省エネの教科書とは

2023年は太陽光発電所の売り時?売却相場と高く売る3つのコツ

※2023年8月09日:2023年の最新情報に更新しました。

2023年の太陽光発電の売却の現状としては、

出力制御 などの影響によって売電収入が減少するリスク」などの影響もあり
太陽光発電所を売却する方が増えている傾向にあります。

そうした、太陽光発電の売却を取り巻く最新情報を中心に

「発電所の売却方法」
「売却価格の無料簡易測定ツール」
「高く早く売るためのコツ」

なども、わかりやすく解説していきます。

本記事をお読みいただければ、
太陽光発電所売却の最新情報や基礎知識についてひと通りご理解いただけるようになるかと思います。

本記事を太陽光発電所の売却の情報収集にお役立て頂ければ幸いです。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



太陽光発電所は「2023年が売り時?」

2023年は太陽光発電所の「売り時」と考え、売却を検討する発電事業者の方が増えています。

太陽光発電所の売却件数は、2022年は緩やかに増えていたが、2023年から急激に増加した。
増加率は昨年の2倍ペースで、直近3カ月(2023年4~6月)は392件で、前年同期の138件に比べで約3倍に拡大した。

引用元:日経BP:メガソーラービジネス「太陽光発電所の売却依頼が急増」

その理由は、大きく分けて下記の2つです。

1.「出力制御」の影響で売電収入が下がる可能性がある
2.現在、中古発電所は人気がある

順番にそれぞれ解説して行きます。

1.「出力制御」の影響で売電収入が下がる可能性がある

まずひとつめは「出力制御 の影響で売電収入が下がる可能性がある」という点です。

「出力制御」とは?

まず初めに、出力制御(出力抑制 とも呼ばれます)について解説していきます。
出力制御」とは、

大手電力会社が、電力の需給バランスを保つために、
太陽光発電などからの出力を抑制すること

を言います。

出力制御 を受けてしまうと、抑制を受けている間の売電収入が得られません

<なぜ「出力制御」が必要?>
 
電気の使用量と発電量のバランスが崩れてしまうと、電気の質が悪くなります。
電力の需給バランスが崩れると、その電気の質の悪化による「発電機の故障」を防ぐために発電機が自動停止し、広域停電が起こってしまいます。
 
そのため、電気の需要に対して供給が大きくなる見通しの際には、電力会社は広域停電を防ぐために、予め出力制御をかける必要があるのです。
なぜ今「出力制御のリスク」を考える人が増えてる?

大手電力会社10社(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)は、もともと 出力制御 を行うことができましたが、

2021年までは、九州電力以外は 出力制御 を実施したことはありませんでした。

しかし、2022年には北海道電力など6社が、2023年には東北電力など8社が、出力制御 を実施したため、九州電力管内以外の場所に発電所を持つ発電事業者の方々も、出力制御 のリスクを考えるようになったのです。

大手電力会社の太陽光発電所に対する出力制御実施(年次推移)

参照:エレクトリカル・ジャパン(Electrical Japan)「日本全国の再生可能エネルギー出力制御(抑制)実績(毎年の最大記録・比率一覧)」を元に作成

上の表のように、2022年以降は東京電力以外の電力会社でも 出力制御 を実施しています。

この先、売電収入が下がる懸念も

このように、出力制御 が起こるようになると売電収入が下がる
ことが懸念されるため、その前に売却してしまうという発電事業者が増加しています。

「インボイス制度」による「売電収入低下」の懸念は解決

出力制御 以外にも、
2023年10月から始まる「インボイス制度」によって、消費税分の利益が損なわれ
結果的に「売電収入が下がる」ことになるのではないかと言われてきました。

しかし、2023年2月公開の資源エネルギー庁の情報によると、
インボイス制度 によって、課税事業者 も 免税事業者 も売電収入が下がることは無いことが分かりました。

参照:資源エネルギー庁「インボイス制度関連」

※課税事業者 は、インボイスの登録と電力会社へのID情報提出が必要になります。

この インボイス制度 も、売電収入が下がる(=発電所を売却したほうがいい)と言われる
要因のひとつとされてきましたが、この点は問題にはならなそうです。

2.現在、中古発電所は「売り手市場」

しかしながら、現在のセカンダリ市場においては、まだ値下がりなどは起きておらず
下記のような理由から、中古発電所は依然需要が高く「売り手市場」になっています。

理由1.新規のFITが難しくなっている
理由2.市場に出回る中古発電所が少ない

理由1.新規のFITが難しくなっている

低圧のFITの条件は、2020年度から30%以上の自家消費など様々な条件が付き、
新たに 投資用太陽光発電 を導入することが難しくなっており、中古を選択肢に入れる方が増えています。

理由2.市場に出回る中古発電所が少ない

上記のように新規のFIT が困難になり、需要が増えているにも関わらず
その需要に対して「市場に出回る中古発電所が少ない」ため、売り手市場になっているのです。

2つの要因から、太陽光発電所を売却する方が増えている

1.「出力制御」の影響で売電収入が下がる可能性がある
 →今後、投資用太陽光発電 を所有していても利益が下がる可能性がある
 
2.現在、中古発電所は人気がある
 →現状では中古発電所は人気があるので売れる

このように考える人が増えており、太陽光発電所を売却する方が増えています。

太陽光発電の売却方法は「2種類」

それでは実際に太陽光発電所を売却するには、どのような方法があるのでしょうか?
業者を通して太陽光発電を売却する方法は、主に以下の2種類が挙げられます。

1.買取(業者に買い取ってもらう)
2.仲介(業者に買い手を探してもらい売却)

まず、これらのメリットとデメリットを具体的に確認しましょう。

「個人同士での直接売却は手続きが大変」

仲介業者を通さずに直接、個人同士で取引することもできますが、

1.手続きがお互いに大変
2.買い手を探すのに手間がかかる
3.後になって買主との間にトラブルが発生する恐れがある

という大きなデメリットがあります。手数料等かかってしまいますが
特別な理由がない限りは仲介業者に頼った方が賢明です。

1.買取(業者に買い取ってもらう)

ここで言う「買取」とは、買取業者などに設備を直接買い取ってもらうことを指します。

メリット・デメリット(仲介との比較)
メリット

・すぐに現金化できる。

デメリット

・価格が安くなってしまう。

仲介(業者に買い手を探してもらい売却)

対して、仲介は間に仲介業者が入る形になります。

メリット・デメリット(買取との比較)
メリット

・高く売れる。(希望する価格で売りやすい)

デメリット

・売却に時間がかかる。

仲介販売にかかる期間はどれくらい?
・良物件で適正価格であれば半月ほど
・売れにくい物件や価格設定が高すぎる物件は半年以上かかる
・売れない物件はいつまでも売れない可能性がある

この為仲介では、まず適切な価格を設定することが重要です。
また売れない物件・売れにくい物件は、修繕して売却するという選択肢もあります。
「高く早く売るコツ」については、後半に詳しく解説しますのでご参照ください。

仲介と買取どちらを選ぶ?

・素早く現金化するなら「買取」
・高く売るなら「仲介」

このような選択肢になるかと思います。

自分の発電所の売却相場を調べる

ここまでお読みいただいて「自分の発電所はいくらになるんだろう?」
と思う方もいらっしゃるかと思います。

おおよその金額ではありますが、発電所の売却金額のシミュレーションツールをご用意いたしました。

「買取」「仲介」それぞれの一般的な相場価格が算出される仕組みになっていますので、
価格の違いも含めて確認してみてください。

※後述する「発電所の状態」などは加味せず、売電実績とFITの残り年数のみからの算出になります。

売却金額はどうやって決まる?

簡易査定でご覧頂いたおおまかな査定金額ですが、どのような基準で決まるのでしょうか?
より高く売却するためにも、その基準をおさえておきましょう。

1.売電実績とFITの残り年数

太陽光発電の売却価格を決める際に、最も重要となるのが売電実績とFITの残り年数です。

実際にどれ程発電出来て、FIT が終わるまでにどれ程の利益が得られるか?
この2つから算出して、利回り率が9%~10%になるように売却価格を設定します。

(上記の簡易査定フォームでは、この基準だけで算出されています。)

2.追加工事費用がかかるケース

上記の簡易査定フォームでは加味していませんが、
発電所の状態によっては、追加工事が必要になるケースがあります。

・フェンス・柵が設置されていない、または壊れている
・発電設備に重大な破損がある。
・その他、法令に準じていない箇所があり修繕が必要

特に売却に当たって、法令に関する問題は予め修繕しておく必要があります。
売却金額が下がるわけではありませんが、追加工事費用が発生するため
その分売却収益が減る事にはなります。

3.売れにくい/価格が予想を下回るケース

下記のような場合「売却できない」「価格が予想を下回る」ことがあります。

出力制御がかけられているエリア

冒頭でも解説したように、出力制御 がかけられているエリアは、この先現状の売電実績よりも低い実績になってしまう可能性もある為、敬遠される傾向にあります。

設置場所の自然環境に不安がある

自然災害などで発電所に損害を受けるリスクがあると売却しにくい傾向があります。

・土壌が柔らかい。
・雨水による浸食がある。
・近くに崖・山・斜面がある。

受け取った補助金によっては売却ができない

導入時に国から受けた補助金によっては、売却ができないケースがあります。
売却をご検討の際には、受け取った補助金が該当するかどうか確認しておきましょう。

高く早く売るための3つの方法

それでは、これらを踏まえたうえで、できるだけ高く早く売るにはどうすれば良いのでしょうか?

1.複数の仲介業者に依頼する

価格の比較において、複数の売り先に査定を依頼するのは常套手段ですが、
太陽光発電の場合、以下の点から複数の業者に査定を依頼するメリットがあります。

1.価格を比較できる。
2.発電所のエリアに強い業者に出会える。
3.修繕して価格を上げることができる業者に出会える。

1.価格を比較できる。

言うまでもありませんが、複数業者で価格を比較することで高い売却金額が期待できます。

2.発電所のエリアに強い業者に出会える。

発電所を購入する場合、多くの方が「自分の居住地に近いエリアに欲しい」と思っています。
この為、売却したい発電所のエリアの購入希望者とコネクションを多く持っている業者にうまく出会えると、スムーズに希望金額で売却しやすくなります。

3.修繕して価格を上げることができる業者に出会える。

次の項でも解説しますが、修繕なども得意な業者に出逢えれば、発電所を修繕し、売電実績よりも高い金額で売却することもできる可能性があります。

2.修繕して売却価格を上げる

売却価格を上げる手法のひとつとして「修繕して売却価格を上げる」という選択肢もあります。

こんな場合には、売電実績を改善できる可能性が高い

1.発電所に重大な故障がある

パワコンの接続不良など、発電量に大きなマイナス要因となるような故障がある場合には
修繕による改善が見込めます。

2.最初からシミュレーションよりも実績がかなり低い

まれにシミュレーションよりも売電実績が低い発電所もありますが、
この場合、施工段階で何らかのミスがある可能性があります。
しかし施工業者自身も本当に「原因が分からない」というケースも多くあります。

こうした原因をしっかり究明でき、改善できる業者に診て貰えれば、
売電実績を伸ばすことができ、売却価格を上げることができます。

3.メンテナンスが不十分で、売電実績が落ちた

太陽光発電の中には、メンテナンスが充分にできていないために、
売電実績が落ちているケースがあります。

この場合、設備の修繕によって売電実績が改善する可能性が高いです。

闇雲に改善策を講じても、売電実績が上がるとは限らない

上記を確認した方の中には、
「自分で設備を修繕すれば、売却価格が高くなるはずだ」と考える方もいるでしょう。
しかし、太陽光発電の売却価格に最も影響を与えるのは「売電実績」です。

そのため、闇雲に改善策を講じるのではなく、
何をすれば売電実績が上がるか?」適切に対処したほうが高価買取に直結しやすいです。
修繕すべき箇所はどこなのか?専門業者に相談してみると良いでしょう。

3.「セカンドオピニオン」を使う

発電所の性能をチェックし、セカンドオピニオンとして第三者の評価を得る
「テクニカルデューデリジェンス(TDD)」も、売りやすくする手段として効果的です。

JET PV O&M 認証のレポート

点検レポートとして「一般社団法人 電気安全環境研究所」が認証した内容で点検結果を示すことができる「JET PV O&M 認証のレポート」があります。

参考:一般社団法人 電気安全環境研究所:JET PV O&M 認証

こうした正当性のあるレポートを出して貰えると、
発電所の状態について大きな裏付けを得ることができます。

セカンドオピニオンも、費用対効果も見て検討してみると良いでしょう。

エネテク:テクニカルデューデリジェンス(TDD)

 

「売電実績の低さが原因の売却」を見直す機会にも

「売電実績が思ったほど良くないから売りたい」といったケースの場合、売却を機会にテクニカルデューデリジェンスを通じて問題が解決し、売却をしなくて良くなるケースもあります。

売却の手続きにおける注意点

太陽光発電を売却する際、以下の2つに注意する必要があります。

・確定申告の義務
・名義変更までにかかる期間

確定申告が必要

設備を売却した際に得た収入は、法律上「所得」に分類されます。
つまり、不動産売買と同じく、確定申告と納税の義務が生じるわけです。

また、個人の場合は譲渡所得に当たるため、税額の計算方法が複雑になりやすいです。
ちなみに、この譲渡所得については国税庁の「譲渡所得」でも解説されているので、
こちらもあわせてチェックしましょう。

参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

名義変更までにかかる期間

太陽光発電を売却するためには所有者の名義変更が必要となりますが、これが完全に完了するのは
最短で1ヶ月、最長で半年かかるとされています。

このように時間がかかってしまうのは、
事業計画認定や土地の登記簿の名義変更が非常に複雑だからです。

なお、事業計画認定の名義変更については、経済産業省が発行している「再生可能エネルギー電子申請 操作マニュアル」をチェックしてください。

参考:経済産業省「再生可能エネルギー電子申請 操作マニュアル」

また、土地の登記簿の名義変更は法務局に申請しなくてはならないため、基本的には仲介業者や買取業者に代行してもらうのがおすすめです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
2023年は太陽光発電所を売却する動きが加速している背景や
太陽光発電の売却の流れやポイントが、おおよそお分かりいただけたかと思います。

特に「高く早く売れるためのポイント」は、
あまり知られていないことも多かったのではないかと思います。

太陽光発電所の買取や仲介を行っている業者には、
それぞれ「得意分野」も異なりますので、発電所の地域や状態、売却のご事情に応じて
いろいろな業者に相談して比較してみることをお勧めします。

本記事が、良い売却の参考になれば幸いです。