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【2025年最新版】デマンドレスポンス完全ガイド―仕組み・種類・参加方法・報酬・アグリゲーター・最新制度まで
一般法人

ここ数年、電気代の高い状態が続き、猛暑や厳冬で使う電気も増えがちです。
家庭でも会社でも「どう節電するか」は身近なテーマになっています。

2025年に入ってからは、節電に協力するとポイントや割引がもらえる
デマンドレスポンス(DR)と呼ばれる取り組みが広がっています。

かんたんに言うと、
電気が足りなくなりそうな時間に、使う量を少し減らすとごほうびがもらえる仕組みです。

しくみを理解して、ふだんの暮らしや仕事にムリなく組み込むことで、
続けやすく、効果も大きくなります。

電気代の節約はもちろん、みんなで時間帯を少しずつずらすことで停電しにくくなり、
CO2の削減エネルギーの安心にもつながります。

この記事では、

・DRの基本(どんな仕組み?どんな種類?)
・家庭/企業の参加手順と、申し込み前のかんたんチェックリスト
・報酬の決まり方(ベースラインの考え方)と注意点
・2025年に募集/実施中の主なプログラム(家庭・法人)の概要

といった内容を、2025年10月時点の最新情報にもとづいて、
具体的な手順や計算の例といっしょに、やさしく解説します。

読み終えるころには、DRの基本参加するかどうかの判断材料
そして効果を最大にするコツまで、一通りつかめます。

ぜひ、あなたのご家庭や会社の電気代対策省エネ・脱炭素にお役立てください。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



デマンドレスポンス(DR)とは?

デマンドレスポンス(DR)とは?

デマンドレスポンス(DR)は、電気が足りなくなりそうな時間や、逆に電気が余りそうな時間に合わせて、みんなで電気の使い方を少しだけ変える取り組みです。

たとえば「今日は17:00〜19:00に少しだけ節電してください」というお知らせが来たら、

・エアコンの設定を1℃上げる
・不要な照明を消す
・洗濯や食洗機を時間帯の後ろにずらす

といった行動をします。
そのアクションに対して、

ポイントなどが付与され、電気料金を低減できます。

DRの目的は?

目的は大きく2つ。

1.停電の予防価格の急騰の抑制につながるよう、電力のピークをなだらかにすること。
2.再エネが多い時間帯へ寄せるなど、脱炭素電力の安定運用を後押しすることです。

このように、電力のバランスを保つことが、主な目的です。

なぜ電力のバランスを調整する必要があるの?

なぜこのように、電気の使用量と供給量のバランス(需給バランス)を整える必要があるのでしょうか?

需給バランスが崩れると、大規模停電になる可能性がある

需給バランスを保てなかった場合、最悪の場合には以下のような流れで
「大規模停電」を起こしてしまう可能性があります。

 
 
1.需給バランスが崩れる
需給バランスが崩れると・・・

 
 
2.機器に不具合が出る
電圧や周波数に影響が出て、送配電設備の「電子機器の故障」や、「故障を防ぐための自動停止」などが起こります。

 
 
3.大規模停電が起こる可能性も
そうした不具合から、重要な機器の停止などに繋がり、
大規模停電につながる可能性があります。

そのため、需給バランスを安定させるためにも「DR(デマンドレスポンス)」を行う必要があるのです。

デマンドレスポンス(DR)の種類

DRは、成果の受け取り方で「インセンティブ型」と「価格応答型」に分類されます。

インセンティブ型

インセンティブ型は、指定時間に節電できた分に応じてポイントや割引がもらえるタイプです。
通知に従ってその時間だけ少し節電すればOKなので、初めての方でも始めやすいのが特長です。

価格応答型

価格応答型は、時間帯によって電気料金が変わるしくみで、料金が高い時間を避け、安い時間にシフトすることで電気代を下げます。
「夕方は高いので洗濯は21時以降」など、料金の“合図”に応じて使い方を変えるイメージです。

デマンドレスポンスに関連する基礎用語

続いて、デマンドレスポンスに関連する基礎用語について見て行きましょう。

下げDR/上げDR

DRは消費電力を下げるのか、上げるのかによってそれぞれ「下げDR」と「上げDR」と呼ばれます。

下げDR

下げDRは、電気が足りない時間に使う量を減らすこと。エアコン設定を1℃上げる、不要な機器を止めるなどが例です。

上げDR

上げDRは、太陽光がたくさん発電して余りがちな昼間などにあえて使う量を増やすこと。EVや蓄電池の充電を昼に寄せるのが典型例です。
どちらも電力の混雑を避け、ムダや不安定さを減らすのが目的です。

ネガワット

DR(デマンドレスポンス)のしくみをより詳しく知るためには「ネガワット」の意味を理解しておく必要があります。

ネガワットとは、
本来使っていたはずの電気を使わずに済ませた分を、発電と同じような価値として扱う考え方です。

たとえば「いつもの使い方の線(ベースライン)」から見て、
DRイベント中に消費が下がった分の面積がネガワットになります。

この「下げた分」を、アグリゲーター(とりまとめ役)が電力市場や電力会社との取り引きに活用し、
参加者へ報酬として還元されます。

VPP(仮想発電所)

また、DR(デマンドレスポンス)は、VPP(仮想発電所)との関わりも深くなります。

VPP(仮想発電所)は、家庭やビル、工場にあるエアコン・照明・蓄電池・EV・太陽光など、たくさんの小さな機器をインターネットでつないで、1つの大きな発電所のように賢く動かす仕組みです。

DRは、このVPPの中で需要側の調整力(※)として使われます。

※調整力とは?
調整力は、今この瞬間に「電気を増やす」または「電気を減らす」力のことです。
電気は貯めにくく、使う量と作る量が常にピッタリでないと周波数が乱れて停電リスクが高まります。そこで電力会社は、すぐ動かせる余力を発電側と需要側(使う側)に用意してもらい、必要な時だけパッと出してもらいます。これが調整力です。

VPPは「どの地域で何をどのくらい動かすか」をまとめて指示できるので、系統全体の安定再エネ活用にとても相性が良いのが特長です。

DRを売買する電力市場

デマンドレスポンスは、需要調整市場と容量市場のような電力市場で取り引きされます。

需給調整市場とDR

需給調整市場とは?

需給調整市場」とは「緊急時に必要となる予備用の電力」を売買する市場です。

電気は発電と電力需要の「需給バランス」を調整しなければ、停電などに繋がるリスクがあります。

需給調整市場」では、そうした需給バランスを調整するための「調整力」として使用する電力を売買する市場です。

需給調整市場におけるDRの役割

DR(デマンドレスポンス)も「調整力」として需給調整市場で取り引きされます。

容量市場とDRの関係

需給調整市場と同様に、DRは「容量市場」でも取引されます。

容量市場とは?

容量市場は、現在の電気を売買するのではなく、数年先の電気の売買を約束する市場です。

将来の夏や冬に電気が足りなくならないよう、発電所や蓄電池、そしてDRなどの「供給力」を前もって確保し、その対価を支払います。

容量市場におけるDRの役割

前述のように、DR(デマンドレスポンス)は「ネガワット」として、「削減した電力=発電した電力」とみなすことができます。

DR(デマンドレスポンス)は、ネガワットとして、容量市場においても数年先の電気の売買として取り引きされます。

需給調整市場と容量市場の違い

つまり、当日にすばやく対応するのが需給調整市場数年先に備えるのが容量市場という役割分担になっています。

政府・広域機関の情報参照先

最新の制度や注意報・警報、募集状況は、こちらもご参照ください。

経済産業省(資源エネルギー庁):
ディマンドレスポンス(DR)の基礎解説 /
DRの市場参入(需給調整市場・容量市場)の解説 /
VPP・DRとは(公式ページ) /
需給調整市場の最新資料(PDF)

電力広域的運営推進機関(OCCTO):
容量市場トップ(制度・運営・各年度資料) /
容量市場 説明会資料・動画 /
電力需給ひっ迫時の対応(注意報・警報の基準)(PDF)

家庭向け: 参加方法と主なプログラム(2025年)

続いて、家庭向けの主なプログラムと、参加の流れをご紹介します。

参加の流れ

DR(デマンドレスポンス)への参加は、むずかしくありません。スマホと電気契約があればOKです。

  1. エントリー: 各社の専用ページで参加登録します。利用規約に同意し、通知先メールやアプリを設定します。
  2. お知らせを受け取る: 「本日17:00–19:00で節電をお願いします」のような通知が届きます。アプリのPUSH通知やメールで届くことが多いです。
  3. できる範囲で節電: エアコン設定を±1℃調整、使っていない部屋の照明オフ、食洗機や洗濯は時間をずらす、EV充電は夜へ回す、など。
  4. ポイント付与: 節電できた量に応じて、各社のポイント(例: くらしTEPCOポイント/はぴeポイント/Pontaポイント)が付与されます。付与時期やレートはプログラムごとに異なります。

※ 通知はアプリで受け取れるものもあります。例えばauでんきはアプリのPUSH通知で「節電要請」や結果を見られます。

代表的なプログラム

東京電力「エコ・省エネチャレンジ」

対象の時間帯に節電すると、節電量に応じて「くらしTEPCOポイント」がもらえる指定時型のプログラムです。2025年は夏期と冬期に実施され、対象時間はメールで知らせてくれます。ポイントは対象日ごとに変動し、事前メールで告知されます。

・実施予定期間: 2025年7月1日〜10月12日、2025年12月8日〜2026年2月28日(予定)

関連の省エネ施策やポイント連動コンテンツ(省エネBINGOなど)も併設されており、楽しみながら取り組めます。ポイントの反映時期など運用情報はサポートページも参考になります。

→詳細:東京電力「エコ・省エネチャレンジ」: 公式ページ省エネ関連ページポイント反映時期(サポート)

関西電力「DRプロジェクト」

関西エリアの家庭向けに、指定時間の節電量に応じて「はぴeポイント」が付与されるプログラムです。2025年は夏期・冬期に加え、秋の需要シフト型プログラムの募集も案内されています。

・基本スキーム: 指定時間に電気使用を抑えると、抑制量に応じてポイント進呈。達成特典の加算時期や参加条件は公式案内をご確認ください。

・レート例: 需要抑制型の案内では「1kWhあたり5ポイント」、ひっ迫警報等のときは「1kWhあたり20ポイント」の例示があります(詳細条件は公表資料参照)。

・実施期間(家庭向け・需要抑制型): 2025年7月1日〜9月30日、2025年12月1日〜2026年2月28日。

→詳細:関西電力「DRプロジェクト」: 家庭向け案内実施概要PDF需要シフト型(2025年秋)募集

東京ガス「スマートアクション」

需給がひっ迫する時期に節電すると、節電量に応じて特典がもらえる取り組みです。マイページからエントリーし、対象時間帯に合わせて節電します。

・スマート家電との連携例: Nature Remoなどと連携し、エアコンの自動制御を設定するとボーナスポイントがもらえるキャンペーンが実施されることがあります(例: 2025年夏に自動制御設定で50ポイント)。実施内容は時期により変わるため、最新ページをご確認ください。

・基礎解説: 東京ガスの読みものページでも、DRの意味や参加メリットをやさしく解説しています。

→詳細:東京ガス「スマートアクション」: 公式ページNature Remo連携キャンペーン例DR解説記事

auでんき「節電チャレンジ」

需給がひっ迫するタイミングで節電に協力すると、Pontaポイントがもらえるプログラムです。2025年夏も実施され、エントリー後に節電成功でポイントが付与されます。

・最新情報: 取り組み強化に関するニュースリリースや、節電要請の実施状況ページで当日の時間帯・結果を確認できます。アプリ通知も便利です。

→詳細:auでんき「節電チャレンジ」: 公式ページニュースリリース要請状況・アプリ案内

※プログラムは季節・需給状況で実施内容やポイント条件が変わります。参加前に必ず各社公式ページの最新条件をご確認ください。

企業・自治体向け: 参画スキームと導入手順

同様に、企業向けの参加の流れを見て行きましょう。

参画形態(小売・アグリゲーター経由)

企業や自治体がDRに参加する方法は大きく2つです。

1.小売電気事業者のDRメニューに参加

既存の電力会社の「節電割引」「特約」に申し込む方法。通知が来た時間に使用量を下げると、料金割引やポイントが受け取れます(例: 関西電力の「eリスポンス特約」公式)。

2.アグリゲーター経由で参加

施設内の複数機器をまとめて制御し、アグリゲーターが需給調整市場などに取り次ぐ方法。小口の力を束ねて参加でき、ベースラインや計量の運用も任せられます(制度設計の考え方は経産省資料が分かりやすいです PDF)。

対象リソースの例

ムリのない短時間の微調整で効果が出やすい機器から始めるのがコツです。

空調: 設定温度±1℃、ゾーンごとの風量・スケジュール調整。
冷凍・冷蔵設備: 事前予冷・扉開閉の徹底・短時間の負荷緩和。
コンプレッサ: 台数制御・短時間の段落とし。
照明: 共用部の間引き点灯、会議室は人感センサー活用。
蓄電池・EV充電: 余剰時は充電(上げ)、逼迫時は充電停止(下げ)。
ポンプ・ファン等: 時間帯シフトやインバータでの出力抑制。
※停止しない機器(安全・品質・医療等)は事前に「除外リスト」化し、誤停止を防ぎます。

進め方のステップ

  1. 負荷棚卸: 設備リストを作り、止めてよい/止めない何分まで何kW影響を簡単に整理。
  2. 計測基盤: スマートメーターの30分データに加え、分電盤CTやBEMSで主要系統を見える化。ベースライン(ふだんの使い方)とイベント実績の差が分かる状態にします。
  3. 制御ポリシー: 温度・照度のガードレール、停止順序、手動か自動か、を事前に決定。快適性と品質を最優先に。
  4. テスト: 30〜60分の社内テストを1〜2回実施。想定kWと実績のズレを確認し、設定をチューニング。
  5. 本番: 通知に合わせて実行。終了後は自動復帰のタイマー設定を忘れずに。週次で実績レビュー。

料金面の効果

効果は2つあります。

1.DR報酬・割引

指定時間の削減量に応じたポイントや料金割引。例として、関西電力の高圧向け「eリスポンス特約」は需要抑制量に応じて割引されます(関西電力公式サイト)。

2.最大需要電力の抑制

夕方ピークの最大値が下がると、契約電力や基本料金に効く場合があります(契約メニューによる)。ピークを作らない運用は、翌月以降のコスト平準化にも有効です。

高圧向けメニュー例

関西電力「eリスポンス特約(需要抑制型)」

特別高圧・高圧向け。指定時間の削減量に応じて料金割引。2025年度の夏季・冬季に実施案内。公式ページ / 料金表PDF(参考)

中部電力ミライズ「夏季節電プログラム(特別高圧・高圧)」

「デマンドレスポンス型NACHARGE」「ビジエネ月間調整割引」の2メニューを組み合わせる節電プログラム(2025年7–9月)。
お知らせ / 専用ページ

東京電力エナジーパートナー(法人向けDRの考え方)

企業向けDRの基本解説とQ&A。上げDR・下げDRの説明や、自治体特典の案内も。法人向けDR解説 / 東京都の達成特典Q&A

東北電力グループ

再エネの有効活用を目的とした新たなDRサービスの開始を発表(上げDRを含む)。ニュースリリース / 夏季のDR案内(参考)

※ 実施時期・対象・割引単価・申込期限は毎年更新されます。参加前に各社の最新条件を必ずご確認ください。

DR報酬の仕組みと計算の流れ

実際に取り組む際には、報酬などの仕組みを理解しておく必要があります。

kWh(エネルギー)とkW(出力)の違い

まずは基礎知識として、単位の意味をおさえておきましょう。
kWとkWhはとても似ている単位ですが、意味は異なりますので注意が必要です。

kW = 今この瞬間の強さ(出力)。蛇口をどれだけ開いているかのイメージ。
kWh = ある時間に使った合計の量(エネルギー)。バケツにたまった水の量。

例えば、ドライヤーの使用で見てみると分かりやすいです。

1.2kWの出力のドライヤーを2時間使った場合「1.2kW × 2時間」で「2.4kWh」のエネルギー消費になります。

DRの評価では、その時間にどれだけ強さを下げられたかΔkW(デルタkW)で表し、下げた時間の長さと掛けて削減kWhを計算します。

かんたん計算例 : 17:00–19:00の2時間に、いつもより0.3 kW少なくできたら、0.3×2=0.6 kWhの削減です。
報酬はプログラムごとに「1 kWhあたり○ポイント/○円」と決まっており、削減kWh×単価で概算できます。

ベースラインの設定

ベースラインは「何もしなかったらこのくらい使っていたはず」という基準線です。
その設定方法は以下になります。

DRでは、ベースライン − 実績 = 削減量 で成果を出します。主な作り方は次のとおり。

High X of Y法

直近の同じ曜日区分・営業時間のY日のうち、電力使用が高かったX日の同時間帯の平均をベースラインにします。例: 「直近10営業日のうち上位3日平均」。
ポイント: たまたま低かった日を避け、ふだんに近い線を作れる。

直前補正(同日補正)

イベント当日の午前など事前数時間の実績から、天気や稼働の違いを反映する補正係数をかけます。
ポイント: その日の暑さ・忙しさを取り込めるので公平になりやすい。

曜日別移動平均

直近の同曜日の平均で作成。祝日・特異日は除外するのが一般的。

注意点

・ベースラインを不当に上げる行為(直前にわざと使い過ぎる等)は規約違反になります。
・休業日・設備停止日・異常値は計算から外すのが普通です。
・家庭や小規模施設は、スマートメーターの30分データで自動計算されることが多いです。

測定・検証

測定・検証のことを「M&V」と言います。

M&VはMeasurement & Verificationの略で、きちんと測って、正しく確認する工程です。流れは以下のようにシンプルです。。

1.設計

どの回路を測るか、ベースラインの作り方、イベント時間帯、合格条件(何kW下げるか)を決めます。

2.計測

スマートメーターや分電盤CT、BEMSでデータを自動収集。欠測や異常値の取り扱いルールも決めます。

3.検証

ベースラインと実績を比べて削減量を算出。温湿度や生産量など影響要因のメモも残します。

4.レポート

削減kWh・最大ΔkW・参加率・快適性の苦情件数などを1枚にまとめ、次回へ改善点をフィードバック。

“ズレ”を小さくするコツ

ズレを最小限にするには、以下のような方法があります。

事前テスト

本番前に30〜60分のリハーサル。どの機器で何kW出せるかを確認。

快適性ガードレール

空調は±1℃まで、照度は○lx以上、冷凍庫は△℃以下などの下限・上限を先に決める。

自動化

タイマー・スケジューラ・人感センサーで人手の抜け漏れを防止。終了後は自動復帰を必ず設定。

リバウンド対策

イベント直後に一気に使い過ぎないよう、復帰は段階的に。

記録

天気・室温・客数・生産状況などのメモを残すと、ベースラインとの公平な比較に役立ちます。

参加メリットとリスクの実務的整理

家庭にとってのメリット

DRに家庭が参加すると、次のような実益があります。

ポイント獲得

指定時間に節電できた分に応じてポイントや割引がもらえます。1回あたり数十〜数百円相当、年間では数千円〜1万円前後が目安(参加回数・お住まいの地域で変動)。

電気代の平準化

価格応答型なら、料金が高い時間を避けて安い時間に家事や充電を移すことで、月の支出が安定しやすくなります。

自動化でムリなく継続

スマートプラグや家電リモコンを使えば、時間帯に合わせて自動でオン・オフや温度調整が可能。人の我慢ではなく仕組み化で続けられます。

停電リスクの低減に貢献

皆でピーク時間の使用を少しずつ下げることで、系統の安定化に協力できます。

環境メリット

再エネが多い昼に洗濯やEV充電を寄せるなど、CO₂削減にもつながります。

企業にとってのメリット

収益化

DRの報酬や割引に加え、ピーク時の使用を抑える運用で最大需要電力が下がれば、契約電力や基本料金の低減につながる可能性があります(契約メニューによる)。

需給リスクの低減

注意報・警報時の手順が整い、短時間の調整で操業を止めずに対応しやすくなります。

ESG・開示の材料化

節電量やCO₂削減量を数値で示せるため、環境報告や社内KPIに反映しやすくなります。

レジリエンス向上

計測や制御の整備は、非常時の優先負荷運転や復旧手順の基盤にもなります。

従業員エンゲージメント

ガードレール付きの省エネチャレンジは、現場の巻き込みや意識醸成に有効です。

リスクと回避策

DRは正しく設計すればリスクを抑えられます。よくある懸念と対策をセットで整理します。

業務・快適性への影響
懸念

室温や照度の下がり過ぎ、生産品質や接客品質への影響。

対策

「空調は±1℃まで」「照度は○lx以上」「重要設備は除外」といったガードレールを事前に設定。停止しない機器のリストを共有し、復帰は段階的に。

ベースラインが不利
懸念

ふだんから省エネで削減余地が小さいと、成果が出にくい。

対策

直前補正に対応したプログラムを選ぶ、上げDR(余剰時の充電など)も活用、設備の時間帯シフトで「削減ではなく移動」で稼ぐ。

人手依存・運用ミス
懸念

消し忘れ・戻し忘れ、担当者不在。

対策

タイマーやスケジューラ、センサー連動で自動制御。手順書とチェックリストを用意し、事前テストで確認。

リバウンド
懸念

イベント後に一気に負荷が戻って逆効果。

対策

復帰は段階的に設定し、終了後の自動復帰タイマーを必ず設定。

データ欠測・計測トラブル
懸念

メーター不調で成果が認められない。

対策

計測器の点検、バックアップのログ取得、欠測時の取り扱いルールを事前確認。

条件変更・報酬の不確実性
懸念

参加条件や単価が季節や年度で変わる。

対策

無償エントリーから小さく開始→実績を見て装置を増やす二段構え。毎シーズン前に最新条件をチェック。

安全・品質・法令
懸念

品質規格や安全基準に抵触。

対策

関係部門と合議し、停止しない負荷の定義とフェイルセーフを明確化。必要に応じて顧客告知を準備。

よくある質問(FAQ)

イベント頻度・通知猶予は?

多くの家庭向けDRでは、夏と冬にそれぞれ数回〜十数回の実施が目安です。企業向けは施設規模や契約で変わりますが、月に0〜数回程度が一般的です。

通知は前日または当日数時間前に届くことが多く、アプリのPUSH通知やメールで案内されます。イベントの所要時間は30〜120分が中心です。

準備しておくと安心
・スマホ通知をオンにし、DR専用フォルダカレンダー連携を設定。
・家族や社内でやることリストを共有(例: エアコン±1℃、不要な照明オフ、EV充電は後ろ倒し)。
・終わったら自動で元に戻すタイマーを設定。

快適性や業務影響はどこまで許容?

DRは無理をしないのがルールです。次のようなガードレールを先に決めておくと安心です。

  • 室温: 冷房は27〜28℃を目安に、まずは±1℃の微調整から。暖房は20〜21℃を目安。
  • 照明: 作業する場所は必要な明るさを確保しつつ、通路や空き部屋は消灯。人感センサーがあると便利。
  • 停止しない設備: 医療・安全・品質に関わる機器、サーバーや監視カメラなどは除外リスト化して誤停止を防ぐ。
  • 時間: 長くても30〜120分を上限に。段階的に復帰させてリバウンド(一気に使い過ぎ)を避ける。

まずは短時間・小さな調整で手応えを確認し、慣れてきたら自動化でムリなく幅を広げるのがおすすめです。

太陽光・蓄電池・EVがあると有利?

はい、有利です。これらは使う時間をずらす力が大きく、DRと相性が良いです。

  • 太陽光(PV): 昼間に発電が多いので、洗濯・食洗機・給湯の沸き上げなどを昼に寄せると、電気代もCO₂も下げられます。
  • 蓄電池: 昼に充電、夕方のイベント時は放電または買電を抑制。停電対策にも役立つ。
  • EV: 充電は夜間や昼の安い時間に。イベント中は充電を一時停止するだけでも効果。V2Hがあれば、家側へ電気を供給してピークを下げられます。

注意点: DRの報酬は多くの場合、電力会社から買った量の削減が基準です。自家消費や放電の設定は、プログラムのルールに合うよう事前に確認しましょう。

セットアップのコツ
・蓄電池やEVは充電の予約残量の下限(SoC)を設定。
・スマートプラグや家電リモコンで自動スケジュール化。
・イベント終了の自動復帰を必ずオンに。

2025年の関連補助金・支援(引用元付き)

DR機器のIoT化推進(SII)

2025年は、SII(環境共創イニシアチブ)が執行する
「ディマンドレスポンスの拡大に向けたIoT化推進事業」が公募されています。
既存設備(空調・照明・冷凍冷蔵・BEMS 等)をDR対応にするための、
ゲートウェイ/コントローラ/計測・通信機器などの導入が対象です。

公募期間:2025年3月27日(木)〜12月5日(金)(予定)
補助率:1/2以内 / 上限:1申請あたり2,500万円
対象者:主に契約電力50kW以上の法人需要家
要件:交付決定後に発注・設置、DRアグリゲーターとの契約、通信試験・実績報告までを完了
申請先:SII(環境共創イニシアチブ)公募ページ

  • ポイント:既存設備をDR対応にするIoT化が主眼。アグリゲーター契約必須。
  • 併設支援:業務・産業用蓄電システムの導入支援も同時に公募。DR活用前提の蓄電池併設で補助対象になるケースあり。
  • 進め方:アグリゲーター契約→通信・計測環境整備→ベースライン設計→設置・検収→報告。

引用元:SII「令和6年度補正 ディマンドレスポンスの拡大に向けたIoT化推進事業」

省エネ投資・診断の併用

DRのIoT化だけでなく、省エネ設備の更新エネルギー管理(EMS/BEMSを同時に進めると、
①DR報酬・割引(イベント時)②最大需要電力の抑制(基本料金対策)③使用量削減(従量料金)の“三層取り”が狙えます。

  • 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(SII)
    工場・事業場単位の更新や需要最適化を支援。Ⅰ型(工場全体更新)、Ⅱ型(電化・燃転)、Ⅳ型(需要最適化)など複数メニューあり。
  • 省エネルギー投資促進支援事業費補助金(設備単位型)
    高効率空調・照明等の設備更新。EMS等(需要最適化)は設備単位型とセット申請が前提になる場合があります。
  • 省エネ診断(ECCJ 等)
    無料または低負担で受けられる診断により、更新優先度の見える化や、DRで「止めない負荷」の切り分け設計に有効。
  1. 工程を段階化:①IoT化→②計測可視化→③高効率更新の順で年度横断ロードマップを作ると、補助対象の切り分けが明確。
  2. スキーム分担:DRのIoT化はDR IoT事業、機器更新は省エネ投資促進系、EMSはセット申請要件に注意。
  3. 家庭分野:「先進的窓リノベ2025」「住宅省エネ2025キャンペーン」などと連動し、昼の上げDR×断熱・給湯効率化で家計とCO₂を同時削減。

引用元:SII「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」
経済産業省「省エネ支援パッケージ(令和6年度補正)」
ECCJ「省エネ診断のご案内」

まとめ:DRは「我慢」ではなく「制御」へ

デマンドレスポンス(DR)は、「電気を我慢する取り組み」ではありません。
スマートメーターやIoT機器を活用して、無理のない範囲で自動的に調整する「制御」へと進化しています。

続けやすく、成果がしっかり出るようにするには、次の4ステップがポイントです。

  1. 導入:まずはDRの意味とメリットを知り、アプリやポイント連動プログラムにエントリー。
  2. 小さく試す:エアコン設定±1℃や、照明の一部消灯など、短時間・低リスクから実施。
  3. 自動化:スマートプラグ・BEMS・タイマー設定で、人の手をかけずに運用できる仕組みに。
  4. 制度・市場で稼ぐ:慣れてきたら、アグリゲーター経由のDRや需給調整市場への参加で、
    DR報酬や基本料金低減といった金銭的メリットを最大化。

こうしたステップを踏むことで、快適さや業務を犠牲にせず、電気代削減・CO₂削減・レジリエンス強化の三拍子がそろいます。
これからは「節電=我慢」ではなく、データと仕組みで賢く制御する時代です。

※DRプログラムや市場制度は年度ごとに見直しがあります。
最新情報は各電力会社やアグリゲーター、経済産業省・OCCTOの公式ページをご確認ください。