PPA(Power Purchase Agreement)モデルは、初期投資ゼロで再生可能エネルギーを導入できることから、企業や自治体で急速に普及が進んでいます。
しかし、その一方で見落とされがちなのが「保険リスク」です。
自然災害や設備トラブル、発電停止などの予期せぬ事態は、契約履行や収益に大きな影響を与えます。
さらに近年では、気象災害の激甚化や設備の高額化、賠償請求リスクの増加により、保険の必要性はますます高まっています。
それにもかかわらず、「どんな補償が必要なのか分からないまま契約している」ケースも少なくありません。
みなさまの中にも、こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
本記事では、PPA事業における保険の基本から、
✅ カバーすべき代表的なリスク
✅ 保険の種類と補償範囲の違い
✅ 実際の保険商品・補償事例・費用目安
などを、分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、PPAのリスクと保険の全体像が把握でき、
「自社にとって本当に必要な補償は何か」が判断できるはずです。
どうぞ、PPA事業の安定運用とリスク管理にお役立てください。
PPAモデルは、発電設備を所有せずに再生可能エネルギーを利用できる仕組みです。
そのメリットは大きい一方で、契約期間が長期にわたるため、想定外のトラブルが発生する可能性も高まります。
例えば、以下のような事態は、事業の収益や契約履行に直結する重大リスクとなります。
これらのリスクは、通常の火災保険や設備保険だけでは十分にカバーできない場合があります。
特にPPAモデル特有の「契約義務の履行」や「環境価値(非化石証書など)の維持」といった観点は、一般的な保険商品では補償されないことが多く、専用のPPA保険が必要となります。
また、近年は気象災害の激甚化や設備の大型化により、一度の事故で数千万円規模の損害が発生するケースも珍しくありません。
保険を戦略的に組み合わせることで、こうした予期せぬ損失から事業を守ることができます。
PPA事業で活用できる保険は、大きく分けて「パッケージ型保険」と「単体保険」の2つに分類できます。
それぞれの特徴や補償範囲を理解し、自社のリスクに合った形で組み合わせることが重要です。
複数のリスクをまとめてカバーする包括的な保険です。
大手損害保険会社がPPA事業者向けに提供しており、火災・自然災害・休業補償・賠償責任・代替電力調達費用などを一括で契約できます。
メリット:
デメリット:
特定のリスクだけをカバーする保険です。必要な補償を選んで契約できるため、コストを抑えやすい一方、補償漏れが発生しやすい点には注意が必要です。
主な単体保険の例:
メリット:
デメリット:
| 項目 | パッケージ型保険 | 単体保険 |
|---|---|---|
| 補償範囲 | 包括的(多くのリスクを一括補償) | 特定リスクのみ |
| 契約・管理の手間 | 少ない | 多い(複数契約管理が必要) |
| コスト | 高め | 抑えやすい |
| 柔軟性 | 低め(セット内容が固定されやすい) | 高い(必要な補償を選択可能) |
どちらを選ぶべきかは、事業規模・契約期間・予算・リスク許容度によって変わります。
中規模以上のPPA事業では、パッケージ型をベースに不足部分を単体保険で補う「組み合わせ型」も有効です。
PPA保険の保険料は、契約内容・補償範囲・発電規模・設備の設置場所(自然災害リスク)などによって大きく変わります。
パッケージ型か単体保険かによっても費用感は異なりますが、以下は目安となる数値です。
※地域や立地条件によっても価格は異なります。
複数のリスクを包括補償するため、保険料は大きくなりがちです。
規模や補償範囲にもよりますが、年間数十万円〜数百万円となるケースもあります。
| 発電規模 | 想定年間保険料(パッケージ型) | 想定年間保険料(単体組み合わせ型) |
|---|---|---|
| 〜50kW | 15〜30万円 | 10〜20万円 |
| 50〜500kW | 30〜70万円 | 20〜40万円 |
| 500kW以上 | 70~150万円 | 40〜70万円 |
表の金額はあくまで目安であり、契約条件や設置環境によって変動します。
特に沿岸部や台風常襲地域、豪雪地帯などでは保険料が高くなる傾向があります。
保険は単に「安ければ良い」というものではなく、万一の際に事業継続を守れるかどうかが重要です。
コストと補償のバランスを見極めながら契約を選びましょう。
PPA保険を選ぶ際には、「補償範囲」「保険料」「契約の柔軟性」「保険会社のサポート体制」の4つの軸で比較することが重要です。
パッケージ型と単体保険、そして提供会社ごとの特徴を整理することで、自社に最適なプランを選びやすくなります。
| 項目 | パッケージ型保険 | 単体保険 | 組み合わせ型 |
|---|---|---|---|
| 補償範囲 | 広い(包括補償) | 狭い(特定リスクのみ) | 必要な部分を広くカバー |
| コスト | 高め | 低め | 中間程度 |
| 契約・管理 | シンプル | 複雑(複数契約管理) | 中程度 |
| 柔軟性 | 低い(セット固定) | 高い(自由選択可能) | 高い(不足分を補完可能) |
単に「安いから」という理由で選ぶと、肝心なときに補償を受けられない可能性があります。
必ず自社のリスクプロファイルに合った保険を選びましょう。
メリットとデメリットを正しく理解し、コストと補償内容のバランスを見極めることが重要です。
特にPPA事業は契約期間が長いため、短期的な費用だけでなく長期的なリスク管理の観点から判断することをおすすめします。
PPA保険は、PPAモデル特有の長期契約・高額設備・自然災害リスク・契約履行義務などをカバーする重要なリスク対策です。
火災や地震だけでなく、発電停止や代替電力調達費用、環境価値の維持まで視野に入れた補償設計が求められます。
保険選びの際は、次のポイントを押さえるとスムーズです。
単に「安い」だけではなく、「万一のときに事業を守れるかどうか」が保険選びの最大の基準です。
本記事を参考に、自社に最適なPPA保険を検討してください。
PPA事業者や設備所有者だけでなく、長期契約を前提に電力を利用する需要家も、契約内容によっては加入を検討すべきです。
火災保険だけでは、発電停止による売電損失や代替電力調達費用、環境価値の維持などPPA特有のリスクはカバーできません。
不要な補償を外す、免責金額を高めに設定する、複数年契約で割引を受けるなどで保険料を下げられます。ただし、補償範囲が狭まりすぎないよう注意が必要です。
保険会社や契約形態によりますが、設備増設や契約変更に伴い補償内容を追加・修正できる場合があります。事前に契約条件を確認しましょう。
発電停止時でも契約上の環境価値(例:非化石証書やトラッキング付きFIT電力)を維持するために、代替の再エネ電力を調達することです。これに伴う追加費用を補償する保険もあります。