※本記事は、環境大臣から指定を受けて地球温暖化対策の普及啓発等を行う「全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA/デコ活ジャパン)」でもご紹介頂きました(リンク)
近年は「気温上昇」や「自然災害の増加」などから、「地球温暖化」を実感として肌で感じるようになってきた方も多いのではないでしょうか?
「自分たちの子供の頃の夏は、ここまで暑くなかった」と感じている方もいらっしゃるかと思います。
「地球温暖化」は、近年さまざまな情報が解明されてきており「この先どんなことが起こるのか」という情報も、あまり知られていませんが、かなりアップデートされてきています。
実はこのまま地球温暖化が進むと、今の子供たちが生きている時代のうちに
といった最悪なシナリオも起こりうると想定されています。
この記事では、
について、最新情報を分かりやすく解説していきます。
本記事をお読みいただければ
いままでピンと来ていなかった方も、ご理解いただけるようになるかと思います。
(学生の方の自由研究やレポート作りの資料としてもお使いいただけるかと思います)
ぜひ本記事を情報収集にお役立てください。
目次
地球温暖化とは、特に 産業革命 以降の人間の活動によって排出されている温室効果ガスの増加によって、気温が上昇している現象のことを言います。
2024年現在は、産業革命 前と比較して、世界の平均気温が「約1.5℃(※)」上昇しています。
主な温室効果ガスは、石油や石炭などの化石燃料を燃焼させる際に発生するCO2(二酸化炭素)です。
2024年現在においても、地球温暖化によって世界中で熱波などの異常な高温や、大雨などの異常気象が多くなっています。
この先はさらに、現在の子供たちが生きているうちに「食料危機」や「種の絶滅」「海面上昇」など、人間の生活や生命を脅かす大きな問題に発展する可能性も指摘されています。
「地球温暖化」は、近年私たちも肌で感じられるレベルになって来ています。
ここ数年の夏の暑さを体感する中、「自分たちの子供のころの夏はこんなに暑くなかった」と感じている方も多いかと思います。
まず、現在30代~40代の方が子供だった頃と比べて、実際にどれほど気温が上がっているのか、数字で見て行きましょう。
出典:気象庁「過去の気象データ検索」のデータを元に作成
上の図は、今から20~30年前にあたる1990年代の平均最高気温(グレー)と、2023年の平均最高気温(オレンジ)を比較したものです。
特に「赤丸」に記載されている上昇温度を見て頂くと、「3℃~4℃」も上がっている月もあることが分かります。
なんとなく「昔より暑くなっている」という肌感覚も、こうして数字にしてみてみると、より気温上昇の現状が分かりやすくなったのではないかと思います。
また、夏の特に暑い日には
と感じた方も多かったのではないかと思います。
これは少し深く考えてみると、つまり、生き物の活動にも気温上昇の影響が出てきていることを示しており「生態系にも影響が出て来る前兆」が現れていることが分かります。
次に、冒頭にご紹介した東京都の気温変化のグラフは、地域を絞ったデータでしたので「日本全体」の気温変化の推移を、より長期的に示したものも見て行きましょう。
上のグラフは、年間平均気温の「偏差」の推移を示したものです。
「偏差」というと分かりにくいのですが、要するに1991年~2020年の平均値を算出し、その平均値との差のことを言います。
黒い線は、各年の偏差の推移で、青はその5年間の平均の推移、赤い線は全体の長期変化傾向になっています。
グラフを見て行くと、年ごとの推移では上下していますが、全体的に見ると上下しながらも上昇していることが分かります。
上記のグラフの偏差値の中から、特に数値が大きくなっている上位ランキングを見て行きましょう。
このランキングを見ると、上位5位までが2019年~2023年の直近5年間で占められています。
ここ5年の気温がかなり高くなってきていることも示しています。
気温上昇と同様に、肌感覚でみなさまが変化を感じているのが「大雨の増加」ではないでしょうか?
など、頻度も激しさも増している実感がみなさまにもあるのではないかと思います。
この「大雨の増加」についても、数字やグラフで見て行きましょう。
それでは、降水量の増加をアメダスのデータから「1時間辺りの降水量」で見て行くのですが、「1時間辺りの降水量」を数字として聞いても、なかなかピンと来ないのではないかと思います。
そこで、気象庁が発表している資料から「1時間降水量」の多さによって「人の受けるイメージ」や「道路への影響」など、分かりやすい言葉に言い換えてみますので確認してみましょう。
出典:気象庁「雨と風の階級表」を元に作成
出典:気象庁「雨と風の階級表」を元に作成
このように「道路などの状態」や「車に乗っているときのイメージ」を頭に思い浮かべると、イメージしやすくなるかと思います。
また、TVの天気予報でも用いられる「激しい雨」「猛烈な雨」などの表現が、どの程度の雨を指すのかも分かりやすくなったのではないかと思います。
では実際に、全国のアメダスデータから「1時間降水量50mm以上の年間発生回数」を見て行きましょう。
先ほどご紹介した「1時間降水量のイメージ」でいうと「1時間降水量50mm以上の雨」は、以下の赤枠のようなイメージです。
予報用語でいうと「非常に激しい雨」「猛烈な雨」が該当します。
屋外は水しぶきで視界が悪くなり、車の運転も困難になる状態です。
それでは実際に「1時間降水量50mm以上の年間発生回数」の推移を見て行きましょう。
出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
前項でご紹介した「気温の長期変化」のように、単年(緑色のグラフ)ではアップダウンがあるものの、5年平均(青色グラフ)や長期変化傾向(赤線)でみると「増加している」事が分かります。
長期変化傾向(赤線)を1975年と2023年で比較すると「約1.5倍以上」になっていることが分かります。
このように、データで見ると、大雨がどれほど増加しているか、よりお分かりいただけるかと思います。
データで見ると、肌感覚以上にはっきりと現状が分かりやすくなったのではないかと思います。
このように、大雨の強度と頻度が増しているのも「地球温暖化」の影響です。
気温が上がると、海水温が上昇し水分が蒸発しやすくなるため、大気中の水分量が増えます。
大気中の水分量が増える事によって、雨が降る確率が高くなり、積乱雲が発達しやすくなって、強い雨も降りやすくなるのです。
このように、現状においても異常気象の原因になっている「地球温暖化」ですが、「今後どうなっていくのか」も非常に気になる所ではないでしょうか?
世界の気温上昇の予測を「IPCC(※)」による報告書から見て行きましょう。
IPCCによる報告書では、さまざまなシナリオにおける予測が示されています。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このIPCCの予測では、最悪のシナリオにおいて、平均気温が「最大5.7℃上昇」する可能性も示唆されています。
ここで「最大5.7℃上昇」と聞いても、そこまで大きな数字に感じない方も多いのではないかと思います。
本記事の冒頭では、日本において20~30年前と2023年の「最高気温」の上昇についてご紹介しました。
この中で、最大の上昇となっているのは8月で「4.4℃」の上昇でした。
その数字と比較して「最大5.7℃上昇」と聞いてもあまり大きな上昇に見えないかもしれません。
しかしながら、このふたつの気温上昇は、意味が大きく異なっています。
分かりやすく、両者の違いを表で見比べてみましょう。
このように、日本国内か世界全体かの違いはもちろんですが、比較対象や、平均気温か平均最高気温かという点も異なるため、全く意味の異なる数値になっています。
2023年2月から2024年1月の世界の平均気温は、産業革命 前と比較して「1.5℃」気温上昇している状態です。
この現状において、冒頭でご紹介したように8月の平均最高気温が、1990年代と比較して「4.4℃」上昇しているのです。
このように考えると、世界の平均気温が「最大5.7℃上昇」するとかなり大きな影響が出ることが想像できるのではないかと思います。
世界の平均気温が「最大5.7℃上昇」する最悪のケースは「2100年」と予測されています。
「2100年」と聞くと、とても遠い未来に感じますが、実は「今の子供たちが生きている時代」ですので、そう遠い未来の話ではありません。
今の子供たちが生きている間に、地球温暖化が進んでさまざまな異常気象や食糧危機などが起こる危険性があるのです。
このように、世界の平均気温上昇がより進むと、異常気象はどれほどの規模になるのでしょうか?
IPCC の報告書を元に解説して行きます。
この図は「極端な高温」が、世界の平均気温の上昇によって、どれほどの強度(気温上昇)と頻度になるのかを示しています。
世界の平均気温が1℃上がると、頻度が「2.8倍」になり「1.2℃上昇」するとされています。
2023年~2024年に関しては、実質的に1.5℃上昇しているので、頻度は「4.1倍」気温上昇は「1.9℃」していると考えられます。
ここでは、前項で出てきた「最大5.7℃上昇」時の数値は掲載されていませんが、世界の平均気温が「4℃上昇」した際には、産業革命 前と比較して、頻度は「9.4倍」、気温は「5.1℃上昇」する見通しになっています。
つまり平均気温がこの先4℃まで上昇した場合、酷暑だった現在からさらに「極端な高温」の頻度は2倍以上に、気温はさらに3℃以上上がる見通しになるのです。
こうして考えると、世界の平均気温の上昇が私たちの日常にどのような影響を及ぼすのか、イメージしやすいのではないでしょうか?
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
次に、未来の平均気温の見通しを、サーモグラフで見て行きましょう。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、温度変化を色調で確認すると、地球全体が真っ赤になって行っているので分かりやすいかと思います。
2024年夏には、インドが記録的な熱波に見舞われ、100人近くが死亡、9,800件近くの森林火災警報が出ています。
都市によっては50℃を超えるケースもあり、人々の生命や健康、農業、エネルギーなどさまざまな分野に大きなダメージを与えています。
参照:AQI「2024 年のインドの現在の熱波: 憂慮すべき気候変動」
日本ではまだこのようなことは起こっていないので実感は湧きにくいかもしれませんが、今後地球温暖化が進むと、同じようなことが日本国内でも起こる可能性があるのです。
同様に「大雨の増加」についても見て行きましょう。
産業革命 前と比べて、世界の平均気温が1.5℃上昇した現在では、大雨の頻度が「1.5倍」、強度(降水量)は「10.5%増加」になっていると考えられます。
ここから世界の平均気温が4℃上昇に至った場合、頻度は「2.7倍」降水量は「30.2%増加」の見通しになります。
つまり現在よりも、頻度は「1.8倍」、降水量は「約1.2倍」になる見通しです。
現在も各地で被害が出ている豪雨の、頻度や降水量がこれほど上がっていくと考えると、分かりやすいかもしれません。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
未来の降水量の見通しも、サーモグラフで見て行きましょう。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
降水量の増加は、特に赤道付近やアフリカ、アジア諸国で顕著に上がる見通しになっています。
このように、IPCC の予測では「極端な高温」も「大雨」も現状の約2倍の頻度になる見通しになっています。
地球温暖化が進むと「極端な高温」や「大雨」だけでなく「食料問題」や「生態系」「水」などのさまざまな分野において、深刻なダメージを受けることになると考えられています。
下の図は、英国財務省が実施した気候変動問題に関するレビュー「スターン・レビュー」による、地球温暖化によって起こるであろう現象をまとめたものになります。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
こちらの表をさらに分かりやすく、各分野ごとに解説していきます。
まず、地球温暖化が「食料問題」に与える影響は以下のようになると考えられています。
より分かりやすく「世界の平均気温が5.7℃上昇するシナリオ」の時間軸とあわせて解説していきます。
(あくまで最悪の場合のシナリオになります)
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」の資料を元に作成
これをさらに、年代ごとに見て行きましょう。
現在、すでに起こり始めている現象は以下の通りです。
地球温暖化によって、多くの途上国地域でにおいて、異常気象が農作物に影響を与える兆候がすでに表れ始めています。
途上国地域での収量減少は、今後も地球温暖化が進むほどに、大きな影響を受けて行くと予測されています。
「サヘル地域」とは、左の地図のように、アフリカのサハラ砂漠の南側に位置する地域のことです。
サヘル地域では、地球温暖化によって砂漠化が進み、約80%の農地が退化していると言われています。
砂漠化により、水や生物、農作物すべてが減少しており、深刻な環境問題がすでに起こっています。
逆に、高緯度にある先進国地域では「炭素による施肥効果」によって、収量が増える現象が起きています。
続いて、これから直近で起こると考えられている現象を見て行きましょう。
世界の平均気温が「1.5℃~3.5℃上昇」した場合には、下記のような現象が起こる見通しです。
これからは、食料の収量などの問題から「飢餓の危機にさらされる人が増える」と考えられています。
その半数は、アフリカや西アジアの地域の人たちになる見通しです。
仮に「2100年に5.7℃上昇する最悪なパターンのシナリオ」のペースで温暖化が進むと仮定すると、この事象は現在の子供たちが40代になるまでの時期に起こる見通しになっています。
そしてさらに温暖化が進み、平均気温上昇が3.5℃を超え始めると以下のようになってきます。
平均気温上昇が3.5℃を超え始めると、途上国だけでなく先進国地域でも収穫量が減り始めます。
前述のように、気温上昇2℃までは高緯度の先進国では「炭素による施肥効果」で収量が上がっていましたが、3.5℃を超え始めると収量は減る見通しです。
さらに平均気温上昇が4℃を超え始めると、全ての地域での収量が「大幅に減少する」見通しです。
2100年に5.7℃上昇する最悪なパターンのシナリオでは、この事象は、現在の子供たちが中高年代になる時期に起こる見通しになっています。
続いて同じように「水不足」や「海面上昇」といった、水に関する問題について見て行きましょう。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」の資料を元に作成
こちらも、年代ごとに「何が起こる予測なのか」見て行きましょう。
現在、すでに起こり始めている現象は以下の通りです。
世界的に小規模の山岳氷河が無くなり、地域によっては水不足になる可能性が出てきます。
続いて、近い未来に起こりうることを見て行きましょう。
水の利用可能性が大きく変化し、2080年代には「水を獲得できる人がいる一方で10億人以上が水不足になる可能性がある」とされています。
地中海地域とアフリカ南部で、水の流量(河川や生活における水の量)が30%以上減るとされています。
2100年に5.7℃上昇する最悪なパターンのシナリオでは、この事象は、現在の子供たちが20代~50代の時期に起こる見通しになっています。
さらに温暖化が進むと、下図のようになると予測されています。
平均気温上昇が4℃を超え始めると、海面上昇が世界の大都市を脅かし始めます。
ロンドンや上海、ニューヨーク、香港、そして東京にも影響が出ると考えられています。
2100年に5.7℃上昇する最悪なパターンのシナリオでは、この事象は、現在の子供たちが中高年代になる時期に起こる見通しになっています。
続いて、地球温暖化の影響による「生態系への影響」について解説して行きます。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」の資料を元に作成
こちらも、年代ごとに「何が起こる予測なのか」見て行きます。
現在、すでに起こり始めている現象は以下の通りです。
珊瑚礁における環境問題については、以前から報道などで多く取り上げられて来ていました。
温暖化によって、珊瑚礁は「元に戻れない壊滅的なダメージ」を受けてしまいます。
平均気温上昇が1.5℃を超えると「大多数の生態系が現在の状況を保てなくなってきます」。
気温上昇が2℃を超えると、下記のようなことが起こると予測されています。
アマゾン熱帯雨林の一部、またはすべての崩壊が始まる可能性があります。
平均気温上昇が2.3℃くらいを上回り始めると、多くの種が絶滅の危機に至り始めます。
ある研究では、20%~50%の種が絶滅の危機にひんするという見解もあります。
2100年に5.7℃上昇する最悪なパターンのシナリオでは、この事象は、現在の子供たちが10代後半になる時期から起こる見通しになっています。
生態系への深刻な影響は、これまで紹介した食料や水の問題と比較しても「比較的早い段階で起こる」見通しであるのが分かります。
異常気象の増加に関しては、別の章で解説していますので、重複する部分は省いて解説します。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」の資料を元に作成
熱波や大雨の強度と頻度が増すことは前述しましたが、嵐の激しさや森林火災の大きさ、干ばつの規模なども増して行くと考えられています。
ニュースなどでも、世界中で森林火災や嵐が増加していることがたびたび報じられており、すでにこの傾向が出始めていると言えます。
平均気温上昇が2.3℃を超え始めると、ハリケーンが少し強くなり、アメリカの被害額が2倍になると予測されています。
続いて、起こる事が懸念されているのが「急速な気候変動」と「元に戻れない影響」です。
気温上昇によって「より急速な気候変動」が起こりやすくなり、さらに一度起こり始めると「元に戻れない影響」を生み出すと考えられています。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」の資料を元に作成
気温上昇1.5℃を超えると、下記2点のようなことが起こり始めます。
気温上昇やそれに伴う森林破壊などから、炭素を吸収する植物が減少します。
植物が吸収できなくなる分、大気中のCO2量が増加するため、地球温暖化もより加速します。
気温上昇に伴い、氷河が解け始め、氷河に含まれているメタンが大気中に放出されることが懸念されています。
メタンは温暖化への影響が「CO2の25倍ある温室効果ガス」ですので、氷河の融解から、地球温暖化はより加速することが懸念されています。
現状では、世界のどの氷河がどれほどメタンを出すのかもほとんど分かっていないないため、氷河の融解でどれほどのメタンが放出されるかはまだ分かりません。
2024年5月のニュースでは「アラスカの氷河末端域から高濃度のメタンが検出された」と報道されています。
参考:JAMSTEC「アラスカ山岳氷河末端からのメタン放出をはじめて検出」
海水は低温になると塩分の密度が濃くなり、重くなるため深層におりて行きます。
その深層におりた海水は、深層を水平に流れながら、水温が高く塩分密度の低い上層の海水と混ざり、塩分の密度を下げながら上昇します。
このように、塩分の濃淡で深層と上層の海水が循環する現象を「熱塩循環」と言います。
この「熱塩循環」は、
という動きをするため、海水温を通じて地球上の低気温地域と高気温地域の「温度差を緩和する」はたらきを持っています。
温暖化によって海水温の上昇や氷河の融解が起こる事によって、海水の塩分密度が低くなります。
塩分密度が低くなることによって、深層におりる海水が減少し、熱塩循環が起こりにくくなってしまいます。
そうなると、地球上の温度差を緩和するはたらきが弱まり、高気温地域の気温がより上がりやすくなり、温暖化が進むペースがより加速すると考えられています。
熱塩循環が一旦止まってしまうと、仮に温暖化の進行が止まっても、長期に渡って回復しないと考えられています。
これらの現象が起きると、地球温暖化はより加速し、さらになかなか元に戻らなくなるという、より深刻な事態になるのです。
気温上昇が1.5℃を超え始めると、グリーンランドの氷床が溶け始め、元に戻れないほどの影響を受け始めます。
続いて、気温上昇が3.3℃くらいを超え始めると、さらに大きな問題が出てきます。
気温上昇が3.3℃くらいを超え始めると、気候システムが急激かつ大規模に変わるリスクが増え始めます。
大西洋の「熱塩循環」の崩壊や、西南極地域の氷床の消失などが起こるとされています。
このようなニュースを見かけた際に「たった数℃か」と思われた方も、これまでは多かったかもしれません。
しかしながら、このように「たった数℃」の気温上昇でも、世界的な食糧・水不足や生態系の崩壊など、私たちの生活に深刻な危機を与えるものになるのです。
それでは、地球温暖化を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?
地球温暖化の解決策を知るために、まずは「地球温暖化の原因」から見て行きましょう。
地球温暖化は、大気(温室効果ガス)と大きな関わりがあります。
もし地球に大気が無いと、宇宙空間から入ってきた「太陽からの熱」は、地表で反射して、宇宙空間に放出されてしまいます。
これでは、熱を地球上に留めておくことができません。
この場合、地球の平均気温は「マイナス19℃」になると言われています。
しかし地球には大気(温室効果ガス)があるので、大気(温室効果ガス)が蓋やフィルターの役割をして、熱を適度に地球内に留めることが出来ています。
これにより、地球の現代の気温は「平均14℃」に保たれています。
ただし、温室効果ガス が増え過ぎてしまうと、宇宙空間に放出される熱を必要以上に抑えすぎてしまいます。
まさにその名の通り、温室のような状態になってしまうのです。
地球温暖化は、このように「温室効果ガス」が増え続けていることで、地球が「温室化」して起こっているのです。
地球温暖化については、以前から
といった意見も多くありました。
しかしながら、最新の IPCC のレポートで
と明言されました。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
このように、国際的な気候変動の検証機関において
「温暖化は、人間の活動による「温室効果ガス の増加」による影響である」
と断定されているのです。
それでは、温室効果ガス とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
下の表は「国連気候変動枠組条約」と「京都議定書」で定められた 温室効果ガス の一覧です。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
一覧を見てみると、温室効果ガスにもさまざまなものがあることが分かります。
さらにこの 温室効果ガス 排出量の内訳を見て行きましょう。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
温室効果ガス 排出量の比率を見てみると、このようにCO2が75%と圧倒的に多い事が分かります。
つまり「CO2排出量の増加」が地球温暖化の最も大きな要因となっているのです。
つまり、地球温暖化に対する最も効果的な解決策は、CO2を中心として、温室効果ガスの排出削減ということになるのです。
そこで地球温暖化を抑えるために、国際社会における取組みが行われています。
国際社会における 温室効果ガス 削減への取り組みにおいて、重要な役割を果たしているのが COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)です。
COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)とは「気候変動への対策」について話し合われる国際会議です。
1995年から毎年開催しており、今年行われた「COP29(コップ29)」のように、開催された回数の数字がつく略称で呼ばれていますので、ニュースなどでも耳にしたことがある方も多いのではないかと思います。
「2020年まで」の 温室効果ガス の排出量削減目標を参加各国で定めた、1997年の「京都議定書」や、2020年以降5年ごとに参加各国が目標を提出することを定めた「パリ協定」などが有名です。
写真の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
2019年に開催された「COP25」では「気温上昇を1.5℃以内に抑える」ためには、2050年までに「カーボンニュートラル(温室効果ガス 排出量を実質ゼロにする)」を実現する必要があるという報告がされました。
これにより、多くの国が2050年までに カーボンニュートラル を実現することを宣言しました。
写真の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
そうした流れもあり、日本政府も2020年に、当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。
こうして、国際社会も日本も、温室効果ガス 削減に向けて力を入れ始めたのです。
▼COPなど国際社会における取組みについてより詳しく知りたい方は、下記記事をご参照ください。
こうして国際社会においても CO2削減 に向けて大きな目標を持って動き始めているのですが、その「CO2」はそもそも、私たちの生活の中のどこで排出されているのでしょうか?
分かりやすく家庭における一人あたりのCO2排出の分類から見て行きましょう。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
上のグラフで見ると、CO2排出量が最も多いのは「電気」になっています。
電気は、使用するときにCO2を排出するわけではありませんが、火力発電は天然ガスや石炭などを燃やすため、発電時にCO2を排出しています。
そのため(火力発電で発電された)電気の使用は、間接的にCO2を排出していることになります。
図のように日本の電源構成の「76.3%」は火力発電になっており「CO2を排出している電気」の利用率が高くなっています。
図の出典:資源エネルギー庁「時系列表(令和4年4月15日公表)」
次に、社会全体に視野を広げて、日本の部門別CO2排出量の割合も見て行きましょう。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
この表中の「エネルギー転換部門」が「発電所等によるCO2排出」になっています。
図を見ると、全体の「40.5%」を占めており、私たちの暮らしの中で最も大きな割合を占めていることが分かります。
このように、日本のCO2排出量は、発電所で燃料を燃焼させる際に発生している量が最も多い事が分かります。
つまり「電気」の利用が、最もCO2を排出しているということになります。
そこで、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されているのが「再生可能エネルギー」です。
再生可能エネルギーの話の前に、まず現在発電に使用されているエネルギーについて整理してみましょう。
まずCO2が排出される発電は、下記の通りです。
それに対して、CO2が排出されない発電方法は、大きく分けて以下の2つです。
再生可能エネルギー以外でも、原子力発電もCO2を排出しない発電方法です。
しかしながら、原子力発電は東日本大震災以降、反対の声も多く、拡大していくのは難しいと考えられています。
そうした背景からも、再生可能エネルギーへの転換が地球温暖化への対応策として注目されています。
それでは、再生可能エネルギーにはどのようなものがあるのでしょうか?
日本で導入されている主な再生可能エネルギーは、以下になります。
再生可能エネルギーにもさまざまな種類のものがありますが、その導入のしやすさを見るために、発電コストを比べてみましょう。
この中では、太陽光発電、中水力発電、地熱発電、バイオマス発電(混焼)のコストが安い事が分かります。
ただし、中水力発電と地熱発電に関しては、近くに河川がある、地熱発電に適した場所であるなど、条件が限定されますので、どこでも導入できる発電方法ではありません。
バイオマス発電(混焼)も、発電コストは抑えられるのですが、石炭とバイオマス発電用チップを混ぜて燃焼させますので、CO2が排出されます。
(従来の石炭の火力発電のCO2排出量を軽減するための発電方法として用いられます)
そうした背景から、あらゆる再生可能エネルギーの中でも発電コストが安く、比較的導入しやすい「太陽光発電」が最もポピュラーな再エネ導入方法として考えられています。
実際に、現在日本国内で使用されている再生可能エネルギーの種類ごとの比率を見て行きましょう。
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所「国内の2023年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」を元に作成
2023年度の再生可能エネルギーの種類ごとの比率を見てみると、やはり太陽光発電が最も多い事が分かります。
再生可能エネルギー全体で考えると、全電源の中で「26.1%」と、現在は全体の4分の1が再生可能エネルギー由来になっていることが分かります。
また、2030年度の国の再エネ比率目標は以下の通りです。
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所「国内の2023年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」を元に作成
再エネ全体で電源全体の「36~38%」を目指しており、太陽光発電は「約3~5ポイント」風力発電は「約4ポイント」増加させることを目指しています。
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所「国内の2023年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)」を元に作成
反対に、化石燃料を使用した発電は、現在の「66.2%」から「41%」と2030年までに大きく削減することを目標にしています。
このように、電気に関しては再エネの導入でCO2を削減することができますが、電気以外のエネルギーはどうでしょうか?
電気以外のエネルギーも「再エネを使った電気」に切り替えて行くことで、CO2を削減していくことができます。
分かりやすいのが、ガソリンです。
日本国内3位で全体の17.8%のCO2排出量を占める「運輸部門」は、主にガソリンや軽油などを使用した車や飛行機、船などによる排出です。
例えば、車を電気自動車に変えて、再エネ由来の電力で動かせば、CO2削減になります。
中には難しいものもありますが、燃料を燃やしてつくるエネルギーも、電気に切り替えて再エネ由来の電力にすることで、CO2を削減していくことができます。
このように、再生可能エネルギーの導入は、地球温暖化対策の鍵を握る重要な施策として、日本国内だけでなく世界でも注目されています。
こうした「再生可能エネルギーの導入」を含め、わたしたちは地球温暖化を防ぐために、どのような取り組みを行っていく必要があるのでしょうか?
わたしたちが日常生活の中で、取り組むと効果的なアクションをまとめてくれているのが、環境省が提供している「デコ活」という国民運動です。
2050年カーボンニュートラル に向けて、国民の行動変容やライフスタイル転換を後押しするための、環境省の取組みです。
脱炭素(Decarbonization)の「DE」と環境に良いエコ「ECO」を組み合わせて「デコ活」と命名されました。
私たちの日常における、CO2削減のために取り組むべき行動を紹介しています。
デコ活で推奨されているCO2削減への取り組みは「デコ活アクション」として紹介されています。
出典:環境省「「デコ活」~くらしの中のエコろがけ~脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」
デコ活の資料から、わたしたちが家庭で取り組める「CO2削減」へのアクションを、節約効果も交えてご紹介していきます。
▼企業の方はこちら
企業におけるCO2削減への取り組み施策については、下記記事に詳しく解説していますので、ご参照下さい。
「まずはここから」として、最初に推奨されているアクションが以下の4つです。
まず最初に推奨されているのが「電気代を抑える断熱省エネ住宅に住む」ことです。
住宅を断熱化することによって「年間約9.4万円」の節約になる見通しになっています。
次に推奨されているのが「LED・省エネ家電などを選ぶ」ことです。
LED照明への切替で「年間約3,000円」の節約、
省エネ家電(冷蔵庫・エアコン・HEMS)の導入で「年間約2.8万円」の節約になるとされています。
「食品の食べ切り」や「食材の使い切り」などの「フードロスの解消」も、CO2削減に効果的です。
続いて推奨されているのが「テレワーク」です。
テレワークを行うことで、オフィスでの照明や空調エネルギーや、通勤における交通手段においてのエネルギー消費を抑えることができます。
当然、自宅でのエネルギー消費が増えることにはなりますが、通常はオフィスは多くの人が働いているため、照明や空調・オフィス機器などに膨大なエネルギーを消費しています。
そのため、自宅での消費エネルギーより大きな削減が可能になります。
続いて「ひとりでにCO2が下がる」アクションとして推奨されているのが以下の3つです。
エネルギー効率の高い給湯器や、節水効果の高い機器の使用もCO2削減には効果的です。
高効率給湯器への切替によって「年間約3.5万円」、キッチン・洗濯機・シャワー・トイレの節水で「年間約1.6万円」の節約効果があります。
電気自動車などの次世代自動車に切り替えることで「年間約7.5万円」の節約にもなります。
太陽光発電の説明は前述しましたが、住宅に導入した場合には「年間約5.3万円」の節約効果が見込まれます。
続いて「みんなで実践」の項目として紹介されているのが、以下の6項目です。
クールビズやウォームビズも、空調の使用頻度や温度設定の改善によってCO2削減効果があります。
「年間約4,000円」の節約効果もあります。
ごみを減らすことで、ごみの燃焼や運搬などで排出されるCO2を削減できます。
資源として分別し、再利用することもまた、ごみを減らすことにつながります。
ごみの削減や分別にも「年間約4,000円」の節約効果もあります。
「地産地消」もCO2削減に効果があります。
なるべく近くで採れた食材を食べることで、食材の運送で発生するCO2を削減することができます。
公共交通機関や自転車・徒歩で移動することを心がけると、自動車の排気ガスなどからのCO2排出を軽減できます。
「年間約1.2万円」の節約効果もあります。
はかり売りなどで無駄な購入を防ぐ事は、前述の食べ切りと同じように、フードロスの解消からCO2削減につながります。
「宅配便は一度で受け取る」ことは、配送業者の負担軽減だけでなく、再配達の際に自動車から発生するCO2を削減することになります。
このように、普段の生活の小さなことでもあり、面倒に感じる部分もあるかもしれませんが、こうした小さな積み重ねが、CO2削減になり、温暖化を軽減することにもつながってきます。
より詳しくは、下記のデコ活の公式サイトにてご確認ください。
環境省「「デコ活」~くらしの中のエコろがけ~脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」
このように、国際社会や政府を中心に「CO2削減」が叫ばれてきましたが、その「これまでの成果」はどれほど出ているのでしょうか?
また、この先取り組んでいくと、地球温暖化の未来はどのように変わるのでしょうか?
IPCC の報告書における「SSPシナリオ」を見ると「この先の見通し」だけでなく「これまで国際社会が温室効果ガス削減に取り組んできた成果」も確認することができます。
SSPシナリオ とは、2021年に IPCC の第6次報告書で発表された、2100年までの地球温暖化の見通しを示したシナリオです。
SSPシナリオは、5つのシナリオが紹介されており、前半でご紹介した「平均気温5.7℃上昇」という最悪なパターンのシナリオもそのひとつです。
SSPシナリオ では、以下の表のように、さまざまな環境対策の取組みによって5つの未来が想定されています。
図の出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
前述の通り、シナリオによってこの先の平均気温上昇も異なってきます。
最悪の場合「平均気温5.7℃上昇」という最悪なパターンもありえます。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
それでは、わたしたちのCO2削減への取り組みによって、どのようにシナリオが変わってくるのか、それぞれのシナリオについてより詳しく見て行きましょう。
まず最初にご紹介するのは「SSP5-8.5」(化石燃料依存型で進んだ場合のシナリオ)です。
これまでにご紹介してきた「平均気温5.7℃上昇」に至る、最悪なパターンになります。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
この「SSP5-8.5」のシナリオにおいて「平均気温5.7℃上昇」に至るケースでは、前述のように2100年までに、環境問題においてさまざまな影響が出てくる見通しです。
これが、CO2削減に取り組むと、どのように変わってくるのでしょうか?
他のさまざまなシナリオのパターンも見て行きましょう。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
最大で「平均気温5.7℃上昇」に至る可能性がある「SSP5-8.5」のシナリオよりも、少し良い未来になるシナリオが「SSP3-7.0」です。
このシナリオでは、2100年時点で平均気温上昇が「4℃」になる見通しです。
前述の「SSP5-8.5」は、温室効果ガス削減などの対応を全く行わなかった場合のシナリオですが、
「SSP3-7.0」は、
といった場合のシナリオになります。
このシナリオのタイプは「地域対立」と表現されることがあります。
これは、一部の国がCO2削減を目指す各国と対立や意見の違いなどから、充分な温室効果ガス削減に取り組まなかった場合に想定されるシナリオでもあるからです。
「地域対立」については、後ほど詳しく解説します。
参考:国立環境研究所 地球環境研究センターニュース「2024年2月号 気候変動影響評価に際して注意が必要なSSP3-7.0シナリオの特殊性」
再生可能エネルギーの技術進歩や、パリ協定 などの影響による2015年以降の排出削減によって、前項で紹介した「SSP5-8.5」のように最大で「平均気温5.7℃上昇」する未来になる可能性は低くなってきました。
2024年現在では、この「SSP3-7.0」が平均気温上昇の最悪のシナリオとして、影響評価に使用されることも増えて来ています。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
このように「最悪なシナリオ」の未来が少し良くなっているのは、パリ協定 や国際社会のこれまでの取組みの成果であると言えます。
そして、このような脱炭素の取組みに大きな意味がある事も示しています。
それでは「SSP5-8.5」と同様に「SSP3-7.0」では「食料」「水」「生態系」などに、いつどのような影響が出る見通しなのでしょうか?
順番に見て行きましょう。
(ピンクの線グラフの推移を基準に見て行きます)
グレーになっている箇所が、今世紀中には起こらない見通しの未来になります。
「飢餓の危機になる人が増える」ところまでは進みますが、今世紀中に「すべての地域で収量が大幅に減少する」という未来までには行かない見通しになっています。
水問題においては「大都市の海面上昇」までは今世紀中には起こりませんが、「水の利用可能性の変化」「流量30%以上減少」までは進む見通しになっています。
生態系への影響においては、比較的早い段階で影響が出るため「SSP3-7.0」においても全ての影響が今世紀中に起こる見通しになっています。
異常気象も「SSP3-7.0」において全ての影響が今世紀中に起こる見通しになっています。
急速な気候変動に関する事象も、すべての項目が今世紀中に起こる見通しになっています。
このように、食料や水の問題については「SSP5-8.5」と比較して今世紀中に起こる問題は少なくなる見通しである一方、生態系や異常気象はあまり変わらない見通しになっています。
この「SSP3-7.0」よりも良い未来にできるかどうかという点において、影響がありそうなのが、2025年1月から始まる「トランプ政権」の環境への対応の行方です。
トランプ次期大統領は、公約において「パリ協定 からの脱退」や「化石燃料の利用拡大」などを宣言しています。
「SSP3-7.0」は、インドや中国などの大気汚染対策が進まなかったことを想定していると前述しましたが、トランプ政権の動向によっては、アメリカ合衆国も同様に大気汚染対策が進まなくなってしまう可能性があります。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」
上図のように、アメリカ合衆国のCO2排出量は、中国に次いで2位で、主要国全体の13.7%を占めており、世界全体の排出量に大きく影響します。
アメリカ合衆国の環境への取り組みは、地球温暖化問題に大きく影響すると考えられています。
続いて「SSP3-7.0」より少し良くなったシナリオが「SSP2-4.5」です。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
このシナリオでは、2100年時点の平均気温上昇は「2.8℃」になる見通しです。
「SSP2-4.5」は、前項で紹介した「SSP3-7.0」と、この次の項でご紹介する「SSP1-2.6(気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ)」の「中間」として設定されたシナリオです。
パリ協定 で各国が設定した「2030年までの削減目標」を集計した排出量上限とほぼ一致します。
つまり、各国が パリ協定 通りに排出量を抑えた場合の最大値のシナリオとして見ることができます。
参照:環境省「IPCC報告での『(社会経済)シナリオ』(2024年2月7日)」
それではこれまでと同様に「SSP2-4.5」では「食料」「水」「生態系」などに、いつどのような影響が出る見通しなのでしょうか?
順番に見て行きましょう。
これまでご紹介してきたシナリオと比べても、かなり良くなっていることがお分かり頂けるかと思います。
「飢餓の危機にさらされる人が増える」フェーズには入っていますが、進行は半分くらいまでに抑えられる見通しです。
水問題においても「水の利用可能性が大きく変わる」「流量30%が以上減少する地域も出て来る」といったフェーズの初期段階までで抑えられる見通しになっており、大きく改善されていることが分かります。
生態系への影響もかなり改善され「熱帯雨林の崩壊」や「多くの種が絶滅する」といった現象の初期段階までで抑えられる見通しになっています。
異常気象においても、強さが増す現象が半分ほどの推移まで収まっています。
「急速な気候変動」においては「気候システムが急激に大規模に変わる」というフェーズは今世紀中には起こらない見通しに改善しています。
2024年現在最悪なシナリオと言われ始めた「SSP3-7.0」から、この「SSP2-4.5」のシナリオに改善するには、どうすれば良いのでしょうか?
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
図のように、「SSP2-4.5」のシナリオに改善するには、
この2点が重要になってきます。
詳しくは後半に解説しますが、温室効果ガス の削減目標をめぐって、先進国と新興国(中国やインドなど)で意見対立が起こっています。
その対立を無くし、全世界で一丸となって取り組んでいく必要がありますが、さらに前述のようにトランプ政権になることで、米国も 温室効果ガス 削減に消極的になる可能性があります。
また「パリ協定」で各国が決めたCO2削減目標を達成することで、地球温暖化は大きく改善される見通しであることが分かります。
日本国内においては、日本が パリ協定 で決めた目標に対して、日本の企業や個人それぞれが、CO2削減を意識することが、未来の改善のために重要であることが分かります。
続いて「SSP2-4.5」よりさらに良くなったシナリオが「SSP1-2.6」です。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
「SSP1-2.6」は気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオになっています。
「今世紀の後半」までに「カーボンニュートラル(CO2排出量を正味ゼロにする)」を達成することで、実現可能と言われています。
前述したように、2019年に開催された「COP25」をきっかけに、日本を含む世界各国が、2050年カーボンニュートラル を目指すと宣言しています。
「SSP1-2.6」は「今世紀の後半」に カーボンニュートラル を達成した場合のシナリオですので、2050年カーボンニュートラル よりCO2削減が進まなかった場合のシナリオであると言えます。
それでは「SSP1-2.6」においては「食料」「水」「生態系」などへの影響がどれほど変化するのでしょうか?
順番に見て行きましょう。
(濃い青の線グラフの推移を基準に見て行きます)
「SSP2-4.5」よりもさらに「飢餓の危機」も初期段階までで収まっています。
水問題においては「水の利用可能性が大きく変わる」「流量が30%以上減少する地域が出て来る」といった現象が今世紀中に起こる可能性が低くなります。
生態系においても「熱帯雨林の崩壊」や「多くの種が絶滅する危機」が今世紀中に起こる見通しではなくなります。
異常気象においても、かなり改善されてきていることが分かります。
「急速な気候変動」が始まる事は防げませんが、今世紀中に大きな進行には至らない見通しです。
続いて5つのシナリオの中で最も良いシナリオが「SSP1-1.9」です。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
「SSP1-1.9」は、今世紀末まで気温上昇を1.5℃未満に抑えた場合のシナリオです。
現在、日本を含めた各国が宣言している「2050年カーボンニュートラル」つまり、2050年までにCO2排出量を正味ゼロにする目標を実現できたときのシナリオです。
つまり「SSP1-1.9」は、現在の気温上昇1.5℃のまま2100年まで進んだシナリオになります。
気温上昇1.5℃のまま抑えられれば、今世紀末中の段階で「飢餓の危機にさらされる人が増える」フェーズに進まない見通しになります。
水問題についても、水不足などの深刻なフェーズには進まない見通しになります。
生態系においても「大多数の生態系は現在の状態を保てなくなる」フェーズには進まない見通しになります。
「異常気象」においても、現在レベルに抑えることができる見通しになります。
「急速な気候変動」においては、気温上昇1.5℃以内に抑えると、懸念されている問題は起こりません。
「急速な気候変動」で起こるとされる問題は、前半にも解説した通り「一度起こってしまうともう元には戻れない」現象もあります。
「気温上昇1.5℃以内に抑える」目標は、こうした「一度起こってしまうともう元には戻れない」取返しのつかないことにならないためにも重要なのです。
このように、それぞれのシナリオがどのような状況下で起こる現象なのかを理解すると、
に従って削減を進めて行った結果、最も悪いシナリオである「SSP5-8.5」は回避されつつあり、一定の効果が表れてきていると見ることができます。
また、今後もより良い状況にしていくためにも、これらに従って取り組んでいく重要性がお分かりいただけたのではないかと思います。
このように「パリ協定」や「2050年カーボンニュートラル」の重要性をお分かりいただけたところで、2024年現在の各国の進捗はどうなっているのかを確認してみましょう。
まず、各国が掲げたパリ協定とカーボンニュートラルの目標をご紹介します。
先進国各国がパリ協定で掲げている目標は以下の通りです。
環境省「国内外の最近の動向について(2024年2月14日)」を元に作成
先進国各国は、CO2だけでなく、すべての GHG(温室効果ガス)に対して削減目標を掲げています。
また、英国とドイツは中間目標の先にも目標を設けています。
各国が2050年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言している中、ドイツは2045年と世界に先駆けてカーボンニュートラルを実現する目標を設けています。
日本は、2030年度までに2013年比で46%削減の中期目標、2050年までにカーボンニュートラル(100%削減)を長期目標として掲げています。
各国の削減目標は「日本は2013年に対して46%」「ドイツは1990年に対して65%」など「いつに対して何%削減するのか」という対象年が異なります。
これでは比較が難しいので、各国の削減目標を「2013年相当」に換算して比較してみましょう。
環境省「国内外の最近の動向について(2024年2月14日)」を元に作成
2030年以降の中長期目標も掲げている、英国とドイツは2030年の目標においても55%前後と高く、他の先進国が45%前後で追いかける形になっています。
次に、新興国の目標を見て行きましょう。
環境省「国内外の最近の動向について(2024年2月14日)」を元に作成
中国、インドどちらも削減対象にしているのは「CO2のみ」で、先進国各国が掲げていた「全ての GHG」とは異なります。
また、カーボンニュートラル達成の目標年が、先進国各国は「2050年まで」だったのに対し、中国は2060年、インドは2070年と、少し先になっています。
また中国は、削減目標として「2030年までにCO2削減に転じる」としていますので、削減に入り始めること自体がかなり先になっています。
これら温室効果ガス(GHG)の削減目標において、先進国と新興国の間での対立が生まれています。
世界銀行のデータを元に作成(2019年のデータ)
上のグラフのように、世界の 温室効果ガス の実に「約2/3」が、新興国による排出になっています。
SSP3-7.0(地域対立によって充分な対策ができなかった場合)のシナリオでも記載したように、中国やインドなどの新興国の 温室効果ガス 削減が進まなければ、あらゆる悪影響が全世界に及ぶ可能性があるため、先進国は新興国へさらなる削減を求めています。
対して新興国は、温室効果ガス 削減のためのコストにおいて、先進国からの経済支援を求めており、両者の対立は、温室効果ガス 削減において大きな問題を生んでいます。
この先の未来がSSP3-7.0(平均気温上昇4℃)のシナリオになるのか、SSP2-4.5(平均気温上昇2.8℃以下)のシナリオになるのかは、この先進国と新興国の対立の結果次第とも言えます。
出典「全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)」を元に作成
SSPシナリオ の解説でご紹介した図を再掲載します。
国家間の対立は、現在の 地球温暖化対策 において、重要な課題となっているのです。
そんな中、日本の 温室効果ガス 削減目標の進捗はどうなっているのでしょうか?
(クリックで画像が拡大できます)
出典:環境省 脱炭素ポータル「脱炭素社会の実現に向けた国際的な動向(1/2)」
グラフを見て頂くとお分かりの通り、日本における 温室効果ガス 削減への取り組みは、目標通りに進んでいると言えます。
続いて、G7メンバー各国の削減状況も見て行きましょう。
(クリックで画像が拡大できます)
出典:環境省 脱炭素ポータル「脱炭素社会の実現に向けた国際的な動向(1/2)」
日本以外のG7メンバーの、温室効果ガス 削減状況を見ていると、必ずしもうまくいっているとは言えません。
日本は、ドイツや英国ほどの大きな削減目標は掲げていませんが、自国の目標達成の進捗においては現状、世界に誇れる結果を出せています。
本記事中で紹介した「デコ活」などを参考にしながら、私たちひとりひとりが 温室効果ガス 削減に取り組むことで、日本が 温室効果ガス 削減の目標を達成し「地球温暖化」におけるリーダーシップを発揮することができれば、子どもたちの暮らす未来をより良いものに変えることができるかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
「地球温暖化」の問題について、ひととおりのことがご理解頂けたのではないかと思います。
特にこれらのことは、本記事を読むまでよく知らなかったという方も多かったかもしれません。
そして、日本は今削減目標に対して順調に進んでいます。
今後も私たちが、地球温暖化に対して知って、対策に取り組むことで、世界全体の地球温暖化対策にも良い影響を与えることができるようになるかもしれません。
本記事が、みなさまの地球温暖化問題への取り組みへの参考になれば幸いです。