているのは、ケーブルに使用される「銅」

太陽光発電所で使用されているケーブルは、銅でできているものが大半です。
太陽光発電所では、この「銅」の転売を狙って、ケーブルが盗まれています。

銅の価格高騰

ケーブルの盗難が増加している主な背景が「銅の価格高騰」です。

銅の価格推移

近年の銅の価格推移は以下の通りです。


出典:一般社団法人 日本電線工業会「国内銅建値(月平均)推移表」

※建値・・・生産者が卸売業者に対して発表する販売価格

ご覧の通り、2024年の銅の価格は、2009年と比較して「2.56倍」にまで値上がりしています。
前述の盗難件数と比較すると、下のようになります。

銅の価格高騰と比例して、盗難件数も増加してきていることが分かります。
このように「銅の価格が上がっている」ため「転売目的の盗難」が増加しているのです。

ケーブル盗難の手口「5つの傾向」

続いて「盗難の手口」について解説していきます。

実際の被害を抑えるためにも、太陽光発電所での盗難がどのように行われるのか、
手口の傾向を把握しておきましょう。

傾向1.組織的に行っている
傾向2.犯行は計画的
傾向3.盗み切れるまで、日をまたいででも行う
傾向4.同じ発電所が何度も狙われるケースも
傾向5.どこから侵入されるか予測しづらい

傾向1.組織的に行っている

盗難の犯行は、単独犯ではなくグループで、
見張りなどを設けて、組織的に行っている傾向があります。

ケーブル盗難の様子

傾向2.犯行は計画的

犯行は、下見なども行い、計画的に行われる傾向があります。

犯行の流れ

犯行を行う際には、下記のような流れで行われる傾向があります。

1.Googleマップ等でターゲットを決める

まず、Googleマップ等の地図アプリ使って、ターゲットとなる発電所を探します。

2.下見を行う

犯行の前に、下見を行っているケースが多いようです。
下見を行い、犯行が行いやすい発電所かどうか、下記のような点を事前確認する傾向があります。

・警備システムの有無
・人通りが多いかどうか?
・発電所に人の手が行き届いているかどうか?
・ケーブルが盗みやすいかどうか?
・車両の搬入/搬出経路の確認

また、以下のような手口も報告されています。

・数日にわたり調査し、人のいない時間帯を見出す。
・あえてフェンスを壊しておき、修繕するかどうか対応の早さを見る
3.盗難を実行

こうして下見なども行ったうえで、犯行に及びます。

傾向3.盗み切れるまで、日をまたいででも行う

特に大きな発電所の場合、1日ではケーブルを盗み切れないことがあります。
そうした場合には、日をまたいで複数日にわたって犯行が行われ、
ケーブルを「盗み切る」というケースも見られます。

傾向4.同じ発電所が何度も狙われるケースも

太陽光発電所の盗難は、一度被害に遭って終わりとは限りません。
2度、3度と同じ発電所が狙われるケースもあります。

傾向5.どこから侵入されるか予測しづらい

発電所への侵入は、出入り口からだけとは限りません。
フェンスの予想外の箇所を破って侵入してくるケースもあり、
どこから侵入されるかの予想が付きにくい傾向があります。

狙われやすい発電所「3つの特徴」

このように、さまざまな手口で行われる太陽光発電所の盗難ですが、
どのような発電所が狙われやすいのでしょうか?
「特に狙われやすい発電所」についても、確認しておきましょう。

【ご注意】
ご紹介する内容に該当しない発電所でも、盗難に遭う可能性はあります。
あくまで「特に」狙われやすい発電所を、傾向としてご紹介していきます。

1.夜間に人が近づかない立地にある発電所
2.特に「高圧」の発電所が狙われやすい
3.メンテナンスが行き届いていない発電所

1.夜間に人が近づかない立地にある発電所

まず、夜間に人が近づかない立地にある発電所は、盗難の被害に遭いやすい傾向にあります。
「人がいない方が犯行を行いやすい」点と、
「太陽光発電は夜間は発電しない」ため「感電の危険が無く犯行が行いやすい」
といった点も理由です。

2.特に「高圧」の発電所が狙われやすい

低圧、高圧、特別高圧の中でも特に「高圧」の発電所が狙われやすい傾向にあります。
それぞれの発電所においての、傾向をご紹介します。

「低圧」の発電所

低圧の発電所は、ケーブルが細く「銅の量が少ない」ため、比較的狙われにくい傾向にあります。

「隣接した分譲型低圧発電所」は狙われやすい

しかしながら、一箇所に複数の低圧発電所が隣接している、
いわゆる「隣接した分譲型低圧発電所」は、まとめて盗難被害に遭うケースも多発しており
狙われやすい発電所であると言えます。

「高圧」の発電所

高圧の発電所は、ケーブルも太く、人があまりいない山間部にあることが多いため
最も狙われやすい発電所です。

実際に、盗難の被害に遭っている発電所の多くが「高圧」です。

「特別高圧」の発電所

特別高圧は、

・常駐者がいるため、盗難が行いにくい。発見が早い。
・規模が大きいため、警備会社と契約している発電所が多い
・発電所へのアクセス道路が少ない
・規模が大きいため、主要箇所にたどりつくのに時間がかかる

といった理由から、比較的盗難には遭いにくい傾向にあります。

3.メンテナンスが行き届いていない発電所

「メンテナンスが行き届いていない発電所」は、人が滅多に立ち入らない発電所として
盗難の現場を抑えられる可能性も低くなると考えられ、狙われやすくなります。

盗難への対応策「10選」

それでは、盗難を防ぐためにはどのような対策を講じればよいのでしょうか。

盗難を完全に防ぐ方法は無い

まず、最初にお伝えしておきたいのは、どこまで対策しても
「太陽光発電所の盗難を完全に防ぐ方法は無い」という点です。

元も子もない話に聞こえてしまうかもしれませんが、
その上で「被害に遭いにくくなる」対応策を中心にご紹介していきます。

盗難への対応策

それでは、具体的な「盗難への対応策」をご紹介していきます。

盗難への対応策として重要なのは「盗難を防ぐ」ことだけでなく
「犯行を諦めさせる」のも、重要な目的です。

対策を充分に行っていて、犯行がすぐに発覚する、
盗難に時間や手間がかかる、と犯人に思わせるような対策を講じておくことが重要です。

対策1.「盗難への保険」に加入しておく
対策2.警備システムの導入
対策3.アルミケーブルへの切替
対策4.定期的なメンテナンスの実施
対策5.地下埋設配管
対策6.キュービクルが簡単に開かないようにする
対策7.音や光による警報
対策8.バリカーの設置
対策9.ハンドホールをモルタルで覆う
対策10.遠隔監視システムの導入
本記事では、逆に盗難を行う加害者側への情報提供になってしまうのを避けるため、あくまで公開できる範囲の防犯対策をご紹介しています。より詳しい対応策は、株式会社エネテクまでご相談ください。

対策1.「盗難への保険」に加入しておく

まず最初にご紹介するのが「盗難への保険」に加入しておくことです。
「予め防ぐ策」ではなく、盗難被害を受けた後の対応策になってしまいますが、

盗難被害に遭った際に、確実に役に立つ対応策であり、
今のうちしかできない可能性がある対応策でもありますので、最初にご紹介しておきます。

「盗難に対する保険」から撤退する保険会社が増えている

冒頭にご紹介したように、盗難が多発していることによって、保険会社の保険金支払金額が増加し、保険会社に入ってくる保険料よりも金額が大きくなるという事態になっています。

このことから「盗難への保険」サービスから撤退する保険会社が増えており、
「盗難への保険」を取り扱う保険会社が少なくなって来ています。

※このサイトを運営している、株式会社エネテクのグループ会社の
保険代理店「エネテクインシュランスサービス」では、2024年6月現在においてはまだ「盗難への保険」の対応が可能ですので、ご検討される方はご相談ください。
参考「増加する「ケーブル盗難」に備えるなら、エネテクインシュランス」
保険の契約期間は1年間

ただし「盗難への保険」に加入できたとしても、
その契約期間は現在「基本的に1年間」になっています。
以前は10年以上の保険契約期間だったのですが、盗難の増加などから、短くなってきています。

また、現在は加入できたとしても、1年後にはどの保険会社でも加入できなくなっている
可能性も充分にあり得ます。

ですので、今仮に加入できたとしても「1年間だけの補償」になってしまう可能性はあります。

休業損害補償

太陽光発電の盗難に備える上で、もう一つ大切なのが「停電期間中の損害」の補償です。
盗難に遭った際に受ける損失は、ケーブルや工事費用だけではありません。

復旧までの停電期間における「売電収入の減少」も大きな損失になります。
その停電期間の損失を補う保険が「休業損害補償」です。

ただし、補償対象は30日まで

ただし、その補償対象は30日までで、30日を超える停電期間の損失は補償されないのが一般的です。

停電期間は、元の設備の状況にもよりますがおよそ「1ヶ月~2ヶ月」かかるのが一般的ですので
この補償期間ですべて補償されるとは限りません。

以前は365日など、長い補償期間でしたが、近年の太陽光発電への損害の増加から
休業損害補償 においても、期間が短くなっています。

盗難に対する補償はいつまで続くか

この「休業損害補償」においても、前述の「盗難に対する保険」と同じように
「盗難に対する休業損害補償」も、近いうちに「対象外になる」可能性があります。
また、休業損害補償 も、保険期間は1年間になっています。

対策2.警備システムの導入

盗難被害に遭わないために、効果の高い手段のひとつが「警備システムの導入」です。
前述のように、犯行グループが下見を行う際には「警備システムの有無」を見ていることからも
防犯上、一定の効果がある対応策です。

システムの対応範囲はどこまで?

「警備システムを導入する」場合、センサーをどこまでの範囲に導入するかも
重要な判断になってきます。

バランスが良いのは「キュービクル・パワコン付近」

最も費用と防犯効果が高いのは「キュービクル・パワコン付近」をセンサーで警備する方法です。
キュービクル・パワコン付近」はケーブル盗難の際に狙われやすい箇所になります。

「入口付近」にセンサーを限定してしまうと、
費用は抑えられますが、フェンスを破るなどして別の場所から侵入された際に
対応できません。

フェンス全体にまでセンサーを導入すると、どこから入っても感知できますが
費用が高くなってしまいます。

上記はあくまで一般論ですので、
予算や盗難リスク、立地などによってもセンサーの範囲は異なって来ます。
詳しくは、防犯に詳しい業者などに相談しておきましょう。

対策3.アルミケーブルへの切替

続いての有効な対策は「アルミケーブルへの切替」です。
前述の通り、銅の価格が高騰しており、狙われやすくなる要因になっています。

そこで、転売しても価格が安いアルミのケーブルに変えることで、
盗難のリスクを軽減する対応策です。

銅とアルミの価格比較

では実際に、銅とアルミの価格を比較してみましょう。


銅の価格の出典:一般社団法人 日本電線工業会「国内銅建値(月平均)推移表」
アルミの価格の出典:World Bank – Commodity Markets

図のように、2024年の価格を比較すると「アルミは銅の1/4の価格になる」ことが分かります。
ケーブルに使用される金属の価格を下げれば「売っても儲からない」ため、
盗難に遭う可能性を下げることに繋がります。

アルミケーブルへの切替の注意点

ただし、アルミケーブルへの切替には注意点もあります。

注意点1.対応できない発電所もある

アルミケーブルに切り替える場合、ケーブルが太くなり、
従来の設備では合わないことがあります。

注意点2.それでも盗まれることはある

アルミケーブルに切り替えることで、銅のケーブルと比べれば盗難に遭うリスクが下がります。
しかし、全く盗難に遭わないというわけではなく、

盗難に入ってアルミだったとしても、何も盗まないよりはという感覚で
盗まれてしまうことがあります。

看板で「アルミケーブルであること」を訴求

アルミケーブルに切り替えた際には、フェンスなどに「看板で訴求」しておくとさらに効果的です。

盗難を行い、逮捕されている事例や防犯カメラの映像によると
外国人グループも多く確認されています。
看板を設置する際には、多言語での訴求をしておくと良いでしょう。

導入費用を「銅ケーブルの売却」で補う方法も

アルミケーブルへの切替には、当然費用がかかります。
しかし切り替える「銅ケーブル」は、価格が高騰しているため高く売ることが出来ます。

発電所の規模や環境にもよりますが、
目安として、アルミケーブル切替費用の約3割ほどを補填できる可能性があります。

対策4.定期的なメンテナンスの実施

続いての対応策が「定期的なメンテナンスの実施」です。
とても地味な対応策ですが、前述の「狙われやすい発電所」の項でも解説した通り、

メンテナンスが行われておらず、雑草などが生い茂った発電所は
「人があまり見に来ていない」と判断され、狙われやすくなります。

発電所のメンテナンスは義務化もされていますし、発電量低下を防ぐためにも重要ですが、
「盗難の防止策」としても重要ですので、定期的に行っておきましょう。

メンテナンスについては、より詳しく下記の記事で解説していますのご参照ください。

対策5.地下埋設配管

続いて効果が高いのが「地下埋設配管」です。
つまり、ケーブルを地下に埋めてしまうという対応策です。

地下に埋めてしまうと、盗むのがとても困難になるため、効果の高い対応策です。
ただし、コストは高めの対応策になりますので、
費用対効果などを考えて導入を検討する必要があります。

対策6.キュービクルが簡単に開かないようにする

犯行が行われる際には、感電しないために、キュービクル の電源を切る必要があります。
そのため「キュービクルが簡単に開かないようにしておく」対策も重要です。

キュービクルの鍵は、一般的に「200番キー」が使用されているのが一般的です。
ただ、どこでも同じような鍵が使用されているため、盗難に遭いやすいという側面があります。

この「200番キー」を、よりセキュリティの強い鍵に変えることで
盗難に遭うリスクを軽減することができます。

対策7.音や光による警報

人感センサーによる「光」や「音」で警告を発するという対応策もあります。
「音による警告」の中には、オンラインでリアルタイムで監視している業者から
直接の声で警告するものもあります。

対策8.バリカーの設置

「バリカー」とは、写真のように、公園や商業施設などで、車両の進入を防ぐために設置されるものです。

発電所の近くまでの車両侵入を防ぐ事で、盗難の被害の抑止になります。

株式会社エネテクでこのバリカーを設置したところ、過去6回も盗難被害に遭った発電所の被害が無くなったといった事例もあり、効果の高い対応策であると言えます。

ただし、車両が入れなくなることで、メンテナンスなどで発電所の敷地内に車が入ることができなくなるというデメリットもあるため、導入には注意が必要です。

対策9.ハンドホールをコンクリートで覆う

高圧の発電所においては、ハンドホールを使用して
ケーブルを敷設している場合もあるかと思います。

その場合、このハンドホールを開けて、ケーブルを引きずり出して盗む
といった手口で盗難に遭うことがあります。

株式会社エネテクでも、実際にハンドホールにおける防犯対策を行ってきました。

2重ロックにするなどして開けにくくする対策も行いましたが、それでも盗難に遭うため、
ハンドホールをコンクリートで覆い、開けられないようにしました。

その結果、被害を受けなくなったという実例もあります。

ただし、この施策を行うと、メンテンナンス性が著しく下がるという
大きなデメリットもありますので、苦肉の策ではあります。

対策10.遠隔監視システムの導入

また「遠隔監視システムの導入」も、盗難対策には重要です。

遠隔監視を行うことで、盗難を未然に防ぐ事にはなりませんが
盗難に遭った際に、素早く被害を察知できるため、重要になってきます。

前述のように、場合によっては複数日にわたって盗難が行われるというリスクもあり
また、被害発覚が遅れた場合には、売電収入減少の損害なども大きくなります。

「遠隔システム」は、導入していたとしても、運用できていなければ意味がありません。
自分で遠隔監視を日常的に行うのが難しい場合には、
専門業者に依頼するという方法もあります。

もし、被害に遭ってしまったら

このように「盗難に遭いにくくする」対応策を講じていても、
それでも盗難の被害に遭う可能性があります。

被害に遭ってしまったら、どのような対応をすべきなのでしょうか。
被害の発覚から対応までの流れをご紹介していきます。

事前に用意しておいた方がいいことも含めて解説していきますので
予め、把握しておきましょう。

被害発覚のタイミング

盗難の被害に気が付くのは、主に下記3つのタイミングです。

パターン1.遠隔監視で異常に気が付く
パターン2.売電の明細を確認したとき
パターン3.メンテナンス実施時

パターン1.遠隔監視で異常に気が付く

最も早いタイミングで気が付くことができるのが「遠隔監視で気が付く」タイミングです。
ただ、遠隔監視を導入しても、確認をするタイミングによっては発見が遅れることもあり得ます。

遠隔監視を導入する際にも、自分でしっかり監視するようにしておくか
外部の管理会社に委託して監視できるようにしておくことが重要です。

パターン2.売電の明細を確認したとき

遠隔監視を入れていない、またはしっかり確認していない場合には
月々の売電の明細を確認した際に気が付くというパターンもあります。

この場合、発覚までに最大で1か月近くかかってしまうことになる可能性もあります。

パターン3.メンテナンス実施時

3つ目のパターンが「メンテナンス実施時」です。
メンテナンスを毎月行っている発電事業者は稀かと思いますので、発覚には時間がかかると言えます。
そうなると非常に長い期間、売電が止まってしまうことになります。

前述しましたが、遠隔監視を導入して、しっかりと監視しておくことは
被害の拡大を防止するためにも重要なのです。

盗難に遭った直後の動き

まず、盗難に遭った直後の動きについて確認しておきましょう。
盗難に遭った時に備えて、予め用意しておいたほうがいいものも合わせてご紹介しておきます。

1.警察に通報する

当然ですが、まずは警察に通報して、捜査に協力します。

2.修繕できる業者に相談する

続いて、修繕を業者に依頼します。
業者の選択肢は、主に下記の3つになるかと思います。

・発電所を施工した業者
・メンテナンスを依頼している業者
・上記以外の復旧の実績のある業者

施工した業者やメンテナンスを依頼している業者に依頼するのが一般的ですが、
「施工した業者がすでに倒産している」「施工やメンテナンスに対する満足感が低い」
といった場合には、復旧の実績やノウハウのある、他の業者に依頼するという選択肢もあります。

いざ盗難被害に遭った時のために、どの業者に依頼するか
考えておくことも、事前準備として大切です。

3.保険会社に連絡する

また、盗難被害に対する保険や、売電が止まった期間の「休業補償」などの保険が
使えるかどうか、保険会社に確認し、手続きを行う必要があります。

いざという時にスムーズに動けるように、
加入している保険についても、事前に確認しておきましょう。

※盗難被害後の注意点

盗難被害後に、注意が必要なのが「盗難未遂箇所が原因の二次被害」です。

ケーブルを盗まれた箇所だけを修繕して、それ以外を細かく確認しなかった場合
思わぬ二次被害に発展してしまうことがあります。

上の写真は、盗もうとして未遂に終わったケーブルの写真です。
盗みかけて切れ込みが入っているのがお分かりいただけるかと思います。

 
 
このように切り込みが入ったケーブルに気付かずにそのまま発電所を稼働させてしまうと、

削れた箇所からアーク放電が起こり、左の写真のように、ボヤや火災などに発展する恐れがあるのです。

盗難被害後には、しっかりとした点検を

このように、盗難に遭った際には、ケーブルを盗まれた箇所以外にも
大きな被害に発展しかねない損傷が残っていることもあります。

被害に遭った後には、不具合が無いか、しっかりとした点検を行うことも重要なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

太陽光発電所の盗難について

・被害の現状
・犯行の手口
・狙われやすい発電所の特徴
・防犯対策
・被害に遭った際の対応

について、ひととおりご理解頂けたのではないかと思います。

この省エネの教科書を運営している、株式会社エネテクも、
盗難への防犯対策や、被害に遭った後の復旧作業・点検まで、
これまでも数多くの発電所を対応してきました。

「太陽光発電所の盗難」について、何かお困りのことがございましたら
まずはお気軽に「株式会社エネテク」までご相談ください。

本記事が、お客様の発電所の盗難対策のお役に立てれば幸いです。