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「【2025年改訂版】使用前自己確認:企業・個人がいま押さえるべき実践ガイド
法人

太陽光発電設備は、「電気工作物」に該当する場合には、使い始める前に
安全性や電気的な状態を確認する“使用前自己確認”が法令で求められています。

ただし設備の種類や電圧区分によっては、詳細な法的義務の適用範囲が異なるため、
すべての発電所がまったく同じ内容を実施しなければならないわけではありません。
それでも、多くの太陽光発電所では「運転前の確認」が必要であり、
これは安全性・発電性能の両面で非常に重要なステップです。

近年、太陽光発電の普及とともに、施工不良による発電量の低下や、
ケーブルの異常・火災といったトラブルが全国で増えています。
そのため現在は、
「施工が終わった=安全に使える」
とは言い切れない状況になっています。

かんたんに言えば、
太陽光発電所は“運転を開始する前に、安全と性能を確認しておくことが欠かせない”
ということです。これは低圧・高圧の別に関係なく、多くのオーナーに共通する重要なポイントです。

本記事では、

・太陽光発電の「使用前自己確認」とは何か(法的な位置づけ)
・どんな発電所が対象になるのか、近年の法改正で何が変わったのか
・オーナー・施工業者が最低限おさえるべきチェックポイント
・IVカーブ測定など、現場で必要とされる“本当の確認内容”
・オーナー自身でできる部分と、専門会社に任せるべき部分

といった内容を、わかりやすく整理しています。

読み終えるころには、太陽光発電所を
安全に・安定して・そして最大限の発電量で運用するための「最初のステップ」
が理解できるようになります。

ぜひ、あなたの発電所の安全性の確保長期的な収益安定にお役立てください。

※「蛍光マーカーが引いてある専門用語」にカーソルを合わせれば解説が表示されます。
省エネにあまり詳しくない方にも分かりやすい記事をお届けするため、
あらゆる専門用語に解説を付けています。どうぞお役立てください。



太陽光発電における「使用前自己確認」とは?

電気事業法上の「使用前自己確認」の位置づけ

太陽光発電設備は電気事業法で定める「電気工作物」に該当し、
運転開始前に、安全性・絶縁・性能を確認する義務が、設置者(オーナー)に課されています。
この法的な確認が、一般に「使用前自己確認」と呼ばれるものです。

ここで特に重要なのは、「施工が終わった=法的確認も終わった」ではないという点です。
施工会社による工事完了と、設備を“使い始めてもよい状態”にするための最終チェックは、まったく別の工程です。

つまり太陽光発電所は、
「施工完了 → 使用前自己確認 → 連系・運転開始」
という流れを経て、初めて安全に稼働できる設備となります。

近年、なぜ“今まで以上に”重要になっているのか

太陽光発電の普及が進む中で、設備の不備・施工不良・災害時のトラブルなどが社会課題となり、
国や自治体、保険会社を含めた多方面で「安全確認の強化」が求められるようになりました。
近年は特に、次のような背景から、使用前自己確認の重要度が急速に高まっています。

・太陽光発電設備に関する事故・火災・感電トラブルの増加
・架台の倒壊やモジュールの飛散など、自然災害時のリスクが顕在化
・国・自治体による保安規制の強化と、技術基準の見直しが進行
・保険会社・金融機関が「点検・検査の実施状況」を重視する傾向が加速
・再エネ大量導入により、系統安定化の観点から“初期不具合の排除”が重要視されている

これらの要因から、使用前自己確認は「形式的なチェック」ではなく、
法令遵守・事故防止・長期安定運用の面で必須となる工程として扱われるようになっています。

また、太陽光発電所の「設置者責任」は低圧・高圧を問わず求められるため、
“低圧だから確認は不要”という誤解は完全に通用しません。
むしろ低圧のほうが施工品質のばらつきが大きく、初期不具合の放置が長期の発電損失につながりやすいのが実情です。

使用前自己確認は、運転後の点検(O&M)とは異なり、
施工不良や初期不良を唯一確実に発見できる「最後のチャンス」でもあります。
この工程を省略してしまうと、後のトラブルや収益悪化、保険・保証のトラブルにつながるリスクが高まります。


2023年の法改正と、既設発電所も対象となる可能性

最近、大きな制度変更があり、太陽光発電所の「使用前自己確認」の対象範囲が拡大しました。
その結果、従来この確認が不要だった小規模な発電所や、すでに運転を始めていた発電所でも、条件によっては改めて確認を求められるケースがあります。
この変化を理解せずに放置すると、思わぬトラブルや法令違反になることもあるため、オーナーの方は特に注意が必要です。

なぜ対象が「小規模発電所」まで広がったのか

これまで「使用前自己確認」の義務があったのは、おもに 500 kW〜2,000 kW の中〜大規模発電所でした。
しかし 2023年3月20日の法改正により、10 kW以上2,000 kW未満の太陽光発電設備すべてが対象となりました。
つまり、小規模な発電所であっても、新たに“安全確認と届け出”が義務付けられたのです。

この改正は、単に規模を問わない安全対策の義務化だけでなく、
・構造的な安全確認(架台、地盤、支持物の強度など)
・電気的な試験(絶縁・接地、電気的安全性)
をあわせて義務化するもので、安全性向上が目的とされています。

既に稼働中の発電所も“条件次第で対象”になる

今回の制度拡大によって、新設発電所だけでなく、すでに発電を始めている既設発電所も、下記のような場合には「使用前自己確認」が必要になる可能性があります。

・パネルの増設や、モジュールの取替えを含む設備変更
・出力の変更(増設などで全体出力が変わる)
・支持物(架台、基礎など)の強化や構造変更
・ケーブルや接続部の改修など、安全に関わる変更を伴う工事

つまり、たとえ「古くからある発電所」であっても、何らかの変更を加える際には、改めて安全確認と届出が義務になる場合がある、ということです。

この点を知らずに変更を進めてしまうと、後から
「適切な確認をしていなかった」「届け出を怠っていた」という理由で、法令違反・保険・保証の問題に直結する恐れがあります。

法的に求められる「最低限」の確認

法令・技術基準の観点から求められる主な確認項目

太陽光発電設備は法律上「電気工作物」にあたり、使い始める前に、
安全に問題がないかどうかを確認する義務があります。
これは“念のためのチェック”ではなく、設置者として必ず行うべき基本の点検です。

最低限、次のような項目を確認します。

絶縁抵抗の測定
 └ ケーブルが劣化していないか、漏電の危険がないかを確認
接地抵抗の測定
 └ 感電を防ぐために、しっかりアースが取れているか確認
外観チェック
 └ パネルの破損、ケーブルのたるみ・傷などを確認
図面どおりに施工されているか
 └ ストリング(直列)のつなぎ方などが設計と一致しているか
遮断器や安全装置の動作確認
 └ 異常が起きたときに安全に電気を止められるか

これらは太陽光発電に限らず、電気設備全般で必要とされる“基本の安全確認”です。
もしこの段階で異常を見逃すと、火災・感電・設備の故障につながる可能性があります。

そのため、これらの点検は
「できればやる」ではなく「必ずやるべきもの」と考えるのが安全です。

なぜ施工会社だけに任せると危険な場合があるのか

「施工=検査完了」ではないという誤解

近年は、「使用前自己確認」の必要性が広く知られるようになり、
多くの施工会社が法令や技術基準に基づいた確認の重要性をきちんと理解するようになってきました。

しかし一方で、現場では次のように考えてしまう施工会社が一部残っていることも事実です。

・パネルと配線をつないでパワコンが動いたので問題ないと思ってしまう
・電力会社との連系(接続)ができたから安全だと判断してしまう
・低圧だから詳しい測定までは不要と考えてしまう

一見すると問題なさそうに見えますが、こうした考え方は
オーナーにとって大きなリスクにつながります。
というのも、「工事が終わった」という工程と、
「設備が安全に使える状態かを確認する工程(使用前自己確認)」はまったく別だからです。

太陽光発電所は、見た目の完成度だけでは安全性も性能も判断できません。
内部の配線が正しく接続されているか、発電性能が設計どおり出ているかは、
きちんと検査を実施しなければ確認できません。

そのため、本来は
施工完了 → 使用前自己確認 → 連系・運転開始
という流れを経て、はじめて「安全に使える発電所」になります。

施工会社側の限界:測定器・知識・時間の不足

さらに、施工会社の中には十分な検査をしたくても、次のような理由で
“できない”状況にあるケースもあります。

・測定などに必要な高精度の測定器を持っていない
・測定値を正しく判断できる技術者がいない
・工期に余裕がなく、検査にじっくり時間を割けない
・使用前自己確認の内容を詳しく理解していない

そのまま運転を開始してしまうと、
「発電はしているが、本来より発電量が低い」
「配線や接続に問題を抱えたまま運転してしまう」
といったケースが起きる可能性があります。

特に初期不良や施工不良は、最初にしか気づけないものも多く、
運転開始後は原因が分かりにくくなることがあります。
だからこそ、施工の後に行う“使用前自己確認は最後の大切なチェック”なのです。


使用前自己確認で必ず押さえたい具体的な確認項目

① 外観・構造の確認

まず大切なのは、太陽光発電所を「見て分かる部分」で異常がないかを確認することです。
外観の不具合は、そのまま発電量の低下や安全トラブルにつながることが多いため、最初のチェックとしてとても重要です。

・モジュール(パネル)の割れ・欠け・ガラス破損
・架台の傾き・ぐらつき・ボルトのゆるみ
・ケーブルのたるみ・傷・固定不足
・接続箱や電気盤の扉がしっかり閉まり、防水が保たれているか
・雑草や近くの建物・フェンスなどで影ができていないか

これらの外観チェックだけでも、将来のトラブルを大きく減らせます。
特にパネル割れやケーブル損傷は、発電不良だけでなく火災の原因にもなりかねません。

② 電気的な測定・性能確認

次に、見ただけでは分からない「電気の状態」を確認します。
ここは専門的な測定器が必要になる部分で、発電所の安全性と性能を左右する重要な工程です。

・絶縁抵抗の測定(漏電していないかの確認)
・接地抵抗の測定(アースが正しく効いているか)
・開放電圧の確認(ストリングのつなぎ方が設計どおりか)
・IVカーブ測定(ストリングごとの発電性能のチェック)
・パワコン(PCS)の設定値が適切かどうかの確認

これらの測定は、発電所が「安全に電気を流せる状態か」「設計通りの発電ができているか」を評価するために欠かせません。
特に IV カーブ測定は初期不良の発見にとても効果的で、施工不良の早期発見にもつながります。

③ 図面・書類・保証の確認

太陽光発電所は、書類や写真が揃っているかどうかで、後からの対応のしやすさが大きく変わります。
特に保険・保証の申請や、第三者による点検の際に必要になります。

・単線結線図・ストリング図と実際の設備が一致しているか
・モジュール・パワコンなどの保証書が揃っているか
・施工写真(配線・接続部・架台・基礎など)が残っているか
・使用前確認の測定結果やチェックリストが保存されているか

これらがきちんと残っているかどうかは、後々のトラブル対応や保険・保証を使う場面で大きな差を生みます。
十分な書類が揃っていない場合、原因調査が難しくなり、保険が下りない可能性もあります。


使用前自己確認を怠った場合に起こりうるリスク

まず最初に押さえておきたいのは、使用前自己確認を行わずに運転を開始すると、法令違反にあたる可能性があるという点です。
太陽光発電設備は「電気工作物」に該当し、使い始める前に安全性や電気的な状態を確認することが求められています。
この確認を怠ったまま運転を始めると、事故が起きた際に「必要な確認をしていなかった」として責任を問われるリスクが高まります。

法令違反の可能性があるだけでなく、その後の発電量・安全性・保険の適用にも大きな影響を及ぼすため、使用前自己確認は必ず実施しておくべき工程です。

発電量・収益面のリスク

使用前の確認を行わないまま運転を開始すると、「発電はしているのに、なぜか収益が伸びない」という状況に陥ることがあります。
原因の多くは、施工時のミスや初期不良が発電性能に影響しているケースです。

・ストリングのつなぎ方を誤り、パワコンが十分な能力を発揮できない
・ほんの一部のモジュールの初期不良が、全体の発電量を引き下げてしまう
・設計値に対して常に数%~数十%のロスが発生し、長期の収益に影響する

特にストリング構成ミスや初期不良は、運転開始後に見つけても取り返しがつきにくいものです。
早期に発見できるのは「使用前自己確認」の段階だけといっても過言ではありません。

安全・法令遵守のリスク

太陽光発電所は電気設備である以上、安全性の確認をしないまま運転すること自体が大きなリスクです。

・配線の締め付け不足などから発熱し、火災につながる危険
・接地(アース)不良や絶縁不良による感電事故のリスク
・事故が発生した際に「事前の確認を怠った」として法令遵守の観点から問題視される

こうしたリスクは見た目からでは判断できず、専門的な測定でしか発見できないものも多くあります。
「とりあえず動く」状態でも、内部では深刻な問題が起きている可能性があります。

保険・保証のリスク

使用前に状態を記録しておかないと、保険やメーカー保証の適用時に「いつ不具合が発生したのか」が分からなくなり、トラブルになることがあります。

・火災や事故の際、適切な初期点検をしていないことで保険金が減額・不支給となる可能性
・モジュールやパワコンの保証申請時に、初期状態の記録がなく「施工不良かどうか」が争いになる

使用前自己確認の記録は、設備の“健康診断書”のような役割を果たします。
最初の状態を残しておくことで、後のトラブル対応がスムーズになり、保険・保証の問題を避けやすくなります。

こうしたリスクを考えると、「動けばよい」ではなく、
運転前にしっかり確認し、記録を残しておくことの重要性がよく分かります。


使用前自己確認は専門業者に任せるべき理由

オーナーが把握しておくべきポイント(作業ではなく“理解”)

使用前自己確認は、法律や技術基準に基づく専門的な検査であり、
実際の作業・測定は専門業者が行うべき工程です。

そのうえで、発電所の状況を把握するために、オーナーが「知っておくと安心なポイント」を挙げると次のようになります。

・パネルや架台に明らかな破損がないかどうかという“確認項目が存在する”こと
・雑草や周囲の環境が発電量に影響する場合があるという知識
・パワコン表示に異常ランプが点灯する可能性があること
・図面・保証書などの書類が使用前自己確認で必要になること

これらは実際に作業を行うものではなく、
「こうした項目が検査対象になる」ことを理解しておくための情報です。
使用前自己確認そのものは、必ず専門業者に依頼する必要があります。

専門業者に任せるべき領域

使用前自己確認の中心となる工程は、専門的な測定器・知識・経験が不可欠であり、
オーナー自身が行うことは事実上不可能な内容です。

・絶縁抵抗・接地抵抗などの電気測定
・IVカーブ測定と、その結果の正しい評価
・配線・接続部・端子の締め付け状態の詳細確認
・パワコン設定の最適化や系統条件との整合確認
・総合的なレポート作成と、不具合があった際の是正提案

これらは、電気工事士や電気主任技術者などの資格・経験に基づく判断が必要となるため、
専門業者に任せることが安全性・法令遵守・発電性能のすべてにおいて最善の選択です。

特に IV カーブ測定や配線状態の評価は、施工不良・初期不良を早期に発見できる重要な工程であり、
正しい検査が行われるかどうかで、発電所の長期安定運用に大きな差が生まれます。


外部の専門会社に「使用前自己確認」を依頼する際のチェックポイント

依頼先選定のポイント

使用前自己確認は、太陽光発電所の「安全性」と「長期的な発電量」を左右する重要な工程です。
そのため、外部の専門会社に依頼する場合は、次のようなポイントを押さえておくと安心です。

・太陽光発電の検査実績が十分にあるか(低圧・高圧の両方に対応しているか)
・IVカーブ測定など、必要となる測定機器をきちんと保有しているか
・電気主任技術者や保安の経験者が検査に関わっているか
・検査結果をまとめた「使用前確認レポート」を作成してくれるか
・不具合が見つかった場合に、改善方法まで提案してくれるか

これらの条件を満たす会社であれば、
形式的にチェックするだけではなく、将来の発電量や設備の安全性を守るための“本当に意味のある使用前確認”を行ってくれる可能性が高くなります。

適切な検査が行われれば、初期不良や施工ミスを初期段階で発見でき、
結果として、発電所の収益性・安全性を長く保つことにもつながります。


まとめ|法的義務と長期安定運用の両面から「使用前自己確認」を捉える

太陽光発電の「使用前自己確認」は、単なる形式的なチェックではなく、
・法令・技術基準の観点から求められる安全確認
・長期的な発電量と設備価値を守るためのスタートライン

と言えます。

太陽光発電所のオーナーとしては、
「施工して終わり」ではなく、「使用前に何をどこまで確認したのか」を
きちんと把握し、必要に応じて専門会社の力も借りながら、
安全で安定した発電所運営を行っていただくことをおすすめします。

使用前自己確認の具体的な進め方や、外部の専門会社への依頼を検討される場合は、
記事内に設置したバナー・問い合わせ窓口なども参考にしつつ、
ご自身の発電所の状況に合ったサポートを活用してください。