省エネの教科書とは

「太陽光ファンド」とは?2023年もできる太陽光発電投資

 

※2023年01月16日 最新情報に更新しました。

これから新たに太陽光発電投資を始めようとしている人の中には、
FITの買取価格が見直され太陽光発電投資は儲からなくなった
という話をすでに耳にした方もいるのではないでしょうか?

「太陽光発電が儲からなくなったというのは本当なのだろうか?」
「実質的に、太陽光発電投資はできなくなってしまったのか?」

たしかに、FIT の買取価格が見直されたり、
低圧(10kW以上50kW未満)の事業用太陽光発電の全量買取ができなくなったり、
太陽光発電投資は向かい風に立たされています。

「電気料金値上がりへの対策」や「CO2削減」の手段として
太陽光発電は再生可能エネルギーの主力として注目されていますが、

「太陽光投資」は「安定した投資」ではなくなってしまったのでしょうか?

そこで今回は、2023年現在でもできる太陽光発電投資の方法について解説します。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



2023年度のFIT買取価格

経済産業省によると、FIT 制度における2023年度の買取価格は以下のように変更されました。

容量2020年度の買取価格2021年度の買取価格2022年度の買取価格2023年度の買取価格
10kW未満21円/kWh19円/kWh17円/kWh16円/kWh
10kW以上 50kW未満13円/kWh12円/kWh11円/kWh10円/kWh
50kW以上 250kW未満12円/kWh11円/kWh10円/kWh9.5円/kWh

出典:資源エネルギー庁「FIT・FIP制度」

表をご覧になると分かる通り、売電価格は全体的に下落しています。
また、これに加えて、低圧の全量買取にも大きな変更が加えられました

低圧の全量買取ができなくなった

太陽光発電の種類は、定格出力が50kW未満の場合には「低圧」
50kW以上の場合「高圧」として扱われます。

このうち、「高圧」については後述しますが、
「低圧」は2020年から全量買取ができなくなりました

そのため「低圧」で FIT が認められるのは「自家消費」+「余剰買取」、
または自家消費型の地域活用要件を満たす必要があり、
投資として導入するのはかなり難しくなっています。

それでも太陽光発電投資をできる方法がある

FIT制度の見直しで買取価格が引き下げられ、全量買取の対象施設が高圧施設に限定されたことで
太陽光発電投資の風向きは大きく変わりましたが、
しかし、そんな状況でも太陽光発電投資をする方法は残されています

その方法が以下の2つです。

セカンダリ(中古)物件を購入する
・高圧案件で売電を行う
・太陽光ファンドを活用する

これらの内容について、具体的に確認していきましょう。

セカンダリ(中古)物件を購入する

まず一つ目の方法が「セカンダリ(中古)物件を購入する」方法です。

セカンダリ(中古)物件とは?

セカンダリ(中古)物件とは、すでに売電実績を有している稼働済み太陽光発電所のことです。

通常、設備投資においてセカンダリ物件は避けられる傾向にありますが、
太陽光発電のセカンダリ物件には以下のメリットがあります。

・すでに売電実績を有しているため、発電量の予想や事業計画が立てやすい
・新規物件よりも高額な固定価格で売電ができる
・物件調査や現物確認がおこなえる

特に大きいのが発電量の予想や事業計画が立てやすいことで、
新規の参入障壁を大きく下げる要素となっています。

どんな人が手放すの?

太陽光発電を手放す人は、主に以下の2つに分けられます。

1.減価償却 を終えて、太陽光発電所を所有する意味がなくなった。
2.ほかの事業への投資などを理由に、現金が必要になった。

実は、太陽光発電投資を導入する企業の多くは、減価償却 を利用した節税を目的としています。

こういった企業では、減価償却 の計上を終えれば設備は不要となるので、
太陽光発電のセカンダリ市場は常に潤い続けているわけです

2019年以前の売電契約のみ持っている方も

全量買取の発電所を手に入れる方法は、既に設置済みの太陽光発電所を購入するだけはありません。

2019年以前に売電の権利だけ獲得して、
まだ設置していない方が、権利だけを売りに出す「セカンダリ物件」もあります

ただし、そうした「売電権利」だけを購入する場合、
発電所の設置までの期限が迫っているいるケースもあります。

また、既に設置済みの太陽光発電所と違い、発電実績がなく、
かつ施設建設までの間の売電収入もないため、
投資を行う場合はしっかりとした分析・調査が必要です。

中古物件を購入するときの3つの注意点

中古物件を購入する際に必要な3つの注意点をご紹介します。

1.売電実績

まずは実際の売電実績はどうなのか?確認しておく必要があります。
売電実績があることで発電量のシミュレーション精度が上がり、
将来の事業計画が立てやすくなります。

2.FITの残り期間

その設備の所有者が変わったからといって、FIT の残り期間が延長されるわけではありません。

そのため、売電単価ばかりに気を取られていると、
FIT の恩恵がきちんと受けられない可能性があります。

事業計画を単年度ではなく、FITの残り期間で立て、
予想される総売電収入額を確認すると良いでしょう。

3.近隣トラブルは無いか?

どんなに魅力的な案件であっても、深刻な近隣トラブルを抱えている物件を購入すると
常に対応に追われてしまうリスクもあります。

時間だけでなく、費用やメンタル面でも負担が大きいので、必ず確認しましょう。

詳しくはこちら

下の記事は「太陽光発電所を売りたい」方向けの記事ですが、
セカンダリ(中古)購入をお考えの方にも参考になるかと思います。

高圧案件で売電を行う

そして二つ目の方法が「高圧案件で売電を行う」方法です。

高圧案件はまだFITの対象

「低圧の全量買取ができなくなった」のは前述の通りですが、高圧案件は依然として FIT の対象です。
では、高圧案件のメリット・デメリットを確認してみましょう。

高圧案件のメリット

高圧案件のメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

・1kW当たりのコストが削減される
・売電収入が増える
・投資利回りが高くなる

単純に効率のみを見た場合、低圧案件よりも高圧案件のほうが利益を上げやすいです。

また、大規模な太陽光発電を運営しているということは、
それだけ自然環境の保護に貢献していることを意味します。

そのため、高圧案件は企業のイメージアップにも繋がりやすい点もメリットのひとつです。

高圧案件のデメリット

高圧案件のデメリットは、
低圧よりも初期投資額が大きいことや管理のための時間・労力メンテナンス費用、ランニングコストが大幅に掛かることです。

具体的な額は設備の内容によって異なりますが、
設備を建設するにあたって億単位の費用が必要になることも珍しくありません。

また、管轄の消防署へ届出を出したり、電気主任技術者を選任したりと、
手続きに手間が掛かりやすいのも難点です。

太陽光ファンドの活用

太陽光発電投資の方法として、高圧案件による売電は魅力的な投資物件ですが

初期費用が高額」のため、導入のハードルが非常に高い点が大きな課題です。

そうした導入費用の問題を解決しつつ太陽光発電投資を行えるのが
太陽光ファンドです。

太陽光ファンドとは?

それでは、その「太陽光ファンド」とはどのようなものなのでしょうか?

従来の太陽光発電投資

従来の太陽光発電投資では、図のように「一人の投資家」が太陽光発電所を購入し、
そのすべての売電収入を得ることができるモデルです。

この方法の場合、売電収入は大きいのですが
初期投資金額が高額になってしまいます。

現状では、前述のように低圧の発電所での FIT を活用した売電は難しく
高圧での太陽光発電投資は、初期費用が非常に高額になってしまいます。

太陽光ファンド

それに対して、太陽光ファンドは、上図のように
複数の「出資者」から出資を募り「営業者」と呼ばれるファンドの中心となる企業が発電所を購入します。

そして太陽光発電で得た「売電収入」は「出資者」に分配されます。

このように

複数人で出資することで、初期導入費用を抑えることが出来る

のが、太陽光ファンドの大きなメリットです。

太陽光ファンドの利回り

それでは、太陽光ファンドではどれほどの利回りが得られるのでしょうか?
従来の FIT による 投資型太陽光発電 も併せて比較して行きます。

利回りの比較

従来の FIT による 投資型太陽光発電 と2種類の太陽光ファンドの利回りを比較します。

図のように、太陽光ファンドも上場/非上場によって、利回りが変わってきます。
順番に見て行きましょう。

A.従来の投資型太陽光発電

 
従来の FIT による 投資型太陽光発電 を導入または検討されたことがある方は、利回りは「9~10%」と認識されている方が多いかもしれません。

しかし実際にはそれは「表面利回り」であり、運営コストを控除すると「5%~7%」が一般的な利回りになります。

従来の 投資型太陽光発電 の利回りは「5%~7%」として、太陽光ファンドの利回りと比較して行きます。


B. 上場している太陽光ファンド

太陽光ファンドの中でも「上場/非上場」によって、利回りなどの特徴が変わってきます。

 
「上場している太陽光ファンド」は、非上場の太陽光ファンドと比較すると、以下のようなメリット・デメリットがあります。

<メリット>
・投資したファンドの持分をいつでも売買できる。
・上場しているファンドなので安心感がある。

<デメリット>
・利回りが非上場の太陽光ファンドと比較すると低い


C.太陽光発電投資ファンド

 
太陽光発電投資ファンド(非上場の太陽光ファンド)には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

<メリット>
・利回りが高い

<デメリット>
・契約期間中、投資したファンドの持分を自由に売買できない

太陽光発電投資ファンド(非上場の太陽光ファンド)は、上場している太陽光ファンドに比べて中間コストを抑えることができるため、利回りが高くなる傾向があります。


太陽光ファンドの利回りはなぜ高いのか?

こうして見ると、太陽光発電投資ファンドは
FIT を活用した 投資用太陽光発電 よりも利回りが高いことが分かります。

太陽光ファンドの利回りはなぜ高いのでしょうか?

太陽光ファンドの資金調達

図のように、太陽光ファンドは、出資者だけでなく「銀行などの金融機関」からも資金調達しています。

太陽光ファンドの配当

しかし太陽光発電の売電収益を、出資者に分配する際には
「銀行などの金融機関」に対しては、利息は支払うものの、売電収益を分配する必要はありません。

「銀行などの金融機関」に対しての配当が無い分を、
出資者への配当にも充てることができるため、利回りを高くすることができるのです。

太陽光ファンドのリスク

太陽光ファンドのもうひとつの特徴は、従来の 投資型太陽光発電 と比較して
リスクが小さい」ことです。

匿名組合出資契約

太陽光ファンドでは、出資者と営業者が「匿名組合出資契約」を結びます。

この「匿名組合出資契約」は、以下の内容になっています。

・出資者に出資限度額を上回る責任は課せられない。
・契約内容にもよるが、一般的には出資者には保守費用などのランニングコストや
 業績悪化時の追加出資を行う義務がない。
・出資者は、投資した金額を超えて損失を負うこともない。

このように「従来の太陽光発電投資」では負わなければならなかったリスクを負う必要は無く
「従来の太陽光発電投資よりもローリスク」である点も特徴のひとつです。

「匿名組合出資契約」とは?
 
匿名組合出資契約とは「出資者が営業者に出資して利益配分を受け取る契約」です。

そのため出資者は事業に直接関与せず、所有権や処分権を持っていないため
上にあげたような責任を負う必要が無い契約になるのが一般的です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

FITが見直されていく中で現在の太陽光発電投資はもう終わりだと思われがちですが、
まだまだFITを利用した投資機会があることをごを理解いただけたのではないでしょうか。

そして、太陽光発電投資を行ううえで、抑えておくべきポイントは以下の5つです。

・FITの見直しで、売電金額が下がっている。
・低圧の全量買取ができなくなった。
・それでもFITを利用した太陽光発電投資が出来る方法がある。
・ファンドを活用すれば太陽光発電投資をしやすくなる。

太陽光発電投資は地球温暖化抑制に貢献できるだけでなく
低金利のなか引き続き有望な安定した投資対象と言えます。

本記事がみなさまの太陽光発電投資のお役に立つことになれば幸いです。