突然、太陽光発電の発電量が下がった。
エラーランプが点滅している。
業者に連絡したら「パワコンが壊れているかもしれませんね」と言われた――。
こんな経験、ありませんか?
パワーコンディショナー(パワコン)の故障は、太陽光設備において避けて通れないトラブルの一つです。
しかしいざ不具合が起きたとき、「修理すればいいのか」「交換が必要なのか」、
そして「そもそも原因は何なのか」など、判断に迷う方も多くいらっしゃいます。
さらに追い打ちをかけるのが、
「メーカーがすでに撤退していた」
「同じ型番が手に入らない」といった現実。
発電を止めないために、とりあえず代替品を入れてしまい、
結果的に発電効率が下がってしまった…という失敗例も少なくありません。
そんな中、最近注目されているのが、
「パワコンのリパワリング(最適化更新)」という考え方です。
この記事では、そんなお悩みをお持ちの方に向けて、
✅ パワコンのよくある故障サインや原因
✅ 修理・交換・放置のリスク比較
✅ 最新の“リパワリング”という選択肢の考え方
などを、現場でよくある事例も交えながら、わかりやすく解説します。
読み終えるころには、
「自分の設備にはどんな対応がベストか」が明確になっているはずです。
どうぞ、パワコンの不調にお困りの方は、参考にしてみてください。
目次
太陽光発電設備の心臓部とも言えるパワーコンディショナー(パワコン)は、発電された直流電力を交流に変換し、家庭や事業用に供給する重要な機器です。
そのため、パワコンの故障=発電停止や売電収入の損失に直結する重大なトラブルと言えます。
ところが、パワコンの故障は「完全に動かなくなる」だけではありません。
エラー表示や異音、発電量の減少など、一見すると分かりにくいサインで始まることも多く、気づくのが遅れると、発電機会のロスが長期間に及んでしまうこともあります。
特に以下のようなケースは、注意が必要です。
これらはすべて、パワコンの異常を知らせる“予兆”かもしれません。
この章では、次のような見出しに沿って、
パワコン故障の兆候や初期対応のポイントをわかりやすくご紹介していきます。
一つひとつ確認していくことで、「壊れる前に対処する」「ムダな損失を防ぐ」ことが可能になります。
まずは、パワコンが発する“サイン”を見逃さないことが、最初の一歩です。
パワコンが故障や異常を検知したとき、まず最初に現れるのがエラー表示や警告ランプです。
本体の液晶モニターやランプに、エラーコード(例:E-03、F-07など)が表示された場合、それは機器からの明確な異常信号です。
メーカーや機種によってエラーコードの意味は異なりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。
| エラーコード | 主な意味 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| E-03 | 系統電圧異常 | 一時的な停電や雷の影響の可能性あり |
| E-07 | 内部温度異常 | 直射日光やファンの故障などの可能性 |
| F-01 | 出力異常 | 出力制御回路の不具合か、基板故障の疑い |
多くのエラーは一時的なものでリセット操作で復旧するケースもありますが、
何度も同じエラーが出る場合や、頻繁に警告ランプが点灯する場合は、部品の劣化や基板の損傷など、深刻な故障につながる可能性があります。
エラーが出たときは、次の3つを確認しましょう:
そのうえで、設置当初の販売業者やメーカー窓口に連絡するのが基本ですが、
すでにメーカーが撤退している場合や、型番が古く修理部品が無い場合は、他の選択肢(リパワリングなど)を検討する必要があります。
※リパワリングについては、後ほど詳しく解説します。
次に、異音や発煙といった物理的な異常サインについても確認していきましょう。
パワコンの異常は、エラー表示だけではなく、目や耳・鼻で感じる“物理的な兆候”として現れることもあります。
以下のような症状が見られた場合は、重大な内部トラブルや発火リスクにつながる恐れがあるため、すぐに使用を停止し、専門業者に点検を依頼してください。
このような症状は、寿命を迎えたパワコンに多く見られるサインです。
特に設置から10年以上経過している場合は、部品の経年劣化により、いつ故障してもおかしくない状態にあると言えます。
一時的に止まっても、再起動すれば動くこともありますが、それを繰り返すうちに、突発的な停止や発電ゼロ状態に陥るリスクも高まります。
また、過去にリコール対象となったパワコンの一部には、発煙や発火リスクが指摘されていた事例もあるため、型番や製造年の確認は定期的に行うようにしましょう。
「まだ発電しているから大丈夫」と油断せず、異常が見られた時点で早期に対応することが、長期的な発電損失と安全リスクの回避につながります。
次に、見落とされがちな“発電量の減少”という静かな異変について解説します。
太陽光発電のトラブルとして意外と多いのが、「発電量がなんとなく落ちている」というケースです。
天候や季節の変化と重なりやすいため見過ごされがちですが、実はこれがパワコン劣化の初期兆候であることも珍しくありません。
パワコンは、日々の稼働によって内部の部品や冷却ファンが少しずつ劣化していきます。
とくに設置から10年を超える機種では、変換効率が徐々に低下し、気づかぬうちに発電損失が広がっている場合があります。
以下のような変化があれば、注意が必要です。
これらは「変換効率の低下」や、内部部品の電気抵抗増大などによる出力劣化が原因の可能性があります。
ただし、目視だけで判断するのは難しいため、発電ログの比較や定期的な点検が欠かせません。
また、メーカーによっては寿命に近づいた機種に対して、出力抑制(制限)を自動的にかける仕様になっていることもあり、ユーザーが気づかぬまま発電量が抑えられていることもあります。
「突然止まる」のではなく、「じわじわと収益が下がる」タイプの故障は、長期間の見えない損失を生みがちです。
こうした状況を未然に防ぐには、発電量の定期チェックと、寿命年数を迎える前のリプレース検討が重要です。
次に、パワコンの一般的な寿命と、交換時期の見極めについて解説します。
パワーコンディショナー(パワコン)の一般的な寿命は、メーカーや設置環境にもよりますが、おおよそ10〜15年とされています。
内部には電解コンデンサなどの消耗部品が含まれており、これらは長時間の使用や高温環境で徐々に劣化していきます。
そのため、稼働から10年を過ぎたあたりから、変換効率の低下やエラーの頻発が起こる可能性が高まります。
とくに以下の条件が重なる場合、パワコンの寿命はさらに短くなる傾向があります:
パワコンは「発電量がゼロになったら終わり」ではなく、出力が少しずつ落ちるタイプの劣化が多いため、使用者が異常に気づかないまま寿命を迎えていることも少なくありません。
また、2010年前後に導入された太陽光発電システムでは、すでに10年以上が経過しているパワコンが多く、交換時期に差し掛かっています。
「壊れてから交換」ではなく、あらかじめ交換時期を見越してリプレース計画を立てることで、発電停止のリスクや収益損失を最小限に抑えることができます。
さらに、近年は旧型よりも高効率でコンパクトなパワコンが多く、発電量がアップしたり、騒音や電力ロスが改善される例もあります。
パワコンの故障や突然の停止を防ぐには、定期的な点検・メンテナンスが欠かせません。
とくに高温や湿気、ホコリが多い環境に設置されている場合は、パワコン内部へのダメージが蓄積しやすく、早期の劣化につながるおそれがあります。
以下のようなメンテナンス項目を、年に1回を目安にチェックすることをおすすめします。
また、発電量モニターが設置されている場合は、日別・月別の発電量を定期的に確認し、前年同月比で大きな差が出ていないかを見ることも重要です。
設備導入時にメンテナンス契約を結んでいない方や、設置業者がすでに廃業している場合には、第三者の点検サービスや保守業者に相談するのも一つの方法です。
本記事を提供している「株式会社エネテク」もメンテナンスサービスの実績が豊富な企業です。
相談先に迷っているようでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
なお、パワコンのメーカー保証は多くの場合10年が標準です。
10年を超えた機器については、「故障する前提」での対応準備が不可欠となります。
次の章では、いよいよパワコンが故障してしまった場合の対応選択、修理か、交換かという判断について詳しく見ていきましょう。
パワコンが故障したとき、まず多くの方が悩むのが「修理できるのか」「交換すべきなのか」という判断です。
結論から言えば、これはパワコンの状態・年数・メーカーの対応状況によって大きく異なります。
軽微なエラーや部品の緩みなどであれば修理対応が可能な場合もありますが、設置から10年を超えているパワコンの場合、メーカーが修理対応を終了していたり、部品供給が打ち切られていることも少なくありません。
ここでは、修理・交換のそれぞれの特徴と注意点を整理してご紹介します。
より詳しく見て行きましょう。
実際によくある修理可能なケースと、修理が難しい(または現実的でない)ケースを整理してご紹介します。
特に注意したいのは、「修理の方がお得」には必ずしもならないという点です。
寿命間近の機器を修理しても、数ヶ月後にまた別の部品が故障する可能性も高く、結果的にコストと手間がかさむことになりかねません。
「あと数年使いたいから修理したい」という判断が、かえってロスになることもあるため、機器の年数・状態・費用対効果を踏まえて、冷静に判断することが大切です。
パワコンを交換する際に気になるのが、やはり「費用」と「対応のスムーズさ」ではないでしょうか。
ここでは、パワコン交換にかかるおおよその費用感と、注意すべき点についてご紹介します。
交換費用は、容量や機種によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
| パワコンの規模 | 費用の目安(本体+工事費) |
|---|---|
| 住宅用(5kW前後) | 20万〜40万円程度 |
| 低圧産業用(10〜50kW) | 50万〜150万円程度 |
| 高圧案件(50kW超) | 150万〜数百万円規模 |
費用には、本体価格・取り付け工事・周辺機器の調整・電力会社との申請手続きなどが含まれます。
また、設置環境によっては基礎の補強や電線の引き直しなど、追加コストがかかるケースもあります。
パワコンの交換で見落とされがちなのが、既存の太陽光パネルや架台・接続機器との「相性問題」です。
このようなリスクを避けるためには、「同じ型番を探す」のではなく、「今の設備全体に合った機種を再設計する」という視点が重要です。
特に、10年以上前に導入したシステムの場合、当時の仕様や接続方式が現在の基準と異なることもあり、専門的な知識を持った業者による現地確認と再設計が欠かせません。
パワコンの故障に気づいて急いで交換したものの、「なぜか以前より発電量が下がってしまった」という相談も近年増えています。
「新しい機種に替えたのに、なぜ発電効率が下がるの?」と不思議に思うかもしれませんが、そこにはいくつかの典型的な落とし穴があります。
このような失敗は、「とりあえず同じような容量の機種を入れればいいだろう」という安易な判断によって起きがちです。
しかし、太陽光発電システムはパネル・パワコン・配線・設置環境など全体の調和によって最大の発電性能を発揮する構造になっています。
パワコンだけを単体で見て選んでしまうと、発電量が落ちるだけでなく、機器の故障リスクや運用トラブルを招くこともあります。
こうしたリスクを避けるには、交換の際に「ただのリプレース」ではなく、「システム全体を再設計する視点」が重要です。
特に、FIT終了後の太陽光発電所や、設置から10年以上経過している案件では、発電所の“健康診断”と“再構築”を兼ねたリパワリングを行うことで、効率を落とさずに再スタートを切ることができます。
パワコンが故障した場合、これまでは「修理できるか」「新しい機種に交換するか」の二択が一般的でした。
しかし近年、太陽光発電設備の最適化という観点から注目されているのが、「リパワリング(Repowering)」という考え方です。
リパワリングとは、単なるパワコンの置き換えではなく、既存の発電設備を活かしながら、より高性能で効率の良い構成に見直す再設計のことを指します。
特に、以下のような発電所にとっては、リパワリングが非常に有効です。
リパワリングを行うことで、以下のような発電所全体の改善効果が期待できます。
パワコン単体を交換するだけでは実現できない「収益性+将来性」を同時に高められる手段となるのです。
リパワリングでは、以下のような視点から設備を再設計します:
このように、単に「今あるものを交換する」ではなく、“これからの発電と運用に適したかたち”へアップデートしていくのがリパワリングの本質です。
結果として、古い設備を部分的に使いながらも、発電量を改善し、収益性を高めることができるのです。
パワコンを“同じ型番”に単純交換するより、最新機種へのリプレースを検討することで、発電設備全体にさまざまなメリットが生まれます。
ここでは、旧型パワコンから最新機種に入れ替えることで得られる主な利点を具体的にご紹介します。
10年以上前の機種と比較して、最新のパワコンは変換効率が約1〜3%程度向上していることが多く、日射量の多い季節ほど年間発電量に大きな差が出ます。
これはそのまま売電収入の増加や自家消費量の増加に繋がります。
最新機種は、冷却ファンの改良や筐体設計の最適化が進んでおり、動作音が静かで耐環境性能も高いのが特徴です。
ホコリや湿気に強く、塩害地域向けモデルも選択できるようになっています。
多くの新型パワコンには、Wi-Fi通信やクラウド連携機能が標準搭載されており、発電状況や異常をスマホやPCでリアルタイムに把握することが可能です。
これにより、トラブルの早期発見・対応がしやすくなります。
最新のパワコンは、蓄電池・VPP(仮想発電所)・自家消費制御など、将来的なエネルギー管理に対応した拡張性のあるモデルが増えています。
これにより、売電終了後の活用方法が広がり、中長期的な投資価値を維持できます。
これらのメリットを踏まえると、パワコンの更新は単なる「故障対応」ではなく、未来の収益を守るための戦略的な一手とも言えるでしょう。
ここでは、実際にリパワリングを行ったことで発電所のパフォーマンスが改善した事例をご紹介します。
設置から10年が経過し、年間発電量が設計時より15%以上低下していた低圧の太陽光発電所。
旧型パワコンはメーカーが撤退しており、エラーの頻発により発電停止が断続的に発生していました。
リパワリングでは、同容量の最新パワコンに加えて、ストリング構成と配線を見直し、電圧・電流のバランスを最適化。
その結果、交換後1年間で年間発電量が前年比で約12%改善し、出力ロスも大幅に軽減されました。
50kW超の高圧案件では、老朽化した複数のパワコンを最新型に一括更新。
従来のアナログモニタリングからクラウド対応の遠隔監視システムに切り替えたことで、エラー発生時の即時対応が可能になりました。
また、パワコンの変換効率が1.5%向上したことにより、年間数十万円分の発電ロスを回避。
契約期間満了後の自家消費も見据えて、蓄電池対応モデルを導入したことで、将来的な運用の自由度も高まりました。
ある産業用案件では、リパワリングによって発電量は横ばいながらも、旧型パワコンで頻発していた故障・警告ランプが解消され、メンテナンスの出動回数が半減。
これにより年間維持コストを約40%削減できたとの報告もあります。
このように、リパワリングは「発電量アップ」だけでなく、設備の安定稼働・コスト削減・将来の拡張性といったさまざまな面でプラス効果をもたらします。
次の章では、故障が起きていない設備でもリパワリングを検討すべき理由と、今後の備えについて解説します。
ここまで、故障や性能低下が顕在化したパワコンに対しての対策をご紹介してきましたが、実は「まだ動いているパワコン」こそ注意が必要です。
パワコンは、完全に停止する前に変換効率の低下や不安定な出力など、目に見えにくい形で“老化”が進行していることが少なくありません。
そして、多くの設備ではこの兆候に気づかないまま、ある日突然発電がストップするという事態に見舞われます。
このようなリスクを回避するためには、「予防保全」の視点が重要です。
特に、2010年前後に設置された太陽光発電所では、2025年〜2030年にかけて大量のパワコンが一斉に寿命を迎えると予測されており、部品供給や施工スケジュールの混乱が起こる懸念もあります。
そのため、故障してから「すぐに交換」と考えていても、必要な機器や工事枠がすぐに確保できないといった問題が発生する可能性があるのです。
こうした状況を避けるためにも、設備が正常に動いているうちに以下のような準備をしておくことが推奨されます。
今後10年、20年と安定した発電を続けていくためには、壊れてから動くのではなく、壊れる前に備えるという考え方が求められます。
全国の太陽光発電事業者の間では、特定メーカーや特定型式のパワコンで、ある時期を境に集中的に故障が発生しているという報告が増えています。
これは単なる偶然ではなく、同じロットで製造された製品の内部部品(コンデンサや冷却ファンなど)が、同時期に経年劣化するためです。
たとえば、以下のような傾向が多く見られます:
これらの問題に共通するのは、「今は動いていても、近いうちに壊れる可能性が極めて高い」という点です。
また、設備全体で同じ型番のパワコンを使っている場合、一台が壊れたら他の台も連鎖的に故障するリスクがあります。
こうした傾向を把握するには、メーカー発表の不具合情報だけでなく、業界内でのトラブル事例の共有や、点検業者からの現場情報も重要です。
自社設備に使用されているパワコンが該当するか心配な方は、型番と設置年をもとに一度チェックしてみることをおすすめします。
パワコンの故障は、太陽光発電設備にとって避けて通れないトラブルの一つです。従来であれば「壊れたら交換」で済ませるケースが多かったかもしれませんが、設備の経年劣化が進み、メーカー撤退や部品供給終了が相次ぐ中、今や単純な部品交換だけでは最適な対応とは言えなくなってきています。
そこで重要になるのが、設備全体の状態を見直し、「再設計」の視点から最適な更新を行うリパワリングという選択肢です。
単なる修理ではなく、設備を未来に向けて再構築する。
リパワリングは「コスト」ではなく、今後10年・20年の安定運用に向けた投資だと言えるでしょう。
「パワコンが壊れて困っている」「交換した方がいいか判断に迷っている」
そんな方は、ぜひ一度、リパワリングの無料診断・試算を受けてみてください。
早めの判断が、将来の発電収入と安心を守ることにつながります。